暴力団排除条例施行は警察天下り利権拡大が目的
10月1日に、東京と沖縄を最後に、全都道府県で暴力団排除条例が施行された。
この条例は、一般市民が暴力団との交際を絶つことで、暴力団の資金源を根絶するのが目的とされる。違反すると市民も罰せられることになる。2004年に広島県で制定されたのをきっかけとして、全国で整備が進んだ。
警察から勧告を受け、公表され、従わなければ罰金50万円以下または1年以下の懲役が科せられる。暴力団を対象とした条例としては刑罰が軽い。つまり、一般市民を対象にした条例なのである。
11月26日の深夜、テレビ朝日が「朝まで生討論」でこの問題を取り扱った。
BLOGOSでは、作家の宮崎学氏、ジャーナリストの須田慎一郎氏などによる討論会の速記録が公開されているので、一度、通読されることを強く推奨する。
宮崎氏は実父がヤクザの組長であったこともあり、この分野に対する造詣が深く、思考が奥深い。
組織的な犯罪を常習的に実行する組織が暴力団であるなら、暴力団の存在は社会悪である。その撲滅を図ることは正当であると考えられるが、やくざ発生の経緯から現在までの歴史的経緯を踏まえれば、短絡思考だけで問題の本当の解決を得ることはできない。
日本国憲法は基本的人権として、思想・信条の自由、結社の自由などの権利を定め、これを、侵すことのできない永久の権利と定めている。
また、憲法第14条は法の下の平等をも定めている。
暴力団排除条例が、日本国憲法との関連で、そのように位置付けられるのかを厳密に考察することは、憲法が保障する基本的人権を擁護する視点から不可欠である。
宮崎氏によるとヤクザには、博徒と呼ばれる人々とテキ屋と呼ばれる人々の二つの系譜があり、これを総称してヤクザと呼んでいるとのことである。
因みに、ヤクザを呼ぶ呼称には、任侠、ヤクザ、暴力団の三つがあり、もともとは、任侠またはヤクザと呼ばれていたものに、昭和39年に開始された警察による第一次暴力団壊滅作戦の際に、「暴力団」という名称が付せられたのだという。
宮崎氏は、暴力団は官が付した名称、任侠ではきれいごとに過ぎるとして、「ヤクザ」の名称を用いているとのことである。
言うまでもないことだが、やくざ、あるいは暴力団が実行する犯罪行為そのものが容認されることはない。犯罪行為に対しては、ヤクザであろうと、一般市民であろうと、法令に基づき厳正に摘発と処罰が行われなければならない。
しかし、仮にヤクザの存在そのものに違法性があり、存在そのものが許されないのだとするなら、ヤクザ、あるいは暴力団の存在そのものを非合法化する法律を制定すればよいということになる。
しかし、そのような法律の制定により、組織的な犯罪活動組織を根絶できるのかどうかは定かでなく、また、特定の結社に対して、犯罪行為が存在しない段階で非合法化することが、日本国憲法の保証する結社の自由に抵触しないかどうか、など、クリアすべき課題が多いのが現状である。
暴力団排除条例は、これらの根本的な問題について真正面から取り組むことを避け、一般市民の日常行動に対して、極めて曖昧な制約を課すものであり、一般市民に大きな戸惑いを与えるものになっている。
ヤクザに「博徒」系と「テキ屋」系があることを記述したが、日本の至る所で開かれる神社・仏閣の祭りの際に登場する露天のほとんどが、この「テキ屋」系やくざによるものである。
神社・仏閣が境内の使用を露天商に認めて、露店が開かれれば、これは、神社・仏閣が暴力団に利益を供与したことになり、勧告を受け、公表され、罰金50万円又は1年以下の懲役に処せられることになるのだという。
宮崎氏によると、ヤクザの発生起源については学説がいろいろとあって必ずしも明確ではないとのことであるが、宮崎氏の解説をもとに以下に概略をまとめさせていただいた。
西暦1500年代の中頃、戦国時代後期にいわゆる野武士というのが生まれた。野武士というのは、今日は徳川、明日は豊臣という傭兵で、農民層から構成された。武力で戦争の手助けをする集団である。
これがヤクザの起源であるとの考えがある。これが江戸時代にいまの源流となるヤクザに発展していった。たとえば町火消しとか町奴とか言われるような人たちがいまのヤクザの元となっているということだ。
また、明治になって、明治政府に反発して秩父で秩父困民党事件という一揆が起きた。この一揆で焼き討ちが起き、無政府状態になるが、その中心にいたのがヤクザだと言われているということである。
彼らはある種乱暴だから、いまふうの綺麗な言葉でいうボランティアのようなことはできなかったかもしれないが、社会の中で必要な役割をそれぞれ果たしてきたと言えると宮崎氏は指摘する。
ヤクザの元は戦国時代、江戸時代に確立されて、明治維新以降、博徒が発生したのだという。
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さらに、第二次大戦後、米国は日本占領政策の一環として、戦犯容疑者の右翼大物を釈放して日本統治に利用していったが、この右翼組織とやくざが密接な関係を有し、米国と自民党を中心とする日本統治者=日本の支配者がヤクザを積極的に利用してきたことも明白な事実である。
また、芸能界とヤクザ界の関係が現在でも取り沙汰されるが、この点についても宮崎氏は次のように述べる。
「元を正せば同じなんです。江戸時代に歌舞伎者というのがいたでしょ。これはヤクザなのか侍なのか、芸人なのかわからないわけですよね。元を正せば、それで興行をして、お客さんを集めて、そこで観覧料をもらって、生きていくのは芸人ですよね。それを取り仕切るのがヤクザ、興行師だったわけです。だから元々同じところからスタートしていると考えなければいけないのであって、確立した社会があったわけではないんです。渾然一体だった時代から来ていると見た方がいい。」
さらに宮崎氏は、「社会からドロップアウトした人たちが、結局食っていくために集まってくるときに生まれたのがヤクザだとした場合に、その中に在日の外国人の方とか、あるいは日本における差別を受けている人たちとかが多くなってきた。それは歴史的な流れにおける事実だと思います。」
とも付け加えている。
犯罪は悪であり、暴力も悪であるが、日本におけるヤクザ問題、暴力団問題を考えるためには、歴史的な経緯と日本社会の歪みの問題を明確に認識することが不可欠なのである。
暴力団、ヤクザの問題よりも、はるかに深刻であるのが日本の警察、検察の問題である。宮崎氏は「日本最大の暴力団は警察です。人の身柄は拘束できる、ピストルは持っているわけですし。それははっきりしていますよね」と述べるが、暴排条例の裏側に存在する警察利権の拡大を見落とすわけにはいかない。
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