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2009年11月 9日 (月)

普天間基地移設日米外交問題解決への提案

米国オバマ大統領の訪日日程が変更された。米南部テキサス州の陸軍基地「フォートフッド」で起きた銃乱射事件の追悼式典にオバマ大統領が出席するため、米国が日程変更を打診し、日本政府が受け入れたためだ。

鳩山政権は「対等な日米関係」、「アジア重視外交」の方針を提示しているが、この方針に米国が不快感を強めているとの報道が増加している。

これまでの日本外交は「対米隷属」と呼ぶべきものであった。日本が米国の隷属国であるかのごとく、米国の言いなりになることが日本外交の基本とされてきた。イラク戦争に際しても小泉政権は戦争遂行の正当性を慎重に検討することなく、米国に追従しイラク戦争への不当な加担を実行した。

鳩山政権の新たな外交方針は高く評価されるべきものだ。しかし、日本国内には対米隷属主義者が多数存在し、この勢力が米国に対して「言うべきことは言う」スタンスを明確に示した鳩山政権を激しく攻撃している。

戦後の日本政権では、片山哲内閣、芦田均内閣、鳩山一郎内閣、石橋湛山内閣が米国から攻撃された政権だった。田中角栄内閣も日中国交回復などの政策を推進して米国から攻撃された政権だった。

この意味で、鳩山由紀夫政権が米国および米国のエージェント勢力から攻撃されることは十分に予想される事態である。とりわけ、マスメディアの大半が対米隷属勢力によって支配されているために、鳩山政権に対するマスメディアによる低劣な揺さぶりが大々的に展開されている。

日米間の当面の最大の懸案は、沖縄普天間飛行場の移設問題である。米国はこれまでの自民党政権との間で、沖縄県名護市にあるキャンプシュワブ地域に新しい基地を建設することで普天間飛行場を返還する合意を成立させた。

しかし、今回の総選挙に際して現与党である民主党、社民党、国民新党は基地の県外あるいは海外移設をも視野に入れて移設問題を再検討する方針を示した。この経緯を踏まえて、鳩山政権はキャンプシュワブ地域への移設について、見直し論議を行なっている。

これに対して、米国国務省、国防総省は日本政府に対して、日米合意の速やかな実行を求めており、日米間の最大の政治問題になっている。

この問題に関する鳩山内閣閣僚の発言に相違が見られており、鳩山政権を攻撃するマスメディアが、①閣内不一致、②日米関係悪化、を騒ぎ立てて鳩山政権批判を強めている。

鳩山政権が反省しなければならない部分もある。外交は国と国の関係であるから「継続性」を重視する必要がある。政権交代が実現しても過去の外交交渉は消滅しない。明治時代には江戸末期に締結された不平等条約の改正が明治新政府の重い政策課題になった。

自民党政権がキャンプシュワブへの移転で米国と合意を成立させてしまった現実が存在する以上、この点を踏まえない訳にはいかない。

また、極めて重大な案件であることを踏まえて、鳩山政権は政権内部で十分に協議を重ね、対外発表を一本化する必要がある。各大臣がそれぞれの考え方を持つのは理解できるが、それぞれが好き勝手に発言すれば、閣内不一致で攻撃されるのは当たり前だ。

短期日のうちに県外または海外への移設を決定することは不可能だろう。岡田外務相は、こうした認識の下で、嘉手納基地への一時的な飛行場移設案を提示したが、嘉手納地区住民から強い反発を受けて立ち往生している。新構想を提示するための事前の根回しが行なわれたとは考えられない。

こうした状況を踏まえると、キャンプシュワブ地域への移転を決断しなければ、普天間返還そのものが流れかねない状況になってくる。しかし、大山鳴動して、結局キャンプシュワブ地域への移設で着地させれば、鳩山政権の政策運営全体に対する強い批判が生じることを免れない。

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鳩山政権は自ら迷路に迷い込んだ感がある。しかし、現実の政治は立ち止まってくれない。問題の本質を見つめて解決策を見出さなければならない。

問題を考察する上で不可欠な認識は以下の三点だ。

第一は、沖縄の基地負担が突出して大きく、その軽減を図ることが極めて重要なこと。

第二は、日本外交をこれまでの対米隷属から脱却する契機を見出さねばならないこと。

第三は、キャンプシュワブにV字形滑走路を建設することに伴う環境破壊が極めて深刻であること。

キャンプシュワブにV字滑走路を建設する計画は、実は米国がベトナム戦争時に保持していたものであることが判明した。日米協議から生まれた産物ではなく、米国自身の計画が下地になっていたことが明らかになっている。

移設に伴って必要とされる施設は、本来はヘリコプターの離着陸に必要な施設であって、1300メートルの滑走路ではなかった。1300メートル滑走路建設は、地元に巨額の工事代金を落とすために設定されたものである。このことを、拓殖大学の森本敏教授もテレビ番組で認めた。

このように考えると、キャンプシュワブ地区に大型滑走路を伴わないヘリコプター離着陸施設を建設するとの、新たな計画を描き直すことが検討されるべきではないのか。

かけがえのない自然環境を破壊して大型滑走路を建設することは、建設工事利権関係者が切望することであって、「コンクリートから人への投資」を掲げる鳩山政権の基本方針に反する。日本の主張として、キャンプシュワブにヘリコプター離着陸施設を建設することで、日米間に新たな合意を成立させることに鳩山政権は尽力すべきと考える。

日本が核武装せず、海外諸国の核の脅威に晒されている以上、日本は日米同盟を基軸に据えざるを得ない。この点に関して鳩山政権は「日米基軸」を明確に謳っており、外交の基本姿勢に問題はない。

問題は、日米同盟を基軸に据えつつ、「対米隷属」でゆくのか、「対等なパートナーシップ」を打ち出すのかの選択にある。オバマ大統領は鳩山政権の外交新基本路線を理解する懐の深さを保持していると考えるべきだ。ある程度の短期的摩擦を覚悟しても、日本が「言うべきを言う」姿勢を貫くことが、中期的な日本の国益を増大させると考えられる。

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