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2010年6月18日 (金)

菅政権の超緊縮財政政策が日本経済を破壊する

1992年から2010年まで、日本経済はゼロ成長を続けた。この間、米国経済は2.24倍の規模に拡大、中国経済の規模は12.08倍に拡大した。日本は世界経済の成長から完全に取り残されて、停滞の20年を経験したことになる。

日本経済長期低迷の原因は三つある。第一は、1980年代後半のバブル経済の後遺症が大きかったこと。第二は、不良債権問題の早期適正処理を実行できなかったこと。第三は、経済政策が適正に運営されなかったこと、である。

「山高ければ谷深し」という言葉がある。1980年代後半、急激な円高進行のなかで、金利が急低下し、日本の資産価格が急騰した。日銀は1987年以降にマネーサプライを抑制しなければならなかったが、米国発の株価急落=ブラックマンデーなどが発生したことなどを背景に、金融政策の引き締めへの転換が遅れた。

その結果、日本に大規模な資産価格バブルが発生した。1990年代に入り、バブルが崩壊し、その余波として経済活動に強い下方圧力が生じたのである。

しかし、20年間も経済停滞が持続したのはバブル崩壊だけが原因ではない。バブル崩壊に対応する経済政策が適切に運営されなかったことが強く影響した。

第二の要因として提示した不良債権問題早期処理の失敗。日本政府は不良債権問題が表面化した1992年に抜本的な対応を実行するべきだった。ところが、大蔵省は天下り先の破たん処理に消極的な姿勢を示し、何も対応策を取らずに、問題を先送りした。

1998年になって、小渕政権が初めて抜本的な対応に動き始めたが、その後、小泉政権がマクロ経済政策対応を誤り、結局、問題が完全に解決せぬまま、20年の年月が流れたのである。

全体を通してみると、日本経済低迷20年の最大の要因は、経済政策運営の失敗にある。日本経済は1996年と2000年に本格浮上するチャンスを得た。いわゆる巡航速度の経済成長が実現し、この安定成長を維持すれば、さまざまなひずみが解消する好機を得たのである。

このチャンスをつぶしたのは、財務省の近視眼的な財政再建原理主義だった。1997年度、橋本政権は景気と金融に大きな不安が存在するなかで消費税増税に踏み切った。事態をより深刻化させたのは、消費税増税以外にも大規模なデフレ政策が併用されたことである。

2001年度に登場した小泉政権は、危機的な財政状況を改善することが最優先課題であるとして、超緊縮財政政策を実施した。これと並行して、「退出すべき企業を退出させる」方針を掲げ、企業の破たん処理を推進した。

この結果、株価は2年で半値に暴落し、日本経済は金融恐慌の危機に直面した。結局、小泉政権は公的資金で銀行を救済するという、掲げた方針とは正反対の施策で対応せざるを得なくなった。一方、このプロセスは、政策運営を事前に知った者だけが莫大な不労所得を得るための背徳の政策シナリオだった可能性が高い。

2008年から2009年にかけて、米国発で新しいバブル崩壊が表面化した。今回のバブル崩壊は不動産バブル崩壊ではなく、デリバティブ金融バブルの崩壊である。

不動産バブル崩壊の規模は兆ドル単位だが、デリバティブ金融バブル崩壊の規模は100兆ドル単位である。通常兵器と核兵器との格差に近い。

600兆ドル規模に拡大したと見られるデリバティブ金融商品の価格バブルが破裂した。損失は数兆ドルに達する見込みだが、現状ではまだ1兆ドル程度しか処理が完了していない。

2009年に主要国は巨大な財政政策を発動した。このケインズ政策により、世界経済は一時的な回復を示した。しかし、この政策効果が縮小するにつれて、先行き不透明感が広がり始めている。

新たな問題を生み出す先頭に位置するのが欧州である。欧州諸国の一部に財政事情が極度に悪化して、デフォルト不安が表面化した。もとより財政支出拡大に消極的な欧州諸国が、一段と緊縮財政にかじを切り始めた。詳しくは『金利・為替・株価特報』をご高覧賜りたい。

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このタイミングで、日本で政治クーデターが発生した。

国民生活を最優先する政権が総辞職し、米国、官僚、大資本と癒着する新政権が民主党内クーデターにより樹立された。

この菅新政権が財務省主導の財政再建原理主義に基づく暴走を開始した。

2011年度当初予算での国債発行金額を44.3兆円以内に抑制し、2012年度に消費税率5%ポイント引き上げを実施する態勢を示し始めたのだ。消費税率が5%引き上げられれば、9兆円の増税になる。この方向に政策が進めば、日本経済が三たび破壊されることは間違いない。

日経平均株価は本年4月5日の11,339円をピークに下落波動に転じる可能性が高まる。

財政収支が極度に悪化した最大の理由は、不況の進行にある。したがって、財政健全化にとって、まず必要なことは、経済の回復である。

経済を回復させ、政府支出の無駄を排除する。増税などの増収措置は最後に発動すべき施策なのだ。増税で景気が良くなることはあり得ない。増税で景気が悪化すれば、財政収支は良くなるどころか悪化する。これは橋本政権時代に経験済みである。

政府支出が追加される領域で、当該分野の成長が促されるのは当たり前の話だ。これを成長戦略と呼ぶことはできない。一国経済の国際経済における分業のあり方の変化に伴い、成長分野は変化する。

かつて、日本が輸出で成長を実現した時代は、製造業が成長のけん引役だった。これからの日本では、医療、介護、養護などの分野の成長が拡大するのは当然のことである。

財政の健全化、経済成長の実現、持続可能な安定した社会保障制度の確立は、いずれも重要課題だが、緊縮財政でこれらが実現するわけではない。

「強い経済、強い財政、強い社会保障」の言葉は正論だが、この言葉には、その実現のための具体的方法はまったく含まれていない。問題は、この課題をどのようなプロセスで実現するのかである。

この視点で問題を捉えるときに、もっとも可能性の高い政策失敗は、財務省主導の超緊縮財政政策路線の道に引き込まれることである。この道は「けもの道」である。橋本政権も小泉政権もこの「けもの道」に迷いこんで、主権者国民に多大の犠牲を生んだ。

消費税増税を明確に打ち出すことが、「勇気ある行動」として称えられやすい風潮があるが、こうした人気目当ての政策運営は危険極まりない。

世界経済が2011年に向けて、再び悪化する懸念が強まりつつある現在、経済政策に求められる最優先課題は、「景気回復の維持」である。「景気回復維持」を捨てて、財政収支均衡化に突進して経済を破壊し、国民に多大の犠牲を生み出した歴史事実の前に謙虚でなければならない。

菅直人新政権のマクロ経済政策運営に巨大なリスクが浮上している。

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