鳩山政権は企業献金全面禁止法制で対抗すべし
民主党小沢一郎幹事長の政治団体の資金収支をめぐる過剰報道が続いている。小沢一郎氏は計算ミスのたぐいのものはあったかも知れないが、意図的に法律に触れるような行為はなかったと信じていると述べている。
企業献金の一部に記載漏れがあったとしても、これまでの一般的な処理では記載漏れとして収支報告書の修正で済まされている。記載漏れ以上の問題が存在したとの根拠は明確に示されていない。
メディア各社は東北地方の公共事業と献金との関わりを直接に結び付け、犯罪視するような報道を続けているが、多くの報道が検察当局の違法な情報漏えいを情報源としていると推察される。公務員の守秘義務違反という重大な犯罪行為に対する監視も強化することが求められている。
一連の検察の行動、民主党だけを攻撃対象とするメディアの報道姿勢は、本年7月の参議院選挙=「悪徳ペンタゴンVS主権者国民の最終決戦」に照準を定めた「権力をめぐる闘争」の第一幕がすでに開幕していることを示すものである。
「政治とカネ」の問題は日本政治の最重要のテーマのひとつである。政治が「国民の幸福のため」に行われているのでなく、「政治屋の個人的な利得のため」に行われているとの疑惑を払拭できない状況が持続してきた。
この問題を除去するための根本的な対応は、「企業献金の全面禁止」に踏み切ることである。民主党の小沢一郎幹事長は昨年3月3日に大久保隆規氏が突然逮捕された事態に直面して、問題の一掃を図るためには企業献金の全面禁止に踏み切るしかないとの見解を示した。
私は本ブログで企業献金の全面禁止の必要性を訴えたが、小沢氏の提案はこの主張に呼応するものと感じられた。企業献金全面禁止提案の正当性をの鬼頭栄美子弁護士が本ブログにおける3回にわたる連続投稿論文により見事に論証してくださった。
私は、この問題を昨年7月28日に、
で再整理させていただいた。
鬼頭氏は企業献金の法的正当性の根拠とされている1970年最高裁判決についても、法曹から強い疑念が示されていることを明らかにしてくださった。日本国憲法が定めている自然人にのみ付与されている参政権制度を企業献金が歪曲してしまう。このことから企業献金を全面禁止することが求められるとの主張には強い説得力がある。
企業献金が存在するために、「国民の幸福のために政治家になる」のでなく、「金もうけのために政治家になる」人物が、これまでの自民党議員には多かったと思われる。実際の企業献金の実態を見ても、「政治とカネ」の問題で「カネまみれ」であったのは、民主党ではなく自民党である。
西松建設献金問題でも、西松から流れた資金量は自民党が圧倒的に多い。検察当局が西松から自民党に流れたカネにはほとんど関心を示さず、民主党への献金だけを執拗に追及するのは極めて不自然である。検察当局が「悪徳ペンタゴンVS主権者国民の最終決戦」の一幕上の主演、あるいは助演を演じていることを示すものと受け取れる。
次期通常国会では「政治とカネ」の問題が改めて大きく取り上げられることになると考えられる。自民党は今回の問題を「政争の具」として大きく取り上げて、1月24日の名護市長選や7月11日に見込まれる参議院選挙に影響を与えようとしていると見られる。
こうした政略的な自民党の姿勢に対して、鳩山政権は「政治とカネ」の問題に正面から取り組む姿勢を鮮明に示すべきである。その最良の方法は、「企業献金全面禁止」を法案化を急ぎ、次期通常国会に法案を提出して成立を目指すことである。
自民党の政略的な追及に対して、鳩山政権が「企業献金全面禁止の法制化」で対抗するのだ。「政治とカネ」問題の根絶を目的とする鳩山政権提案に対して、自民党がどのような姿勢を示すのかが注目される。
これまで「政治とカネ」の問題が頻繁に取り上げられてきたが、「カネまみれの政治」の中心にあったのは民主党ではなく自民党であるとの厳然たる事実を見落とすことはできない。
2007年の自民党と民主党の政党への献金は、
自民:総額224億円
民主:総額 40億円
企業献金と個人献金の内訳は、
自民:企業168億円、個人56億円
民主:企業 18億円、個人22億円
経団連加盟企業の経団連を通じる企業献金は、
自民:29億1000万円
民主: 8000万円
である。
問題根絶をもたらす「企業献金全面禁止」の提案に対して、どのような姿勢を示すのかに、問題に対する各政党の基本姿勢が表れることになる。
「カネもうけのために政治家になった」議員は企業献金全面禁止提案に反対するだろう。民主党内部にもこのような議員が存在する可能性はある。民主党はマニフェストに政治献金の全面禁止を明記した。昨年8月30日の総選挙で主権者国民が民主党に政権を負託した大きな理由の一つに、「政治とカネ」問題の根本解決を求めた事実が存在したことを忘れてはならない。
「企業献金の全面禁止」が実現することによって、日本政治は間違いなく刷新されることになる。これまでの日本政治が主権者国民の側ではなく、大企業=大資本の側を向いてきた最大の理由は、巨大な企業献金にあったと考えられるのだ。
鳩山政権は「政治とカネ」問題が拡大する次期通常国会の風を生かし、「企業献金全面禁止提案」を前面に掲げるべきである。「政治献金全面禁止の是非」を次期参院選の最大の争点に掲げることを検討するべきである。
昨年5月11日の小沢代表辞意表明は「逆風を順風に転換する英断」であった。鳩山首相は現在の逆風を順風に転じさせるための英断を下し、「企業献金全面禁止」提案を参院選に向けて大きく掲げるべきである。
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売国者たちの末路 著者:副島 隆彦,植草 一秀 |
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知られざる真実―勾留地にて― 著者:植草 一秀 |
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