普天間問題対米隷属継続を宣言した菅直人首相
菅直人政権が発足した。
オープンにし、透明性を高めることは望ましいことだ。
公約違反にならないようにしっかりと取り組んでもらいたい。
政権発足に際して、菅直人総理大臣が記者会見を行った。
三つの重要な問題が存在する。
第一は、沖縄普天間問題への対応が、菅政権の主権者国民無視=対米隷属を明示すること。
第二は、国民生活を守る視点からの経済政策論議が欠如していること。
第三は、官房機密費問題に対する姿勢が「不透明」であること。
第一の点について、菅総理は「日米同盟が基軸」であり、日米合意に基づいて進めてゆかねばならないと説明した。鳩山内閣が総辞職に追い込まれた原因を枝野幸男幹事長同様、菅総理もまったく正しく認識していない。主権者国民を土足で踏みつける対応である。
昨年9月に発足した新政権は、日米合意が存在することを知った上で、普天間飛行場の移設先を変更することを公約に掲げて政治を運営した。その根拠は、日本の主権者である国民、沖縄県民が県外あるいは海外への移設を強く求めたことにある。
鳩山内閣は本年1月に実施された沖縄県名護市長選を民意の表明として注視したが、結果は基地移設拒絶を訴えた稲嶺進氏の当選であった。沖縄県民の県外あるいは海外への移設を求める声は日増しに強まり、本年4月25日には知事も参加して県内移設拒絶の県民大会も開かれた。
鳩山前総理が掲げた目標は極めて困難なものであったが、二つの意味で、極めて重大な意味を帯びるものだった。
ひとつは沖縄の過酷な負担を軽減する画期的な施策であること、いまひとつは、米国の言いなりになり続けてきた戦後日本外交を質的に転換させる最大の契機になることだった。
米国に対して言うべきことを言えなければ、真の独立国とは言えない。日本の国のあり方を変える画期的な試みであった。しかし、この歴史的な取り組みを成功させるには、周到な研究、強固な理論武装、不屈の精神力が不可欠であった。この三点が備わっているのかどうか、私は当初、強く懸念した。
しかし、鳩山総理は政権発足に際して、改めてこの目標を実現することを明確に掲げた。掲げた以上、体を張って、最後までやり抜かねばならなかった。
小沢一郎前幹事長は、普天間の海外移設をやり抜く腹を固めたと思われる。米国は小沢氏と接触して小沢氏を懐柔しようと試みたが、小沢氏の判断が強固であることを察知して小沢氏に対する米国招聘を取り下げたのだと考えられる。
鳩山内閣が普天間基地の海外移設をやり通せば、日本の歴史は大きな1ページを開くことに成功したはずである。
しかし、鳩山総理は外務省、防衛省の包囲網を突破できず、辺野古海岸破壊案に舞い戻ってしまった。その結果が社民党の政権離脱であり、内閣支持率の致命的な低下だった。鳩山内閣が総辞職に追い込まれた最大の原因は普天間問題の決着を誤ったことにある。
ところが、総理続投の意思を有していた鳩山総理は退陣を迫られ、小沢一郎氏を道連れにしてしまったのである。と同時に、鳩山内閣総辞職の原因を普天間問題から「政治とカネ」問題にすり替えてしまった。
メディア報道は、すべてこの路線を採用した。鳩山政権崩壊の主因である普天間問題を取り上げずに、「政治とカネ」問題だけを取り上げる。そして「政治とカネ」問題はイコール小沢氏問題としたのである。
この図式に従って、新政権の課題がいつの間にか普天間日米合意の再検討ではなく、「政治とカネ」問題への対応になり、脱小沢が新政権の課題であるとのストーリーが仕立て上げられた。誰がこの筋書きを用意したか。
真実はまったく違う。鳩山内閣崩壊の原因は、鳩山総理が日本の主権者を無視する対米隷属の決定を示したことにある。
鳩山前総理は政府案を決定するには、連立与党、主権者国民、米国の同意が必要だと繰り返してきた。ところが5月28日に鳩山総理が示した政府案は、連立与党の同意を得られない、主権者国民の同意を得られない、米国がゴリ押しした元の日米同意だったのだ。
日本の主権者国民がこの政府決定を呑めるわけがない。政府決定を呑めないのは社民党だけでない。日本の主権者国民が呑めない案なのだ。だから鳩山内閣が崩壊した。当然の帰結である。
小沢一郎前幹事長は、海外移設の覚悟をもって対応し続けた。鳩山前総理が米国に屈服するのでは総理退陣を免れないとの判断を固めたと思われる。
ところが、鳩山総理が辞任表明発言で、すべての真実が巨大な虚構によってすり替えられてしまった。
メディアは普天間問題についての世論調査を一切実施しない。大きな力が働いている。大きな力によって、この問題に対する世論調査が禁止されているとしか考えられない。
小沢一郎氏が火祭りにあげられた。人間として最低の部類に属するとしか見えない渡部恒三氏をヒーローに仕立て上げるメディア報道には反吐を吐くしかないが、背後に大きな力が働いていることは明白である。
「対米隷属」の呪縛から日本はまだ離れられないのだ。
鳩山内閣が普天間問題の処理を誤って総辞職に追い込まれたとの原点を、じっくりと再検証することが、新政権の最初の課題であるはずだが、菅政権の向う方向が異なる。
菅新総理は記者会見で、
「日米の間の合意はでき、それに基づいて進めなければならないと思っております」
と述べた。
日米の間の合意ができたのは事実だが、主権者国民と連立与党での合意を得られなかったのであり、そのことが政権崩壊の主因になった。
社民党が政権離脱したから菅政権内部の問題ではなくなったが、主権者国民の同意はいらないと言うのか。
「それに基づいて進めなければならない」というのは、主権者国民よりも米国を優先することに他ならない。
このスタンスを変えないなら、菅氏が就任したのは、アメリカ合衆国日本州知事か、アメリカ合衆国領日本総督府総統でしかない。
長くなるので、第二、第三の問題については稿を改める。
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売国者たちの末路 著者:副島 隆彦,植草 一秀 |
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知られざる真実―勾留地にて― 著者:植草 一秀 |
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