浜岡原発即時停止の次は福島の子どもリスク排除だ
5月3日に
「原子力利権複合体を抑え脱原発大方針を定めよ」
と題する記事を書いた。
このなかで、
「中部電力浜岡原子力発電所は、巨大地震の予想震源域の真上に立地し、しかも、巨大津波への対応が十分ではない。直ちに運転を停止して、安全対策を講じるべきだとする主張に理があることは明白だ。」
と指摘した。
また、
「日本の発電量に占める原子力発電の比率が3割にも達している現状を踏まえれば、脱原発など非現実的であるとの主張がすぐに聞こえてくる。
しかし、この事実には裏側があり、日本の発電事情を考察する場合に、極めてミスリーディングである。」
と指摘し、脱原発の方向に、日本のエネルギー政策を大転換することは決して不可能でないことを記述した。
菅直人氏が浜岡原発の原子炉を、確実な安全体制を構築できるまで停止する指示を示したことは適正である。ただし、菅直人氏はただひたすら、総理の椅子にしがみつくことだけを優先して行動している可能性が高く、今回の行動もその文脈上で理解するべきものであると思われる。菅政権倒閣運動の本格化を見据えて変化球を投げたと考えられる。こうした私益優先の人物は即刻首相を辞任すべきであることはいまも変わりはない。
浜岡原発については、直ちに原発の稼働を停止して、必要電力が供給できるかどうかについての懸念が表明されているが、そのリスクは大きなものではない。
中部電力の発電能力に占める原子力の比率は14%に過ぎない。現実の発電量に占める原子力の比率が高いのは、限界的な採算で、原子力が有利であるため、電力会社が原子力を可能な限りフル稼働させているためである。
原子力発電所が大きな事故を発生させれば、国内に原爆を投下されたのと同等の被害が発生する。日本そのものの存続を脅かすばかりでなく、地球的な規模での危機を招く恐れさえある。
歴史の途上に発生してきた現代人に、地球の未来を消滅させる自由権限はない。「子や孫の世代のため」にも、巨大リスクは排除しなければならないのだ。
私に寄せられた情報によると、福島原発の放射能事故の主因は津波による損傷ではなく、地震による損傷であるとの疑いが生じているとのことである。
福島原発地点の地震による揺れは震度5ないし震度6であり、もし、この程度の揺れの地震で電源喪失の事態が生じたということになれば、日本全国の原発の安全性が根本から問われることになる。
115年前の津波規模の津波に備えていなかったことは当然に重大だが、日本で頻発する震度7規模の地震に原発が耐える力を持っていないということであれば、すべての原発の稼働を即時停止しなければ、安全は確保できないということになる。
もうひとつ、直ちに実行しなければならないことは、福島の子供たちに対する被曝上限値の引き下げである。
チェルノブイリの事例を見ても、被曝による甲状腺がんや白血病発症には、長い時間がかかる。10年程度の時間を経て見なければ、放射能の影響を判断することは不可能である。
ICRP(国際放射線防護委員会)が提示する1~20ミリシーベルトという数値の意味を、日本政府は曲解すべきでない。
ICRP勧告に示される1~20mSv/yは、一般公衆に被曝上限を1mSvとし、原子力関連事業の専門従事者に例外的に20mSvの被曝を許容するものである。小学校の児童に20mSvの被曝を強要するのは、極めて危険な行為である。殺人政権と呼ばれて反論はできない。
菅政権が子どもの被曝量上限値を引き下げないのは、ただ一点、費用がかかるからである。この政治姿勢こそが糾弾されねばならないのだ。安全策を採って被害を蒙る人はいない。危険策を採って、あとで多数のがん発症を招いたのでは手遅れなのである。
"Be on the Safe Side"
という言葉がある。原子力災害への対応こそ、この「安全策」が不可欠なのだ。安全が確認されれば、避難体制を緩和すればよい。
菅政権では、初動から、危険に対する対処の基本姿勢が間違っている。「安全だ」を繰り返し叫びながら、避難エリアを五月雨式に拡大してきた。避難が遅れたことによる弊害が必ず表面化することになる。
まず、万全の避難体制を敷いて、状況の変化に応じて、避難体制を漸次緩和してゆくのが正しい対応方法である。
浜岡原発の即時停止を決めたのなら、続いて、直ちに福島県の子どもたちの命と健康を守る対応を取らねばならない。
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