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2010年5月29日 (土)

日本のことを日本人が決定できない悲しい現実

普天間問題をめぐる混乱を突き詰めて考察すると、

「この国を支配しているのは誰であるか」

という問題に帰着する。

私も辺野古を訪問したことがある。

この美しい海、かけがえのない大自然を破壊して巨大軍事基地を建設することに賛成する日本人がどれだけいるのか。

経済振興というが、経済を振興するなら別の方法を考えればよい。

沖縄の辺野古の海を破壊して巨大軍事基地を建設したいのは米国だけである。日本人で積極的に賛成するのは、金魚のフンのように米国に追従する者だけである。

消極的な賛成は、経済のためのやむを得ない選択であるにすぎない。

鳩山総理の致命的な誤りは「抑止力」を辺野古移設の根拠としたことである。

この主張では、辺野古案の必然性が簡単に粉砕されてしまう

「抑止力」が絶対的なものであれば、その主張は正当である。しかし、「抑止力」は絶対的な基準でない。しかも問題は、沖縄海兵隊の抑止力が、専門家の間で共通認識として認められた、標準的な基準でもなかったことだ。

海兵隊の主要任務は有事の際の米人保護にあり、海兵隊の存在により、日本の安全保障が確保されるとの類いのものではない。

ニセモノを高額でつかまされた被害者が、しかし、こんな立派な鑑定書が付いている。鑑定書にはン億円の価値と書いてあると泣き言を言う。しかし、その鑑定書そのものが単なる創作物であったことが分かる。こんな話だ。

米国は日本に多数の代理人を送り込んでいる。送り込んでいるというよりは、日本人のなかから適宜、代理人を選定して使命を与えている。鳩山総理の考えを変えるにも多くの代理人が用いられたと思われる。

そもそもの間違いは、日本の旧体制=旧政権が米国との間で、辺野古の海を破壊する巨大軍事基地建設に合意してしまったことだ。

鳩山総理が批判を浴びているのは、結局、この案に戻ってしまったからである。つまり、そもそもこの案を策定した人々も同時に批判の対象になっていることを見落としてはならない。

自民党は鳩山政権を批判するが、筋違いも甚だしい。また、旧体制が辺野古海岸破壊軍事基地建設案を決定したときに自民党に所属した議員が、いま鳩山総理を批判するのもおかしい。

この問題の出発点は、旧政権が決めた辺野古海岸破壊軍事基地建設が日本の主権者の意思に反していることにある。この点を忘れてはならない。

鳩山総理が、日本政府が一方的に沖縄に押しつけてきた多大の負担について、日本の全国民が認識し、考察する機会を作り出したことは重要な功績である。

沖縄県名護市では本年1月に市長選が行われた。市長選では基地移設拒絶を公約に掲げる稲嶺進氏が当選した。

4月25日には沖縄で県内移設反対の県民大会も開かれた。

マスメディアも、沖縄県民の県内移設反対の行動を「民意」として紹介してきたのではないか。

一度日本政府が米国政府との間で決定した合意であっても、政権が代わり、日本国民の総意として県内移設拒絶を決定するなら、日本政府は米国政府にこの決定を伝達すればよいのだ。

米国は激怒するかもしれない。

場合によっては日米安全保障条約廃棄に進むかもしれない。

日本は、当然、あらゆる可能性をあらかじめ考えておかねばならない。

しかし、すべての可能性を考慮したうえで、辺野古への移設を中止すると日本が決定するなら、それは最終決定である。日本のことについて決定する権限は日本にある。日本における主権者は日本国民である。

鳩山総理は「最低でも県外」と明言して総選挙を戦った。国民は鳩山政権を樹立した。鳩山総理はこの民意を背景に、普天間基地移設先変更を掲げて行動した。移設先決定期限は本年5月末と定められた。

さらに、鳩山総理は、決定に際しては、政府内、地元住民、米国、の三者の合意成立が必要であると述べた。5月14日には、地元の合意を確保することが米国との合意を得ることよりも優先されると述べた。

しかし、これらの必要不可欠なプロセスをすべて飛ばして辺野古に1800メートルの滑走路を建設することが日米合意で発表された。

連立与党の福島みずほ党首が署名を拒絶するのは当然である。

辺野古に戻った理由について、鳩山総理からは「抑止力」以外の説明はない。

しかし、「抑止力」で納得する国民はほとんどいない。

突き詰めて言えば、結論を米国が決めたのである。

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「抑止力」を根拠に辺野古に決定するためには、最低二つのプロセスが必要である。

第一は、海兵隊の日本駐留が「抑止力」の視点で日本にとって必要不可欠であることを日本の主権者国民が認めること。

第二は、海兵隊の日本駐留が「抑止力」の視点から日本にとって必要不可欠なものであることを前提としたうえで、その駐留先は沖縄県辺野古以外にありえないと日本の主権者国民が認めること。

この二つのプロセスがどうしても必要である。

また、強い米国を怒らしてはならないとの理由で辺野古案に回帰するなら、国民に対して、

「米国を怒らせる可能性があるから、米国を怒らせないために辺野古案に回帰する」

ことに賛成するかどうかを日本国民の意思を確かめる必要がある。これに対して日本国民が、

「米国を怒らせることは避けたいから辺野古でやむを得ない」

との意思を示すなら辺野古案に回帰することは正当化される。

日米合意では1800メートル滑走路の文字が明記されたが、ヘリ離着陸用施設であれば、1300メートルで十分であるはずだ。1300メートルであれば、陸上部への建設の可能性が生まれる。

米国はオスプレイ配備を決めていると見られるが、オスプレイを配備する場合でも、運用方法の工夫により1300メートル滑走路で必要は満たされるはずだ。

鳩山政権が普天間の危険除去を最優先するために米国に譲歩し、沖縄県辺野古への「暫定的な」移転を容認するというなら、ひとつの見識である。この姿勢で着地点を見出そうとするなら、辺野古での新施設建設を陸上部として、滑走路の長さを1300メートルに短縮することを日本は強硬に主張するべきであった。

5月末までに決着が困難であれば、8月までの細目決定のなかに、滑走路の長さを組み込むべきであった。

今回の鳩山政権による日米合意の最大の欠陥は、決定案が米国の主張そのものであることなのだ。

つまり、決定したのは日本ではない。米国が決めたのだ。日本は合意内容の変更を打診したのだろう。ところが、米国に一蹴され、結局、米国の主張通りの案を決めたのである。

旧政権も米国の主張通りの決定をしたのだから、旧政権の決定時に旧政権側にいた人物に発言権はない。

日本の決定を日本ができない現実。

これが日本の現状なのだ。

「対米隷属の打破」

言うは易く行うは難い。

しかし、これを実現しなければならない。

「対米隷属の是非」

これを参院選の最大の争点とするべきである。

「企業団体献金の全面禁止の是非」が最重要の争点だと考えてきたが、この問題は匹敵する。

しかも、両者は驚くほどに重なるはずだ。

「対米隷属の排除・企業団体献金の全面禁止」

「対米隷属の維持・企業団体献金の維持」

で参院選を闘うべきである。

政界もこの軸に沿って再編されるべきと考える。

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