旧日債銀粉飾決算事件逆転無罪判決の闇
1998年に経営破綻した日本債券信用銀行の粉飾決算事件で、差し戻し後の控訴審判決が8月30日に東京高裁であった。飯田喜信裁判長は旧証券取引法違反の罪に問われた窪田弘元会長ら旧経営陣の3被告を無罪とする逆転判決を言い渡した。
検察側が最高裁に上告する可能性があるため、現段階ではまだ確定していないが、最高裁が有罪判決を下した高裁に差し戻した事案であり、仮に検察が最高裁に上告しても、無罪判決は変わらないと考えられる。
私はこの事件について、2008年7月に以下の二つの記事を掲載した。
「長銀事件逆転無罪判決の闇」
「長銀事件逆転無罪判決の闇(2)」
である。
前者の記述を以下に転載する。
「旧日本長期信用銀行の粉飾決算事件で、最高裁判所は7月18日、執行猶予付き有罪とした1、2審判決を破棄、元頭取ら3人に逆転無罪を言い渡した。
刑事事件で最高裁が逆転無罪判決を出すのは極めて異例である。
日本の三権分立はおとぎ話である。内閣総理大臣が三権を掌握し得るのが実態である。政治権力は司法、警察、検察に対しても支配力を及ぼすことが可能である。
今回の最高裁判決の真のターゲットはこの事件にはないはずだ。旧長銀と類似した事案で裁判が行われている「日債銀事件」が謎を解く鍵である。
「日債銀事件」では大蔵省OBで国税庁長官を務めた窪田弘氏が起訴され、1審、2審で執行猶予付き有罪判決が出されている。
大蔵省、財務省は、同省最高幹部を経て日債銀に天下りした窪田氏の有罪確定を回避することを最重要視してきた。
長銀事件が最高裁で逆転したことが、日債銀事件に影響する。
日債銀事件で同様の逆転無罪判決が出されるなら、ここに示した仮説が間違いでないことが判明すると考える。
日本の権力構造の闇は限りなく深い。」
最高裁は、2008年7月に、旧長銀粉飾決算事件の被告に対して、異例とも言える事実認定を変更しての無罪判決を示した。
最高裁では憲法違反および最高裁判例違反を審理するのが通常で、事実認定を変えて逆転判決を示すことがほとんどない。
そのなかで、異例の事実認定を覆しての逆転無罪が示された。
その理由は、ただひとつ。
旧大蔵省幹部職員を救済することだった。
「長銀事件逆転無罪判決の闇(2)」
に記述したが、旧長銀事件で逆転無罪判決を示した最高裁担当裁判官の一人は、津和野修氏であり、完全な大蔵省出身判事だった。
つまり、津和野氏が画策して、旧長銀事件の異例とも言える逆転無罪が強引に提示されたのだと推察される。
その目的は、同種事件で高裁有罪判決を受けた元国税庁長官窪田弘氏を救済することだったと考えられる。
窪田氏は1992年に日債銀に天下った。1997年に日銀から東郷氏が頭取で天下るまで5年間、日債銀トップに君臨した。東郷氏の場合、日債銀に移ってすぐに経営破たんだから、責任を負わせるのは酷であるが、窪田氏の場合はまったく違う。まさに不良債権問題のただなかにいた人物である。
1992年には住宅金融専門会社、いわゆる住専が経営危機に直面した局面である。この時点で住専を破綻処理し、損失を確定していれば、日本の不良債権問題は泥沼に嵌らずに済んだはずだ。
ところが、住専は大蔵省の重要天下り先でもあったため、大蔵省は住専を破綻処理せず延命させ、その結果、不良債権が雪だるま式に膨張していった。
日債銀の経営も極めて類似している。すでに破たん状態にあるノンバンクに対して、担保も確実に取らずに、損失を表面化させないために追加融資を繰り返し、その結果、銀行の損失を膨張させたことで窪田氏などの責任が問われたのである。
日本の場合、裁判も、警察も検察も、法の支配ではない、裁量が支配する。構造的に、日本の警察、検察、裁判所制度は致命的欠陥を抱えているのだ。
大蔵省元職員の高橋洋一氏は金品窃盗の現行犯で逮捕されながら、無罪放免にされた。元大蔵省のキャリア職員だからである。
まったく同じことをして、人によっては逮捕、勾留、起訴されて、実刑判決まで受ける者がいる。
かたや、同じ罪を犯しながら、無罪放免にされる。
官僚であるから無罪、国の政策を批判している在野の人間だから有罪などの裁量的な運用が野放しにされている。
さらに問題であるのは、何の罪も犯していない無実潔白の人間を、公権力を不正に行使して犯罪者に仕立て上げ、逮捕、勾留、起訴し、有罪、実刑などの境遇に落とし込むことが平然と実行されていることだ。
私はその被害者である。
警察、検察の驚くべき裁量権は、警察職員、検察職員の天下り問題と不可分に結びついている。
まったく、腐りきっているとしか言いようがない。それが、日本の警察、検察、裁判所の実態である。
小沢一郎元民主党代表の周辺だけが、不正で不当な検察権力行使によって、激しい攻撃を受けた。これをオランダの政治学者カレル・ヴァン・ウォルフレン教授は”Character Assassination”と表現した。人物破壊工作である。欧米では政敵を攻撃するために、物理的な生命ではなく、社会的名声を失わせるための謀略工作がよく用いられることをウォルフレン氏は私たちに教えてくれた。
電車内の痴漢冤罪事件でも、防衛医大教授は最高裁の事実認定変更により、逆転無罪判決で救済された。国立大学の職員だからである。私も場合も、事件の構図は極めて似ており、さらに私の無実を証明する決定的な目撃証人まで出廷してくれたが地裁は言語道断の不正判決を示し、高裁と最高裁は裁判を行う姿勢さえ示さなかった。
警察、検察、裁判所の近代化、浄化は日本が近代国家に生まれ変わるための必須条件である。それなのに、検察はいまだに全面可視化に反対している。取調べに際しての弁護士同席も先進国の常識である。
これらを認めるには、他の主要国で認めている捜査手法を日本にも導入するべきだと主張するなら、それらを認めてやればよい。
取調べの可視化は、被疑者だけでなく、被害者、目撃者をはじめとするすべての関係者に一律に適用する必要がある。警察が被害者とされる人物や関係者と密室で謀議して、架空の犯罪をねつ造するからである。
日本の警察、検察、裁判所の実態は江戸時代よりもはるかに遅れたものであると思われる。
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