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2010年11月 6日 (土)

尖閣領有問題棚上げ政策についての検証が不可欠

尖閣諸島海域が日本の領海であることを中国が了解しているのであれば、日本には外国籍漁船を取り締まる権利があり、領海内で違法行為を行った者に対して国内法に基づいて措置する権利があり、政府は粛々と責任を果たすべきである。
 
 国内法に基づいて措置するなら、法と証拠に基づいて粛々と対応すればよい。それだけのことである。
 
 しかし、尖閣諸島およびその海域について、これまで日本政府は、そのような対応を示してこなかった。それには相応の理由があった。
 
 2000年6月発効の日中漁業協定では日中暫定措置水域を定め、この海域では日中両国が自国海域のみを取り締まることとされた。
 
 日中漁業協定について、自民党の河野太郎氏がブログに以下の記述を示している。

「この協定によると、済州島の南あたりから北緯30度40分までと東経124度45分から東経127度30分の間を中間水域とし、この水域では相手側の許可なしに日中双方の漁船が操業をすることができる。
 
 北緯30度40分から北緯27度までの間では、排他的経済水域及び大陸棚の境界画定までの間、暫定的に日中両国共同で海洋生物資源の量的管理を行う。この海域では、自国漁船に対して取締りを行い、相手国漁船の違反等に関しては外交ルートで注意喚起を行う。
 
 北緯27度以南は、新たな規制措置を導入しない。現実的には自国の漁船を取締り、相手国漁船の問題は外交ルートでの注意喚起を行う。(尖閣諸島はこの水域に入る)」
 
 つまり、尖閣諸島は北緯27度以南の海域に含まれており、直接的には日中漁業協定の対象海域には指定されていない。
 
 中国は1970年ころから尖閣諸島の領有を主張しており、日中国交回復、日中平和友好条約締結に際して、鄧小平が尖閣問題の棚上げを提案し、その後は日中両国が、この棚上げ政策に乗る形で、現実の対応を示してきた。
 
 「棚上げ政策」とは、尖閣諸島における日本の実効支配を容認しつつ、領有問題については先送りするというものである。
 
 前原誠司外相は「棚上げ政策」について、中国側の一方的な提案であり、日本としてこれを認めたことはないとの見解を表明しているが、この見解が正しいのかどうかを歴史的経緯に従って検証する必要がある。現実には、日本政府が「棚上げ政策」に乗ってこれまでの対応を行ってきたことは明白である。
 
 実際に、これまで日本はこの海域で中国船を追尾することはあっても、拿捕、逮捕、起訴することはなかった。
 
 2004年には尖閣に上陸した7人の中国人を不法侵入で日本の警察が逮捕したが、直ちに強制送還している。
 
 今回、事態が大きく発展したのは、日本政府の対応がこれまでの「棚上げ政策」に基礎を置くものから、「尖閣諸島は日本の領土である」との判断を基礎に置くものに転換したと中国が受け止めたことに基づいている。

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 この劇的転換を誘導したのは前原誠司国交相(当時)である。「棚上げ政策」を基礎に置く対応を取るなら、当初の時点で2004年と同様の政治判断を働かせるべきであった。
 
 尖閣問題についての日本政府の対応を劇的に転換するなら、その判断は内閣の責任においてなされるべきものであり、菅政権として「尖閣は日本の領土である」ことを宣言した上で、日本の法律に則って粛々と処理を進めるべきであった。しかし、このことは、場合によっては戦争の引き金を引くような重大性を帯びる外交上の決定であるから、一閣僚の判断で行えるべきものでなく、当然、菅首相の判断と責任において決定されるべきものであった。
 
 ところが、現実には前原国交相が独断で中国人船長の逮捕、勾留を決定し、その後、この問題が大きな外交問題に発展し、中国の激しい反発を招いたことを受けて、腰砕け的に中国人船長を釈放したものである。
 
 前原誠司氏は米国の支援を得ようと、必死で米国に対して、尖閣諸島が日米安保条約の適用範囲であるとの言質を引き出そうとした。米国はこの要請に応じて、尖閣が日米安保条約の適用範囲であることを示した
 
 前原誠司氏の暴走は、沖縄の県知事選と密接に関わっている。米軍の沖縄駐留を継続させ、辺野古の海岸を破壊して軍事基地を建設しようとする勢力は、ひとつ覚えのように、米軍による抑止力がなくなると中国が尖閣諸島に攻めてくることを強調する。尖閣での日中対立を演出することは、沖縄知事選での仲井真弘多知事の再選を促す選挙活動であるとも言える。
 
 しかし、現実はそれほど単純ではない。米国は沖縄の新設軍事基地を求めているが、同時に米中関係をも重視している。米国が尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲であることを示したことに中国が強い不快感を表明した。
 
 これに対応する形で米国は、北方領土について、日本の領有を認めるが、日米安保条約の適用範囲ではないと発言した。つまり、日米安保条約の適用範囲の基準は実効支配の有無であり、領有権に関する米国の判断とは直結しないことを示したのである。
 
 換言すれば、米国は尖閣諸島を日本が実効支配していることを認めるが、領有権については日中両国間の問題であるとの立場を示したのである。このことを米国ははっきりと発言もしている。
 
 日本政府は19世紀末に日本が列強の仲間入りを果たすべく海外進出を本格化させた時期以降、日本が尖閣諸島を領有していることを強調するが、中国はそれ以前の歴史的な領有関係を強調している。国際法上は日本の領有が認められるべき事案ではあるが、この問題が必須の重要事案であるなら、日中国交回復、沖縄返還、日中平和友好条約締結時に明確化しておくことが不可欠であった。
 
 しかし、現実の選択のなかで、1972年に日中が国交を回復し、平和友好条約を締結する際、尖閣諸島の領有問題について、「棚上げ政策」が提案され、以後、この「棚上げ政策」に基づいて日中両国が対応してきたことは、ひとつの現実的対応であったと評価すべきである。 
 
 外交には常に多くの困難な問題が立ちはだかるが、多くの困難な問題を直視した上で、現実的な選択を示すことが常に求められる。尖閣問題を深刻化させずに日中両国が戦略的互恵関係を発展させることも検討に値する対応のひとつである。
 
 日本政府は録画映像を当初から公開し、政治判断での問題決着を当初の段階で取るべきであったと言える。日本外交の稚拙さが世界の笑いものになっている。
 
 衝突映像が流出した問題は、こうした外交問題とはまったく別種の政府の危機管理能力の問題である。重要機密情報が流出したことについて、真相を解明すると同時に、関係者の責任が厳しく問われなければならない。
 
 米国に隷属するだけで、国益を損なうことだけに貢献している前原誠司氏の一刻も早い更迭が求められる。

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