法務行政素人柳田法相起用は仙谷=菅の悪だくみ
柳田稔法務大臣の発言が問題になっている。問題とされている発言は以下のものだ。
「9月17日(の内閣改造の際)新幹線の中に電話があって、『おい、やれ』と。何をやるんですかといったら、法相といって、『えーっ』ていったんですが、何で俺がと。皆さんも、『何で柳田さんが法相』と理解に苦しんでいるんじゃないかと思うが、一番理解できなかったのは私です。私は、この20年近い間、実は法務関係は1回も触れたことはない。触れたことがない私が法相なので多くのみなさんから激励と心配をいただいた。」
「法相とはいいですね。二つ覚えておけばいいんですから。『個別の事案についてはお答えを差し控えます』と。これはいい文句ですよ。これを使う。これがいいんです。分からなかったらこれを言う。これで、だいぶ切り抜けて参りましたけど、実際の問題なんですよ。しゃべれない。『法と証拠に基づいて、適切にやっております』。この二つなんですよ。まあ、何回使ったことか。使うたびに、野党からは責められ。政治家としての答えじゃないとさんざん怒られている。」
何が問題であるのかを私なりに考える。見落とせない重大な問題が二つある。ひとつは、「分からなかったらこれを言う。これで、だいぶ切り抜けて参りましたけど、実際の問題なんですよ。しゃべれない。」という部分。
柳田稔氏は正直な人物なのだと思う。地元の大臣就任記念パーティーで、気持ちが緩んでしまったのだと思うが、発言した内容は正直な思いの告白だったのだと思われる。
しかし、国民にとって重要な事実は、所管大臣が国会質疑での質問に対して、正しい答弁をしたいが、その内容が分からず、分からないから苦し紛れに逃げ逃れるために、「個別の事案には答えられない」、「法と証拠に基づいて適切にやっている」と答弁していたことが明らかになったことだ。
所管大臣が、実は個別の事案の内容については、良いのか悪いのか、あるいは、詳細な内容を知らずに職務を遂行しているという驚天動地の事実が明らかになったことが第一の問題である。
第二の問題は、法務大臣に柳田稔氏が起用されたことが、「不適切である」ことを柳田氏自身が告白したことである。柳田氏は、「何で俺がと」思い、「この20年近い間、実は法務関係は1回も触れたことはない」から、法相に起用されたことに驚愕したことを告白したのである。
法務行政は極めて専門性の高い領域である。法律の専門家でなければ、大臣として法務省を指揮し、監督し、適切な行政運営を実現することは不可能である。
政治主導の国会運営を実現し、国会答弁でも官僚による答弁を禁止したのはよいが、肝心要の大臣が専門知識をまったく持たないずぶの素人では、大臣の本来の役割を担うことを期待することをできないのは当たり前のことである。
この点が最大の問題だ。専門性のまったくない人物、20年間法務行政に携わったこともない人物を法務大臣に起用した点に最大の問題がある。
「二つだけ覚えておけばよい」と告白した柳田氏の言葉はひんしゅくを買うけれども、真実を国民の前に明らかにしてくれたという点では、国民の「知る権利」に応えるものである。何も知らない人が、知った風を装って大臣を続ける方が国民に与えるマイナスは大きい。国家秘密を漏えいしても逮捕すらしない法治国家をやめた国の法務行政のトップが、法律知識がないというのは、小噺として残ることになるだろう。
法務大臣が真実を告白したことは、海上保安庁の職員同様、褒め称えるべきことなのかも知れない。
中国漁船船長逮捕、釈放、海上保安庁職員無罪放免など、日本は法治国家ではないことを改めて確認する事態が次々に表面化しているが、菅直人氏が法務行政の素人をわざわざ法相に選任しているのだから、むべなるかなということになる。
小沢一郎氏が卑劣な背景により、検察権力から不正で不当な攻撃を受けている。これが、現代日本最大の不祥事である。この問題を是正するには、人格、見識に優れ、胆力のある人物が法相に起用されなければならない。
ところが、菅直人氏=仙谷由人氏が支配権を持つ菅直人内閣では、逆に、意図的にまったく専門知識を持たない素人が法相に起用されたのだ。つまり、菅直人内閣では法相をパペット=操り人形に位置付けているのである。
極めて重大な職責を担う法相にずぶの素人を起用することは、自民党政権下においても採用されてきた常とう手段のひとつでもある。
法相とは別の者が法務行政を仕切りたい局面で、そのことを表に出さないための操り人形、表の顔として法相が選任されてきたのだ。この法相は、できるだけ専門知識がないことが望ましい。専門知識はなく、他の権力者の支持に従順に従う、従順な人物が起用されるのである。
小沢一郎氏に関係するさまざまな取り扱いに重大な問題が存在している。とりわけ、東京第五検察審査会の運用には巨大な疑惑が存在している。最大の問題のひとつは、二度目の起訴相当議決を行った11人の審査委員メンバーが、第一回目の起訴相当議決を行った審査委員と同じメンバーなのではないかとの疑いが存在していることだ。全員交代したはずの委員が、実は交代していなかったとするなら、二度目の議決は無効である。このような稚拙な疑惑さえ解消されていないのだ。
大阪地検特捜部で言語道断の不祥事が表面化したのに、取り調べ過程の全面可視化法案が次期通常国会に提出されない可能性のあるスケジュールが設定されている。検事総長の責任追及も行われていない。これらを陣頭指揮するべき存在が法務大臣である。
柳田稔氏自身が誰よりも法相更迭を強く望んでいることと思われる。一刻も早く法相交代を実現するとともに、このような主権者無視の組閣を行った菅直人氏、仙谷由人氏の責任が厳しく追及されなければならない。
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