直嶋正行経産相のGDP統計発表フライング
直嶋直行経済産業相が11月16日午前8時50分に発表された2009年7‐9月期GDP統計の内容を報道解禁時刻前に公表していたことが分かった。
直嶋経産相は16日午前8時から石油連盟首脳と懇談し、冒頭のあいさつで「先ほど7~9月の経済統計速報値が発表されたが、数字は前期比プラス1.2%、年率換算ではプラス4.8%となかなかいい数字になった」と話した。
GDPの発表時間は同日午前8時50分で、直嶋経産相の発言は30分以上の「フライング」となった。
直嶋経産相は「(解禁時間を)知らなかった。失礼をしました」と釈明したが、釈明をするインタビューでは、事の重大性を認識している様子がうかがえなかった。
平野博文官房長官は16日午前の記者会見で「事実とすれば極めて遺憾だ。政権の危機管理も問われる」と述べたが、これが適正な対応である。
金融市場は個々の経済指標数値に激しく反応することがよくある。GDP統計は日銀短観などと並んで、金融市場が重視する最重要統計のひとつである。発表時間を午前8時50分としているのは、午前9時に株式市場が開くため、市場取引が始まる前に情報を周知させるためである。
しかし、為替市場や一部の先物取引はグローバルに24時間取引が行なわれており、統計数値の内容によっては、事前に漏れた数値が大きな混乱をもたらすことも十分に考えられるのである。
経産相は経済金融に深く関わる要職であり、政府発表の重要統計の管理体制には万全が期せられなければならない。しかし、直嶋経産相は統計数値の発表解禁時刻などの基本的な知識を持ち合わせていなかったようであり、この点で内閣の情報管理体制の不備が問われるのは免れない。
GDP統計の事前漏えい問題は1999年6月にも発生している。また、それ以前に日銀短観の内容が事前に漏えいしているのではないかとの問題が表面化したことがあった。この情報漏えい問題に対応して日銀は短観の発表を午前8時50分に変更した。
しかも、日銀の場合、日銀短観の主要計数の算出を統計発表の朝まで行なわず、統計作成者が統計数値算出の担当部署に入室してから計数をとりまとめ、統計発表まで一切、関係者の外出および外部との連絡を禁止する措置を採用したと聞いている。統計数値の及ぼす影響を認識して、物理的に統計数値が事前漏えいしないための措置が取られているとのことである。
これに対して、政府各部門が作成する統計においては、統計数値の取り扱いが極めて緩い。GDP統計については、速報値が発表されたのち、数次にわたり統計数値が改定されることから、もっとも注目を集める第一次発表数値が政治的に改ざんされているのではないかとの疑惑さえ存在してきた。
とりわけ、国政選挙前に発表される統計数値は政治的な影響、あるいは政治的利用価値が高いことから、政治が介入して数値が改ざんされているのではないかとの疑惑は絶えることがなかった。
この意味で、鳩山政権は政府発表重要統計の取り扱いについて、厳格な漏えい防止のルールを設定するべきであると思う。統計発表に際しては、日銀短観の発表に際して用いられている方式がひとつの参考事例になると思われる。
米国でも、GDP統計や雇用統計、物価統計などが、金融市場を激動させる重要統計として取り扱われてきた。米国においても重要統計の事前漏えい問題が発生した歴史が存在する。
また、金融政策の決定に際して重要な意味を持つFOMC(連邦公開市場委員会)での議事内容は、金融市場関係者の最重要情報のひとつである。
米国にはこうした重要情報=コンフィデンシャル情報を専門的に取り扱うコンサルティング会社が存在し、極めて高額な価格で情報が販売されている。こうしたコンサルティング企業のなかには、FRBの元理事が経営するものもある。
米国では独立記念日に花火大会が開かれるが、FRB幹部を含むFRB関係者がワシントンDCの花火をそろって楽しむ風習もあるようだ。ある年の独立記念日の花火大会においては、FRBの元幹部がFRBの現職幹部と花火大会の場で接触して重要情報を入手し、その情報をコンサルティング企業会員に伝えたこともある。
一種の「インサイダー情報」と言わざるを得ない。日本の事例でのもっとも重大なインサイダー情報疑惑は2003年のりそな銀行救済情報であったと思われる。亀井静香金融相がこの問題に関心を有していると伝えられているが、極めて重大な問題であり、全容の解明が強く求められる。
いずれにせよ、政府は政府発表の重要統計について、その管理体制および統計発表方式について再検討するべきである。今回のような問題が発生したら、迅速に取るべき対応を示すことが重要である。迅速な対応、是々非々の対応が問題を拡大させず、早期に問題を沈静化させる即効薬になる。
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売国者たちの末路 著者:副島 隆彦,植草 一秀 |
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知られざる真実―勾留地にて― 著者:植草 一秀 |
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