予算委拒絶説明責任放棄を「正心誠意」と言わない
野田佳彦氏が9月13日に所信表明演説を行った。
「正心誠意」の四文字が大切だとするなら、臨時国会を4日間で閉会せず、予算委員会質疑を行うべきである。
メディアが鉢呂経産相の辞任問題に陳謝と報道したが、野田氏は陳謝していない。
「誠に残念でなりません」
と傍観者としての感想を示しただけである。
陳謝というのは、
「任命権者として国民の皆様に深くお詫びを申し上げます」
と発言したときに用いる表現である。
代表質問で政府の姿勢を正しても、意味不明な答弁で幕が引かれるだけである。2009年8月総選挙での主権者国民との契約、2010年7月参院選での主権者国民の意思を踏みにじる政策方針を示して政権を発足し、国民の信を問うことを行っていない以上、少なくとも予算委員会を開いて質疑を行うべきである。
野党が予算委員会開催を求めるなかで、これを無視し、国民に対しても説明責任を果たさない、その姿勢のどこが「正心誠意」であるのか。激しいヤジが飛ぶのは自業自得である。
「美辞麗句を官僚の短冊でつないだもの」
との批評があったが、正鵠を射るものである。
いくら美辞麗句を並べても、基本姿勢が伴わないなら
「巧言令色鮮し仁」
が正しい形容だ。
いま、何よりも求められるのは、被災地の復旧、復興、そして日本経済の立て直し、原発問題の解決である。そのためには政府支出の追加が必要不可欠である。
ところが、野田佳彦氏は最優先課題を車の両輪として、もう一つの柱を財政再建だと位置付けた。
財政再建が重要でないとは言わない。中長期で重要な課題である。しかし、この問題の取り扱いには極めて慎重な対応が求められる。その最大の理由は、一般的に財政再建策が経済悪化策としての側面を保持していることにある。
被災地の復旧・復興のための財政支出、経済を立て直すための財政支出の持つ経済効果は、基本的に、財政再建を実現するための増税などの政策が持つ経済効果と正反対の方向性を持つ。
経済を立て直すために景気対策を講じても、その財源を増税で賄うと経済を立て直す経済効果は打ち消されてしまう。
財政再建は重要な課題だが、どのような手順で実行するのかについて、十分な検討が不可欠なのである。
野田佳彦氏の発言を裏で操っているのは財務省である。野田佳彦財務省大増税政権というのが野田政権の基本性格を端的に表している。
復興財源を復興増税で賄い、2010年代半ばに消費税率を10%に引き上げる法律を成立させるというのが、野田佳彦氏が所信表明で述べた具体的内容である。
復興政策で創出されるインフラは平均で60年間程度、効用を発揮する。したがって、その財源調達は建設国債で行うのが正しい。政府資産売却で調達できるのなら、まずそれを優先するべきだ。外貨準備の取り崩しが最も適正である。資産売却をしないなら、建設国債を発行すればよいわけで、増税で賄うというのは最悪の選択である。
2010年代半ばに消費税率を10%に引き上げる政策については、これを具体的に法定化する前に、国民の判断を仰ぐことが不可欠だ。
2009年8月総選挙で鳩山由紀夫民主党は消費税増税を封印して政権樹立の議席を確保した。2010年7月参院選で主権者国民は消費税率の10%への引上げについて、明確にNOの意思を表明した。
したがって、野田政権が主権者国民の意思を踏みにじり、消費税率を10%に引き上げることを法定化することは絶対に許されないことである。
国会審議は行わない。主権者国民がNOの意思を明示した消費税増税を国民の判断を仰がずに法定化する。自分が任命した大臣が暴言を吐いて大臣辞任に追い込まれたのに、国民に謝罪もせず、傍観者のように振る舞う。
これが所信表明で明らかにされた野田佳彦氏の基本的な姿勢だ。
美辞麗句を並べても、具体策が逆の方向を向いていれば、美辞麗句など何の意味も持たない。美辞麗句を並べれば、民主主義の根本ルールに反する大増税を強行しても構わないと野田佳彦氏が考えているとすれば、大間違いである。
野田政権は2012年半ばまでに行き詰まり、また次の首相交代につながることになるだろう。このような大胆予想を浮かび上がらせる所信表明演説であった。
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