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2011年4月14日 (木)

原発重大事故責任を安全重視消費者に転嫁するな

3月21日に
「誰が、何を目的に、誰を救済しようとしているのか」
と題する記事を書いた。
 
 東京電力の福島原子力発電所が人類史上最悪の区分に入る放射能放出事故を引き起こした。その結果、大量の放射性物質が放出され、深刻な大気、土壌、水質、海洋汚染が発生し、市民生活および第一次産業に深刻で重大な影響が生じている。
 
 放射能で汚染された農林水産物を警戒する消費者の行動に対して、これを「風評被害」として攻撃する論調がマスゴミによって形成されている。
 
 農家が丹精込めて一生懸命に作った農作物。流通業者や消費者の一部には、福島や茨城で生産された農林水産物を積極的に販売し、また購入しようとする人々がいる。これらの人々は、放射能で汚染された地域の農林水産物を積極的に販売、購入することによって、被災地を一生懸命支援しようとしている。こうした支援活動が広がることが期待されている。
 
 こうした文脈での広報活動が積極的に展開されている。
 
 これは、間接的な形で、放射能に汚染された農林水産物に対する警戒姿勢を示す販売業者や消費者を攻撃する宣伝活動になっている。
 
 放射能に汚染された生産物に対して警戒姿勢を持つことは、被災地に対する敵対行動であるとの印象をすりこむことが狙いとされている。
 
 放射能に汚染された食物の摂取に対して警戒姿勢を持つことは、被災地の生産者に対する思いやりの心のない、非人間的な対応であるとのイメージが形成されることが目指されているのである。
 
 しかし、冷静に考えて、放射能に汚染された食物に対して警戒感を持つことが、それほど非人道的なことなのだろうか。
 
 被災地に居住していない消費者が被害を受けて深刻な打撃を受けている生産者に対して、いたわりの心を持ち、自分にできる支援を行おうとする姿勢は賞賛されるものである。厳しい局面に置かれた同胞を慈しむ心は尊いものである。

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しかし、この図式を悪用して、放射能に汚染された生産物に対する強い警戒姿勢を示す消費者は悪人であり、冷血人間であるとの印象操作を誘導することは適正でない。
 
 この図式の特徴は、農林水産業者を被害者として描き、この農林水産業者を苦しめている加害者=悪者は、放射能に汚染された生産物に対して警戒姿勢を示す消費者であると描く点にある。
 
 このドラマに登場するのは、農産物の生産者と消費者であり、消費者がさらに二つに分類される。消費者Aは生産者の苦しい実情に思いをはせて積極的に被災地生産物を摂取する心温かな善良なる市民である。他方、消費者Bは放射能汚染食物に対して厳しい警戒感を持つ市民であり、このドラマのなかでは、被災地の生産者に対する思いやりの心を欠いた冷血人間として描かれる。このドラマには、生産者、消費者A、消費者Bの三者しか登場しない。
 
 このドラマの図式が刷り込まれることにより、放射能汚染の食物に対する警戒感を示す行動は、非人道的で自己中心的な行動であると位置付けられることになる。やがて、放射能汚染食物を警戒する行動は、非人道的で自己中心的行動であるとして、自粛されることが誘導される。これが狙いであり期待されるわけだ。
 
 見落としてならないのは、この図式によって、本当の加害者の姿が陰に隠れることだ。
 
 真実は、放射能汚染食物を警戒する消費者Bが加害者ではないことにある。生産者同様に、消費者Bも被害者なのだ。
 
 真の加害者は、放射能放出事故を発生させた当事者である。
 
 今回の事故において、事故発生の当事者の責任が厳しく問われるべきであるのは、今回の事故が、もっとも根本的な安全対策を怠っていたことにより発生したことによる。
 
 本ブログで繰り返し指摘しているように、今回の原子力事故は津波によって生じたものである。その津波は、1896年に発生した明治三陸地震津波と類似した規模のものであったと推察される。
 
 いまから115年前に発生した津波は、大地震などの系譜で考えれば、最近の津波発生事例と呼ぶべきものである。日本における原子力発電所建設に際しての第一の安全対策は、地震ならびに津波対策である。津波対策は、最優先・最重点の対応項目である。
 
 ところが、福島第一原発では、明治三陸地震津波程度の津波への備えをしていなかった。そのために重大な事故が発生した。
 
 この事実を踏まえれば、今回の事故は100%人災であると言わざるを得ない。東電の清水社長は国の津波対応策の基準に従っていたと発言し、東電の責任を否定するとも受け取れる見解を示したが、これは通用しない。
 
 事業者として、万全の安全対策を取ることは当然のことであり、115年前の津波規模に対応していなかったことは、責任を問われるべき重大過失である。国に責任を転嫁することは適正でない。
 
 とはいえ、国も明治三陸地震津波規模の津波への対応をしないことを容認してきた意味で、当然に事業者と同等の責任を問われねばならない。
 
 重要なことは、一連の災厄の加害者が原発事故を発生させた当事者であり、農林漁業生産者と消費者は、いずれもが被害者であるということだ。
 
 消費者に放射能汚染地域の農林漁業生産物の摂取を強要することは、本来、原発事故発生者が負うべき責任を消費者に転嫁するものである。
 
 消費者が原発近隣の農林漁業生産物を購入し、摂取すれば、電力会社や国の損害賠償責任を縮小させることができる
 
 生産者が被害者で、放射能を警戒する消費者が加害者であるとする図式が、マスゴミによって意図的に流布されているが、私たちはこの図式に乗せられてはならないのだ。
 
 真実の図式は、加害者は原発事故を発生させた国と事業者であり、農林漁業生産者も消費者も、共に被害者であるというものだ。農林漁業生産者の蒙る被害は、原発事業者と国が責任を持って100%補償しなければならない。
 
 農林漁業生産者の蒙る損害を事業者と政府が100%補償するなら、消費者が大きな不安を抱きながら無理に被災地の生産物を摂取する必要はなくなる。
 
 安全基準を無視して、過度の警戒をする必要はないが、事故発生の責任を問うことなく、安全性を重視する消費者行動を糾弾するのは筋違いも甚だしい。
 
 事故に責任を負う事業者および国の責任を問わずに、放射能を警戒する消費者を攻撃することは、根本的な誤りである。国や事業者の責任を消費者に転嫁するプロパガンダ、情報操作に踊らされてはならない。

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