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2010年7月27日 (火)

菅政権の1兆円経済復活枠予算への疑問

民主党が2011年度予算編成に関して、1兆円の特別枠を設定してコンペ形式の予算配分を行う意向を示している。
  
 事業仕訳がメディアに大きく取り上げられて、一部で好評を得たことを踏まえて2匹目のドジョウを狙ったものだと考えられるが、事業仕訳同様、学芸会の延長にしか見えない。
 

予算編成は政治活動の中核である内閣は行政権を担う。行政活動には費用がかかり、このすべてが予算に計上される。つまり、すべての行政活動は予算に計上されるものであり、予算が行政活動そのものと言っても過言ではない。
 
 政府支出には、行政経費の支出、地方への交付金・国庫支出金、投資的経費、利払い費、社会保障支出などがある。
 
 日本の財政問題の核心は、税収を中心とする政府収入に比べて政府支出が過大になりすぎている点になる。2009年度予算では税収37兆円に対して支出規模が102兆円、国債発行金額が53兆円になった。政府支出の半分以上を借金で賄うとの異常な状況が生まれているのだ。
 
 この崩壊した財政状況を立て直すことが喫緊の課題になっている。
 
 しかし、財政政策を考える視点は財政再建だけではない。財政再建だけを優先し、他の課題を無視する姿勢を「財政再建原理主義」と呼ぶが、1997年度の橋本政権、2001年度の小泉政権などは、この「財政再建原理主義」を採用して、肝心の日本経済を破壊してしまった。
 
 ここで得られる教訓が「経済あっての財政であって財政あっての経済ではない」というものである。
 
 正しい判断を示したのは小渕政権だった。小渕政権はさまざまな政策課題を否定したのではない。さまざまな改革は必要だが、優先順位としては日本経済の回復が優先されるべきとの判断を示し、景気回復策を実施した。
 
 その結果、日経平均株価は2万円の大台を回復して、日本経済は順調な回復軌道に移行した。ところが、この経済改善を森政権、小泉政権の財政再建原理主義が破壊してしまったのである。
 

2008年半ば以降、サブプライム金融危機に伴う経済悪化、株価暴落が世界経済を覆い尽くした。日本経済も急降下し、株価も急落した。この危機をグリーンスパンFRB前議長は「100年に1度の金融津波」と表現した。
 
 米国も日本も巨大な景気対策を実施し、その結果として2009年3月以降、日米経済は緩やかな景気回復を実現した。しかし、経済活動の水準は依然として低く、高失業率、中小企業の低迷持続の現状が日本経済を覆っている。
 
 政権が対応しなければならない課題は、日本経済の健全化、そして日本財政の健全化である。
 
 こうした現状に対する菅直人首相の姿勢は不鮮明である。

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所信表明演説では「強い経済、強い財政、強い社会保障」を訴えたが、内容は空虚だった。経済、財政、社会保障を強化すべきことは当然で、この目標設定に目新しさのかけらもない。社会保障制度を将来的に維持可能な姿に改変することは急務だが、その具体策が明示されていない。
 
 社会保障分野の経済活動が拡大することは事実だが、そのことだけをもって景気回復や経済の成長力が高まるわけではない。とりわけ、財政政策が増税先行の緊縮財政で進むなら、短期的には景気回復ではなく景気崩壊が生じてしまうからだ。
 
 菅首相は6月17日のマニフェスト発表会見で消費税率10%への引き上げを政権公約に掲げ、玄葉光一郎政調会長は最速2012年秋の増税実施を明言した。つまり、菅政権は財政再建原理主義で進むことを公約として掲げているのだ。
 
 また、2011年度予算編成で国債発行金額を44兆円以内に抑制することを予算編成方針の第一に掲げているが、この政策そのものが緊縮財政政策を意味している。
 
 なぜなら、2010年度予算は表面上、国債発行金額が44兆円になっているが、実態上は48兆円に拡大しているからだ。2009年度第2次補正予算計上の4兆円が2010年度にずれ込んだためである。
 
 予算の全体の枠組みを景気抑制にするのか、景気中立にするのか、景気回復誘導にするのかが、まず重要である。菅政権の基本スタンスは景気抑制にある。
 
 この基本姿勢を変えずに、目くらましのように経済復活枠を設定するのは邪道である。
 
 また、民主党は昨年8月の総選挙に際して国民との間に契約=約束を結んでいる。その後の財政事情の変化から、一部の施策の実施が困難になり始めている。
 
 予算に1兆円の枠が生まれるなら、まずは、マニフェストで掲げた施策実現に費用を当てるのが正当である。
 
 補正予算編成の弊害として掲げられるのが、一度限りのばらまき的な対象に政府支出が消えるというものである。1兆円の政府支出コンペがどのように実施されるのかで状況は変わる可能性があるが、一度限りの人気稼ぎのばらまき政策を実施するよりは、国民生活に不可欠な恒久的な政策実現に財源を優先的に配分するべきである。
 
 菅政権が提示している1兆円枠財政は「木を見て森を見ない」典型例であるように見える。
 
 菅政権は、このような小手先の政策にうつつを抜かす前に、財政政策の基本路線をどのように設定するのかを真剣に考えるべきだ。

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