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2009年11月21日 (土)

亡国経済政策への誘導灯になる「デフレ宣言」

鳩山政権の副総理兼国家戦略・経済財政担当大臣を務める管直人氏が11月20日の閣議後懇談会で、「日本経済はデフレ状況にある」との認識を示した。政府が「デフレ宣言」を発表したことになる。日本政府は2001年3月~06年6月までの5年以上の期間、「デフレ」を公式に認定していたが、日本経済がこの状況に舞い戻ったことになる。

日本経済の状況は極めて厳しい。戦後最悪の失業、経済苦自殺が続いている。米国で発生したサブプライム金融危機の余波が世界に広がった。内外株式市場で株価が暴落した。本年3月にはNYダウが6547ドル、日経平均株価が7086円まで暴落した。

米国も日本も経済政策を総動員した。米国では80兆円規模の景気対策が発動され、FRBはゼロ金利政策の採用に踏み切った。日本では麻生政権が14兆円規模の補正予算を編成し、日本銀行も超金融緩和政策を維持している。

内外政策当局の政策総動員により、株価は本年3月を転換点に反発した。問題の根源にある米国の住宅不動産価格も本年3月以降8月にかけて、5%程度の反発を示した。世界経済は最悪の状況を脱し、2010年に向けて緩やかな改善が続くとの楽観論も示され始めている。

しかしながら、問題の根はそれほど浅いものではないと考えられる。今回の金融危機は、通常の資産価格バブル崩壊に伴う金融混乱とはまったく異なる特性を有している。資産取得のために投入された融資資金が資産価格下落に連動して不良債権化したために混乱が生じているのではない。

不動産へのローンを原商品として膨大な規模のデリバティブ金融商品が創出されたことに伴って混乱が生じているのだ。デリバティブ金融商品の想定元本は600兆ドル=6京円規模に膨張したと見られている。本年3月から8月にかけて米国住宅不動産価格が小幅上昇したために、金融損失の拡大が一時的に停止しているが、不動産価格が再び下落すれば、巨大な金融損失が再び発生する可能性が高いのである。

内外経済ともに、2010年に大きな不安を残している。米国ではFRBが徹底した金融緩和を継続し、ドル下落傾向持続のなかで株価反発が続いているが、潜在的なドル不安のリスクは極めて大きい。

日本では2010年にかけて、鳩山政権が超緊縮財政政策を実行するリスクが次第に強まりつつある。最近観測される日本株価下落傾向は、この政策リスクを反映したものと考えられる。

このなかで鳩山政権が「デフレ宣言」を発した意味を考察しなければならない。結論から言えば、「デフレ宣言」公表を影で操作しているのは財務省であると考えられる。財務省主導の経済政策運営は、過去に重大な失敗を繰り返していることを忘れてならない。経済政策運営の失敗は鳩山政権の致命傷になりかねないことを認識する必要がある。

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に、「デフレ」という言葉が用いられてきた背景を記述した。

 2001年に「デフレ」という言葉が広く流布され、日本経済の困難が「デフレ」と命名された背景に政治が存在した。

 「デフレ」の第一義は「物価下落」である。しかし、当時の日本が直面していたのは「物価下落」だけではなかった。

 日本経済は、「大不況」、「金融不安」、「物価下落」に直面していたのだ。経済状況を現実に即して表現するなら、「大不況」、あるいは「恐慌」の方が適切であったと考えられる。

 それにもかかわらず、「デフレ」という用語が用いられた。この用語法を誘導したのは財務省である。「デフレ」の第一義は「物価下落」である。「物価」の所管官庁は日本銀行である。つまり、日本経済悪化の責任を負うべきは日本銀行であり、日本経済悪化に対して率先して政策対応を示すべき期間は日本銀行である、との主張を展開するために「デフレ」という言葉が用いられたのである。

 今回、鳩山政権が「デフレ宣言」を発表した。発表と同時に、日本銀行による政策対応を求める声が広がっている。これこそ、財務省の狙いとするところである。財政政策に負担をかけず、日銀の金融政策にプレッシャーをかけようとするのだ。

 しかし、この判断は間違っている。日本銀行は超金融緩和政策を継続するべきだが、日銀の追加政策発動の余地は小さい。量的金融緩和政策が過去に採用されたが、その政策効果は限定されたものである。

 2010年にかけての最大の懸念要因は、財政政策が日本経済に強烈なデフレインパクトを与える可能性が高まっている点にある。2009年度の補正後予算が102兆円規模、国債発行金額が51兆円になることを踏まえると、鳩山政権が編成を進めている2010年度当初予算の92兆円規模、44兆円の国債発行金額は2010年度の日本のGDPを1.5~2.0%ポイントも押し下げるものなのである。

 鳩山政権が経済政策運営を誤る可能性が生じている。財務省が政策運営を仕切り始めていることがその主因である。財務省は1997年度、2001年度と経済政策運営を誘導して、二度とも日本経済を崩壊に導いた。橋本政権はつぶれ、小泉政権も破たんすれすれの状況に追い込まれた。小泉政権が延命したのは、税金によるりそな銀行救済という禁断の金融行政に手を染めたからである。

 財務省は中期的に激しいインフレ誘導を狙っている。巨大な借金を帳消しにするには、インフレ誘導に勝る手法が存在しないからである。物価下落は国民の生活費負担を大幅に低下させている。デフレには個人の実質所得を増加させる側面があり、デフレを一概に悪と決め付けることは間違いである。

 いま、最優先で再検討が求められるのは、2010年度の超緊縮財政政策発動をこのまま容認するべきかどうかなのである。鳩山政権が財務省路線に乗せられて十分な政策論議を怠るなら、その代償は想像を超えるものにならざるをえない。鳩山政権は早急に経済政策立案の司令塔を確保しなければならない。

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