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2011年3月24日 (木)

犠牲は下請け労働者、幹部は安全地帯避難の図式

3月16日に
「末端労働者犠牲に原発責任幹部政府は逃亡の図式」

と題する記事を掲載した。
 
 
福島原子力発電所の放射能放出事故を収束するために、危険を冒して決死の作業に従事する人々には、心よりの敬意を表したい。
 
 しかし、電力会社ならびに政府は、これらの最前線で作業する労働者の生命と健康を守るための万全の対応を取る責任がある。
 
 現地の対策本部は福島原発から65キロメートルも離れた福島市に避難してしまった。近隣住民は20キロエリアに張り付けたまま、対策本部は65キロも遠隔の地に逃げてしまったのだ。
 
 電力会社幹部が記者会見に出席するようになったが、現場からはるか離れた安全な東京の地で記者会見に臨んでいる。
 
 こうしたなかで、懸念されるのは、力の弱い、末端の労働者に不当に危険な作業が押し付けられ、この末端の労働者が悲惨な放射能災害に直面するリスクが高まることだ。
 
 現に、福島原子力発電所で、協力会社の作業員2名が放射線事故で病院に搬送された。被ばく量は170mSv程度であるという。
 
 原子力関連事業に従事する専門労働者の場合、年間被ばく量上限は50mSVと定められている。100mSvの被ばくで、健康被害が発生することが懸念されている。
 
 ところが、政府は、今回の事故に際して、緊急時の被ばく上限量
100mSvから250mSvに
引き上げてしまった。
 
 このことについて、フランス・パリ大学のポール・ジョバン准教授(日本社会学)は24日付ルモンド紙のインタビューで、
「強い放射線にさらされながら事故現場に踏みとどまり、電源復旧などに取り組む作業員らに「死の危険」が迫っている」
と指摘した。
 
 また、厚生労働省が今回の事故対策に限り、被ばく線量の上限を250ミリシーベルトまで引き上げたことについて、
 
「この緊急措置は、作業員が死亡することになっても(東京電力が)補償請求を免れるための方便である可能性がある」
 
と指摘した。
 

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政府と電力会社の判断の誤りによって引き起こされた今回の放射能災害は、明らかに人災である。わずか100年前の地震で今回を上回る津波が観測されているのである。少なくとも100年前の明治三陸地震の際の津波被害を念頭に入れた防災対策が構築されていなければならなかったが、この基本がおろそかにされていたために、今回の事故が発生した
 
 政府と電力会社に責任がある事故について、責任のない末端の労働者の生命を犠牲にして対応策を講じることは許されない。
 
 どうしても作業が必要であるなら、電力会社幹部、政府幹部が率先して作業にあたるべきではないのか。電力会社幹部、政府幹部が、はるか離れた遠隔の安全な場所に身を置きながら、末端の作業員に、被ばく量上限を生命や健康に明らかに害のある水準にまで高めて作業を強制するのは、もはや「犯罪」の領域にはいる。「よど号」事件の際には、政務次官が自ら人質になることで事態を打開した。責任ある立場にある者には、わが身を賭す覚悟が求められる
 
 菅直人氏などは、3月21日に、現場を視察すると言いながら、雨が降ると突然視察予定をキャンセルしてしまった。現場に混乱を与えないためなどの言い訳をしているが、単に被ばくを回避しただけである。
 
 現場で危険な作業に従事する労働者の被ばく量上限を250mSvにまで引き上げる正当な根拠はないのではないか。その被ばく量がまったく問題がないのなら、その決定を下した責任者である担当大臣および総理大臣、また電力会社幹部が、その被ばく量を実際に浴びて、安全性を強調するべきだ。
 
 カイワレ大根や牛肉を食べるだけがパフォーマンスではない。短時間に250mSvの被ばくを受けて、まったく心配ないとのパフォーマンスを演じてから、末端の労働者の被ばく上限変更を検討するべきなのだ。
 
 また、福島原発原子炉周辺で、500mSv/hという、とてつもない放射能濃度が観測されたことが報道されたが、十分な情報が提供されていない。
 
 この放射性濃度の下では、10時間いるだけで、半数の人間が死亡する。とてつもない高濃度の放射線量である。
 
 また、原子力安全・保安院が公式サイトで公表している「現地モニタリング情報」から、2号機北西0.5キロ地点の、事務本館北地点データが突然公表されなくなった。放射線濃度が高すぎて、あまりに危険で計測が不能になったのか。恒常的に2000μSv/h以上の放射線濃度を観測してきた地点であり、このデータがもっとも重要である。
 
 放水作業などの効果を判定するうえでも、このデータが根拠に用いられてきた。都合の悪いデータは隠蔽し、都合のよいデータだけを公表する歪んだ姿勢が、市民の不安心理を煽るのである。
 
 政府、電力会社、当局は、適正な情報開示を実行するべきである。
 
 何よりも重要なことは、現場で作業する労働者の生命と健康を万全の体制で守ることである。東京電力は下請け業者に危険な作業を押し付けるべきでない。また、被ばく量上限を直ちに、100mSv、できれば法基準に照らして50mSvに戻すべきである。
 

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