鳩山総理は米代理人更迭内閣改造を実施すべし
民主党の川内博史衆院議員を団長とする視察団が北マリアナ諸島、グアム、サイパンを訪問し、北マリアナ諸島議会議長から鳩山総理に宛てた信書を携えて帰国した。
北マリアナ諸島はグアム・テニアンでの代替施設受け入れ方針を表明しているが、難航する普天間基地返還問題を打開する極めて有力な提案である。
私に対してグアム・サイパンに関する情報を提供くださった方の資料によれば、米軍は2006年以降、自国領グアムを、海兵隊を含む太平洋軍の一大軍事拠点とする計画を進めており、すでにそのための環境アセスメント案を現地で公表している。
グアムには現在、普天間基地の13倍、嘉手納基地の4倍もあるアンダーセン空軍基地があるが、アセスは「沖縄海兵航空隊を受け入れて余りある」と「評価」しているとのことだ。
鳩山由紀夫首相は日米間で辺野古海岸にV字形滑走路を建設する合意があることを踏まえたうえで、昨年8月の総選挙に際して、「最低でも県外」との方針を示した。
民主党のマニフェストでは、日米合意が存在していることを踏まえ、「移設案の見直し」との一歩引いた表現が用いられた。民主党内に、合意を覆すことは困難との慎重論があるなかで、鳩山総理はあえて「最低でも県外」との主張を展開して総選挙を闘ったわけである。
総選挙後、今日にかけて鳩山政権内部で普天間基地返還問題が検討されてきたが、国外移設案が真剣に検討された形跡はない。
その理由は単純である。米国が麻生政権との間で成立させた合意をすべての出発点に置いており、この水準から大幅に後退するいかなる提案にも応じない姿勢を示したからである。
米国の立場に立てば、日本政府が政府として米国政府と成立させた合意であるから、正当な事由なく合意を変更されては困るということだろう。仮に合意を変更したいと云うのなら、米国の利益水準が低下しない程度の代替案に留めるべきであると主張するだろう。この主張を米国が示すこと自体は当然のことであると思う。
しかし、鳩山総理は、こうした事情が存在する現実を知らずに選挙演説をしたわけではない。合意が存在している事実を認識し、したがって、その合意内容を変更することが外交問題として極めて困難な作業であることを認識し、そのうえで、あえて「最低でも県外」との方針を示したのである。
鳩山総理が方針を撤回するのであれば、その機会は存在した。政権が発足した時点で、政権公約を再精査し、実現不能な公約については修正をする必要があった。政権発足時点で公約について見直しを実行し、実現不可能な公約を撤回していたなら、それはひとつの問題処理方法であったと思う。
しかし、鳩山総理は政権発足後も普天間飛行場閉鎖に関連する公約を維持し、2010年5月までに結論を示すことを明示し続けた。
最終的に5月末の段階で、すべての関係者の合意が成立していなくとも、鳩山総理の責任問題は必ずしも浮上しないだろう。普天間基地問題の本質は日本の国内問題であり、国内関係者の合意を5月末までに得られるのであれば、残る米国との交渉については、時間を延長しても差し支えはないだろう。
5月末と云うのは、日本国民に対する約束であるからだ。
鳩山総理が解決困難な課題に果敢に取り組んできた最大の理由は、沖縄の過大な負担、重過ぎる現在の負担と危険を是が非でも軽減したいと考えたからであると思われる。鳩山総理のこの考え方は正論そのものである。
しかし、米国との間に合意が存在するなかで合意を新たに代替案に変更することは容易なことではない。精力的な対応を実行しなければ、実現は困難だ。
しかしながら、日本全国各地における米軍基地に対する姿勢は極めて厳しいと言わざるを得ない。問題は日本の主権者国民が日本の安全保障問題を念頭に置いて、米軍にどのように対応しているかということだ。
米軍基地の存在にさまざまな問題があるにせよ、日本の安全保障確保の観点から米軍が必要不可欠であるとするなら、場所はさておき、米軍が必要であるとして、必ず候補地を選定しなければならないとの対応が示されるべきだ。
ところが、マスメディアの対応を含めて日本の対応はまったく異なるものだった。米軍基地そのものに対する拒絶反応をマスメディアが率先垂範したのである。マスメディアの示した行動は、「ヤンキーゴ―ホーム」そのものであった。
また、沖縄県名護市では、本年1月に市長選が実施された。鳩山総理も名護市の民意を尊重するとの方針を示し続けた。その名護市では、海岸滑走路建設だけでなく、陸上基地も、もちろん沖合基地も、すべての基地移設に反対を表明する市長が誕生したのである。
他方、他の沖縄県内候補地、国内代替施設候補地についても、一斉に基地断固拒絶の運動が燎原の火の如くに広がった。
鳩山政権は主権者日本国民の民意を代表する政権である。普天間基地移設問題は外交の側面を持つとしても、本質は国内問題である。
これだけの情勢が揃い、しかも総理大臣自身が困難な日米交渉であることを認識したうえで「最低でも県外」との方針を示した以上、その方針に沿って、最大限の努力を注ぐことは当然の責務である。
だとすれば、グアム・サイパンへの移設案を真剣に検討する必要が絶対にあるのだ。
ところが、鳩山政権内部でこの国外移設案が真剣に論議された形跡がない。鳩山政権内部で普天間問題を所管する閣僚は、岡田克也外務相、北澤俊美防衛相、前原誠司沖縄担当相の三名である。この三名が県外移設案を真剣に検討しようとしなかった疑いが濃厚である。
国外移設案を検討しない理由があるとすれば、その候補はひとつしかない。米国が麻生政権の合意から大幅に後退するとして拒絶することだ。米国がそのような主張を示すことは十分に理解できる。しかし、米国の主張をそのまま鵜呑みにするのなら、そもそも外交など必要ない。すべてを米国の指令に従うとだけ定めればよいことになる。
前原氏、岡田氏、北澤氏の三名は、米国に対して「言うべきことを言う」姿勢を示してこなかったのではないか。
麻生政権がいかなる合意を成立したにせよ、鳩山新政権は政権発足前の総選挙で、普天間問題を公約に掲げて選挙を闘い、主権者国民の同意を得て多数議席を獲得して正規の手続きに従って政権を発足させたのである。
その鳩山政権が政権公約に基づき、日米合意の見直しを提案する以上、米国も協議に応じる必要がある。
すべての状況を含めて検討すれば、グアム・サイパンへの移設案は、極めて妥当な合理的な代替案になり得るのだ。日米協議はこの案を軸に検討されるべきものであったと言って過言でない。
「抑止力」の問題は、あってなきような問題である。そもそも沖縄に残留する予定の海兵隊の兵力だけ「抑止力」と表現すること自体が笑止千万なのである。「海兵隊」の第一の任務は米人保護であって日本の領土保全ではない。
いまからで遅くない。鳩山政権は海外移設案を真剣に検討するべきだ。鳩山総理の本当の「腹案」が、そもそも海外移設であるとの可能性も否定できない。これは本人でなければ分からないことだから詮索に意味はないが、海外移設案を軸に早急な検討を示すべきである。
鳩山政権内に日本国民の利益よりも米国の利益を優先する米国代理人が存在するなら、鳩山総理はそのような人物を更迭し、日本国民の利益を最優先する体制を整えるべきである。この点を重点とする内閣改造を検討する必要があると思う。
売国者たちの末路 著者:副島 隆彦,植草 一秀 |
知られざる真実―勾留地にて― 著者:植草 一秀 |
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