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2010年6月10日 (木)

郵政改革法成立阻止を目論む対米隷属政権勢力

鳩山政権が国会に提出した郵政改革法案の今国会での取り扱いが焦点になっている。菅直人政権が発足するに際して、民主党と国民新党との間で合意が締結され、「郵政改革法案の今国会での成立を期す」ことが確認された。

しかし、国会会期を延長しなければ郵政改革法の今国会成立が困難な状況になった。菅政権内部では郵政改革法を成立させずに国会を終了させようとの主張が強まっている。

この問題は単なる法律案の問題ではない。菅新政権の基本性格に関わる重要問題である。

2001年に小泉政権が発足した。日本政治構造の刷新とは、小泉政権が確立・強化した日本政治の基本構造を刷新することである。

小泉政権は

①対米隷属

②官僚利権温存

③大資本と政治権力との癒着

を基礎に据えて、

④市場原理主義

の経済政策を実行した。

この結果、日本社会は荒廃した。市場原理主義は自己中心主義と表裏一体をなす。日本全体に自分さえよければとの発想が蔓延した。同時に目的のためには手段を選ばない、経済的利得のためには何をしても構わない風潮が広がった。

企業部門においては、利益を出すために従業員を犠牲にする行動様式が広がった。小泉政権は製造業への派遣労働解禁などの施策を実行したが、その結果、年越し派遣村の問題が表面化した。

経済的格差が著しく拡大するとともに、貧困層が激増した。

市場原理主義の蔓延は手段を選ばずに自己の利益のみを追求する経済行動を助長し、各種の経済犯罪が多発した。竹中平蔵氏は「頑張った人が報われる社会」と喧伝したが、竹中氏が成功者として絶賛したのは堀江貴文元ライブドア社長などの人物であった。

2008年後半に顕在化したサブプライム金融危機は、市場原理主義に対する見直しの契機になった。相互の信頼、互助の精神が尊ばれる「共生の思想」への回帰が日本全体に広がったのである。これが、昨年の政権交代を実現させた基本背景である。

小泉政権時代の経済政策の素性も次第に明らかにされるようになった。

2003年にかけて日本経済は戦後最悪の不況に追い込まれ、株価が暴落し、金融恐慌の危機が目前に迫った。危機をもたらしたのは、小泉政権の財政再建原理主義に基づく緊縮財政と銀行破たんをも辞さないとする企業破たん推進政策だった。

日経平均株価が7607円に暴落する過程で、日本経済に失業、倒産、経済苦自殺の灼熱地獄が広がった。この地獄絵図は人為的にもたらされたものだった。

退出すべき企業を市場から退出させることを軸に置いた小泉政権の経済政策が株価暴落と日本経済破壊をもたらしたが、2003年5月、小泉政権は突如、政策を大転換した。りそな銀行に2兆円の公的資金を投入してりそな銀行を救済したのである。

公的資金による銀行救済で株価は急反発し、日経平均株価は8月に1万円を回復した。株価暴落誘導とその後の株価急反発誘導は計画的に実行された可能性が高く、政府による巨大インサイダー取引疑惑が濃厚に存在している。

小泉政権は米国の指導を受けて、株価暴落と株価急反発を人為的に誘導した可能性が高く、この過程で政府関係者が巨大利得を得た疑いが濃厚である。

りそな銀行の自己資本不足および預金保険法102条第1項第1号規定適用に関して、竹中平蔵氏、木村剛氏、奥山章雄氏などの人為的な関与が疑われている。りそな問題に関しては複数の関係者の不自然な死亡が生じた。

また、2009年には「かんぽの宿」不正売却未遂問題が表面化した。時価1000億円を超すと見られる「かんぽの宿」関連79施設が、109億円の安値でオリックス不動産に払い下げられようとした。不自然な売却を感知した鳩山邦夫総務大臣(当時)が、国会で問題を取り上げた結果、この不正売却は白紙に戻され、日本郵政の西川善文社長は引責辞任に追い込まれた。

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小泉政権は政権の看板政策として郵政民営化を掲げたが、小泉首相がこの政策を掲げた理由は以下の三点にあると見られる。

第一は、個人的な郵政に対する怨恨。小泉氏は総選挙に初めて出馬した際に郵政の応援を獲得できずに落選した。爾来、郵政に対する怨恨の感情を持ち続けてきたと見られる。

第二は、郵政民営化が銀行業界の永年の念願であったことだ。小泉氏はれっきとした大蔵族議員である。大蔵族議員が擁護する業界とは金融業である。金融業への利益供与として郵政民営化が提案されたと考えられる。

第三は、米国が郵政民営化を強く要請したことだ。米国が狙いをつけたのは、郵貯の220兆円の資金、かんぽの100兆円の資金、そして、日本郵政保有の巨大不動産資産だった。

小泉政権は政府部門内に滞留する郵政マネーを民間経済に還元し、日本経済の発展を支援すると説明した。しかし、日本郵政株式会社が発足した2007年10月以降にこの公約が実現した事実は存在しない。郵政マネーの民間経済への還流の前宣伝は真っ赤な嘘だった。

竹中氏は日本郵政が発足してから企業利益が増大したと主張するが、日本郵政は日本郵政発足直前に巨大な特別損失を計上しており、この会計操作によって、日本郵政発足後の利益が増えたように見えただけにすぎない。

日本郵政は株式会社移行後に、過酷な労働強化を実行するとともに、雇用形態を不安定な非正規従業員にシフトさせた。

そのなかで、従業員数が著しく少なく設定された郵貯銀行とかんぽ生命の全株式が市場で売却されようとしていた。外資が株式を集めれば、300兆円の資金を手中にできる算段だった。

他方、残る日本郵政株式会社に帰属する部分も、株式の3分の2が売却される予定とされていた。

株式売却後に過剰人員を整理すれば企業価値が急上昇し、株価が急騰する。外国資本が日本郵政株式を買い集めれば、小額の資本で巨大な日本国民財産を収奪できるはずだったのだ。

郵政民営化の法制化においては、郵政民営化準備室と米国の関係者が17回もの会合を重ねて細目が決定された。米国関係者が法律を作成したと言って過言でない。

昨年9月に発足した鳩山政権は政権発足直後に郵政株式売却を凍結する法律を国会で成立させ、また、かんぽの宿の不正売却を回避するための法的措置も実行した。外資による日本国民資産収奪がぎりぎりのことろで食い止められた。

その延長上で今回、郵政改革法案が国会に提出された。マスメディアは郵貯預け入れ限度額引き上げを批判するが、この措置は、郵便事業、金融窓口のユニバーサルサービスを実現するための財源確保を目的に取られる措置だ。

郵政民営化により、地方の郵政サービスが大幅に切り込まれ、主権者国民からの不満の声が強まった。日本郵政がスタートしてから、日本郵政に対する信頼が一気に失われ、郵貯残高は220兆円から一気に175兆円まで激減した。

この状況を放置すれば、郵貯とかんぽの破たんは時間の問題だった。

ユニバーサルサービスを維持するための新たな税金投入は許されない。この事情を踏まえて、預入限度額の引き上げが示されたのであり、郵政改革法案は正当性を備えている。法律成立を国民新党が強く求めるのは当然である。

6.2クーデターにより、小沢一郎民主党前幹事長の影響力排除が画策された。小沢-鳩山-菅のトロイカ体制に反旗を翻して、菅新首相は仙谷-前原-枝野の民主党内市場原理主義派と手を結んだ可能性が高い。

民主党内市場原理主義派は小泉竹中路線と連携する一派である。

このグループの基礎が、

①対米隷属

②官僚利権温存

③大資本と政治権力との癒着

④市場原理主義

の4点なのである。

 裏で支配しているのは米国である。米国は小泉政権に指令して実行させた郵政民営化プロジェクトが昨年の政権交代により挫折したことに強い憤りを感じてきたはずだ。

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 6.2クーデターの実行により郵政改革方針の修正までが狙われ始めたと見て間違いない。

 菅政権が郵政改革法案成立に後ろ向きの姿勢を示すなら、国民新党は連立政権から離脱するだろう。その場合、参院選の後になる可能性は高いが、民主党が分裂する可能性が高まる。

これを契機に、

①対米隷属

②官僚利権温存

③大資本と政治権力の癒着

④市場原理主義

の是非という対立軸により、政界が大再編される可能性が生まれる。

この軸による政界大再編が実現するなら、それは望ましいことだ。しかし、自主独立派は必ず対米隷属派に勝利しなければならない。

問題は、自主独立派の旗頭が現段階で明確でないことだ。

また、対米隷属派が、官僚利権根絶、大資本と政治の癒着排除などの、うその主張を展開する可能性が高いことにも注意が必要だ。マスメディアは米国に支配されるから当然、対米隷属派を全面支援する。

このなかで、自主独立派が勝利するための方策を考えねばならない。

菅新首相は普天間問題で、沖縄の人々よりも米国を重視する選択を示した。日本国民がこの姿勢を容認するのかどうかが問われる。

菅新首相は「菅新政権は対米隷属政権」との規定を否定するなら、早期にその姿勢を行動で示すべきだ。

菅新首相が対米隷属をすべての基本に据えるなら、自主独立を重んじる主権者国民は対米隷属総理を排除するために力を注がねばならないことになる。

普天間問題で鳩山政権が退陣し参院選が実施される。参院選の最大の争点を「対米隷属の是非」としなければならない。

「対米隷属」を打破するために政権交代を実現したのに、菅新政権が対米隷属路線に走ることは、主権者国民からの政権の略奪である。対米隷属派に政権獲得の正当性はない。

政権交代勢力の正統が自主独立派であることを示さねばならない。

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