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2009年11月10日 (火)

「りそな処理疑惑」解明に関心示す亀井金融相

 これまで数多くの優れた論考を発表されてきた高橋清隆氏が、ライブドアパブリックニュースに新しい記事を掲載された。

 11月7日付記事
「りそな銀行破たんでインサイダー疑惑、
 亀井金融相が興味示す
 =PJ出席の「第二記者会見」で」

と題する論考である。

 以下、高橋清隆氏執筆記事を転載させていただく。

「2003年5月17日にりそな銀行が国家救済された際、インサイダー取引があった可能性について10月23日、記者が亀井静香金融・郵政担当相に調査の意志を尋ねた。亀井大臣が興味を示す中、証券取引等監視委員会に参考資料が届き、当局の動向が注目される。」

「りそな銀行救済に伴う株価変動で外資系ファンドが大きな利益を上げたが、政策決定者である当時の竹中金融相らがこの機密情報を私用した可能性を、エコノミストの植草一秀氏が指摘している。「退出すべき企業は大企業も同じ」「大銀行でも破たんがあり得る」との方針を一転させたことで、りそな株は急反発した。」

「金融庁の非クラブ記者を対象にした「第二会見」で、記者がこの問題について調査の意志を尋ねると、亀井大臣は「その関係どうなってるのか、ちょっと聞いておいてください」と答えた。大塚耕平副大臣が証券取引等監視委員会の自主判断を強調するも「事実関係は調べます」と発言し、大臣は監視委員会への情報提供を指示した。」

「この直後、参考資料の提供を申し出ていた記者に大塚副大臣担当の金融庁職員から電話があった。「大臣は関心を示している」としながら、監視委員会にはその旨連絡したが、同委員会の独立性を確保する理由から直接提出してほしいとの内容だった。これを受け、記者は植草氏のネット上の論稿『りそなの会計士はなぜ死んだのか』山口敦雄(毎日新聞社)などの紹介サイトを、概要文とともに同委員会ホームページ上から送信した。」

「2日、同委員会に調査状況を電話で尋ねると、「お答えできない」としながらも、参考資料のメールが届いたことを認めた。さらに6日、追加で郵送した書籍や雑誌記事などが4日付けで受け取られた配達証明書が来た。同委員会は告発・勧告の処分を行った場合ホームページで公開するが、その他の場合は公表しないとしている。」

「会見でのこの質疑応答は金融庁ホームページに掲載されているほか、ニコニコ動画が配信。30人ほどの記者が出席し、日本証券新聞ジャーナリストの岩上安身氏などが記事化した。投稿サイト「阿修羅」や2ちゃんねるでも増殖し、関心が広がっている。」

「りそな疑惑について調べる者に、不可解なことが相次いで起こってきた。これまで旧朝日監査法人の平田聡会計士、朝日新聞の鈴木啓一記者が死亡したほか、竹中氏が総務相に就いてから批判記事を書いてきた読売新聞の石井誠記者が後ろ手に手錠を掛けられた状態で「自殺」し、植草氏と太田光紀国税調査官が痴漢容疑で逮捕されている。」

 私は現在、月刊誌『月刊日本』

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に、12回連載シリーズ記事

「小泉竹中改革の破綻と政治の新潮流」

を執筆している。

 2009年11月号、12月号では、いわゆる「りそな疑惑」について、概要を記述している。「りそな疑惑」については、本ブログにも詳細を記述してきた。

 2003年春の日本の金融危機は人為的に引き起こされたものであった。株価暴落を招いた最大の原因は、竹中金融相(当時)による2002年10月のニューズウィーク誌における

「大銀行が大きすぎるからつぶせないとの政策方針をとらない」

との発言だった。

 竹中氏はプロジェクトチーム(PT)を作り、銀行の自己資本に組み入れることが認められていた「繰延税金資産」計上ルールについて、米国並みにしか計上できないようにルール変更を強行しようとした。竹中氏はいきなり2003年3月期決算からのルール変更を目指した。

 ゲーム中での基本ルール変更とも言える「暴政」に金融界は猛反発した。反発の先頭に立ったのが西川善文三井住友銀行頭取だった。米国では不良資産に対する貸倒れ引当金の無税償却が認められている。日本では無税償却が認められていないため、その代償措置として繰延税金資産の計上ルールが米国よりも緩く設定されていたのである。このような基本すら踏まえていない乱暴なルール変更方針に金融界が反発したのは当然であった。

 結局、竹中金融PTはルール変更を断念した。竹中氏の面子は丸つぶれになった。この面目喪失へのリベンジの標的として選ばれたのがりそな銀行であったと考えられる。

 りそな銀行が標的にされた理由もきわめて低次元のものであったと考えられる。竹中氏-木村剛氏-奥山章雄氏-朝日監査法人などの連携によって、りそな銀行は自己資本不足に追い込まれたものと考えられる。

 りそな銀行処理の最大のポイントは、同銀行が預金保険法102条第1項3号措置でなく第1号措置が適用されたことだ。詳細については拙著

『知られざる真実-勾留地にて-』

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をご高覧賜りたいが、第1号措置は「破たん処理」ではなく「公的資金による救済」で、正反対の性格を持つ政策措置である。

 第1号措置を適用するには、りそな銀行の繰延税金資産計上が「3年」でなければならなかった。りそな銀行の繰延税金資産5年計上方針に対して強烈に反対した木村剛氏は、ゼロないし1年計上しかありえないことを強く主張した。木村氏は2003年5月14日付ネット上コラムでこの主張を繰り返した。

 しかし、着地は3年計上だった。3年計上により、りそな銀行は公的資金で救済されたのである。「大銀行破たんも辞さぬ」が「大銀行は税金で救済する」に豹変したのが、2003年5月17日だった。

 驚かされるのは、繰延税金資産計上はゼロか1年しかありえず、それ以外の選択肢を容認するなら、破綻すべきなのは監査法人(新日本監査法人)であると強硬に主張していた木村剛氏が、5月17日以降、その批判を完全に封印し、木村氏としては説明不能であるはずの3年計上を認めた最終決定を徹底擁護し始めたことである。

 竹中氏は監査法人の自主的判断だと主張するが、さまざまな状況証拠は、竹中氏を中心とする関係者が人為的にりそな銀行救済を誘導したとの仮説を裏付けている。

 竹中氏は2003年2月7日の閣議後懇談会で日本株価連動投信(ETF)について、「絶対儲かる」発言を示して問題を引き起こした。この時点で、公的資金によるりそな銀行救済のシナリオは確定していたのだと考えられる。

 株式市場では大銀行破たんを警戒し、株式の投売りが広がった。このなかで暴落株式を悠然と買い集めた人々が存在した。最終的に銀行破たんではなく銀行救済が実施されるなら、株価が猛反発するのは確実だ。この内部情報に基づいて株式買い入れに動いた勢力が存在したと考えられるのである。

 2003年の金融危機に連動して、日本経済は失業、倒産、自殺の灼熱地獄に包まれた。「銀行破たん方針」が示されなければ地獄に直面しなかったはずの多くの同胞が、地獄に送り込まれたのである。

 政権交代が実現したからには、「小泉竹中政治の闇」を徹底的に暴き出さなければならない。「かんぽの宿疑惑」の全容解明、「りそな銀行処理疑惑」の全容解明を避けて通るわけにはいかない。鳩山政権、亀井金融相がなさねばならぬ責務は極めて大きい。

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