脱原発が真剣に論議されない不思議の国ニッポン
福島原発の放射能放出事故は、国際原子力事象評価尺度における区分で米国のスリーマイル島原発事故のレベル5を上回り、チェルノブイリと同じ最悪レベルであるレベル7のに位置付けられることになるだろう。
1号炉においては、すでにごく小規模の再臨界が発生していると見られ、今後の事態の推移によっては、格納容器が爆発し、原子炉炉心の核物質が広範に外部放出されることも考えうる。この場合には、チェルノブイリ事故同様に、原発から半径数百キロのエリアでの人間の居住が不可能になる。
1号炉に窒素を注入する作業が行われたが、1号炉での水素爆発を回避するための作業であり、1号炉が予断を許さぬ状況にあることを示している。
さらに深刻であるのは、1号炉が爆発すればすべての原子炉での爆発が誘発される可能性が高くなり、3号炉の放射性物質の大量放出が予想されることだ。3号炉はプルトニウム燃料を使用しており、体内蓄積により重篤な被害がもたらされるプルトニウムが大量に日本各地に放出される可能性が高まる。
原子力発電所の事故は、これほどまでに深刻である。仮に1号炉の原子炉格納容器の爆発の事態が発生すれば、もはや発電所における人的な対応策をとることは不可能になる。6基の原子炉が隣接しているわけで、すべての原子炉が重大事態に移行する可能性が高く、高濃度放射性物質の大気への放出により、日本列島全体が深刻なレベルで放射能汚染されることになる。日本滅亡の危機が架空の話ではなくなる。
これほどまでに深刻な事態が進行しているが、メディアで報じられる意識は、現実からかけ離れている。
今回の事故は地震に連動する津波によって発生した。日本は地震国であり津波国である。大津波は歴史的にも周期的に発生しており、最近では1896年の明治三陸地震津波が記録されている。
明治三陸地震津波では38メートルの津波が記録に残されており、この115年前の津波規模の津波に対応する原子力発電所設計を行うべきことは当然のことであった。
福島原発が深刻な大事故を起こしたのは、当然備えておかなければならない自然災害への対応がおろそかにされていたためである。この意味で、今回の事故は100%人災であり、政府と東京電力は原子力事故について100%の損害賠償責任を負うことになる。
日本は沿岸部に54基の原子炉を持っており、その多くがいまも稼働している。しかし、巨大津波が周期的に日本の沿岸部を襲うにもかかわらず、想定される最大規模の津波に対する万全の備えを行っていないのが現状である。
今回、想定される最大規模の範疇にはいる津波が発生したが、この規模の津波に対する備えを欠いていたために深刻な事態が発生している。半歩誤れば、日本全体が深刻な放射能汚染地帯になるという、ぎりぎりの事態が発生しているのである。
このことを踏まえれば、全国の原子力発電所の運転をいったん停止して、想定される自然災害等への対応が十分であるかどうかのチェックを一斉に行うことは当然である。
問題は日本の存亡、ひいては世界の存亡にかかわるものなのだ。
電力会社と政府が「絶対安全」を強調してきた日本の原子力発電所だが、その現実は深刻な事故の歴史でもある。JOC東海村臨界事故、東電柏崎原発事故、関電美浜原発事故など、重大な事故を相次いで経験してきている。
「絶対」だと思っていても、この世に「絶対」はない。まして、115年前に発生した津波程度の津波への備えもしていないような人々「絶対」の言葉を信用するわけにはいかない。
責任ある当事者だけに被害が及ぶのであるなら話は別だが、何の罪もない日本の民衆全体が放射能の地獄に突き落とされるような話に、国民が無関心でよいわけがない。
結局、脱原発の方向に、舵を大きく切り直す必要があるのだ。
金儲けのために原子力をフル利用しようとしていた電力会社は反対するだろう。
原子力ビジネスで大金儲けを目論んでいた電気機械メーカー、ゼネコンは反対するだろう。
原子力関連産業への天下り先を大量に抱える経産省や文科省は大反対するだろう。
電力会社のメインバンクである日本政策投資銀行を天下り先とする財務省も大反対するだろう。
原子力発電積極推進の旗を振ることで、金儲けを狙っていいた大学の御用学者たちも大反対するだろう。
原子力推進企業と政府から膨大な広告料を得ているマスメディア=電波=マスゴミも大反対するだろう。
原子力推進企業や政府からカネで操られてきた御用コメンテーターも大反対するだろう。
原子力関連産業から巨大な企業献金を受け取ってきた利権政治屋も大反対するだろう。
しかし、この国の未来を決める権利を持つ唯一の存在は、主権者国民である。一般庶民にとって、原子力が本当に必要不可欠なものであるのかどうかを考えなくてはならない。
この世に絶対はない。大事故が絶対に起こらないとは誰も言いきれない。賢者は最悪を想定して遠くても安全な道を進む。なぜなら、それが、子や孫の世代に対する人間としての当然の責務だからである。
今回の放射能放出事故を契機に、脱原発に大きく舵を切ることを、じっくりと検討しなければならない。その前に、まずは、リスクのある原子炉の運転をいったん停止するべきである。
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