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2010年6月30日 (水)

小沢氏を大衆迎合と非難する枝野氏の大衆蔑視

民主党の枝野幸男幹事長が、小沢一郎前幹事長に対して「大衆迎合だ」との批判を浴びせた。

枝野氏は民主主義の基本を理解していない。

民主党は昨年8月30日の総選挙で、主権者国民に政権公約を示して選挙を戦った。主権者国民は政党が示す政権公約を、虚偽でないとの前提で捉えて投票に臨む。

この結果として民主党を軸とする政権が樹立された。民主党は主権者国民に対して政権公約=主権者国民との契約を守る責任を負っている。

2009年度一般会計の税収は46兆円と見込まれていたものが37兆円に減少するとの見通しに修正された。9兆円の歳入見積もりの下方修正が、予算編成に大きな影響を与えたことは事実である。

ただし、37兆円に下方修正された2009年度税収見積もりが、今度は、38.5兆円に上方修正される見通しだ。財務省の能力低下が進行している。

予算編成では必要な政府支出の財源を調達しなければならないから、税収見積もりの変動は、当然、予算編成に影響を与える。国民に約束した政府支出が、財源調達の困難から見直しされることも生じてくることはある。

しかし、大原則としては、政党は主権者国民との約束を守り通すことに最大限の努力を払うべきである。主権者国民と契約を結んでおきながら、正当な事由もなく一方的にその契約を破棄することは「詐欺的行為」であり、政党の信頼を大きく損ねることになる。

税収の急減は100年に1度と言われる「サブプライム金融危機」に伴う世界景気後退によって生じたものである。財政赤字には、景気変動によって生じる「循環的赤字」と、景気変動とは関係なく生じる「構造赤字」の二つがある。

サブプライム金融危機に伴う税収減少は、当然、循環的な赤字である。「循環的赤字」ということは、いずれ、景気が通常の完全雇用状態に回帰すれば、消失する赤字である。

したがって、中長期の歳出政策は基本的に、循環的な赤字の変動に連動して変更されるべきものでない。枝野幹事長は幹事長として政策について発言するのなら、財政収支の経済学について、基本を押さえてから発言するべきだ。

6.2クーデター後に編成された菅直人内閣は、その出自において、主権者国民の意思を踏みにじるころから出発している。この点を菅政権の最高幹部が認識していないことが第一の問題である。

2006年春に民主党は解党の危機に直面した。2005年11月の総選挙に、岡田克也氏が率いる民主党は、明確な方針を示すことができずに惨敗した。岡田氏の後継代表に就任した前原誠司氏は偽メール問題の処理を誤り、民主党を解党の危機に追い込んだ。

この危機に火中の栗を拾ったのが小沢一郎元代表である。小沢氏は主権者国民を最重視する政策方針を示し、2006年4月千葉7区衆院補選、2007年7月参院選で民主党大勝を導き、政権交代実現の寸前まで民主党を躍進させた。

小沢氏が力量を発揮し、米官業が支配する日本政治構造が刷新される可能性が高まり、マスメディア・検察を含む既得権益勢力は、不正で不当な小沢一郎氏攻撃を展開し、昨年の三三事変を皮切りに、本年の一一五事変四二七事変などの政治謀略が相次いで実行された。

鳩山由紀夫前首相は、普天間基地移設問題で処理を誤り、内閣総辞職に追い込まれたが、辞任表明のなかで矛先を小沢一郎氏に向けたため、6.2クーデターを発生させる素地を作ってしまった。

6.2クーデター後に創設された菅直人政権は、主権者国民の意思を代表する政権ではない。菅直人政権は、昨年8月30日の総選挙に際して民主党が提示した政権公約を次々に破棄しており、主権者国民に対する「詐欺的行動」に突進している。

枝野氏は「大衆迎合」と表現したが、小沢氏の主張は「大衆迎合」ではない。総選挙の際に主権者国民と交わした約束、契約を誠実に実行すべきだとの「正論」を述べているにすぎない。

総選挙の際に主権者と交わした約束=契約=政権公約を、政党が十分な説明もなく、一方的に破棄することを押し通すなら、それは「大衆無視」であり、「大衆蔑視」である。

沖縄普天間問題でも、鳩山前首相は「最低でも県外」と主権者国民と約束した。「できるだけ県外」と約束したわけではない。

鳩山前首相は5月14日には、最終的な政府案を決定する前に、米国ではなく地元住民の同意を取り付けることも明言した。

しかし、結果として鳩山政権は、主権者国民の意思を無視して、辺野古の海岸に巨大滑走路を建設する、かつて自民党が決定した、米国の言いなりになる案を政府案として一方的に決定してしまった。

主権者国民の意思はこの問題でも踏みにじられているのである。

枝野氏は、この問題でも、主権者国民の意思を尊重して政府案を決定しようとする姿勢を「大衆迎合」だと批判するのだろうか。

つまり、枝野氏の言葉からにじみ出る姿勢は、主権者国民よりも優れた検討を行い、優れた結論を導くのだから、主権者国民は余計な口を出すな、黙って権力者である自分たち政治家にすべてを任せろ、というものである。

思い上がりもいい加減にしたほうがよい。

国民が主役の政治、主権者が国民である政治を作り上げると謳ってきたのは一体誰だったのか。

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菅直人首相はマニフェスト発表記者会見で、消費税率を10%に引き上げる方針を示唆した。玄葉光一郎政調会長は、「マニフェスト発表会見での発言だから、当然、公約だ」と明言した。

日本の主要国税税目の税収推移のグラフを掲載する。この税収推移グラフ財務省が公開している資料であるので、是非、日本全国の津々浦々にまで流布していただきたい。

 

Photo

1990年度から2009年度にかけて、経済規模を示すGDPは451.7兆円から476.0兆円へ小幅増加したが、税収は60.1兆円から36.9兆円に減少した。そのなかでの法人税と消費税推移は、

法人税 18.4兆円 →  5.2兆円

消費税  4.6兆円 →  9.4兆円

となった。

法人税が1990年度と比較して約4分の1に激減したのに対して、消費税は2倍強に増加した。

このなかで、菅首相は4分の1に減少した法人税を減税する一方で、低所得者ほど負担感が重くなる消費税について、10兆円もの大増税を実施する方針を示しているのだ。

数年来、法人税減税を主張する勢力が存在するが、法人税減税の主張に説得力はない。

政府税制調査会が2007年11月に発表した、

『抜本的な税制改革に向けた基本的考え方』には、

「課税ベースも合わせた実質的な企業の税負担、さらに社会保険料を含む企業の負担の国際比較を行った試算において、我が国の企業負担は現状では国際的に見て必ずしも高い水準にはないという結果も得た」

との表現が明記されている(17-18ページ)。

つまり、「日本の法人税負担は国際比較でみて高くない」というのが、日本政府の公式見解である

昨年8月30日の総選挙で民主党は、衆議院任期中は消費税増税を封印し、無駄な政府支出排除に全力をあげることを主権者国民と約束した。

菅首相の発言は、この主権者国民との約束を反故にするものである。

その後、内閣支持率が低下したために、発言内容がまたしても変化しているが、無駄な政府支出根絶なき大衆大増税を菅首相が意図している疑いが濃厚だ。最近の日本株価下落は、菅政権の財政再建原理主義に基づく緊縮財政への警戒感を反映するものでもある。

民主党国会議員422名のうち、120~150名の議員が小沢一郎氏に近いグループに属している。菅政権は反小沢勢力で主要ポストを固めたが、中間勢力が現在の執行部不支持に回れば、菅政権は立ち行かなくなる。

両者は同じ政党に属しているが、実は、水と油の同居と言ってよい、

対米隷属 VS 自主独立

官僚主権 VS 国民主権

大資本との癒着 VS 大資本との癒着排除

を軸に、できるだけ早期に袂を分かった方が良い。

日本政治に必要なことは、

①対米隷属排除

②官僚主権根絶

③大資本と政治権力の癒着排除

を軸とする政治構造を確立することである。

これまでの政策方針を聞く限り、菅政権に日本の新しい未来を託すわけにはいかない。民主党内自主独立派、国民新党、社民党を支援して、日本政治刷新を実現する新しい政権樹立を目指さなければならない。

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