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2011年5月23日 (月)

原発村番頭与謝野氏が理論的でない理論的主張示ス

日本における原子力政策を推進したのは米国である。

 その経緯については、4月4日付記事
原発政策を誘導した米国核政策必見ドキュメント」
に記述した。
 
 ビキニ環礁で日本の延縄マグロ漁船「第五福竜丸」が被曝した。日本国内では反核運動が活発化した。
 
 米国は米ソ冷戦下で核兵器開発競争が世界的に激化するなかで、日本を米国の支配下に置く戦略を採用した。その推進者はアイゼンハワー大統領である。
 
①日本の原子力利用を米国の監視下に置くこと
②日本における反核・反米運動を抑圧すること
③日本の原子力利用を推進して米国企業のビジネスを拡大すること
の三つが目的に置かれただろう。
 
 日本の核武装の可能性については、米国は表面上、これを否定してきているものの、裏の裏では日本にその能力を備えさせることを暗黙のうちに想定してきたものと考えられる。
 
 日本側も表面で否定しながら、核能力の保有に対して積極的な思考が裏の裏の世界で確実に存在し続けてきたことは間違いない。
 
 一歩誤れば、暴発の危険を伴う、まさに微妙な緊張のうえに、日本の原子力政策を推進されてきた。
 
 米国が支配する日本の原子力利用推進プロジェクトの日本サイドエージェントが正力松太郎氏と中曽根康弘氏である。
 
 この中曽根康弘氏にぴったりと寄り添ってきたのが与謝野馨氏である。
 
 与謝野氏は大学卒業後、中曽根康弘氏の紹介で、「日本原子力発電」に入社する。その後、中曽根氏の秘書を経て、国会議員に転身したのである。頭のてっぺんから足の指先まで、とっぷりと日本原子力村に浸かり切った人物なのである。
 
 そして最近では、「民主党が日本経済を破壊する」と絶叫しておきながら、大臣ポストをぶら下げられると、臆面もなく民主党政権にすり寄る、「平成の変節王」でもある。
 
 2009年8月の総選挙では小選挙区選挙で落選した。しかし、自民党の比例代表候補名簿に登載してもらったおかげで、救済され国会議員の座を辛うじて維持した。
 
 その恩義のある自民党を離党して、議員辞職もせずに民主党政権入りした、老害議員の代表でもある。

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この与謝野氏が暴言を吐き続けている。
 
 今回の事故後、原発を推進し続けてきたことに対して、
 
「原発を推進してきたことは決して間違いでない」
 
と述べ、原発を推進し続けてきたことについて謝罪する意思も
 
「ない」
 
と断言した。
 
 日本の原発政策は、米国がすべての図式を描き、官・業・政・電そして学の巨大な利権構造、癒着構造のなかで推進されてきた。その利権構造に身も心も浸かりきっているのが与謝野馨氏であり、その発言からは、激しい利権臭が立ち込めている。
 
 内閣不信任案を可決する前に、与謝野氏の問責決議を可決することが求められる情勢だ。
 
 与謝野氏は、原発事故について、
 
「神様の仕業としか説明できない」
 
と発言し、同原発の津波対策に関しても
 
「人間としては最高の知恵を働かせたと思っている」
 
と述べている。
 
 今回の事故で何よりも問題とされていることは、いまからわずか115年前に今回と同規模の津波があり、また869年の貞観地震でも同規模の地震があったことが事前に知られていたことだ。さらに、独立行政法人産業技術総合研究所が2009年にも、これらの地震の存在を根拠に津波対策の強化が必要であるとの警告を発したにもかかわらず、東電はこの警告を無視して今回の事故を引き起こしたのだ。
 
 これらの経緯を知った上で「最高の知恵」などと述べているのなら、与謝野馨氏は政治家というよりも人間として信用のおける人物でないということになる。
 
 また、電源喪失の直接の原因は地震であったとの見方も強まっているが、発電所の地震震度は「異常に巨大な天災地変」とは程遠い。震度6弱か5強に過ぎなかった。
 
 原子力損害賠償法は原子力事故に伴う損害賠償責任を事業者に課している。但し書きに適用除外の可能性が示されていることが強調されるが、それは、「異常に巨大な天災地変」の場合に限られる。今回の災害は巨大ではあるが、「異常に巨大な天災地変」ではなかったと考えるのが常識的判断である。

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また、与謝野馨氏は、金融機関による東電への債権放棄について、

電力事業のような公益事業に必要なお金を貸すことに、金融機関の貸手責任が発生することは、理論上あり得ない
 
と述べたが、まったく理論的でない主張を「理論的にあり得ない」と述べたのは、笑いを取りに行ったのだろうか。
 
 与謝野氏は公益事業にリスクは存在しないとでも考えているのか。
 
 東電が原子力発電のような途方もない高いリスクを伴う事業には、いかなる圧力に抗してでも参入しないといった、極めて健全な保守性を保持する公益事業体であったのなら、与謝野氏の主張も成り立つかもしれない。
 
 しかし、電力会社が原子力発電に参入する以上、巨大なリスクを切り離すことは絶対にできない。現世のなかで最高のリスクのあるビジネスが原子力ビジネスである。プラントを作るだけであればリスクはまだ限定されるが、核分裂そのものを事業とする以上、ほぼ無限大のリスクを背負うことは紛れもない現実だ。
 
 したがって、公益事業といえども、原子力事業を行う公益事業実施企業に対する与信には、常に最大級のリスクが伴うのは当然である。
 
 これが普通の世のなかにおける理論的思考、あるいは論理的思考である。
 
 与謝野氏は、2008年秋のリーマン・ショックの引き金となったサブプライムローンの例を挙げて
 
「貸手責任が発生するのは相手が返済能力がないと分かっているにもかかわらず、そこに貸し込んだ場合だ」
 
と述べたが、このような人物が経済財政政策担当相を務めているのだから菅政権の行く末は暗闇でしかあり得ない。
 
 金融機関の貸し手責任は、いかなる理由であれ、借り手企業が経営破たんすれば発生し得るものである。
 
 返済能力が非常に高いと思われた急成長を遂げている焼肉チェーン店が、何らかの過失により重大な食中毒事故を引き起こして倒産してしまったとしよう。このとき、金融機関は、この企業には返済能力がないと思ったのに貸し込んだわけではないが、法的整理手続きのなかで、応分の貸し手責任を問われることになるのである。

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与謝野馨氏が5月22日のNHK日曜討論で、
 
金融機関の善意や良識に頼って、賠償スキームを作るというのは、甘いのではないか」
 
と述べたが、この点だけは正しい。
 
 銀行経営者は株主の意向を反映して経営にあたる責務を負っている。正当な根拠がなければ利益の社外流出をもたらす行動を取ることは難しい。
 
 何よりも重要なことは、問題を、自由主義経済、資本主義経済の根本ルールに則って解決することである。利権や癒着で問題処理を歪めてはならないのだ。なぜなら、その癒着の分だけ、事業者の責任が軽くなり、何の罪もない一般国民が負担を押し付けられることになるからだ。
 
 原子力損害賠償法第三条にある、「異常に巨大な天災地変」であるのかどうかの判断がまず必要になる。これに該当しないということになれば、東電が損害賠償責任を負うことになる。損害賠償規模が東電の支払い能力を超えれば、東電は法的整理にかけなければならない。
 
「善意や良識」ではなく、法の定めに従って政府が中立公正な処理を行うべきなのだ。
 
 電力の安定供給の重要性が指摘されるが、法的整理と安定供給は十分に両立し得る。
 
 適正な責任を問わないことによる弊害=モラル・ハザードを回避するための基本的な問題処理の考え方が


too big to close

であり、従来の考え方である
 

too big to fail

を否定するのが、現代の正統派理論である。
 
 菅政権からは対立する意見が提示されているが、実際の行動は、米官業政電+学の利権複合体の癒着構造、巨大利権構造を維持しようとするものになっている。
 
 菅政権がこのまま癒着の道を突き進むのか、国民は厳しく監視しなければならない。

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