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2011年5月 1日 (日)

一石七鳥の米国債売却による経済復興政策実現

連休中も国会が開催され、補正予算の審議が行われている。しかし、菅政権が提出した第一次補正予算は醜悪なものである。
 
 4兆円規模の補正予算であるが、その財源の1.5兆円は本予算の支出取りやめである。このなかに、高速道路料金無料化措置、子ども手当てなど、2009年8月に実現した政権交代の象徴と言える施策である。
 
 ガソリン価格に含まれる暫定税率は廃止されたが、財源難からガソリン税が復活された。しかし、その際に、原油価格高騰が生じた場合には課税免除を定め、国民生活への配慮が組み込まれた。
 
 原発事故発生後、原油価格は上昇傾向を強め、免税措置を発動する水準を超えた。ところが、菅政権はこのトリガー条項発動も取りやめてしまった。
 
 菅政権は2010年6月に正統性のないクーデターを挙行して樹立された政権である。民主党内の正統派=小沢-鳩山ラインから、民主党内の悪徳派=菅-岡田ラインが、政治権力を奪取したものである。
 
 菅直人氏は、補正予算編成に際して、この国難への取り組みを、党内政局に利用したのである。小沢-鳩山ラインが主権者国民と約束した重要施策を、この補正予算編成を通じて反故にするという、なんとも姑息な対応を取っているのだ。
 
 補正予算の財源のうち、残りの2.5兆円は、国民年金の国庫負担金を2分の1に引き上げるために確保した埋蔵金を流用することになる。現段階では、本予算で穴のあく2.5兆円に対する手当てが済んでいない。この点について、菅-岡田ラインは何らかの増税で賄うことを提示している。
 
 さらに、この財源不足を2012年度に消費税率の大幅引き上げで賄う方針が示されている。未曾有の天災と人災で日本経済が存亡危急の局面に立たされているときに、大増税を計画すること自体、この政権が国民生活を重視する視点を持ち合わせていないことを物語っている。
 
 景気は音を立てて崩れつつある。失業、倒産、経済苦自死が日本列島を覆い尽くすことは間違いない。一刻も早く、本格的な経済インフラ復旧、経済支援の総合経済対策が必要であることは火を見るよりも明らかである。

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私は、政府が外貨準備で保有する米国国債を売却し、50兆円の資金を調達してこれを経済復興政策の財源とすることを提案している。50兆円の経済対策は3年計画での支出政策とするべきである。
 
 今回の災害に伴うインフラの喪失、経済活動の破壊を修復するには、この程度の思い切った対応策が必要である。
 
 政府は政府短期証券を日銀に直接引き受けてもらい、その発行代わり金で米国国債等の外貨準備を保有している。円高が進行する局面などで、円高進行を抑制するために外為市場で日本円を売り、米ドルを購入する。この累積残高が外貨準備である。
 
 しかし、外貨準備には外為リスクが伴う。保有しているドル資産はドルが下落すれば為替損失を生む。日本の財政事情が極めて悪化している局面で、巨額の資金を為替リスクに晒したままにすることは、適切な財政政策運営の姿勢ではない。
 
 米国でも政府が為替介入を実施することがあるが、議会が厳しい監視をしている。為替介入によって損失を計上すれば、政府はその責任を厳しく追求される。米国では、「儲かる介入は良い介入だが、損失を生む介入は悪い介入」だとされている。
 
 日本では、2002年10月から2004年3月にかけての1年半の間に外貨準備が47兆円も増大した。小泉-竹中ラインが、米国に不正な利益供与したものと理解される。この結果、日本の外貨準備が1兆ドルを超えることになった。
 
 1兆ドルものドル資金を裸で保有すれば、巨大な為替リスクが生じるのは当然である。現実に、その後の円高で30兆円もの為替損失が生まれているのだ。責任者が私財を提供して国家の損失の穴埋めを求められてもおかしくない失態である。
 
 この現状を踏まえるなら、政府が米国国債で保有する資金を日本円に換金し、この資金で国内の実物インフラ資産を保有する方が、はるかに健全である。外為特会での実物インフラ資産保有ができないなら、震災復興特別会計を設置して、この震災復興特会が実物インフラ資産を保有すればよい。
 
 財源としては、これまでの外貨準備保有と同様に、日銀が政府短期証券を保有して資金を調達すればよい。実物インフラ資産は、直ちに日本国民に便益を提供してゆくもので、これが国民生活を支援するものであるが、時間の経過に従い、その価値が減価してゆく。

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建設国債の60年償還ルールは建設国債を財源にして保有される実物資産の耐用年数が60年であるとの前提に基づく措置である。震災復興特会が保有する実物インフラ資産も時間の経過とともに減価してゆくものであるので、建設国債同様に毎年1.6%を減債基金に定率繰り入れを実施すればよい。
 
 経済効果だけをとらえれば、これは建設国債を日銀引受で発行することと同じである。財政法5条は、国債の日銀引受を禁止しているが、名目上、国債の日銀引受とは区別しておけばよい。また、外貨準備残高は有限の資金であるため、国債の日銀引受が際限なく拡大することも防止できる。
 
 米国国債売却が円高・ドル安を生むとの懸念が生じるが、実質的な国債日銀引受は、極めて強力な円安誘導政策である。同時に、インフレ誘発政策でもある。現下の日本経済が強度のデフレに苦しんでいることを踏まえれば、短期的かつ単発の経済政策としては、適正な政策である。
 
 米国国債売却による経済復興政策実現には、
①国債発行残高を増やさない
②大規模なインフラ復旧が可能になる
③大規模な景気対策を兼ねる
④強力なデフレ対策になる
⑤急激な円高・ドル安を回避できる
⑥性急に大増税に突進する必要がなくなる
⑦過大な外貨準備保有に伴う巨大な為替リスクを縮小できる
などの利点がある。
 
 菅政権は、財務省の小役人にすべてを取り仕切られて、ちまちまちまちま、国民生活にとって極めて意義深い「子ども手当」、「高速道路料金割引」、「ガソリン暫定税率廃止」などの重要施策をずたずたに切り裂いている。
 
 他方で、菅政権は福島原発近隣の子どもたちを、残酷にも放射能地獄の下に放置するという、悪魔のような政策を実行し、被災者の避難所での極めて劣悪な生活環境の改善も遅々として進んでいない。高濃度放射能に汚染された地域に住む住民に対する避難措置も著しく遅れ、取り返しのつかない禍根を残している。
 
 いずれの政策も、菅直人政権が財政支出を1円でも切り詰めるための政策である。国民の命と健康を犠牲にして、財務省の利権最優先の近視眼的財政収支均衡第一主義に完全追従しているだけなのである。こんな政権が居座れば、国民はすべて滅ぼされてしまうだろう。一刻も早い菅直人政権の退場が求められている。

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