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2011年4月17日 (日)

財務省主導の震災復興政策が日本経済を破壊する

戦後最大の自然災害と重大な放射能事故に見舞われた日本。被災地の困難には想像を絶するものがある。この存亡危急の事態に、政府は全力を注いで対応する必要がある。
 
 菅政権に国民が信頼を寄せることができ、菅政権に能力があるなら、この危機に際して、国民は一丸となって復旧、復興に向かって全力を注ぐべきであろう。
 
 しかし、残念ながら、国民は菅政権に信頼を寄せることができない。同時に菅政権の運営は正道を歩んでいない。であるなら、一刻も早く政権を差し替え、政策が有効に機能する体制を整えるべきである。急がば回れである。不安定な政権が居座っても、事態の混迷が長引くだけである。
 
 補正予算編成など、具体的な政策対応が焦眉の急になっているが、残念ながら正しい政策が実行される見通しがまったく見えてこない。
 
 予算編成上の三つの重大な問題を指摘しなければならない。
 
 第一は、2011年度第一次補正予算の経済浮揚効果がゼロであることだ。菅政権は4兆円規模の第一次補正予算案を提示しているが、これでは日本経済の急降下を止めることはできない。
 
 2011年度当初予算が史上最大のデフレ予算である事実を正確に認識しなければならない。財政政策が景気抑制であるか景気刺激であるかは、端的に言えば、財政赤字を増額させたか減額させたかによって測られる。財政赤字を拡大させる政策が景気拡大策、財政赤字を減少させる政策が景気抑制策になる。
 
 2009年度第2次補正予算のうち、4兆円分は実質的に2010年度支出になっており、この点を踏まえて計算すると、2011年度当初予算は、日本のGDPを8.9兆円も圧縮してしまう、史上最大のデフレ予算になっている。ここに大震災が発生したため、2011年度の日本経済悪化は極めて深刻なものになる。景気の悪化は雇用の悪化を意味し、極めて深刻な状況が到来することは確実である。
 
 詳細を知りたい方は、『金利・為替・株価特報』ご高読賜りたい
 
 菅政権が提示している2011年度第1次補正予算では、支出のうち1.5兆円が当初予算の支出をキャンセルしての振り替えであり、また、財源の2.5兆円が国民年金国庫負担増額分に充てる埋蔵金の流用である。この2.5兆円は第2次補正予算において復興税で賄うことが検討されている。
 
 つまり、4兆円補正予算の景気浮揚効果はゼロなのである。これでは、急激な日本経済悪化を食い止めることはできない。

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第二の問題は、上述したように菅政権は2011年度当初予算支出の一部を取りやめる方針を示しているが、その理由が党内政局に絡む菅直人氏自身の保身を図るためであることだ。具体的には子ども手当増額や高速道路料金割引が廃止される。
 
 民主党内での小沢-鳩山ラインの政策を消滅させることが狙いとされており、まさに火事場泥棒的な行動である。これらの施策は2009年8月総選挙での民意を反映するものであり、菅直人氏がこれを切り込む正当性は存在しない。
 
 菅直人氏はすでに国民から不信任の審判を下されている身であり、その人物が民意を反映した政策を取りやめる権限を持つわけがない。庶民にささやかな恩恵を与えてきた高速道路料金割引まで廃止するとは、庶民の心をまったく理解しない冷血の行動である。
 
 第三の問題は、多くの国民が被災者を支援しようとして拠出した義捐金を政府が横領しようとしていることだ。国民の信任を受けていない菅政権に資金を提供した国民は皆無であるはずだ。これを政府が勝手に横領するなら、恐らく多くの義捐金拠出者が業務上横領罪で菅政権を刑事告発することになると思われる。
 
 政府が政府の責任で適切な財政政策を発動するのは当然のことである。多くの国民は、それとは別枠で、被災者を支援するために、義捐金を拠出したのであって、これを政府が横領することは許されない。警察当局は政府による民間資金横領事件として厳しく摘発するべきである。
 
 日本の財政収支が悪化したのは事実である。中長期の課題として財政収支の改善を実現しなければならないことにはコンセンサスがあると言ってよいと思う。
 
 しかし、財政再建の手順を間違ってはならない。第一は経済成長による税収の確保である。第二は、政府支出の無駄排除である。この二つをやり抜いて、なお収支を改善しなければならないときに、負担の増加を検討するのである。
 
 原子力事故を踏まえて、まず、経産省から電力会社への天下りを全廃すべきだ。また、多数の原子力関連独立行政法人・公益法人を一掃すべきだ。こうした政府支出の無駄が巨大な山脈として手付かずで残されている。ここに手を入れずに国民負担増大など言語道断である。
 
 また、景気が急激に悪化する局面での増税は経済の自殺行為である。
 
 菅政権の経済政策が完全に財務省に仕切られているから、このような案しか表出しないのだ。
 
「復興構想会議」が「復興」を隠れ蓑にした「増税構想会議」であることも明らかだ。
 
 本当に被災者の生活を考え、被災地の復旧・復興を考えるなら、直ちに10兆円規模の建設国債発行を財源とする復旧・復興補正予算を編成して、迅速に執行するべきなのだ。財源は10年満期の建設国債で賄えばよい。
 
 償還までの10年間に財源を検討すればよいのだ。経済を支えなければいけないときに増税を前面に出せば、景気浮揚は絶対に実現しない。10兆円の建設国債を増発しても、長期金利が大幅上昇する懸念は存在しない。この国債が償還期を迎えるまでに償還財源を検討すればよいではないか。
 
 財務省が政策を仕切って、何度大失敗を繰り返したら気が済むのか。バブル崩壊後の日本経済長期低迷の主犯が財務省の近視眼的財政再建原理主義にあったという、厳然たる真実から目をそらすべきでない。
 
 残念ながら、菅直人政権は政策運営を完全に財務省に支配されている。この状況が続く限り、日本経済の明日に明るい光は射してこない。回り道に見えるかも知れないが、菅政権を退場させることが、いまの日本にとっては最優先の課題である。

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