テレビが伝えない福島原発の著しく困難な現況
福島原発の放射能放出事故は、収束に向かう確かな手掛かりが得られぬまま長い時間が経過しており、収拾不能に陥るリスクが徐々に高まりつつあるように思われる。
タービン建屋の水表面放射線量が第2号炉と第3号炉で著しく高い状態になっている。両炉では、炉心溶融が進行したと考えられる。
炉心溶融、さらに格納容器の融解を招かないためには、炉心の冷却が不可欠であるが、第2号炉、第3号炉ともに、排水機能が崩壊しており、これ以上の冷却水投入は、極めて危険な排水に伴う放射能物質の外部漏出を招く可能性が高い。
自衛隊および消防庁による放水により、大量の海水が原子炉に注入されたが、原子炉の排水機能が崩壊しており、すでに、著しく高い放射線濃度の液体が、発電所から海に放出された可能性が高い。
また、3号炉は、いわゆるプルトニウム燃料を用いる原子炉であり、3号炉から排出される放射性物質は、著しく危険なものであり、この危険な放射性物質の放出が重大な海洋汚染をもたらす可能性が高いのではないかと思われる。3号炉爆発に伴い、負傷者が発生したが、この負傷者について、その後の経過についての報告がなされていない。
これまでの調査は大気中の放射線濃度の計測に重点が置かれてきたが、海洋の水質調査についてもより精度の高い計測を実施する必要が生じている。海洋生物には放射性物質を濃縮する機能が備わっており、極めて危険な放射線物質の濃縮が進行することも懸念される。
報道されている情報によれば、すでに第2号炉のタービン建屋内にたまっている水の表面から発せられる放射線濃度は、1000mSv/hを超えているとのことである。計測機の針が振り切れ、計測不能の状況にあると考えられる。
政府は現場で作業にあたる労働者の被曝量上限を年間100mSvから250mSVに引き上げたが、健康に与える影響は極めて大きいと考えられ、上限は100mSvを維持することが望ましいと考えられる。
しかも、この被ばく量上限数値は年間被曝量であり、一度の被曝で250mSvの被曝を受けることは、極めて危険であり、回避する必要がある。
仮に、被曝量上限を100mSvとし、作業環境として1000mSv/hの放射線濃度が観測される地点での作業を想定すれば、作業にあたる労働者は、6分で撤退しなければならないことになる。1000mSV/hの計測器が振り切れたということは、2000mSv/h程度の濃度であることも考えられる。その場合には、作業にあたれる時間は3分ということになる。
タービン建屋および外部に接続される排水系統に、高濃度放射線を発する水が満杯に存在しているが、これらの水を別の液体貯蔵タンクに移し替えたうえで、冷却水注入を続けなければならないが、その作業を行える環境が存在しない。
仮に、こうした高濃度放射線を発する水の除去を行わずに冷却水の注入を継続すれば、間違いなく高濃度放射線濃度の水が海洋に排出されることになる。
炉心での再臨界を回避するために高濃度放射線溶液の海洋排出を行うか、高濃度放射線溶液の海洋排出を避けるため、炉心での再臨界を放置してしまうか。究極の選択を迫られる非常事態に至りつつあるように思われる。
いずれにしても、甚大な影響を免れることが難しい。すでに原子力発電所構内でプルトニウムが検出されたことが明らかにされたが、3号炉の大爆発に伴い、3号炉からプルトニウムを含む超危険物質が漏出した可能性は高い。
原子炉の一部で再臨界に移行すれば、すべての原子炉への操作が不能となり、原発全体が再臨界の危機に突入することになる。この危険を回避するためには大量の冷却水注入を継続する必要があるが、そのことにより、大量の放射性物質が海洋水域に排出されることになり、想像を絶する海洋汚染が広がることは避けようがない。地中に散水すれば、広範囲に土壌汚染と水質汚染が発生することになる。
事態は極めて深刻度を増しているのであり、政府や電力会社は、このリスクを正確に開示する必要がある。
事態が悪化する場合には、避難エリアの大幅拡大も必要になる。
菅-枝野体制は、事故発生直後から、「安全だ安全だ」を繰り返し、避難エリアを五月雨式に拡大してきた。それも、ぎりぎりの段階で突如避難エリアを拡大するために、避難者は必要最小限の荷物をまとめる時間さえ持てなかった。
時間の余裕をもって、初めから避難エリアをあえて大きく取って、避難住民に荷物をまとめる時間を与えて避難を指示すれば、避難住民の負担は大幅に軽減できたはずだ。
政府、経産省、東電は、現実に発生しうる事態を完全に捕捉し、最悪の事態発生に対する対処方法について、可能な限りの最善の策を講じることができるよう、準備を整える必要がある。
3号炉がプルトニウム燃料を用いていること、プルトニウム燃料を燃やした場合の放射性物質が、通常の放射性物質とは桁違いに悪質であること、などの基本情報がまったく伝えられていない。政府、電力会社、御用学者による、事実を隠蔽して、無責任な安全情報を垂れ流すことの弊害は計り知れない。厳しくても真実の情報を広く流布して、適正な行動を誘導しなければ、後に取り返しのつかない惨禍を招く。
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