『月刊日本』新春号刊行と日本政治刷新のゆくえ
『月刊日本』2010年1月号が刊行された。
販売元:ケイアンドケイプレス月刊 日本 2010年 01月号 [雑誌]
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巻頭特集「混迷の政局を打開せよ!」
には、
亀井静香 「対米自立は神の声だ!」
平野貞夫 「敢えて民主党を叱る」
中村慶一郎「鳩山首相よ、岩倉具視たれ!」
の各論考が掲載されている。
また、
青木 理「検察とマスコミは共犯だ」
も掲載されている。
私の連載記事
は第7回を迎えた。本号のサブタイトルは
「新生銀行上場認可と「かんぽの宿」不正売却疑惑」
である。以下に小見出しを紹介する。
・りそな銀行救済の深い闇
・出来レースだったリップルへの旧長銀払い下げ
・ゴールドマン・サックスの一人芝居
・暗躍した政商竹中平蔵氏
・『売国者たちの末路』
・サンプロペンタゴンの「かんぽの宿」売却正当化
・「かんぽの宿」安値売却実現のからくり
である。
私は、①経済政策の失敗、②弱肉強食症例の政策、③外国資本への利益供与、④官僚利権の温存、⑤権力の濫用、を「小泉竹中政治五つの大罪」と認定してきた。
「りそな銀行救済」、「旧長銀再上場認可」、「かんぽの宿不正売却未遂疑惑」は、③外国資本への利益供与、にかかる重大疑惑である。国会における竹中平蔵氏の参考人聴取、証人喚問が実現していないが、次期通常国会では必ず実現させる必要がある。
菅直人国会戦略相は政府の会議に竹中氏を招致したが、このような会議に招致する前に国会での参考人招致、証人喚問が先決である。
『月刊日本』2009年12月号巻頭に、同誌主幹の南丘喜八郎氏が
「古の武士道を存して全き者は、独り君有るのみ」
と題する巻頭言を掲載された。
「東洋のルソー」と呼ばれ、自由民権論者として知られた中江兆民に関する論考である。
中江兆民はフランスに留学し、帰国後ジャン・ジャック・ルソーの「社会契約論」を日本に紹介した。中江兆民の「民約論」が20年早く日本の倒幕運動に影響を与えていたなら、日本の歴史は異なるものになっていた可能性が高いと私は考える。
明治政府が確立した「官権政治」の対極に置かれるのが「民権政治」であると考えるからだ。この問題についてここでは深く立ち入らない。
中江兆民は勝海舟と親しく交わり、西郷隆盛の生きざまを知るに至り、西郷隆盛を高く評価した。中江兆民は真の維新革命を実現しようと決起し、敢えなく敗れた西郷隆盛を評価する一方で、人格低劣なる明治政府元勲を嘆き、晩年に至るまで烈々たる批判精神を失わなかった。
以下に南丘喜八郎氏の著述を引用する。
「兆民は当時、勝海舟と親しく交わり、薩摩・城山で自刃して果てた西郷隆盛の第二維新に賭けた夢を知り、西郷こそ抜山蓋世(ばつざんがいせ)の英雄と高く評価した。西郷が生きていたならば、彼を担ぎ出してクーデターを断行し、西郷・勝連合政権を樹立、第二維新を成就したかったと慨嘆した。幸徳秋水は『兆民先生』にこう書いている。
「先生又海舟翁の談に依て、西郷南洲翁の風彩を想望し、欣仰措(きんぎょうお)かず、深く其時を同じくせざるを恨みとせり。西郷南洲をして在らしめば、想うに我をしてを其材を伸ぶるを得せしめならん。而(しこう)して今や即ち亡し」
薩長藩閥政府は民権運動・国会開設運動の昂まりに抗しきれず、国会開設を約束した。
兆民は国会開設二年前の明治二十年、『三酔人経綸問答』を著し、洋学紳士君と東洋豪傑君、そして兆民の分身とも言うべき南海先生を登場させ、三人で酒を酌み交わしながら、日本の行く末を巡って激しい議論を展開させる。
洋学紳士君は、民主共和・軍備廃止・戦争放棄など進歩主義を主張する民権論者、一方の東洋豪傑君は欧米の侵略勢力に抗して、目本の自尊自立を主張する国権論者である。而して、兆民は分身たる南海先生に「いかなる知識も学説も、品質高尚なる人間の作用を助けるときには価値高きものとなるが、品質低劣なる人間と結びついたのでは、なんらの価値なきものとなる」(草津珍彦著『武士道』)と論じさせる。兆民は南海先生の口吻を借りて、如何に優れた知識や学説であっても、それを実践する人間が人格低劣であっては、全くの没価値であると喝破したのだ。」
南丘氏は、中江兆民が明治の元勲伊藤博文について、
「大勲位(伊藤博文)は、誠に翩々(へんぺん)たる好才子也。然れども、宰相者の資に非ず。総理大臣と為るに及では、唯だ失敗あるのみにて一の成績なし。其器に非(あらざ)るを知るべし。一言之を断ずれば野心余口有りて胆識足らず、内閣書記官長に止まらしめば、正に其所を得たらんか。伊藤以下皆死に去ること一目早ければ一目国家の益と成る可し」(『一年有半』)
と記述したことも紹介している。
日本政治は本年8月30日の総選挙を経て政権交代を実現し、新しい時代を迎えた。日本政治刷新が2010年の最大の課題である。
しかし、いかに優れた知識や学説が存在しても、政策論議に際して人格低劣な人間が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)するなら正しい道は実現しない。
鳩山首相は高潔なる人格により、政治の理想を実現しようと粉骨砕身(ふんこつさいしん)の努力を払い続けるだろう。日本政治刷新を希求する主権者である国民は、悪徳ペンタゴンによる利権政治復活への執拗な工作活動の本質を見抜き、マスメディアの低劣な情報操作に対する免疫力、抵抗力を身につけなければならない。
2010年、日本政治は真の正念場を迎えることになる。
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売国者たちの末路 著者:副島 隆彦,植草 一秀 |
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知られざる真実―勾留地にて― 著者:植草 一秀 |
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