TPP論争でフジ「新報道2001」がまた玉砕
一週間前、3Kグループのフジテレビは、亀井静香国民新党代表をスタジオに招き、TPP交渉への参加問題について、賛成論を勢いづけようとして憤死した。
亀井氏に対して1対5で集中砲火を浴びせて、ノックアウトすることを目論んだにもかかわらず、亀井氏に5人の素人腕自慢がめった斬りにされてしまうとの大誤算を演じたのだ。
そのリベンジなのだろう。10月23日放送の「新・報道2001」では、メンバー構成を変えて、再チャレンジが行われた。
TPP交渉参加賛成派として招かれたのは、民主党近藤洋介議員、みんなの党江田憲司議員、とコメンテーター高橋進氏だ。
TPP交渉参加慎重派としては、山田正彦元農水相と元財務官僚の榊原英資氏が招かれた。条件付き賛成派として櫻井充参院議員が出席した。
フジテレビの平井文夫氏、須田哲夫氏は、むろん賛成派である。
先週よりも改善はされたが、2対5の討論だ。
しかし、結果は変わらなかった。
肝心なポイントで、積極派の主張にはまったく説得力がなかった。
11月初旬までに結論を示す環境は整っていない。
民主主義の基本は、国民の意思の尊重である。野田佳彦氏は首相に就任することについてさえ、主権者国民の同意を得ていない。政策方針については、2009年8月総選挙、2010年7月参院選での主権者国民の意思が何よりも重要だが、この国政選挙の際に交わされた主権者国民と民主党との契約内容と、現在の野田政権の基本方針とは完全にかい離している。
首相に就任したからと言って、勝手が許されているわけではない。「代議制民主主義は期限付きの独裁制だ」などという暴言を吐いた人物が、野田氏の前任首相だったから、悪影響を受けているのかも知れぬ。
野田氏が、自分は首相だから、結論を示す権限があるなどと考えているとすれば、大間違いだ。民意がベースにあっての首相なのだ。民意を踏まえない首相なら、首相であること自体が間違いということになる。
また、民主党が民主主義政党であるなら、民主党内での民主的な方針決定の手続きが不可欠だ。党内多数派が慎重意見であるなら、それが「民意」である。「民意」を無視する決定は、「暴走」としか言わない。
10月20日に小沢一郎元代表がインターネットを通じる記者会見でTPPについての見解を明らかにした。
その内容は、自由貿易は日本にとってメリットのあるものだから、TPPの基本理念には賛成だが、このような政策を進めるのであれば、その政策を実行しても差し障りが出ないように備えること、すなわち、セーフティネットを整備することが不可欠だ。セーフティネットを備えずに、TPPに突き進むのは間違いの元だ。との趣旨の見解を示した。
つまり、自由貿易の基本理念には賛成だが、現時点での現状のTPPには賛成できないとの考えを明示した。
ところが、一部の偏向メディアは、小沢氏の説明の前半の一部だけを抜き取って、原則としてはTPPに賛成であるとの虚偽報道を行っている。インターネット放送を直接見ていない人は、このような虚偽報道から影響を受けてしまうが、事実は逆なのだ。
10月23日の「新・報道2001」で、フジテレビはリベンジを期したが、再び憤死してしまった。11月のAPEC総会までに、日本がTPP交渉参加を決める根拠は皆無であることが、改めて鮮明になった。
どういうことか。
推進派は、「周回遅れ」だの、「バスに乗り遅れるな」などの言葉を多用するが、日本は「周回遅れ」でもなければ、「バスに乗り遅れて」もいない。
行先も分からないバスに、行先も確かめずに乗ることを軽挙妄動という。
日本の関税率は米国、EUと比較して、十分に低い。日本は市場を十分に開放している。
世界の自由貿易体制はWTOであり、日本はWTOの枠組みの中で、自由貿易推進国のひとつとして活動しているのだから、TPPに入らなければならない状況にはまったく置かれていない。
TPPに日本が入ることは、日本の要請から浮上している話ではない。米国が日本に要請している話なのだ。
TPP参加推進派は、交渉に参加して、米国と渡り合えばよいというが、日本に積極的なメリットのないTPP交渉に、米国の要請だからということで参加する時点で、すでに日本が米国の要請に押し切られていることを意味することが理解できないのか。
日本が日本の視点で、交渉に参加することが必要だと判断したうえで、交渉に参加するのでなければ、そもそもの入り口から、日本は主体性を失っていることになる。
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