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2010年4月25日 (日)

基地拒絶が国民総意なら海外移設が正当②

『金利・為替・株価特報』2010年4月23日号=107号

第3節【政治】普天間基地返還問題の着地点

にすでに記述したが、沖縄普天間基地返還問題に新しい展開が浮上した。

米国自治領北マリアナ諸島の上院議会が4月16日、同諸島のテニアン島を普天間の移設先として日米両政府に求める決議を全会一致で可決したことが明らかになった。

今回の普天間基地移設先の見直しは三つの要請に基づいて提案されている。

第一は沖縄の負担軽減である。第2次大戦時から沖縄は巨大な負担を負い続けてきた。沖縄は1972年までは米国の統治下にも置かれてきた。

沖縄戦の後、米軍が住民を収容所に入れながら建設した基地は、日本が独立を回復した1950年代に米軍の強制的な土地収用で2倍に増大した。沖縄の基地負担は上昇し続け、全国の74%に達している。

沖縄の負担を軽減することは、日本全体で取り組むべき課題である。

第二は、名護市辺野古海岸を破壊しての新しい基地建設に合理性が乏しいことである。貴重でかけがえのない美しい自然資源を破壊して巨大滑走路を建設することの正当性に大いなる疑問がある。

海岸を破壊しての滑走路建設は、日本サイドの利権事情から浮上した面が強いことも明らかになっている。一部の利権勢力の金儲けのために、かけがえのない自然が破壊されることを政府が容認することに対して、鳩山政権は疑問を提示したのである。

第三は、この問題を日本の安全保障のあり方全体を抜本的に見直す契機にすることである。冷戦が終焉し、米国は米軍の配置を根本から見直している。これに伴い、日本に存在する米軍基地の日本にとっての意味が大きく変質し始めている。

日本は日本の安全保障体制を根本から見直すべき時期にある。日本の安全保障を米軍に全面的に依存するから、日本が米国に隷属せざるを得ない状況が生まれるのである。

日本は世界唯一の被爆国として、核のない世界を創ることを誘導すべき立場にある。日本が核を保有すべきでないことは言うまでもないことだが、その制約下においては日本が米軍の核の傘の下でしか安全を確保できないという間違った前提を見直すことが必要だ。

核を保有しない国は核保有国に隷属しなければならないとの論理がまかり通るなら、世界中で核を保有しようとする圧力が爆発することになるだろう。

核を保有せず、同時に米国に隷属しない新しい日本の安全保障体制を検討するべき時期が到来しているのだ。

普天間基地返還問題は、単にひとつの基地を返還する問題との側面だけでなく、日本の安全保障体制の抜本的見直しの契機になり得るとの意味を有している。

鳩山総理は、沖縄の負担軽減策を検討するに際して、沖縄以外に居住する国民にも負担を分かち合うとの考えを検討していただきたいとの意向を表明し続けてきた。

しかし、日本のマスメディアは、鳩山政権に「最低でも県外」の発言を実現するように強く要請する一方で、代替地の候補地になり得る地域について、地元が強く反対する行動をいさめるのではなく、積極的に支援してきた。

マスメディアは辺野古の海岸を破壊する基地建設に賛成しているのか、これが無理な場合には国内での代替地選定を拒絶し、移設先を海外にすることを鳩山政権に求めているということになる。

メディアの対応を含めて、国内移設拒絶が日本国民の総意ということであれば、日本政府の対応として、明確に海外移設を表明することが正当である。

鳩山総理は5月末を政府案決定の期限として退路を断ってきた。その時期が迫り、マスメディアはこの問題に明確な政府案が示されずに、鳩山総理が辞任することを強く期待する姿勢を示しているが、鳩山総理はすでに重大な決意を固めているのではないかと考えられる。

重大な決意とは、移設先を海外とするとの結論を示すことである。これが、いわゆる「腹案」ではないかと考えられる。

すべての情勢を踏まえれば、海外に移設することを軸に細部を詰めるとの方針を示すことが日本としての正しい選択であろう。テニアン、あるいはグアムへの移設を軸に、細部を詰めるとの方針が示されるなら、見事な決着である。

米国は地元の同意を決定案決着の前提条件としている。日本全体が県内および国内移設拒絶の姿勢を明確にている以上、米国は日本での基地建設を強要できないことになる。

日本が基地の国外移設を表明することによって、仮に米国が日本との対決姿勢を強めるなら、鳩山政権は米国と厳しく対峙するべきである。「米国に言うべきことを言う」、新しい時代を生み出すことを考えるなら、この問題を、これまでの「対米隷従」から「日本の真の独立」につなげる大きな契機として活用するべきである。

マスメディアはなぜ、マリアナ諸島の重大提案をほとんど報道しようとしないのか。日本国民の総意として国内基地建設拒絶が明瞭になっているなか、マリアナ諸島の提案はまさに時宜に適っている。

日本国の主権者が日本国民であることを忘れてはならない。日本国民の総意が国内基地建設拒絶であるなら、これが日本政府の意思決定の基礎になるべきことは当然である。

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