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2009年11月 2日 (月)

短期景気回復・中期財政再建を目標に定めよ

11月2日から臨時国会での予算委員会審議が始まった。

政府活動の中核は予算編成、予算執行である。政府活動そのものとも言える国費の支出について、何に対してどれだけを支出するか。その財源を誰からどのように調達するか。これが予算編成、予算執行である。

「100年に1度の金融津波」が世界経済を襲い、グローバルな金融市場調整、景気の急落が生じた。この結果として、日本財政に深刻な影響が広がっている。麻生政権は2009年度に14兆円の規模の補正予算を編成し、2009年度予算規模は102.5兆円に拡大した。

また、麻生内閣は2009年度国税収入を46兆円と見積もった。ところが、この税収見積もりが大間違いであることが判明しつつある。11月2日付日本経済新聞報道によると、2009年度は法人税収が5~6兆円にとどまる可能性が高まり、一般会計税収が30兆円台後半にまで減少する可能性が高まっている。

2009年度税収が仮に38兆円に減少すると、これだけで7兆円の歳入不足が発生する。この7兆円の不足を国債の追加発行で賄うと、2009年度国債発行規模は51兆円に達することになる。税収が38兆円、国債発行が51兆円という非常事態が現実のものになる。

一部の偏向メディアは、こうした財政状況の悪化を鳩山政権の責任だと攻撃するだろうが、筋違いも甚だしい。2009年度の財政状況は麻生政権の政策運営の結果としてもたらされるものである。

麻生政権は2008年度第二次補正予算編成を2ヵ月も先送りした。100年に1度の金融津波が世界経済を襲い、各国が迅速に対応策を示さなければならなかったにもかかわらず、麻生政権は「政策よりも政局を優先」し、補正予算審議を2009年年明けまで先送りした。

麻生政権の政策対応の遅れが日本経済の悪化を深化させてしまった面を否定できない。麻生政権は遅ればせながら、14兆円規模の2009年度補正予算を編成し、2009年4月に国会に提出し、5月に補正予算が成立した。

2009年度がスタートする時点で14兆円もの規模の補正予算を編成したことは、麻生政権が2009年度日本経済の見通しを完全に見誤ったことを端的に示している。税収を46兆円と見積もったのが38兆円程度にとどまることになることと併せて、麻生政権の経済運営の拙劣さが明瞭に示されている。

麻生政権は14兆円規模の補正予算を編成したが、その中身がまた最悪であった。私は

5月30日付記事

「お手盛り・バラマキ補正予算編成と総選挙日程」

に次のように記述した。

「補正予算では、本予算で6490億円しか予算が計上されない公的部門の施設整備費に2.8兆円もの国費が投入されることが明らかにされた。大盤振る舞いの補正予算で、役人が使用する公共施設を豪華に刷新しようというのだ。

マンガ・アニメの殿堂には建設費だけで117億円が用意される。思いつきで決めた支出対象に、無尽蔵の国費を使いたい放題である。

また、「エコカー」、「エコ家電」にかこつけて、役所の公用車が1万5000台=588億円、地デジ対応テレビが7万1000台=71億円、購入される。補正予算を「官僚のこづかい」と捉えているのだろう。

さらに、補正予算では58の基金に4.6兆円の国費が投入される。4.6兆円のうち、どれだけが事務経費に充当されるのかは国会審議でも明らかにされなかった。58基金への4.6兆円が「天下り」利権拡大に利用されることは間違いないだろう。

14兆円もの国費を投入するなら、はるかに優先順位の高い費目が存在する。
①失業者の生活保障、非正規労働者のセーフティネット整備、
②高齢者の介護、医療体制整備、
③子育て・教育費助成、
④障害者自立支援法改正、
⑤後期高齢者医療制度廃止、
⑥消えた年金修復事業の早期完結、
⑦生活保護強化、
などの施策が優先されなければならなかった。」

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 麻生政権は財政赤字を激増させただけでなく、貴重な国費を無駄な対象にばらまく政策対応を示したのである。

 鳩山政権は政権発足直後に補正予算の見直しに着手した。国会で成立した予算を見直すことは至難の業であるが、鳩山政権は約3兆円の支出を白紙に還元した。短期日に大きな金額の支出凍結に成功したと言える。

 臨時国会での論戦においては、日本財政の状況悪化がひとつの論点になると考えられる。102.5兆円規模の予算規模で、38兆円の税収、51兆円の国債発行は、あまりに深刻な財政状況を示している。

 日本財政の立て直しは中期的に最重要の政策課題になることは間違いない。

 しかし、この財政状況に目を奪われて、財政収支改善だけを拙速に追求する方針を採用することに対しては慎重な姿勢が不可欠である。

 日本だけでなく米国においても、経済活動は本年3月の最悪期を脱しつつあるものの、先行きについての強い不安が浮上し始めている。米国も日本も巨大な財政支出発動が経済の急激な悪化を遮断した。しかし、その副作用として財政赤字が激増し、追加経済対策発動が困難になるとともに、経済の再悪化が懸念され始めている。

 鳩山政権が2010年度予算編成に際して、財政収支悪化に対応した超緊縮予算を編成するなら、日本経済の再悪化が現実化することは間違いないだろう。この場合には税収がさらに減少し、結果として財政赤字は減少せずにさらに拡大する可能性が高い。

 過去の事例でも、1997年度、2001年度に橋本政権、小泉政権が無理な緊縮財政政策を実行して、経済の崩壊と財政赤字の激増を招いた経験がある。

 この点を踏まえれば、鳩山政権は2010年度に超緊縮財政を実行することを避けなければならない。

 2009年度補正後予算規模が102.5兆円に達し、国債発行金額が51兆円に達する可能性が高まっている。2010年度当初予算編成においては、この2009年度補正後予算をベースにしなければならない。予算規模を92兆円に圧縮し、国債発行金額を44兆円に圧縮すれば、日本経済は財政デフレに誘導されてしまう。

 日米株式市場は、先行きの経済について警告を発し始めている。1996年も12月の予算編成時期に日経平均株価が2万円を割り込み、先行きに対する強い警告を発した。私は橋本政権の緊縮財政を修正すべきだと強く警告したが、橋本政権は超緊縮財政を強行し、1997年度の経済大崩壊を招いた。

 2001年度に小泉竹中政権が超緊縮財政を強行実施したときも私は強い警告を発したが、小泉政権は超緊縮財政を強行し、2003年の日本経済崩壊を招いた。鳩山政権はこの徹を踏んではならない。

 2010年夏には日本政治にとって最重要の参議院選挙が実施される。鳩山政権が経済政策運営に失敗すれば、2010年参院選に大敗し、日本政治刷新は雲散霧消してしまうだろう。

 2010年度予算編成に向けて、日本経済回復優先の基本姿勢を明確にすることが求められる。経済の回復なくして財政状況改善はない。短期の景気回復、中期の財政再建の明確化が不可欠である。

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