政権交代の意義示す日本航空法的整理方針
日本航空の経営再建問題について、鳩山政権は会社更生法適用を申請する方針を固めた。株主責任については100%減資で株主責任を適正に問う方針が示される可能性が高まっている。
私は本ブログで昨年10月23日に
11月25日に
本年1月7日に
の記事を記述してきた。
また、『金利・為替・株価特報』でも日本航空の透明処理を強く訴えてきた。
日本航空は経営に失敗して危機に直面している。日本航空の処理に際しては市場経済の基本ルールである「自己責任」を基礎に据えなければならない。
テレビメディアのなかには、日本航空の場合、株主優待券を求めて株主になっている個人が多数存在するから上場廃止を実行すると混乱が拡大することを強調し、上場廃止に批判的な説明を施すものがある。
しかし、本末転倒と言わざるを得ない。株主優待券を求めようとも、株価上昇を期待しようとも、株主になる行為は、根本的にリスクを取る行為である。企業が経営に失敗すれば出資金を失うことは当然のこととして予想される。
また、経営危機が表面化してから上場廃止に至るまでに長期の時間的猶予も与えられている。株券が紙くずになることを回避したいのなら、株価がゼロになる前に株式を市場で売却すればよい。
こうした事実を無視して、株価がゼロになると多数の株主が混乱に陥るから100%減資を実施すべきでないなどの主張はたわごとにすぎない。
日本航空は国際線を就航させているから、会社更生法の適用申請に伴い、当面の海外での業務継続に支障が生るのを防ぐための措置を講じることは必要かも知れない。
法的整理を実施する場合のさまざまな問題にきめ細かく対応することを重視すればよいのである。このことと経営の失敗に対する適正な責任追及とを混同して論じるのは間違いである。
市場経済のルールを適正に適用することは正しい政策対応である。これまでの自民党政治では、こうした市場ルールが大きく歪められてきた。
2003年5月のりそな銀行処理では、りそな銀行を自己資本不足と認定しながら、りそな銀行株主の責任を問わなかった。政府は2兆円もの公的資金を投入してりそな銀行を救済した。公的資金による救済措置により、りそな銀行の株価は半年で約4倍に上昇した。責任を求められなければならない株主が、国から巨大な利益供与を受けた。
りそな銀行が自己資本不足に陥ったのは、りそな銀行の将来収益が不確定であると判断され、繰延税金資産の計上が十分に認められなかったからである。りそな銀行の将来収益が不確定であると判断されるなら、りそな銀行の繰延税金資産計上はゼロないし1年分でしか有り得なかった。
木村剛氏はインターネット上のコラムで繰り返しこの点を主張した。木村氏は「破綻する監査法人はどこか」と題するコラム記事のなかで、りそな銀行の繰り延べ税金資産を監査法人がゼロないし1年ではなく、2年以上認めるなら、その監査法人を破綻させるべきだと主張し続けた。
ところが、新日本監査法人はりそな銀行の繰延税金資産3年計上を認めた。なぜ「3年」だったのか。「3年」だけがりそな銀行を自己資本不足に追い込み、かつ、自己資本比率をマイナスに転落させない唯一の「解」だったからだ。
預金保険法102条第1項には、第1号規定という「抜け穴」が用意されていた。自己資本比率が0~4%となる場合、政府は公的資金で当該銀行の資本増強を実行できたのだ。りそな銀行の繰延税金資産をゼロないし1年と処理すると、りそな銀行に第1号措置を適用できない。りそな銀行は「破綻処理」されなければならなかった。
小泉政権はこの事情から人為的に繰延税金資産3年計上を決めたと考えられる。りそな銀行を公的資金で救済するためであったと推察される。小泉政権は「退出すべき企業を市場から退出させる」と述べていたが、結局は、「退出すべき企業を税金で救済」した。
責任を負うべきりそな銀行株主は出資資金を失うどころか、株価4倍上昇の巨大利益を国から供与されたのである。
この不透明極まりないりそな銀行処理は、同時に巨大インサイダー取引疑惑の舞台となったのだ。私はこの問題を追及しすぎたために巨大な謀略に巻き込まれたのだと推察される。
不透明極まりないりそな銀行処理を実行した小泉政権と、日本航空を透明に処理しつつある鳩山政権の相違が、政権交代の意義を鮮明に示している。
日本航空が現状に至ったのは、日本航空の経営に相応の問題があったからだ。市場経済の基本ルールは、経営失敗の責任を当事者が負うというものである。日本航空が経営に失敗したのなら、責任ある当事者は相応の責任を負わねばならないのだ。
りそな銀行の場合、株主責任が一切問われなかった一方、小泉政権の政策失敗を厳しく指摘してきた銀行経営者が政府によって追放され、新しい経営幹部ポストが小泉政権近親者に占拠された。また、りそな銀行は自由民主党の機関銀行と化した。
マスメディアは小沢一郎民主党幹事長政治団体の資金収支を針小棒大に取り上げているが、はるかに重大な問題がりそな銀行を舞台に実行されたことを何一つ報道しなかった。自民党の機関銀行と化したりそな銀行の実態を朝日新聞1面トップでスクープ報道した敏腕記者は、記事掲載と同時に東京湾で水死体になって発見されたと伝えられている。
日本航空の経営再建が不透明な政治力で不正に歪められずに決着することは望ましいことである。小泉政権時代の不透明不正処理路線が払拭されることも、政権交代の大きな意義のひとつである。
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売国者たちの末路 著者:副島 隆彦,植草 一秀 |
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