核武装の為の原発推進を公言する自民党石破茂氏
8月16日のテレビ朝日番組「報道ステーション」における自民党石破茂議員の発言を看過することはできない。石破氏の発言を文字に起こして下さった「ニコブログ」様の記述から石破氏の発言を以下に転載する。
「…安全神話みたいなものを…政治的には作り出さざるを得ない状況だったのではないですかね。政治は結果責任ですから、責任は自民党が相当程度負わねばならないわけです。きちんと検証することなく、電力会社、経産省、そういうことを、あえて言えば鵜呑みにしてきた責任は免れないことだと思います。」
「原発のウェートを減らしていきながら、再生可能エネルギーのウェートを高めていくという方向性に異存はありません。ですけども、原発をなくすべきということを目標とするやり方には賛成してはおりません。原子力発電というのがそもそも、原子力潜水艦から始まったものですのでね。日本以外のすべての国は、原子力政策というのは核政策とセットなわけですね。ですけども、日本は核を持つべきだと私は思っておりません。しかし同時に、日本は(核を)作ろうと思えばいつでも作れる。1年以内に作れると。それはひとつの抑止力ではあるのでしょう。それを本当に放棄していいですかということは、それこそもっと突き詰めた議論が必要だと思うし、私は放棄すべきだとは思わない。なぜならば、日本の周りはロシアであり、中国であり、北朝鮮であり、そしてアメリカ合衆国であり、同盟国でるか否かを捨象して言えば、核保有国が日本の周りを取り囲んでおり、そして弾道ミサイルの技術をすべての国が持っていることは決して忘れるべきではありません。」
「原発に限らず、この世の中に絶対というものはあり得ないことを、よくみんな認識したんだと思います。日本って絶対神話というのが流行りますよね。戦艦大和は絶対沈まないだとか、日本は神の国なので絶対負けないとかね。だけど、突き詰めた議論なしに絶対神話を作る日本の悪癖、あるいは、議論を突き詰めずに、仕方がないじゃないかとか、やむを得ないじゃないかとか、そういう物事の決め方。それは決して、いい結果をもたらすことはありませんよね。日本人はもっと突き詰めてモノを考えるべきだし、そうでなければ、結果は決して幸せにならないということだと思います。」
絶対神話についての発言が文脈上、どのような意味を持つのかはよく分からない。原発を「絶対に安全だ」として推進してきた自民党の政策を否定しているものなのか。それとも、これまでは「原発は絶対安全だ」として原発を推進してきたけれども、重大な事故が発生したので、これからは「絶対に安全だとは言えない」と宣言したうえで、原発を推進してゆくことを改めて宣言しているのか。
何から何まで知り尽くしているかのような話しぶりではあるが、話の内容を詳細に分析すると支離滅裂というのが、石破氏の話の特徴かもしれない。
見落とせない点は、日本の核武装のために原発ビジネスが必要であるとの主張を明確に示した点だ。このことは、これまでの本ブログ記事でも何度も指摘してきたことであるが、現職の自民党執行部がここまであからさまにこの点を明示したことは驚きである。
石破氏は自民党政調会長の立場にあるから、「核武装のための原発推進」は自民党としての基本見解と理解するべきである。
電力業界との癒着が指摘される北海道の高橋はるみ知事が、北海道泊原発の再稼働にゴーサインを出した。九州電力玄海原発の再稼働がやらせメール問題で足止めを食っているなか、原発推進派の要請を受けて、なし崩しの原発再稼働に全面支援の行動を取ったものである。
原発利権複合体によるこのような暴挙を主権者国民は看過すべきでない。東電福島第一原発の重大事故について、詳細な検証はまだ終わっていない。とりわけ、3月14日の3号機爆発について、燃料プールの核燃料が核爆発を起こしたものであるとの指摘も存在しているにもかかわらず、東電と政府はスペクトル分析を公表しない。
東大先端技術研究センター教授でアイソトープ研究センター長の児玉龍彦教授は7月27日に衆議院厚生労働委員会で参考人として意見陳述し、さらに、8月12日に記者説明会を開催した。その発言内容はネット上に公開されているので、すべての国民が、まずはその発言内容に耳を傾けるべきだ。
低線量被曝や内部被曝の危険性については、さまざまな見解が示されているが、児玉教授は従来の統計的分析、疫学的分析ではない、遺伝子分析の視点から重要な事実の指摘を示している。
福島原発から放出された放射性物質の総量についても、熱量からの分析として、広島、長崎の原発20~30個分という数値が示されている。専門的な分析が求められる事項であるので、素人が軽々に問題の結論を断定することはできないが、放射能の危険性を十分に踏まえた慎重な対応が求められる。
原発利権はとてつもなく巨大なものであり、政界も財界も言論界も、放射能ではなく原発利権マネーによって広範に汚染されている。
原発周辺地域では農林水産物に深刻な実害が発生し、さらに消費者がこれらの農林水産物を敬遠するとの行動も根強く残存している。このことの責任はひとえに放射能事故にある。生産者も被害者であるし、消費者も被害者である。政府は法律に則って、原発事故を引き起こした東京電力に適正な責任を求め、東電の資金力で賄えない部分については政府が責任を持つ必要がある。
農林水産業に対する補償を万全に行わないことが、農林水産業者を苦しめる結果を生むのである。
ところが、政府は事故を発生させた当事者である東京電力に法律に沿った責任を求めずに、本来東電に帰せられるべき負担を一般国民に転嫁する問題処理スキームを新たに作り、過去の事故に遡って適用するという、法治国家としてはあり得ない対応を示している。
今回の事故は、日本で定期的に発生する巨大地震、巨大津波に対して、その発生頻度がそれほど高くないとの認識の下、経済的負担を考慮して十分な備えを取ることを怠ったために発生した人災である。2009年にも巨大津波に対する備えが不十分であるとの提言を受けながら、その警告を無視してきた事業者の責任は極めて重い。
原子炉の5重の防護壁が重大事故の発生を絶対に阻止するとの主張も、現実がいとも簡単に崩壊させたが、燃料棒がむき出しになれば2800度の高熱に達する一方で、防護壁の鋼鉄が1400度で溶融することを踏まえれば、防護壁が簡単に崩壊することは素人でも推測することができる。
「絶対」としてきたことが「絶対」ではなかったことが明らかになった以上、今後についても「絶対」はあり得ない。この点は石破氏が指摘するとおりである。しかし、「絶対」がない以上、原発事故の重大性を踏まえれば、「脱原発」を決断する以外に、その災厄を完全に除去する道はないのではないか。
石破氏は「絶対神話」を否定するなら、直ちに「脱原発」を国民的論議に高めて、真摯な論議を行うことを提案するべきではないのか。
ここで、別のロジックが「脱原発」を妨げる。それが、核武装のための原発推進論である。石破氏の主張の核がここにある。最終的には主権者国民が判断することであるが、世界で唯一の被爆国である日本は、核武装ではなく核廃絶運動の先頭に立つべきである。
自民党が核武装のための原発推進を掲げるなら、選挙の際に、そのことを隠すことなく主権者に語り、その上で主権者国民の信を問うことが絶対に必要だ。
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