尖閣諸島帰属問題決着先送り事実は本当に無いか
マスゴミが詳細を報道しないために、一般国民は事実関係を把握することが難しいのだが、尖閣諸島海域における日中の漁業活動に対する日中両政府の対応について、これまでどのような取り決め、ないし取り扱いが行われてきたのかを確認する必要がある。
臨時国会が開かれており、予算委員会も開催されていることから、国会論議のなかで、この点が明らかにされる必要がある。
偏向マスゴミのなかで、権力に対して一定の距離を保っているのが中日新聞=東京新聞であるが、中日新聞は11月2日付の紙面で日中漁業協定についての解説記事を示した。
この記事では外務省OBである孫崎享氏の「棚上げ論」こそ日本の国益にかなうとの主張を紹介して記事を締めくくっている。
日中漁業協定で日中暫定措置水域に定められたのは、北緯27度から北緯30度40分にかけての海域であり、北緯27度以南の海域については、この対象外とされている。
尖閣諸島はこの北緯27度以南の海域に位置しており、尖閣諸島海域は日中漁業協定の対象海域にはされていない。
しかし、中国は尖閣諸島の領有権を主張しており、日本の主張と対立している。この問題が日中国交回復、沖縄返還、日中平和友好条約締結に際して問題として浮上した。
この点について中国の鄧小平氏が日本の実効支配を認める代わりに、領土問題の決着を先送りするとの提案を行った。これが、いわゆる「棚上げ論」、「棚上げ政策」である。
その結果として北緯27度以南の海域については、日中両国が自国船のみを取り締まるとの運用が行われてきたと伝えられている。
つまり、尖閣海域は日中両国が領有を主張している海域であるが、領有権について最終決着がついていない現実が存在するため、日中両国が同時に操業するとともに、自国漁船の操業について、自国政府が取り締まるとの運用がなされてきたと伝えられている。
この海域で中国側の許可なく操業している中国船があれば、水産庁または海上保安庁の巡視船が発見すると、違反船の写真を撮り、外交ルートで中国に注意喚起するとの措置が取られてきたと伝えられている。
他方、河野太郎氏のブログ記事によれば、「海上保安庁は、尖閣諸島周辺の領海をパトロールし、領海内で操業している中国船は、違法行為なので退去させる」ともある。
尖閣諸島の領有権について、日中両国間で最終決着がついていないのであれば、日本の海上保安庁が尖閣諸島海域を日本の領海だとの前提で、中国漁船の操業を停止させる、あるいは、この海域で日本の国内法を適用することには無理が生じる。
しかし、前原誠司外相が明言したように、日中間に領土問題が存在せず、尖閣諸島は日本の領土であることが、日中間で確定している事項であるなら、尖閣諸島の日本の領海で中国漁船が操業することは違法行為になり、日本政府が中国漁船および中国漁民に対して日本の国内法を適用することは当然の行為になる。
違法な中国漁船および中国漁民を日本の法律に基づいて粛々と措置することは当然であり、この基本を実行しない日本政府は批判されなければならない。
前原誠司外相が明言する「日中間に領土問題は存在しない」の言葉が真実であるなら、日本政府の対応は不当極まるものということになる。
ところが、日本政府は中国の激しい非難に対応して、腰砕け状態になって中国人船長を釈放、帰国させた。背景には、これまでの「棚上げ政策」合意があり、尖閣諸島の領有問題については決着を先送りするとの日中両国の合意が存在したことを踏まえたのではないのか。
尖閣諸島の領有問題決着を先送りするとの日中政府の了解があるのなら、前原誠司氏の「日中間に領土問題は存在しない」との発言は間違いということになる。
北緯27度以南の尖閣諸島周辺海域においては、日中両国の許可を得た漁船が操業することができ、日中両国は自国船のみを取り締まることとされているなら、この海域で操業する中国漁船を日本の海上保安庁が取り締まること自体がルール違反ということにならないのか。
この場合には、中国漁船の操業を停止させ、さらに、中国漁船の周りを旋回し始めた海上保安庁の巡視艦に、発進した中国漁船が衝突したことについて、中国漁船を一方的に避難することはできなくなる。
つまり、一連の報道に決定的に欠落している事項は、今回の問題が発生した背景に関する詳細な事実関係に関する解説なのである。この説明をせずに、中国漁船が海上保安庁巡視船に衝突した場面の映像だけをセンセーショナルに垂れ流すことは百害あって一利なしである。
一国の外務大臣が、領土問題が存在するのに存在しないと述べることは許されない。中国漁船の操業を停止させた海域における適正な日本政府の対応とはいかなるものであるのかが明らかでなければ、問題を適正に評価することができない。
マスゴミがこの役割を果たさないのであるなら、国会質疑でこの問題を明らかにすることが不可欠である。この基礎情報のうえに問題は論議されるべきである。
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