かんぽの宿疑惑不起訴こそ検察審査会起訴の対象
東京痴犬地検特捜部が、3月29日、日本郵政が保養宿泊施設「かんぽの宿」などをオリックス不動産に不当に安く売却して会社に損害を与える恐れがあったとして、日本郵政の西川善文社長ら幹部3人(いずれも当時)が民主党などの国会議員から特別背任未遂などの容疑で告発されていた問題について、
「売却条件に最も近い条件を提示したのがオリックス不動産で、任務に反したとはいえない」
として、3人を不起訴(嫌疑なし)とした。
「ライジング・サン(甦る日本)」様が事実を明らかにしてくださった。
日本のもっとも深刻な構造問題は、警察・検察・裁判所制度の前近代性にある。
小室直樹氏は、
「日本いまだ近代国家に非ず」
と表現した。
ウォルフレン氏は、
「日本では法律が支配するのではなく支配されている」
と表現した。
最大の問題は、
①刑事訴訟法第248条が定める「起訴便宜主義」が拡大解釈され、刑事訴訟手続きが政治的目的のために恣意的に運用されていること
②そのなかで、刑事訴訟手続きにおいて、法の下の平等、罪刑法定主義、基本的人権の尊重、およびDUE PROCESS OF LAW(=適正手続き)が、完全に無視されていること
③裁判所裁判官の人事権が内閣総理大臣および最高裁事務総局に握られていることから、裁判官の独立が有名無実化し、行政府が裁判所を実質支配してしまっていること
にある。
このことから、検察当局に、判決を決定する権限を含めて、実質的に最高の権限が付与されてしまっている。政治権力はこの検察権力と取引することにより、政治権力の安泰を図ると同時に政敵の抹殺を行えることになる。
司法権の政治利用、政治権力による裁判所および検察権力支配は、前近代国家の基本構造であり、日本はこの段階にとどまったままである。
問題の「かんぽの宿不正売却未遂疑惑」については、本ブログで、繰り返し詳しく解説してきているので、改めて参照いただきたい。
また、拙著『日本の独立-主権者国民と「米・官・業・政・電」利権複合体との死闘-』にも、詳しく記述したのでご高覧賜りたい。
日本の独立 著者:植草一秀 |
疑惑の概要は、時価1000億円超と見られる「かんぽの宿」など79施設が、極めて不透明な売却先決定プロセスを経て、オリックス不動産に109億円で売却されることが決定されたというものである。
日本郵政でこの問題を取り扱ったのはCRE部門で、西川善文社長直轄の特命チームが担当したとされる。西川社長の出身母体である三井住友銀行出身者が中軸を占める特命チームだった。
「かんぽの宿」売却規定は、郵政民営化関連法案策定の最終段階で、竹中平蔵氏の指示で盛り込まれたものである。竹中氏は著書のなかで、「かんぽの宿」事業は日本郵政の本業ではないことを理由に売却方針を決定したとしているが、他方で竹中氏は日本郵政が本業ではない不動産事業に積極進出することを推奨しており、「本業でないから売却することとした」との理屈付けは、竹中氏のその後の言動と矛盾している。
また、竹中氏はオリックスの宮内義彦氏が小泉政権の郵政民営化論議とまったく関わりがないと主張してきたが、総合規制改革会議2003年度第5回会合議事録に、総合規制改革会議が郵政民営化論議に関わってきたことが明確に示されており、この点についても竹中氏の主張が嘘であったことがすでに明らかになっている。
日本郵政は「かんぽの宿」売却に向けて、「かんぽの宿」簿価を人為的に急激に引き下げた。「かんぽの宿」売却方針が決定された2005年10月以降に、「かんぽの宿」簿価は人為的に急激に引き下げられた。
2005年3月期に1535億円であった「かんぽの宿」簿価が、2007年9月の公社閉鎖時点では129億円にまで強引に引き下げられたのである。
安値売却を正当化しようとする人々は、「かんぽの宿」の鑑定評価額が低いことを根拠にするが、その理由は低い価格が算出される方法で鑑定評価が行われていることが主因であり、異なる鑑定評価方法を用いれば、物件の客観的評価額は格段に高いものになる。
鑑定評価には、「原価法」、「取引事例比較法」、「収益還元法」の3種類がある。大幅赤字の事業収支をベースに収益還元法で鑑定評価を行えば極めて低い鑑定評価額を得ることができる、「かんぽの宿」鑑定評価額算出ではこの手法が用いられた。
また、日本郵政内部で、意図的にかつ強引に簿価引き下げが行われたことを示す関係者の証言も明らかにされている。
「かんぽの宿」は加入者福祉施設で、加入者への利益還元を目的に利用料金が低く設定されている。したがって、収支が赤字になるように料金体系が設定されていたわけで、経営体制の見直し、利用料金の見直しなどにより、収支を黒字化することが可能だった。実際、2010年度の黒字化に向けて収支改善が進行していた。
ところが、そのなかで2008年度の収支が突然大幅赤字に変化した。安値売却を正当だとする人々は、2008年度収支の年間40-50億円の赤字を喧伝したが、これは安値売却のために「作られた数値」であった可能性が高い。
従業員の雇用維持が安値売却の理由とされたが、オリックス不動産に課せられた雇用維持義務は、3200名の雇用者のうち、620名の正社員のなかの550名について、1年限りで雇用条件を維持するというもので、安値購入を正当化するものでない。
日本郵政による売却方針公告時に、400億円程度の買値を打診した事業者が存在したが、日本郵政がこの事業者を門前払いした。
「かんぽの宿」79施設のひとつに「ラフレさいたま」があり、この施設だけで100億円程度の時価があると見られている。また、首都圏9か所の社宅については、土地代だけで47億円程度の時価があると見られている。
「かんぽの宿」売却はこの10施設以外に、全国69ヵ所の「かんぽの宿」をすべて合わせたもので、固定資産税評価基準額は857億円である。不動産時価は通常、固定資産税評価基準額より高くなるのであり、109億円の価格は客観的に得られる時価水準を著しく下回っている。
競争入札が行われたとされているが、競合者はすべて、特別の理由により排除されており、実質的な競争入札は行われていない。
東京痴犬地検特捜部は、良識ある捜査を行っていない。政治的な圧力を受けて不起訴決定を示したと考えられる。
客観的な証拠も数多く存在しているのだ。このようなケースで、政治的な圧力により不起訴とされるようなケースでこそ、検察審査会による審査が求められるのだ。国民に重大な不利益を与える行政上の刑事事件疑惑である。このようなケースで検察審査会が機能を発揮しないのなら、検察審査会など無用の長物である。
日本は前近代国家であるから、政治権力と結びついた政商、宗主国と結びつく政商を摘発することは著しく困難であるが、この状態を放置したのでは、日本は永遠に近代国家になり得ない!
「かんぽの宿」疑惑は、必ず法廷の場で真相を明らかにしなければならない。
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