山なくオチなく意味なく終了野田谷垣初党首討論
11月30日、野田政権発足後初めての党首討論が実施された。
谷垣禎一自民党党首との討論では、言うまでもなく、三つの問題が取り上げられた。
沖縄問題、TPP、消費税である。
防衛省の田中聡沖縄防衛局長が11月28日夜の那覇市居酒屋でオフレコ記者懇談会を開いた。この席上で、一川防衛相が辺野古基地建設のための環境アセスメント評価書を年内に提出すると断言しない理由について記者から問われた。
田中局長が、「(女性を)犯す前に「これから犯しますよ」と言いますか」と発言したと報道された。
報道したのは琉球新報一社であり、他のマスメディアは問題を隠蔽しようとした。
三つの重大な問題が露わになった。第一は、自衛隊幹部の沖縄に対する意識の一端が表出したものと受け止められること。第二は、政府の沖縄問題に対する基本姿勢が問われること。第三は、これだけの重大発言を報道せずに隠蔽しようとしたメディアの対応である。
野田佳彦氏は誠心誠意だか正心誠意だか、いつもの言葉を使って謝罪をしたが、誠の心、心を正す姿勢が存在しなければ、誠心誠意も正心誠意も言葉の遊びに過ぎない。私は野田佳彦氏の姿勢を
「巧言令色鮮し仁」
と表現する。これがもっとも似つかわしい言葉だ。
田中局長発言を、単なる個人の失言として捉えるべきでない。沖縄の県民をなめ切った政府の対米隷属の姿勢そのものが問われているのである。
この問題が表出した現段階で、環境アセスの年内提出方針について谷垣氏が追及した。これに対して野田氏は、
「環境影響評価書については、年内に提出をする準備をしている、という状況でございます。」
と述べて、沖縄県民の意思を踏みにじり、対米隷属の政府方針を沖縄に強行に押し付ける姿勢を変えないとの主張を展開した。
谷垣氏が野田氏の慇懃無礼、居直りの姿勢を厳しく追及するのかと思われたところ、谷垣氏は、
「今度のこの発言をみまして、普天間の移設問題はこれは、民主党政権では解決がいよいよ不可能になったなという思いを深くしました。」
と感想を述べ、
「この問題ばかり議論しているわけにはいきません」
と述べて次の論点に移ってしまった。
これでは、谷垣氏も野田政権の対沖縄政策に加担したことになる。厳しく追及し、一度立ち止まって猛省と再考を野田政権に強制しなければ、党首討論は単なるセレモニー、ガス抜きにしかならない。
かつての自社国対政治では、表向き論議はするが、実はテーブルの下で手を握っていたのが実情だった。自民党も沖縄に負担を強要し続けてきた政党であり、この意味で自民も民主も同じ穴のムジナであることを改めて確認させる討論になったと言える。
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TPP問題では、谷垣氏の基本姿勢が曖昧であり、政府行動の何をどのような視点で批判するのかが明確ではなかった。
谷垣氏は、まず、
「日本はやはり自由貿易体制をしっかり守っていかなきゃいけない」
「外交交渉にあたっては、わが国の国益を、これは柔軟にしたたかに追求していかなくてはいけない。他国の譲歩も引き出していかなければならないというのが鍵」
との原則論を提示した。当たり前の内容だ。
谷垣氏は、その後、菅前首相が「平成の開国」と表現したことについて、日本の市場はすでに十分に開かれた市場であるにもかかわらず、
「わが国は閉じているけどもこれから開くんだというようなことで果たして、日本の国益が守れるのかどうか」
と述べて、このような姿勢での外交はあまりにも稚拙で国益を守れない。だから、「時期尚早」だとして、TPP交渉への参加表明に反対したと述べた。
野田外交の稚拙さについての指摘は正鵠を射ているが、自民党がTPPに賛成なのか、反対なのかが明確でない。
「時期尚早」の表現は、「反対ではないが、もっとゆっくりやれ」と主張しているように聞こえる。
政府を追及する側の基本姿勢が明確でなければ、政府の誤りを厳しく糾弾することは不能である。
逆に野田佳彦氏から、
「今、御党のTPPについてのの立ち位置はどういうことなんでしょうか。明確にお答えをいただきたい」
と切り返されて、谷垣氏は明確な回答を示せなかった。これでは、緊張感のある、問題点を浮き彫りにする討論は成り立たない。
消費税の問題について、谷垣氏は、
「総理はどっかでですね、マニフェストには消費税をやらないとも書いてないと、こういうことをおっしゃったと記憶しております」
が、しかし、
「消費税はやらないとマニフェストは書いてあったのと同じことですよ」
と述べ、
「みなさんはこのマニフェストは、国民との契約であるとおっしゃったはずであります」
だから、
「国民との信頼関係なくして国家の大事をなし遂げられるはずがない。だから、私はもう一度、野田総理は信を問うて、足腰を鍛え直して出てこなければいけない。そうでなければ、嘘のマニフェスト、民主主義の破壊に手を貸すことになる。」
と述べて、発言を締め括った。
政権批判としては極めて弱い。その理由は、谷垣自民党党首も財務省と連携して、消費税大増税を推進しようとしているからだ。
沖縄辺野古基地建設反対、TPP反対、消費税大増税反対の方針を明確に掲げる政治勢力との討論でないから、このような、一種の「やらせ討論」に堕してしまう。
主権者国民の多数が、反辺野古基地建設、反TPP、反消費税の主張を保持していると思われる。この政治勢力に国会の多数議席を付与することがどうしても必要なのだ。
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