木村剛氏逮捕『売国者たちの末路』を見定める
「天網恢恢疎にして漏らさず」
(てんもうかいかい、そにしてもらさず)
という。「大辞林」によれば、
「天網は目があらいようだが、悪人を漏らさず捕らえる。天道は厳正で悪事をはたらいた者には必ずその報いがある」との意味になる。
日本振興銀行元会長の木村剛氏が逮捕された。
私は拙著『知られざる真実-勾留地にて-』
知られざる真実―勾留地にて― 著者:植草 一秀 |
第一章「偽装」第7節「摘発される人・されない人」に、
木村氏が創設した日本振興銀行が木村氏の親族企業に不正融資を行った疑惑があり、金融庁が検査を行ったが、「これまでのところ摘発されていない」と記述した。
その木村剛氏がようやく摘発対象になった。背後に政権交代があることは間違いない。
木村剛氏を重用してきたのが田原総一朗氏である。かねてより、摘発対象候補者としてMHKなる用語が用いられてきた。
村上世彰氏、堀江貴文氏、木村剛氏である。
竹中平蔵氏が繰り返した「がんばった人が報われる社会」で、成功例として示されてきたのが、これらの人々である。
テレビ朝日など、木村剛氏を重用してきたテレビ局は、木村氏を礼賛する報道をいまだに続けているが、真実をまったく伝えていない。
本ブログのカテゴリー「竹中金融行政の闇」に詳論しているので詳細を省くが、木村氏が第一線に登場した2002年秋から不透明な行動は一貫して示され続けてきたのだ。「神様」だの「プロ」など、実態とかけ離れた解説を施すべきでない。
「不透明な」問題を五つ例示する。
①2002年10月に発表された「金融再生プログラム」は竹中氏が組織し、 木村氏がメンバーとして参加したプロジェクトチームがまとめたものである。
重大な問題は、このなかの「中小企業貸出に関する担い手の拡充」のタイトルの下に、「銀行免許認可の迅速化」の文言が盛り込まれたことだ。
日本振興銀行は2003年8月に予備申請を行い、2004年4月に開業している。驚天動地のスピードで銀行免許が付与されたのである。
木村剛氏が創刊した金融情報誌「フィナンシャルジャパン」
創刊号(2004年10月)表紙には竹中平蔵氏と福井俊彦氏のツーショット写真が掲載された。
典型的な公私混同と評価されて反論できないだろう。
②金融再生プログラム策定過程で、木村氏は繰延税金資産計上ルール変更を試みた。詳論を省くが、木村氏の提案に多くの問題があった。結局、ルール変更は見送られたが、この動きは、銀行の自己資本不足誘導→外資による日本の銀行収奪の目的に沿って提案された疑いが濃厚である。
③竹中金融行政はりそな銀行を標的に定めたが、その詳細を追跡すると、りそな銀行実質国有化全体が、大きな謀略そのものであったことが明らかになる。この問題で主導的役割を果たしたのが竹中平蔵氏と木村剛氏である。詳細は拙著ならびに、本ブログ、ならびに月刊日本講演録などを参照されたい。この問題では複数の死者が発生しており、巨大なインサイダー取引疑惑も存在する。
④日本振興銀行が木村氏の親族企業に対して実行した融資が不正融資に当たるのではないかとの問題が浮上した。しかし、前述したとおり、自民党政権時代には木村氏は摘発されなかった。
⑤今回の逮捕は検査妨害を理由とするものである。被疑事実は社内メールの削除を指示したというものだが、なぜ、メールを削除しなければならなかったのかが、今後の問題になる。
大きな問題が噴出することになるはずである。今回の逮捕はまだ入り口に過ぎない。
私は1992年から日本の不良債権問題の早期抜本処理を主張し続けた。不良債権問題の深刻さと抜本処理の重要性を最も早い段階から主張し続けた一人であると自負している。
この側面では、木村氏も早い段階から不良債権問題の早期抜本処理を主張していたから、当初は、私の主張と重なる部分が多かった。
しかし、2002年の竹中-木村癒着時代が始まると同時に、その行動が正義と公正から大きく逸脱していったと私は観察してきた。木村氏はりそなの繰延税金資産計上ゼロないし1年を強硬に主張し続けたにもかかわらず、政府が3年計上を決定し、りそな銀行を救済すると、政府決定の全面支持者に変質した。
昨日のテレビ東京「ワールドビジネスサテライト」が放映したVTR映像での「批判はいくらでもできる」との木村氏発言場面は、私との直接対決での木村氏による政府決定擁護発言である。
最大の問題は、行動の動力源である。竹中氏の行動、木村氏の行動を突き動かしてきた動機は、「公」でなく「私」であったと私は判断する。
政権交代が生じて、ようやく過去の暗部にメスが入り始めたのかもしれない。
永田町では対米隷属勢力と主権者国民勢力との死闘がいよいよ佳境を迎えつつある。早期に主権者国民勢力が権力を掌握して、対米隷属者たちの過去の暗部を白日の下に晒してゆかねばならない。
『売国者たちの末路』
売国者たちの末路 著者:副島 隆彦,植草 一秀 |
をしっかりと見定めてゆかねばならない。
売国者たちの末路 著者:副島 隆彦,植草 一秀 |
知られざる真実―勾留地にて― 著者:植草 一秀 |
« マスゴミが参院選完敗菅直人政権を擁護する訳 | トップページ | 木村剛氏逮捕「日本振興銀行の黒い霧」続編 »
「竹中金融行政の闇」カテゴリの記事
- 竹中平蔵氏の米国への巨大利益供与疑惑とは何か(2013.01.18)
- 木村剛氏逮捕「日本振興銀行の黒い霧」③(2010.07.24)
- 木村剛氏逮捕『売国者たちの末路』を見定める(2010.07.15)
- 日本振興銀行をめぐる黒い霧(2010.06.14)
- 「りそな処理疑惑」解明に関心示す亀井金融相(2009.11.10)
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 木村剛氏逮捕『売国者たちの末路』を見定める:
» 日本振興銀行事件で同銀行の実質的独裁者だったが金融ゴロ木村剛が警視庁についに逮捕された。コイズミ似非カイカクの負の遺産の象徴のような事件だけにマスゴミは報道の矮小化に努めているようだ [憂き世の日々に埋もれて、たまには温泉へ]
詐欺まがい金融機関日本振興銀行事件でついに同銀行の実質 的独裁者だった金融ゴロ、 [続きを読む]
» 前原大臣は沖縄問題で推進賛成派住人と密会しているらしい [mubouのブログ]
主権者国民レジスタンス戦線 参加ブログです 主権者国 民レジスタンス戦線の勝利に向けて ↓植草さんのココログへ ↓主権者は私たちですBBSへ 前原大臣は沖縄問題で推進賛成派住人と密会しているらしい。昨日、twitterでは、岩上安身さんによる上杉隆さんのインタビューがあった。上杉隆さんについて、エピソードも紹介された。 その中の一部でこのような話がでた。前原国土交通大臣が自ら沖縄に乗り込み、辺野古推進派の前市長と極秘会談をして基地反対派の現市長を追い落としを図っているのだそうだ。 おぞましくすざまし... [続きを読む]
» Asyuraの如く・観世音の如く・阿吽の如く [【正義のため神風を】Asyuraの如く]
Asyuraの如く・観世音の如く・阿吽の如く http://asyura-matuoka.blogspot.com/植草一秀の『知られざる真実』 2010年7月15日 (木) 木村剛氏逮捕『売国者たちの末路』を見定める http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-4248.html... [続きを読む]
» 沖縄よ、普天間基地撤去を諦めるな [ライジング・サン(甦る日本)]
鳩山首相が辞任し菅首相が就任した頃から、普天間基地問題は意図的に参院選と大相撲賭博問題などでマスゴミと外務省・防衛省・財務省などの官僚によって日本国民の記憶から消されそうになっている。
すでに日米合意が出来てしまって諦めそうな国民も多いだろうが、実はこれは日本... [続きを読む]
» 木村剛容疑者 金融庁の検査期間中に振興銀株を高値で手放していた。 [ライフログ ダイアリー]
銀行法違反(検査忌避)容疑で逮捕された日本振興銀行前会長の木村剛容疑者が金融庁の検査期間中に、自ら保有していた大量の振興銀株を手放していたことがあきらかになりました。
金融庁の立入検査後、同行は赤字に転落しており、前会長は高値の状態で売却したとみられて....... [続きを読む]
» CIAは実は無能なダメ機関⇒支配の中核を成す騙し「エリートは超優秀」の崩壊 [日本を守るのに右も左もない]
ブログ『杉並からの情報発信です』が、『雁屋哲の美味しんぼ日記』2010年7月11日「鳩山由紀夫氏から菅直人氏へ(2)」を紹介し、その情報発信を呼びかけている。 以下に記事の全文を転載します。長文ですが「目から鱗」の情報が満載ですので是非最後までお読みください。そして友人、知人への情報拡散をお願いします。 それによると、CIAというのは実は無能極まりないダメ機関らしい。そのダメ機関CIAが唯一成功したのが日本らしい。 いつも応援ありがとうございます。 ...... [続きを読む]
» 【木村剛】コイズミ・ケケ中一味による似非「構造改革」の真相を解明に繋げてほしい!【検挙間近】 [ステイメンの雑記帖 ]
先の通常国会において廃案となってしまった「郵政見直し法案」であるが、本来ならば秋に予定される臨時国会において成立を目指していたものだ。
然るに、今回の参院選での与党惨敗・ねじれ復活により、 法案成立は危機的状況 にあると逝っても過言ではない!
特に、お子ちゃま六奉行どもが、「アジェンダ」なる言葉を頻りに濫用する「喜美悪い加齢臭の男」率いる清和会別働隊「罠なNOT」に秋波を送る現状では成立は非常に厳しいと言わざるを得ない!
さて、言うまでもないが、「郵政民営化こそ改革の本丸」と抜かし、 我が国... [続きを読む]
» 「官」首相への国民の思いと、鳩山政権が日米史に刻んだ「日米規制改革委員会」廃止の事実 [父さんの日記]
参議院選挙投票日の7月11日、久しぶりに自宅での時間を取れたので、ツィッターの情報収集と書き込みをしました。その中から、私が発信したものや他の方からの非常に共感できる言葉をご紹介します。 最初に、我欲のために自滅した「官」直人首相への(参議院選前の段階での)国民の思いを共有できる言葉です。政治の季節【稗史(はいし)倭人伝】さんの記事「菅直人の大罪」 から引用しツィッターに書き込みました。▼菅は超党派で協議して「消費税増税案」がまとまったら総選挙で国民の信を問うと言うが、超党派でまとめた増税案を突きつ... [続きを読む]
» Barney Frank [Tokyonotes 東京義塾]
バーニーフランク米国議会議員はどんな人物か。 今日のワシントンからのニュースである。米軍の海外基地の問題について、発言するベテラン議員のニュースである。自立…自尊の日本を追求することが長期的に安定する日米関係の基礎になる。http://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=128434888 なんと、共和党のロン・ポール議員と、バーニー・フラン... [続きを読む]