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2011年10月 1日 (土)

いまだ近代国家になれないこの国の二重構造

日本の二重構造とは、建前上の、あるいは、表面的な、理屈の上での制度と、実態とがかい離していることを指す。
 
 その最大の原因は、日本国憲法の規定を変えずに、日本が軍隊を保持したことにあるように思われる。
 
 戦後日本は連合国軍に占領された。連合国軍最高司令官総司令GHQが日本を統治した。このGHQの指揮の下で日本国憲法が編纂され、公布、施行された。施行は1947年5月3日だ。
 
 最高司令官だったマッカーサー元帥は、民主主義のモデル国家を日本に創設しようとした。理想主義の嫌いがなかったわけではないが、過去に例のない国家像を描いていたと考えられる。
 
 財閥解体、農地解放、労働組合育成など、いわゆる徹底した民主化政策が採られ、実行された。公職追放では、戦争犯罪人、戦争協力者などが大量に公職から排除された。
 
 ところが、日本国憲法が施行された1947年、米国の対外政策、対日占領政策は大転換を示す。180度の転換と言っても良いだろう。
 
 冷戦の激化、ソ連邦における核実験成功、中国大陸の喪失(中華人民共和国の建国)などを背景に、米国の外交政策スタンスが大転換した。
 
 「日本民主化」は中断され、「日本反共化」が対日占領政策の基本路線になった。日本民主化の「逆コース」である。このことによって、戦後日本は、占領当初の「徹底した民主化とこれを支える憲法」を持ちながら、非民主化=反共政策強化と憲法無視の再軍備という、根本的な矛盾構造を抱え続けることになったと考えることができる。

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戦前の特高警察職員、旧軍人が再登用され、公職追放された人々が復帰する一方で、今度はレッドパージで、思想統制が急激に強化された。
 
 思想統制が強められるなかで、さまざまな謀略、工作活動が展開された。その多くにCIAが関与した可能が高い。松本清張が著した『日本の黒い霧』は、日本人の必読書である。

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 日本国憲法が武力放棄を謳っているのに、その日本が巨大な軍隊を保持するとの深刻な二重構造、ダブルスタンダードが形成されたのである。
 
 さらに極めつけは、1951年9月8日、サンフランシスコ講和条約により、日本の主権の回復、独立の回復を得る条約調印が行われたその日、吉田茂首相はサンフランシスコ郊外のプレシディオ陸軍基地に連行され、日米安全保障条約に署名させられた。
 
 米軍が日本国土を基地として占領し続けることを正当化するための、米国の米国による米国のための条約に、吉田首相は署名させられたのである。ポツダム宣言は日本が独立を達成した時点での占領軍の撤退を定めていたにもかかわらず、爾来、米軍による日本国土占領は現在まで続いている。

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 つまり、ものごとの建前と実態が異なる状態が、この国の常なる姿になっているのだ。そして知らぬ間に、国民はこの不自然な状況に慣れ、不当な現状に疑問さえ抱かぬようになってしまったのだろうか。
 
 私たちの回りには、不当な現実があまりにも多く横たわっている。あまりに多すぎて、ひとつひとつを糺すことさえ難事となるが、これをひとつひとつ掘り起こして、建前と実態とを重ね合わせてゆかねばならぬ。
 
 掘り起こさねばならぬ「不都合な現実」とは何か。

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ここでは、五つの事例をあげておきたい。
 
  
 第一は、日本が法治国家であるとされ、原子力災害については原子力損害賠償法という唯一の法律が存在しながら、行政府も立法府も、この法律を無視した運営を続けていること。
 
 
 第二は、福島で重大な放射能放出事故を発生させた原子力発電事業、プルトニウム燃料を用いるプルサーマル発電についてシンポジウムを開催する際に、電力会社が会社ぐるみで偽装質疑応答を行ったとの重大事実が判明し、経産大臣が企業の経営責任を指摘しているにもかかわらず、責任ある当事者が居直り、開き直りを演じており、これが放置されていること。
 
 
 第三は、日本国憲法が第31条で
「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」
と定め、適法手続きを規定しているほか、罪刑法定主義、法の下の平等、無罪推定原則、疑わしきは罰せず、等の基本的人権尊重の根本原則がありながら、これらが平然と無視される状況が放置されていること。
 
 合わせて、憲法第76条が
「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」
と定めているにもかかわらず、裁判官の独立性を蹂躙する制度運用が横行していること。
 
 
 第四に、2009年8月の総選挙の際、「マニフェスト選挙」、「政権選択選挙」の表現が多用され、主権者の意思を反映する政治の実現がことさら重視されたにもかかわらず、選挙の際の主権者国民との契約破棄が横行するなかで、メディアが口を揃えて、マニフェスト破棄を奨励していること。
  
  
 第五に、暴力団排除条例が施行されるに際して、芸能界とご暴力団との関係が明らかにされねばならないのに、視聴率を持つ人物の問題を扱う際に、すべてのメディアが腫れ物に触る態度を貫いていることである。

     
 ・・・・・  
 
   
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