両院総会で9月退陣意向を示唆した菅直人首相
7月29日午後、民主党が両院議員総会を開催し、7月11日に実施され、民主党が大敗した参院選についての総括案提示と質疑応答を行った。
しかし、執行部が提示した総括案は了承されず、再度、両院議員総会が開催される可能性が高まった。
意見表明の最後に石井一議員が、党内での参院選総括を公開の場で実施することに対する慎重論が示されたが、私は反対である。民主党は公党であり、政権与党である。その政権与党の意思決定過程が開示されることは、民主主義にとって望ましいことであり、今後も引き続き、公開の場での論議を継続してゆくべきである。
民主党内の責任論が盛んに論議されることを有権者が望んでいないとの意見を述べる議員が存在したが、これだけの選挙大敗の結果が生じるなかで、民主党執行部が責任を一切明確化しないことが異常である。そのなかで、民主党内部から正当な責任論が沸騰することは、民主党の健全性を辛うじて示すものである。こうした論議さえ封殺しようというのであれば、民主党は民主主義政党としての死を迎えざるを得ない。
両院議員総会では、民主党執行部の責任明確化を求める声が圧倒的に多かった。民主党公式サイトは、両院議員総会の全容を動画配信したので、主権者国民は時間をかけてでも、そのすべてを自分の目と耳で確かめるべきだ。
両院議員総会の全体を見たうえで、総会を総括すると以下の三点に要約できる。
①発言者の大半が党執行部の責任を厳しく追及した。その最大の背景は、これまで菅首相を筆頭とする執行部が参院選敗北の責任を一切示してこなかったことにある。
②メディア報道では、執行部批判が示された一方で、執行部を支持する意見も表明されたと伝えられているが、執行部支持を表明したのは4名に限られ、極めて限定的な見解であった。同時に、その主張にはまったく説得力がなく、出席者の賛同を得るものではなかった。
③総会で示された多数の意見に対して、枝野幸男幹事長と菅直人首相が答弁したが、答弁の質があまりにも低劣であった。枝野氏は他人を批判するときには舌鋒鋭いが、他者からの批判に対して、正面で批判を受け止め、全身全霊で自身の魂を打ち返すところがまったくない。政治家としての人間力がゼロに近いと評価せざるを得ない。この点は菅直人氏もまったく同様であり、言葉が虚ろに空をさまよう姿は、民主党の明日に絶望しかもたらさないように見える。
両院議員総会でもっとも明確な見解を表明したのは森ゆう子参院議員である。森氏は「両院議員総会は執行部の言い訳を聞く為の会ではない。トップリーダーとして何よりも重要なことは結果に対して責任を取ることである。」との正論を明示した。そのうえで、主権者国民から、「責任の取り方も知らないような政党に、責任ある政権運営を委ねるわけにはいかない」との声が寄せられていることが紹介された。
多くの発言者から、責任の明確化を求める声が噴出した。中津川博郷議員、川上義博議員、広野ただし議員、東祥三議員などから、結果に対して、正当に責任を取るべきとの主張が示された。
東祥三議員は、選挙は一種の戦争であり、106人の立候補者のうち、当選したのはわずかに44名で、残りの候補者が敗残したことを指摘した。各落選者に見解を求めると、どの候補者も自らの敗北を認め、捲土重来を期している。これに対して、戦争の司令官である執行部が、他人事のような総括を示して、責任を明らかにしない。こんな司令官などありえないことが強調された。
茨城県選出の小泉俊明衆院議員は、菅首相が提示した消費税大増税公約について、党内の民主的な論議を経ない増税公約提示が参院選大敗の最大の原因であると指摘した。民主党と言いながら、マニフェスト決定が北朝鮮のように非民主的であると非難したが、執行部は何らの反論を示せなかった。
政策の内容で俎上に載せられたのは、消費税問題と普天間問題だった。菅政権は日米共同文書を守ることを政権の発足時に示しているが、地元住民の同意を確保していない。沖縄では統一地方選、県知事選を年内に控えている。8月末と定めた工法、用地選定決定について、菅政権の対応を不安視する見解も表明された。
また、石川県選出の一川保夫議員からは、6月の政変後に党内一致結束体制を築けなかったことが、とりわけ1人区での大敗北につながったとの指摘があった。参院選の勝敗は29の1人区で決まると言ってよい。3年前の参院選では、小沢一郎代表が1人区対策を万全に進めたが、菅政権は民主党執行部を反小沢色に塗り固め、このことが1人区大敗北をもたらしたのである。
現執行部を擁護する発言を示したのは、杉本かずみ氏、近藤和也氏、斉藤進氏、山井和則氏などであったが、まったく説得力に欠くものであった。斉藤氏などは、「一致結束が大事だ」などと発言したが、菅首相が民主党を分裂させる人事を強行したことが参院選大敗北を招く一因になったことをまったく踏まえていない。山井氏の発言は、野党であれば無責任なマニフェストを示してもよいと主張する響きを持つもので、出席者から激しい非難の言葉を浴びせられるものだった。
菅首相、枝野幹事長の答弁は、結局、逃げとごまかし、国民切り捨てに終始した。見落とせない3点のみを列挙する。
①6月17日の消費税大増税発言は、明らかに広義の「公約提示」だった。玄葉光一郎政調会長が「公約」であることを認めている。これを「議論の提示が公約だと受け止められた」と強弁するのは、あまりにも見苦しい。菅氏にも枝野氏にも、最後の最後まで、潔さがない。
②普天間問題について、菅首相は、日米合意は「守る」とする一方、沖縄の負担軽減については「最大限努力する」と発言した。「対米隷属国民第二」の姿勢をこれほど明確に示す表現はない。日本の首相であるからには、沖縄の負担を「軽減する」とし、日米合意を「最大限守るよう努力する」と答えなければならない。
③菅首相は昨年9月の鳩山政権樹立で自分の政治生命の目標を達成したと述べた。菅首相にとっては、政権交代は手段ではなく目的だったのだ。
しかし、正論は異なる。政権交代は日本政治を刷新するための通過点に過ぎない。政権交代が目的なのではなく、政権交代を通じて、望ましい政治を実現することが目的なのだ。
最後の発言で菅首相は、9月代表選まではいまの形で頑張らせていただきたいと述べた。代表選出馬への意向は示したが、言葉のニュアンスから言えば、続投に自信がないことを表明するものであった。菅首相は9月代表選での首相退陣の覚悟を固めたのだと思われる。
自分の適正な出処進退を冷静に考える能力を残しているなら、望ましい引き際を自分で考えるべきである。民主党にとって、いま何よりも必要なことは、挙党一致体制を構築できるリーダーを代表に据えることだ。民主党の将来を真摯に考えるなら、小沢一郎前幹事長の力量を最大限に発揮してもらうよりほかに道はない。9月代表選に向けての正しい流れがようやく動き始めた感がある。
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売国者たちの末路 著者:副島 隆彦,植草 一秀 |
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(以下、引用開始)
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