日経平均株価1万円回復の背景と今後の展望
日経平均株価が1万円を回復した。日経平均株価は3月11日の大震災までは、1万円の大台を維持していた。震災発生を契機に急落、3月15日には、瞬間的に8227円まで下落した。
その後、9500円から9800円のレンジ内での動きを中心に推移したが、7月6日に、終値ベースで1万円を回復し、震災後の高値を更新した。この間、終値が1万円を上回ったのは5月2日、1日だけだった。
株価は経済の先行指標でもある。経済の先行きを織り込んで株価が変動するからだ。菅内閣がどっかりと居座り、政策対応がマヒするなかで、株価の1万円回復は奇異な感もするが、その背景には何があるのだろうか。
結論から言うと、鍵を握るのは増税論議だ。菅内閣は経済復興策には取り組まずに、増税を前面に掲げてきた。消費税増税、復興税としての所得税、法人税などだ。
狂気の経済政策運営と言わざるを得ない。
震災の影響で日本経済に強烈な下方圧力がかかるなかで、増税を実行すれば経済は破壊されてしまう。被災地や被災者に対して必要な政策対応を示さなければ、被災地の復興は進みようがなく、被災者は悲惨な状況下に放置されることになる。
自分の地位や利益だけを考えて、被災者に思いが及ばないような人物を総理大臣の地位に上らせたのは誰か。民主党内の菅直人支持者の責任は極めて重大である。
しかし、菅直人政権の唯一の救いは、党内を統率する力、掲げた政策を強力に推進する力、国会運営を打開する力をまったく持たない点にある。
政策実行力と、被災者への思い=心がないことが、復旧・復興政策の著しい遅れを招いているが、同時に、狂気の政策である大増税政策についても、順調な進展を見ていないのである。菅内閣に強い政策実現力があれば、増税が強硬実施されてしまうだろう。
社会保障と税の一体改革案に、2010年代中ごろまでに消費税を10%に引き上げることが盛り込まれたが、閣議決定されなかったため、拘束力がない。民主党内で大増税反対論が多数を占め、政府・与党の政策として大増税を推進できる状況にない。
つまり、増税案の策定が大幅に遅れることが確実な情勢になったのである。
他方、復旧・復興政策については、これは、必ず実施されると見ておいてよいだろう。
経済政策の経済への影響は、財政政策のスタンスによって決まる。金融政策は超緩和政策が維持されているため、変化を生じさせるのが財政政策だけになっているからだ。
2011年度は当初、超緊縮財政が日本経済を大幅に悪化させる姿になっていた。私は、この点から、日本経済の悪化と株価の下落を昨年後半から予測し続けた。
日経平均株価は三尊天井を形成すると予測してきた。
実際に、株価は三尊天井を形成したのだ。
ところが、菅政権の政策遂行能力の欠如から、2011年度の財政政策が大変化する可能性が急激に高まっている。増税が行われず、補正予算が第3次まで編成され、本格的な経済復興政策が提示されると、2011年度の「超緊縮」が「積極」財政に転換するのである。
そうなると、経済は浮上し、株価は上昇する。株価上昇は経済変動の結果の先取りでもあるが、逆に株価変動それ自体が景気に影響を与える場合もある。株価上昇が経済心理を好転させて、経済を活発化させるというものだ。
詳しくは『金利・為替・株価特報』をご高覧賜りたい。
『金利・為替・株価特報』第136号=2011年7月7日号を同日発行した。本ブログで告知した通り、本来の発行日よりも1日に前倒しの発行である。
タイトルは、
「瓢箪から駒で増税論停滞が景気回復誘導か」
目次は以下の通り。
<目次>
1. 【概説】株価は経済変動の「水準」ではなく「変化」に従う
2. 【政局】政局焦点は小沢一郎氏復権の可否にあり
3. 【政策】「増税なき三次補正予算」が持つ意味
4. 【株価】三尊天井から底入れに移行する株式市場のリスク
5. 【米国】米国株価と金利・為替の強い連動関係
6. 【為替】欧州政府債務危機のゆくえとユーロレート
7. 【世界経済】中国経済はソフトランディングできるか
8. 【金利】株価と債券価格のトレードオフ
9. 【投資】投資戦略
日本の株価は割安な状況に置かれている。外部環境が変化し、株価が上昇波動に移行すると、大幅な水準修正が行われる可能性が生まれる。
個別企業の株価を見ても、リーマンショック以来、大暴落した金融関連企業の株価は、リーマンショック前高値から10分の1以下に下落している。株式市場の局面が転換する場合、もっとも大幅に上昇するセクターは、もっとも下落したセクターになる場合が多い。『金利・為替・株価特報』では、株式投資の参考企業についても記述している。
とはいえ、菅政権が退場して、新しい政権がしっかりと経済復興政策に取り組むことが前提条件である。
まずは、菅氏退場の道筋をつけなければならない。
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