ついに2011年度消費税大増税悪魔構想が浮上
未曾有の天災と人災に襲われた日本。いま政府が直ちに為すべきことは国民生活の防衛である。津波によって生活を支えるインフラ、生活を支える住居、生活を支える仕事が、一気に呑み込まれてしまった。
国民生活を支援するには資金が必要だ。一方、その膨大な政府支出を賄う資金は、直ちには国民からは入らない。この局面で、短期の財政収支が赤字になることは火を見るよりも明らかだ。
財政には、もともと「ビルトイン・スタビライザー」と呼ばれる自動調整機能が備わっている。とりわけ、税収における所得税や法人税のウエイトが高くなるとこの機能は強まる。
景気が落ち込むと生活保護などの社会保障支出が増える。他方、税収は大幅に減少する。結果、財政赤字が拡大するが、この財政赤字拡大が景気を支える効果を持つ。つまり、景気悪化時には財政赤字が拡大することが望ましいわけである。好況期にはその逆になる。
2011年、日本経済の悪化は甚大になる。いまはまだその実感が日本全体に広がっていないが、製造業も非製造業も生産活動の大幅低下に直面するから、経済活動は確実に大幅低下する。
被災地の生活は極めて厳しい状況下に置かれる。とりわけ、雇用の不足は被災者の生活不安を一段と強めることになるに違いない。このような局面こそ、政府の役割は大きいのである。政府が巨大な事業を実施して、政府が大きな雇用を生み出すことが大事なのである。
ところが、菅-岡田-仙谷-枝野-野田-枝野-前原体制が仕切るマクロ経済政策運営には、まったく血が通っていない。完全に財務省の冷血政策に支配されている。
ガソリン価格が上昇した局面では、ガソリン暫定税率を免除するとの規定も、何の論議もなく反故にされる。ガソリンは被災地の生活にとっても必需品である。ガソリン価格が高騰すれば、被災者の生活にも重大な影響を与える。しかし、何よりも政府の財政収支を悪化させるものは許されないのだ。
この菅-岡田冷血体制は、未曾有の大震災で国民生活が存亡危急の危機に直面している、そのタイミングを悪用して、財務省のかねてよりの念願である消費税大増税に突き進むという、悪魔の政策運営に突進し始めた。
1995年1月17日に阪神淡路の大震災が発生した。1995年前半、日本経済はこの地震に加えて、円高、サリン事件が重なり、株価は7月の14,485円まで暴落した。株価が上昇に転じたのは、日本銀行が7月と9月に利下げを実施し、村山政権が9月に14兆円の景気対策を決定したことを受けた7月だった。
財政金融政策を総動員した結果、1996年6月には日経平均株価が22,666円にまで反発し、日本経済も回復基調に回帰した。
ところが、橋本政権が96年6月25日に消費税引き上げ方針を閣議決定すると、株価は翌日の6月26日をピークに下落に転じ、98年10月の12,879円へと暴落していった。
今回の菅-岡田体制は、95年の対応よりもはるかに拙劣である。政策を総動員せずに、大増税に突き進むというのだ。日本経済は確実に崩壊する。日経平均株価は7000円割れの水準にさらに下落することになるだろう。詳しくは『金利・為替・株価特報』2011年4月22日号をご高覧賜りたい。
菅-岡田体制の財政運営は根本が間違っているのだ。財政は財務省の利権のために存在するのではない。国民の幸福のために存在するのだ。財政再建は大事だが、そのために国民を不幸にするのでは元も子もない。
財政再建を進めるには、まず、官僚利権を切ることが先決なのだ。岡田克也氏も経産官僚出身で、官僚利権を切ることに完全に背を向けている。国民が増税に応じないのは、政府が官僚利権を切らずに温存し続けようとしているからなのだ。
また、財政を立て直すには、絶対に経済を健全にすることが不可欠なのだ。財政というのは、経済が生み出す果実を元手に行う活動である。肝心要の経済活動という幹を枯れさせてしまえば、経済が生み出す果実は少なくなり、財政活動が窮地に追い込まれるのは当然なのだ。
「経済あっての財政であり、財政あっての経済ではない」
回り道に見えるかもしれないが、経済という樹、幹をしっかりと育てることが財政再建への近道なのだ。
菅-岡田体制は、2011年度の第2次補正予算で消費税を3%ポイント引き上げる案を提示し始めている。しかし、この方向で政策運営を進展させるなら、100%失敗に終わるだろう。失敗の意味は、国民生活が破壊されるという意味である。
財務省は消費税増税を実現できるなら、国民生活が破壊されようと、日本経済が破壊されようと構わないというスタンスだから、財務省にとっての失敗にはならないだろうが、国民は間違いなく地獄に突き落とされる。国民はこのことをよく理解したうえで、政府提案を受け止める必要がある。
そのうえで増税を選択するなら、国民は国民生活が破壊されても文句を言えない。
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