経済政策最優先課題は景気回復の維持にある
昨年の11月27日、日経平均株価は9081円まで下落した。チャート上、極めてクリティカルなポイントに差し掛かった。
鳩山政権が2010年度の財政デフレ予算を編成したなら、株価は9000円を割り込み、日本経済は二番底に向ったはずである。
11月29日のサンデープロジェクトで仙谷行政刷新相は財政政策運営についての方針転換を表明した。鳩山政権は2009年度第2次補正予算を活用して、2010年度の財政デフレを巧妙に回避することに成功したのである。
2010年度当初予算での国債発行金額を44兆円に抑制することに成功した。2009年度の第2次補正後の国債発行金額は53.5兆円だから、2010年度は国債発行金額を9兆円も削減することに成功したことになる。
これだけ国債発行金額を削減することは、強烈な緊縮財政を実行することを意味する。このことから2010年度の財政デフレが懸念されたのである。
鳩山政権は2010年度の財政デフレを回避するための財政支出を2009年度補正予算に組み込んだ。第1次補正予算での支出を3兆円凍結し、2009年度第2次補正予算に4兆円の支出を追加した。
この4兆円分の支出が実際に執行されるのは2010年度であり、実体経済への影響で言えば、2009年度支出が4兆円減り、2010年度支出が4兆円増加することになった。
9兆円のデフレインパクトが1兆円のデフレインパクトに圧縮されたのである。
1996年6月の橋本政権による大増税方針決定、2000年4月の小渕元首相の急逝に伴う後継森政権、小泉政権による超緊縮財政。
1990年以降の4度の株価暴落のうち、最初のバブル崩壊と4度目のサブプライム危機暴落以外の2度の株価暴落は、近視眼的な緊縮財政によってもたらされた人災だった。
2007年後半以降、サブプライム金融危機に伴う4度目の株価暴落に見舞われた。日経平均株価は昨年3月に7054円にまで下落したのち、昨年夏には1万円の大台を回復した。この局面で鳩山政権が2010年度超デフレ予算を編成していれば、株価は9000円を大きく割り込み、日本経済は二番底に向ったはずである。
とりあえず、鳩山政権は最重要のハードルを超すことができた。しかし、まだまだ安心はできない。
財政収支が悪化して財政再建の大合唱が聞こえてくる。この段階で財務省の路線に引きずられることが、過去の政策運営失敗の主因だった。
鳩山政権の財務大臣に就任した菅直人氏の政策運営の責任は極めて大きい。
現局面での財政政策運営の鉄則は、「景気回復維持の優先」である。この方針を明確に定め、広くアナウンスすることが何よりも重要である。
財政バランスの回復の重要性を否定する考えはない。しかし、財政健全化は景気回復の延長上にしか成立しないことを肝に銘じることが必要だ。①景気回復の誘導、②政府支出の無駄排除、③増収策の検討、の順序を確実に守ることが財政再建への最短ルートを生み出すことになる。
経済には生産-所得-支出の循環メカニズムが働く。日本経済は昨年3月に大底を打ち、緩やかな生産回復過程に移行している。すでに企業収益については、昨年4-6月期以降、3四半期連続での収益拡大が観察されている。
この企業収益拡大が雇用者所得の増加に波及してゆくことにより、個人消費が堅調に転じてゆくのだ。この民間経済の自律的な成長サイクルを実現させることが、当面の経済政策運営の最重要課題になる。
自民党は民主党の政策に中長期の成長戦略が欠如していると批判しているが、自民党に優れた成長戦略があったとは寡聞にして聞いたことがない。日本のGDPは1992年に470兆円だったが、2009年の日本のGDPも470兆円である。18年間、経済成長ゼロを実現させたのが自民党政権であることを棚に上げて、鳩山政権の政策を批判しても説得力はない。
鳩山政権は財政原理主義に走る財務省を抑えて、景気回復優先の経済政策運営を維持しなければならない。この点で、菅直人財務大臣が明確な方針を堅持することが不可欠だ。
今後の経済状況を見通すためには、米国経済の動向、ギリシャの財政危機を背景に動揺したユーロ情勢、内外の金融政策運営と金利動向、米ドルの動向、中国のバブル懸念と政策対応などについて、十分な分析が必要である。
足元では、為替市場と長期金利動向に重要な変化の兆候が見え始めている。
『金利・為替・株価特報』2010年3月12日号を発行した。
以下に目次を掲載する。レポートご購読を希望される方はお申し込みフォーマットにご記入の上、FAX送信をお願い申し上げます。
タイトル
民公接近がもたらす政治選挙情勢の転換
<目次>
1.【政局】民主・公明接近と民主党内反党分子
2.【政策】財政再建と景気回復政策
3.【為替】ユーロ・ドル・円のゆくえ
4.【株価】株価堅調持続も米国の動向に要注意
5.【金利】債券価格推移に黄信号
6.【政治】基地・カネ・可視化と政局
7.【政策】量的金融緩和政策を求める者の正体
8.【世界経済】日本、米国、中国の景気
9.【投資】投資戦略&参考銘柄
売国者たちの末路 著者:副島 隆彦,植草 一秀 |
知られざる真実―勾留地にて― 著者:植草 一秀 |
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