東電は利用可能全発電設備稼働率を開示すべきだ
3月13日に
「計画停電は火力発電フル稼働を前提としているか」
と題する記事を記述したが、大規模停電のリスクばかりが強調されていて、東京電力が稼働できる発電設備をフル稼働し、購入できる電力を最大限購入しているのかどうかについてのチェックが十分に行われていない。
東京電力は首都圏への電力供給に活用できる全発電設備とその稼働状況、および買電の状況を完全に開示する責任を負っている。
原子力発電の推進に対して、良識ある人々が強く反対してきた経緯がある。日本は地震国であり津波国でもある。巨大地震や巨大津波が発生する蓋然性はもとより高く、そのような災害が発生した場合に、不測の事態が発生する可能性を否定しきれない。原子力発電所で重大事故を発生させれば、とりわけ日本のような狭隘な国土に国民がひしめき合って生きている国では、国の滅亡を招きかねない事態を発生させる可能性を否定できない。
原子力発電所反対の根拠は、基本的にこのようなものであり、極めて筋の通った良識に基づいた意見であった。
国全体で省電力のライフスタイルを構築し、原子力に依存しない電力供給を模索することは十分に可能であった。
しかし、電力会社にとって原子力の利用は、何にも増して経済的利益の要請を満たすものである。産業界も原子力発電所の推進により、巨大なビジネスチャンスを得ることができる。関連学界も原子力ビジネスが推進されれば、巨大なマネーが研究者に流れ込んでくるから、原子力発電推進派が多数派を占めることになる。政治屋は産業界の利益追求の片棒を担ぐことによって、巨大な見返りを享受してきた。
こうした政産学の癒着により、原子力発電は積極推進されてきたのである。
その延長上に今回の事故が起きた。この経緯を踏まえれば「人災」であるとしか言いようがない。政府も電力会社もそして学界も重大な責任を負っている。
国民は被害者であり、とりわけ原発の近隣に居住する国民は極めて大きな被害を蒙っている。
停電騒ぎもこの延長上に発生している日本国民の被害の一端である。地震と津波は天災だが、原発事故とその余波は人災なのである。
したがって、東京電力は経済的に高コストであっても、火力発電所をフル稼働させて国民の被害を最小化する努力を行う責務を負っている。
記者会見には必ず代表権のある幹部、担当役員が同席して、これらの幹部が国民に説明するのが、公益事業を担う企業の基本姿勢ではないだろうか。これが、「企業の社会的責任」を唱導した東電の木川田イズムではなかったのか。
原子力発電推進の方向に対してブレーキがかからないように、意図的に停電騒ぎを拡大させているようなことが、万が一にもあってはならない。
こうした面での説明責任をも真摯に考慮するべきで、活用しうる発電設備をすべて掲示し、その稼働率を開示する必要がある。また、電力事業自由化に伴って、売電事業も認められるようになったはずだ。首都圏の電力利用に活用しうるすべてのツールを一覧開示し、東京電力が活用しうる電力供給力を完全に利用していることを示す責務を東京電力は負っている。
また、電源復旧作業を行う際、作業にかかる労働者の生命と健康を守るための万全の対応が強く求められる。一人当たりの被ばく量上限値が厳格に守られねばならないが、放射線関連業務に従事する際の年間被ばく量上限値である5万マイクロシーベルトを大幅に上回ることのないように厳重な放射線被ばく量管理が求められる。また、作業を行う各原子炉周辺の放射線量情報の全面開示が求められる。労働組合は労働者の生命と安全を確保するため、経営側に徹底した申し入れを行う必要がある。
他方、ピーク時電力が急激に増大するのはエアコン使用が急増する夏である。夏に向けて日本全体として電力使用量を大幅に抑制する必要がある。ライフスタイルの転換を推進するべきである。テレビも節電を強調するなら、まずはスタジオ照明を落とす必要があるし、放送も電力使用量が拡大する時間帯は、各局輪番制にするなどの措置を検討するべきである。フルに電力を使用しながら節電を強調してもまったく説得力がない。
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