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2011年9月25日 (日)

世界金融危機に処方箋を示せなかったG20会合

G20財務相・中央銀行総裁会議は9月22日、金融市場安定を目的にした共同声明を採択して閉幕したが、具体策が乏しい。
 
 共同声明では、
「銀行システムと金融市場の安定を保つために必要なすべての行動をとる」
ことが盛り込まれたが、問題は、
「銀行システムと金融市場の安定を保つために」
何が必要であるかが明らかにされていないことだ。
 
 意識不明の重病患者を前にして、医師団が会議して、
「患者の生命を守り、健康を回復するために必要なすべての行動を取る」
ことを決めながら、具体的に、何をすれば患者の生命を守り、健康を回復できるのかが分からない状態と同じだ。
 
 中央銀行が必要に応じて流動性を供給することが提示されたが、具体策が示されたのはこれ位のものだ。
 
「ユーロ圏は10月の次回会合までに、欧州金融安定基金〈EFSF〉の柔軟性を高める」
ことも盛り込まれたが、これも具体策が欠けている。
 
 さらに極めつけは、
「財政健全化と成長の確保を確認」
だ。
 
 世界経済は2012年に向けて厚い暗雲に覆われている。経済活動の停滞が長引き、2012年に向けて、さらに停滞感が強まる恐れが高まっていることが問題だが、現代経済の大きな特徴として、実物経済以上に金融経済の変動の影響が拡大していることを見落とせない。
 
 日本では1980年代後半にバブル経済を経験し、その後、バブルが崩壊し、20年以上に及ぶ経済停滞が持続してしまった。これも、金融市場の激動が主たる原因になって発生した経済全体の停滞現象であった。
 
 2008-2009年にかけて、世界の金融市場を吹き荒れたサブプライム金融危機は、日本が経験したバブル崩壊現象と類似はしたが、その規模、マグニチュードがかけ離れたものであった。
 
 サブプライム危機の嵐がまだ完全には吹きやまぬなかで、今回の不安定性がクローズアップされている。
 
 経済問題にいかにも暗いと見られる安住淳財務相が、今回の欧州政府債務危機について、
「2008年のリーマン・ショックよりも深刻度が増している」
と述べたと伝えられているが、この表現そのものに、安住氏が本質を理解していない現実が示されている。
 
 1992年から2000年にかけて、クリントン政権は米国経済を見事に浮上させたが、クリントン政権は優れたエコノミストを政権内部に取り込んでいた。クリントン政権はS&Lの経営破たんの広がりに伴う金融危機を克服し、巨額の財政赤字を巨額の財政黒字に転換させることに成功した。
 
 経済問題に対処するためには、優れたエコノミスト=経済学者が必要だが、現在の主要国経済政策に積極的に関与する優れたエコノミストが見当たらない。
 
 日米欧が道を踏み外し、「けものみち」に迷い込んでいるように見える。経済問題を正しく把握し、適正な処方箋を提示しなければ、治る患者も治らない。世界経済が重病を患っていることははっきりしているが、医師団会議を開いているメンバーが「やぶ」ばかりでは、患者の命が持たなくなるかも知れぬ。
 
 主要国が集まって会議を開いたからと言って、適正な処方箋が示されるとは限らない。優秀な頭脳が集まってこそ、会議は意味を持つが、今回のG20は単なる時間の浪費にしか見えない。
 
 ・・・・・  
   
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