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2011年5月22日 (日)

SPEEDI情報隠蔽、そして降雨が重大な意味を持った

東電福島第一原発の放射能放出事故は国際原子力評価尺度で、人類史上最悪レベルのレベル7に区分された。大量の放射性物質が原発から外部放出された。
 
 大量の放射性物質が外部放出されたのは、原発におけるベント実施と三度の爆発によるところが大きいと考えられる。
 
 各原子炉におけるベント実施と三度の爆発のタイミングは以下の通りだ。
 
3月12日14時30分 1号機でベント実施
     14時29分 1号機付近で1015μSv/
     15時36分 1号機が水素爆発
     15時40分 1号機付近で860μSv/
3月13日 9時20分 3号機でベント実施
3月14日11時1分  3号機が水素爆発
     21時37分 正門付近の放射線量が3130μSv/
3月15日 0時    2号機でベント実施
      6時10分 2号機で爆発音
      6時14分 4号機で爆発音
      8時31分 正門付近の放射線量が8217μSv/
 
 これらのベント実施および原子炉爆発により、大量の放射性物質が原発から外部に放出されたと考えられる。
 
 原発からの放射性物質放出による被曝被害を回避するためには、これらの措置や事故が発生した時点での風向、風力、天候を正確に把握して、被曝回避措置をとることが極めて重要であったと考えられる。
 
 原子力の専門家は、この重要性を事前に完全に把握しており、そのための情報開示システムが用意されてきた。これが「SPEEDI」である。
 
「SPEEDI」は「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」の略称で、緊急事態が発生した際に、気象観測情報、アメダス情報と放出核種、放出量等の情報を入れることにより、六時間先までの希ガスによる外部被曝線量や甲状腺等価線量などをシミュレーションすることができるものである。
 
 この情報が直ちに開示されていれば、近隣住民の被曝回避のための的確な行動が誘導されたことは間違いない。
 
 この情報を隠蔽した政府の責任は果てしなく大きい。
 
 放射性物質の飛散は、第一に原発所在地の風向に依存する。
 現在、文部科学省サイトで公開されている
緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)等による計算結果」
には、3月12日から3月15日にかけてのSPEEDIによる計算結果が掲載されている。
 
 これを見ると、
3月12日 原発の北北東地域
3月13日 海上地域
3月14日 原発の南西地域
3月15日 原発の北西地域
への飛散が多量であったことがわかる。
 
 この放射能汚染地域、および時間帯を把握していれば、被曝を回避する的確な行動が取られたであろうことは間違いない。
 
 原発の放出した放射性物質の量は、これらのベント実施、および原子炉爆発時が著しく多かったと考えられる。

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その後の各地点での放射線量の数値において、一貫して高い数値を記録し続けたのが、原発の北西地域である。本ブログでもこの点を再三にわたり指摘してきた。
 
 結局、多大な時間が経過したのち、20キロ圏の外側にある飯館村などの北西地域が計画避難地域に指定され、避難措置が取られることになった。
 
 これらの原発の北西地域の放射線量が高水準で推移した原因が判明した。これは私自身の解釈によるものであるので、最終的な判断は専門家による分析を待たねばならないが、恐らくこの原因特定は間違っていなのではないかと思われる。
 
 福島原発周辺では、大地震および大津波発生後以降、しばらくの間、降雨がなかった。各種気候情報をみると、震災発生後、初めて降雨があったのが、3月15日の夕刻から夜にかけてであった。
 
 この時間帯に放射性物質が飛散していた地域が、原発の北西部にあたる。
 
 この時間帯に、原発北西部で降雨があった。この結果、放射性物質が雨とともに落下し、原発北西部の土壌に付着した可能性が高い。
 
 降雨のあとは、この原発北西部の土壌にかなり高濃度の放射性物質が付着した可能性が高く、この点についての厳重な警戒が求められたはずである。
 
 原発2号機の爆発では、原子炉圧力抑制室が破損した疑いが持たれている。原子炉圧力抑制室の破損により、格納容器内の高濃度放射性物質が外部放出された可能性が高く、現に3月15日午前に、原発正門付近で8000μSV/hを超える高濃度放射線が観測されている。
 
 3月15日には2号機だけでなく4号機でも爆発があったと考えられている。この事故により放射性物質が大量に外部放出され、これが、南東の風に乗って原発北西地域に飛散した。
 
 このタイミングで原発北西地域に降雨があり、大量の放射性物質が土壌に付着したと考えられるのだ。
 
 極めて単純で初歩的な分析であるが、事実に符合している可能性が高い。
 
 強調したいことは、土壌汚染とその後の各地域放射線量に決定的に重要な影響を与えるのが「降雨」にあるという、単純ではあるが極めて重要な事実である。
 
 これらの重要情報が政府からまったく公開されなかった。これらの情報が適正に完全開示されていれば、重大な放射能被曝を相当程度回避できたと考えられるのである。
 
 避難を実施するにしても、避難する方向と地域が大きく変更されていたはずだ。とりわけ、浪江町や飯館村の住民の蒙った被害は甚大であると思われる。
 
 原発事故による放射能影響予測、風向き、そして降雨情報が極めて重要であり、この最重要情報を隠蔽した政府の責任が問われねばならない。

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