市民が覚醒し要求せねば原発事故責任追及は不能
米官業政電の利権複合体を悪徳ペンタゴンと呼んでいる。日本政治を支配し続けてきた勢力である。
この利権複合体の利害と国民の利害は対立する。悪徳ペンタタゴンは政治権力を掌握することにより、利権複合体に有利な政治を運営し続けてきた。このことは、主権者である国民の利益が踏みにじられてきたことを意味している。
しかし、米官業政電の五者の質的劣化は目を覆うばかりである。経済産業省の電力会社への天下り漬けが問題になっているが、そのさなかに、財務省は横浜銀行頭取の天下りリレーを演じている。
財務省はこれだけ天下り批判が強まるなかで、横浜銀行、西日本シティ銀行の頭取ポストを掴んで離さない。時代錯誤も甚だしい。明治以来の有司専制の弊はまったく除去されていない。天下り根絶を叫んでいた菅直人氏の裏切りも犯罪行為に近い。
財界首脳の質の劣化も著しい。日本経団連の米倉弘昌会長は、日本経団連の米倉弘昌会長は3月16日、東京都内で記者団に対し、福島第1原発の事故について
「千年に1度の津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」
と述べたことが報じられている。
正常な市民感覚を完全に失っている。利権にまみれ、カネと官と政にだけひざまずく卑しい商人の性だけが、その言動を支配している。とても醜悪な姿である。掃きだめのような財界なら、無い方がましだ。
ここに、新たな援軍が加わった。経済同友会の新代表幹事に就任した、厚生労働省と癒着する武田薬品工業社長の長谷川閑史氏だ。4月27日に代表幹事就任の記者会見を行い、東電問題について言及した。
長谷川氏は、東京電力福島第1原発事故の被害補償の枠組みについて、
「原発事故を起こしたら電力会社がつぶれかねないというメッセージを送らないよう、よく考えるべきだ」
と述べた。
4月22日付記事
「東電勝俣会長が原発損害賠償での経営破たん示唆」
に記述した内容に咬み付いた恰好だ。私は次のように記述した。
「事実関係から明らかなことは、東電が経営破たんを招く原子力事故を引き起こしてしまったということだ。このことは、原子力事業に経済的合理性がないことを示している。事故がなければ火力発電より多少利益が多いが、事故を引き起こせば、一発で会社がすっ飛ぶというのが、原子力事業の現実なのだ。
この費用対効果を現実に則して事業者に適用することによって、正しい経営判断が形成されるようになる。「事故を起こせば、会社が飛ぶ」との厳しい現実を踏まえれば、安易に原子力事業に突き進むという選択肢は自ずと消滅するはずだ。」
経済同友会の長谷川氏の主張は正反対である。
「原発事故を起こしたら電力会社がつぶれかねないというメッセージを送らないようしろ」と言うのだ。
4月22日付記事には以下の内容も記述した。
「事故を引き起こしたのに、ペナルティーを科せられず、国民負担で事業者が救済されるなら、こうした厳しい判断は働かない。これを「モラル・ハザード=倫理の崩壊」と呼ぶが、政策がこれを誘導してはならないのだ。」
また、長谷川氏が、
「電力の安定供給の観点から、東電の事業継続を前提に同社と国の負担割合を決めることが重要と強調した」
と報道されている。
東電の事業継続と東電の経営責任とをきちんと区分して対処することが重要なのだ。
かつての
“too big to fail”
では、責任ある当事者の責任が問われず、モラル・ハザードを引き起こす。この視点を踏まえて新たに構築されている処理スキームが
“too big to close”
なのだ。
電力事業は公益性が高いから、事業を継続させねばならないが、経営責任はこれと切り離して処理する。すなわち企業体は破たん処理するが、同時に一時国有化などの措置で、事業の継続性を維持するのである。
責任ある当事者の責任を厳しく問わないと、真剣に経営にあたる必要性が消滅する。同じ重大事故を繰り返し発生させかねない。これを「モラル・ハザード=倫理の崩壊」と呼ぶのだ。
原子力損害賠償法に基づき、東電がまず事故に伴う損害賠償の責任を負う。その金額は8兆円とも10兆円とも推定されている。東電の資金負担能力は4兆円が限界であると考えられており、経営体としては東電を破たん処理せざるを得ない。これが、資本主義のルールに基く問題処理である。
経団連にしても経済同友会にしても、まともな論理思考を示すことのできる人材、現代企業経営論を理解する人材が枯渇しているとしか思えない。なんとも哀れな老人サークルである。
原発事故発生後、原発被害を主因に民間企業が次々と倒産している。東電はわずか115年前に発生した津波規模への備えを欠いていた。100%人災であり、いかなる弁明も通用しない。この重大事故を引き起こした東電が税金で救済され、原発事故被害者の中小零細企業が次々と倒産してゆく不条理がまかり通るのか。
問題処理策策定に際して欠落しているのは、国民の視点である。最終的に悪徳ペンタゴンの相互扶助的救済策がまかり通るのかは、主権者である国民が、悪徳ペンタゴンの提案を容認するのかどうかに依存する。もし、国民が悪徳ペンタゴンが提案する国民負担による東電救済策利権構造を容認するなら、永遠に悪徳ペンタゴンによる日本政治支配構造は変わらないだろう。
その責任を悪徳ペンタゴンだけに帰すことができない。その構造を容認する主権者国民の従属体質が自らの不幸を招く原因になっているからだ。
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