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2011年7月20日 (水)

日本の財務省が演出するIMF対日消費税増税要請

菅直人氏は首相の椅子にしがみつくだけで、肝心の政策を前に進めていいない。

 3月11日の震災発生から4ヵ月以上の時間が経過したが、被災地のインフラを復旧し、被災者の生活を再建するための、総合的な経済政策がいまだに策定もされていない。
 
 菅政権が実行したのは、4兆円の第一次補正予算、2兆円の第二次補正予算の編成だけである。
 
 第一次補正予算の1.5兆円は、本予算の支出を取りやめて、補正予算に振り替えたものである。2.5兆円については、財源を増税で賄うことも検討されている。
 
 第二次補正予算の規模は、2010年度決算剰余金の2兆円が充当された。被災者のために必要な財政支出を補正予算に計上したのではなく、剰余金の範囲内で、被災地への支出を決定したものである。
 
 ここに貫かれているのは、財務当局の財政再建原理主義の考え方である。震災復興のための総合的な経済政策がまったく立案もされないのも、財務省が強烈なブレーキをかけているからである。財務省は国民の生活ではなく、自分たちの利権だけを考えている。
 
 財務省は震災の不幸に乗じて、大増税を画策している。この増税が国民の生活のためであるなら、国民も理解を示すだろう。ところが、事実は異なる。財務省は、自分たちの官僚利権を守るために大規模増税を求めているのである。

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増税を検討するに際しては、必ず必要なことがらが二つある。ひとつは、増税を実施する際の前提条件である、官僚利権が根絶されているのかどうかだ。鳩山由紀夫前首相が2013年までは消費税増税を封印したのは、消費税増税の前提として、官僚利権の根絶を位置付けたからである。
 
 福島原発放射能事故により原発利権がクローズアップされたが、原発利権に関連する天下りがどれだけ存在するのか。週刊誌「アエラ」が特集を組んだが、100人以上もの役人が、原発利権村に天下りしている現実が明らかにされた。
 
 財務省が本当に国民の生活を考えて消費税増税論議を前に進めたいと考えるなら、まず、率先して財務省天下り利権を自ら切る行動を示すべきである。
 
 財務省天下り御三家と呼ばれているのは、日本政策投資銀行、国際協力銀行、日本政策金融公庫である。この三つの機関への天下りは今も、完全に温存されている。
 
 国際極力銀行は政府機関の整理統合で消滅したはずなのに、財務省は重要天下り機関としてその復活再生に取り組んできた。財務省の天下り先確保に積極協力したのは仙谷由人氏である。
 
 もともと財務省の天下り東西両横綱は、日本銀行と東京証券取引所であった。民主党の努力により、財務省から日銀への天下りは遮断されたが、財務省は日銀への天下り再拡大を画策している。東京証券取引所への天下りもいったんは遮断されたものが、なし崩し的に再開された。
 
 損保協会への天下りも国会でしばしば問題として取り上げられている。また、民間金融機関傘下の総合研究所、シンクタンクへの天下り増加も顕著である。シンクタンクに天下りして、増税論議を推進しようとの深謀遠慮も明白だ。
 
 さらに、旧政府公社である民間企業への天下りも握って離さない。JT(日本タバコ)重要ポストを財務省は離さない。NTTなども同様である。
 
 また、横浜銀行、西日本シティ銀行など、財務省の植民地と化して、トップが常に財務省からの天下り官僚に独占されている。

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公的機関への天下りは広範に温存されているが、こうした公的機関に膨大な政府予算が注ぎこまれている。これらの政府予算は天下りを温存するための政府支出であり、天下りを根絶することにより、政府支出を大幅に削減できるのである。
 
 これまで事業仕分けなどが行われ、公的機関への無駄な支出を切るジェスチャーだけが示されたが、逆に「一位でなければだめなんですか、二位ではだめですか」などのフレーズにより、財務省は公的機関を温存するパフォーマンスも演じたのである。
 
 平成の迂回献金王と呼ばれる与謝野馨氏は、ポストを求めて自民党を離党して菅政権に潜り込んだが、与謝野氏などは、天下りを排除する前に消費税増税を実施せよと主張している。まさに、官僚利権の守護神である。
 
 もうひとつの必須検討事項が経済情勢である。増税は経済に下方圧力を与える。1997年度に橋本政権は消費税率2%引き上げを強行した。私は、経済金融情勢の分析を踏まえて、性急な大増税政策を強く批判した。
 
 残念ながら私の警告は現実化した。日本経済は崩落、株価は急落し、97-98年の金融危機が発生したのである。増税政策は経済情勢を慎重に見極めて考察することが不可欠である。

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IMFが対日審査を終えて、対日代表団長が「2012年に消費税を7%に引き上げるべき」との提言を示した。対日代表団長のマムード・プラダン氏は、「消費税をいま引き上げることは勧めないが、2012年は景気回復の見込みが高いから増税を始める好機」だと述べた。
 
 これは、財務省の意見である。IMFにはジャパンデスクと呼ばれる、日本の財政事情を分析するセクションがあるが、このセクションの担当者は、財務省から派遣された出向職員である。つまり、財務省は財務省の政策方針をIMFから発信させるために、職員を派遣しているのである。
 
 日本では、IMFが増税を提言すると、国際機関が日本の増税を提案したと勘違いしてしまう。ところが、現実は、財務省がIMFを利用して日本の増税政策を提言させているのだ。
 
 景気回復初期に超緊縮財政を実行することの弊害は、過去の経験から明らかである。1997年度の大増税がその一つであり、2001年度の小泉政権の超緊縮財政がその一つである。いずれのケースでも、この超緊縮財政政策が、日本に重大な金融危機を引き起こす原因になった。危うく日本は、金融恐慌に陥るところだった。

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これから、政策論議は第三次補正予算の編成と、その財源調達方法に移行する。民主党の次期代表選では、経済復興政策の内容と財源論が大きな争点になる。
 
 私は政府の外貨準備を売却して、その資金を復興政策の財源に充当するべきだと主張してきた。
 
『月刊日本』2011年7月号には、巻頭に
「国難に対処し得る本格政権樹立を」
と題する論文を寄稿した。
 

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 このなかに「外貨準備を売却し50兆円震災復興対策を策定せよ」との小見出しの下に、具体的内容を記述した。ぜひご高覧賜りたい。
 
 小論のなかでも触れたが、現在の経済状況のなかでの大増税政策は自爆テロ行為である。くれぐれも歴史を繰り返す愚を演じるべきでない。
 
 中期的に日本の財政状況を改善する対応は不可欠である。この論議を前にするためには、官僚部門が自らの利権を切ることが不可欠である。官僚機構が自らの利権については、不可侵の権益として手を付けさせないようにすることが、増税論議の最大の障害になっている。官が利権を切らない限り、増税論議は前に進まない。官と菅はこの点を肝に銘ずるべきだ。


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