日本郵政株式売却凍結法を成立させた鳩山政権
12月4日、日本郵政と傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の株式売却を停止する日本郵政株式売却凍結法が参院本会議で与党と共産党などの賛成多数で可決、成立した。
今臨時国会では、政府提出12法案のうち10法案が成立。議員立法の肝炎対策基本法、原爆症認定集団訴訟の敗訴原告救済基金創設法も成立した。政府提出の北朝鮮関連船舶を対象とする貨物検査特別措置法案と、社会保険病院などを原則存続させる独立行政法人地域医療機能推進機構法案は継続審議となり、政府、与党は来年の通常国会での成立を図ることになった。
第173臨時国会は4日午後、参院に続き衆院本会議で閉会中審査の手続きを行い、4日間延長された40日間の会期を終えて閉幕した。鳩山政権は2010年度予算の年内編成に全力を挙げることになる。
鳩山政権与党は8月30日の総選挙に際して、郵政改革の実現を政権公約に掲げて選挙を戦った。国民は鳩山政権与党を圧勝させた。鳩山政権樹立後に郵政改革が実行されるのは当然のことだ。政治の主権者は日本国民なのである。
2005年9月の総選挙では小泉政権が大勝し、郵政民営化が公約通りに実行された。これもまた、民意を反映した政治行動だった。
日本郵政公社は2007年10月に日本郵政株式会社に移行し、「民営化」の第一歩が印された。
ゆうちょ、かんぽの300兆円強の資金が、これまで政府部門内に滞留していた。この資金を民間に還流させ、日本経済を活性化することが郵政民営化の大きな狙いであるとされた。
また、民営化によって郵政事業のサービスが向上し、国民が便益を受けるとも説明されてきた。
しかし、そのような現実は実現しなかった。
ゆうちょの残高は激減し、すでに資金量は300兆円を下回った。この資金が民間に還流すると喧伝(けんでん)されてきたが、これもまったくのでたらめだった。
11月28日付記事
にも記述したが、民営化実現後も郵政資金は政府部門に滞留したままである。政府部門内への資金供給の比率は逆に上昇した。
2009年3月末現在、ゆうちょ銀行の総資産196兆円のうち、有価証券が173兆円、このなかの162兆円が公共債である。貸出金は4兆円に過ぎない。かんぽ生命では総資産107兆円のうち、有価証券が83兆円、このなかの74兆円が公共債である。貸付金は18兆円あるが大半が機構貸付で一般貸付は2170億円に過ぎない。
つまり、民営化すると300兆円の資金が民間に還流して日本経済の発展に寄与するかのような話はまったくのでたらめだったのだ。
過疎地の採算の悪い郵便局は2007年10月の日本郵政正式発足までに、激しい勢いで消滅させられた。地域コミュニティーの重要な核が無残に破壊されたのである。
郵政事業4分社化によって、これまで実施されてきたきめ細かい、血の通った温かなサービスが廃止された。
過疎地域に住む高齢者は年金資金の受け取りにも多大の困難を伴う状況に追い込まれている。
また、金融口座を持つことのできない国民が大量に発生する「金融排除」の問題も深刻化している。
人間性を無視した効率至上主義の経営が強行され、郵政職員の士気の低下も深刻化している。
このなかで表面化したのが、「かんぽの宿」不正売却未遂疑惑だった。固定資産税評価金額が857億円、時価が1000億円程度と見られる「かんぽの宿」79施設がたったの109億円で、オリックス不動産に売却されることが決定された。
鳩山邦夫元総務相が、不正売却の疑いを指摘し、国会で厳しい追及が行われた結果、オリックス不動産への売却は白紙に還元された。
79施設のうちのひとつである「ラフレさいたま」だけで100億円の時価はあると見られている。都内にある9ヵ所の社宅施設だけで、時価は47億円と見られている。これ以外に、全国の69ヵ所の豪華な宿泊施設が109億円で横流しされようとしていた。
「かんぽの宿」売却規定を法律案にもぐり込ませたのは竹中平蔵氏で、この工作は法律案決定直前に行われた。
オリックスの社長は宮内義彦氏で、宮内氏は小泉内閣の総合規制改革会議議長として、2003年10月まで、郵政民営化を論じていた人物である。しかも、著書のなかで「かんぽの宿」に対する強い関心を明記していた。
オリックスは旅館ビジネスに本格進出する途上にあったが、「かんぽの宿」79施設売却計画は、オリックスのビジネスモデルに合わせて策定された疑いもある。
多くの国民は「国民のための郵政民営化」だと理解して、2005年9月の総選挙で郵政民営化にゴーサインを出した。しかし、実際に実行された郵政民営化は国民のためのものではなかった。
一部の政商と外国資本に利益供与するためのものだったのだ。このことが明白になり、郵政改革を掲げた鳩山政権与党が国民から圧倒的な支持を受けたのだ。
ゆうちょ銀行、かんぽ生命、そして日本郵政の株式が市場で売却されてしまったなら、300兆円の国民資金、簿価ベースで2兆8000億円の巨大不動産がハゲタカに収奪されてしまっただろう。
ぎりぎりのところで、郵政私物化、郵政米営化の惨事を回避することができた。鳩山政権はとてつもなく大きな成果をあげたのである。
国民の視点に立って、郵政三事業の体制を根本から再構築する必要がある。マスメディアは主権者である国民が全面否定した竹中平蔵氏などをいまだに登場させて、でたらめ満載の詭弁を垂れ流しているが、良識をもって自己規制するべきである。
小泉竹中政治は主権者である国民によってすでに全面否定されたのである。新しい基準に従って問題解決を図るべく、貢献するのがマスメディアの本来の役割であることを忘れてもらっては困る。
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売国者たちの末路 著者:副島 隆彦,植草 一秀 |
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知られざる真実―勾留地にて― 著者:植草 一秀 |
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