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2011年7月 9日 (土)

菅首相言動とストレステストの是非を分けて考えよう

原発再稼働の条件として「ストレステストをクリアすること」が設定されたことに対する風圧が強い。
 
 菅内閣は6月18日に原発再稼働要請を発表した。安全性について政府が保証するから再稼働してくれというものだった。事実上の原発安全宣言だ。
 
 この安全宣言を発したのは海江田万里経産相だが、翌日の6月19日、菅直人氏は、
「私もまったく同じだ。すべての原発を停止するとは言ってない。浜岡は例外的で特別な事情があるが、他の安全性が確認されたものは稼働していく」
と発言した。
 
 つまり、海江田経産相が発表した原発安全宣言は菅直人氏も了解する政府公式見解だった。
 
 状況が一変したのは7月6日である。衆議院予算員会質疑で、菅直人氏が、6月18日の海江田経産相による原発安全宣言について、自分は無関係であることを装い、玄海原発の再稼働を容認しない姿勢を示し、再稼働にはストレステストをクリアすることが必要であるとの「新見解」を示したのだ。
 
 自分の了解のもとに6月18日の海江田経産相の原発安全宣言への不関与を装い、玄海原発再稼働に待ったをかけた菅直人氏の行動が大きな批判を招くのは当然のことだ。
 
 梯子を外され、地元に迷惑をかけたから辞任せよと迫られた海江田経産相は菅直人氏の傍若無人の振る舞いの被害者でしかない。
 
 マスゴミ論調は、「唐突にストレステストを持ち出されても混乱するだけ」との関係者の言葉を盛んに引用し、ストレステストそのものを撤回させようと懸命だ。

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ここで、日本国民は冷静に考えなければならない。論議が二つの問題を混同して論じているからだ。
 
 二つの問題とは、
①菅直人氏の言動の是非
と、
②ストレステストを再稼働の条件とすることの是非
だ。
 
 マスゴミの論調は、菅直人氏は6月18日には原発再稼働にゴーサインを出したのに、それを後から撤回して、新たにストレステストを持ち出したからけしからんというものだ。
 
 地元自治体関係者の批判も、この一点に集中する。
 
 よく見ると、この批判の主は、基本的に原発推進派であることがわかる。つまり、福島原発の事故により、日本における原発運転に対して強い逆風が吹くことに過剰な警戒感を示す人々である。
 
 これらの人々の共通点は、「人間の命、健康よりも自分の利益、カネを優先する」ことにある。原発ビジネスは巨大利権ビジネスである。この巨大利権を手放したくないから、彼らは何が起ころうと、地球が滅亡しようとも原発推進なのだ。
 
 菅直人氏の行動には重大な問題がある。6月18日に原発再稼働にゴーサインを出しておきながら、自分は関与しなかった風を装い、いきなり原発再稼働に待ったをかけた手口は最低である。
 
 7月6日の国会質疑では、
「6月18日にはいったんゴーサインを出したけれども、その後、もう一度よく考えて、ここは、慎重に対処するべきものと考えを変えた」
と発言するべきだった。

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しかし、主権者国民は、菅直人氏の行動の是非ではなく、ストレステストの是非を考えなければならない。
 
 ストレステストとは、巨大地震や巨大津波に対して原発がどこまで耐えられるかを評価する手法である。3月11日に発生した地震と津波により、福島原発は重大事故を引き起こし、日本を滅亡させかねない影響を発生させた。このようなことを再度引き起こすことは絶対に許されない。
 
 そうであるなら、日本全国に54基あるすべての原発原子炉について、このストレステストを実施して、その安全性を確認することは、当然の作業である。
 
 多数の原発原子炉が老朽化している。この老朽化の現状を踏まえてストレステストを実施しなければ、いざ、巨大地震、巨大津波が発生したときに、今回同様の巨大事故を引き起こす可能性を否定できないのだ。
 
 巨大地震も巨大津波もけっして「異常な現象」ではない。日本の歴史では、定期的に繰り返されてきた「通常の現象」である。
 
 3.11原発事故で、日本は滅亡の危機に直面したのである。このような事故は、金輪際、決して引き起こしてはならないのである。
 
 であるなら、全国のすべての原子炉について、ストレステストを実施することは当然の責務である。このような当たり前のことについて、強烈な反発が生じるほど、日本における原子力利権複合体のエゴイズムは強烈なのだ。
 
 ストレステストを再稼働の条件に設定すると、来年春にかけて、全国の原発が停止される状況が発生し得る。その時には電力需給がいまよりはひっ迫するだろう。再稼働推進勢力は、電力需給がひっ迫する場合の生産活動への影響が大きいと脅しをかける。
 
 しかし、日本の滅亡がかかる問題である。ある程度の犠牲を確保してでも安全性確保を優先すべきだとの主張も当然に生まれる。
 
 大口電力契約には、電力不足の場合に電力供給を制約するとの特約が付いているはずだから、この特約を活用すればよいのだ。病院や基幹交通網など、生命や国民生活に重大な影響を生じる部門を除外して電力使用量を削減する工夫は十分に可能なはずである。

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最終的には日本国民が、
①日本滅亡の危険を冒してでも原発再稼働を進めるべきと考える
か、
②最悪リスクを回避するためには、ある程度の我慢を容認すると考える
かに依存する問題だ。
 
 結論を得るのが難しいようなら、最後は国民投票を行えばよい。
 私は、大多数の賢明な国民が安全策を選択すると確信する。

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