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2009年11月25日 (水)

政官業癒着を断つべき日本航空経営危機の処理

日本航空の経営危機問題処理が紛糾している。日本航空は同社がナショナルフラッグキャリアであることを理由に政府による救済を求めており、前原誠司国交相も大臣就任直後に政府による救済を示唆する発言を示し、その後、日本政策投資銀行が1000億円規模のつなぎ融資に応じるなどの対応が示されている。

日本航空は政官業の癒着構造を象徴する存在でもある。政権交代が実現したにもかかわらず、前原国交相が旧来の自公政権と同様の感覚で日本航空に対する安易な救済策を容認するなら、政権交代実現の意義が問われることになる。

自由主義経済のルールは、自由な経済活動を認める代わりに、結果に対する責任を自己が負うというものである。資本主義経済では、経済活動の中心に株式会社が置かれる。株式会社は一定のルールの枠のなかで自由な行動を行うことを認められているが、結果に対しては自己責任が求められる存在である。

資本主義経済のなかで労働を提供する労働者にも自由主義経済のルールは適用されるが、人間である労働者に対しては、生存権の視点や人間尊重の視点から、自己責任の一言で切り捨てる政策対応の問題点が指摘される。

とりわけ、小泉竹中政治が人間性無視、弱者切り捨ての冷酷な経済運営を推進し、社会全体に大きな混乱と問題を引き起こしたことから、自己責任一辺倒の政策には強い見直しを求める声が高まった。

こうした、人に対する施策と、企業に対する施策とを明確に区別しなければならない。

これまでの自公政権下の政治では、「大資本と政治権力の癒着」が大きな問題であった。鳩山新政権は、企業団体献金全面禁止の方針を明示し、「政治権力と大資本の癒着」を排除する方針を示している。

麻生政権の時代には、「大資本と政治権力の癒着」は維持されていたから、不透明な企業救済策がまかり通っていた。日本航空の経営危機問題は麻生政権時代から継続している問題であり、国交省内部には麻生政権の延長上の感覚で問題を処理しようとする姿勢が強く存在するように窺われる。

日本航空は無数に存在する株式会社のなかでも、「政」と「官」との結びつきが極めて強い企業である。日本航空グループのなかに、「政」も「官」も多くの利権を維持してきた点を見落とせない。

しかし、一般の企業は厳しい自由主義経済のルールのなかで苦闘しながら生きている。経営に失敗したときは、ルールに沿って法的整理に委ねられる。株主も責任を問われるが、出資した資金の範囲内での責任を問われる「有限責任」の大原則が設けられている。

企業として社会に存続することができるなら、責任ある当事者が責任を明確にしたうえで、企業の再建が図られる。経営者や出資者が経営責任、株主責任を問われるのは当然のことだ。また、融資銀行が融資責任を問われることも当然である。

資本主義経済の透明性を維持する上で、不透明な例外を設定することは有害以外のなにものでもない。前原国交相は大臣就任直後から日本航空救済の姿勢を示してきたが、法的整理を軸に検討するのが正しい対応である。

日本政策投資銀行は国営銀行であるが、民営化する方針が示されている。親方日の丸の感覚で、安易に国民資金を投入することは正当化されない。

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民間経済では失敗は失敗として責任を明確することが求められる。政治が介入して基本ルールを歪めることは排除されるべきであろう。

振り返ると、2003年5月にりそな銀行に対して不透明極まりない政策対応が示されて以来、政治が企業統治(コーポレートガバナンス)の基本を歪めるケースが頻繁に観察されるようになった。

りそな銀行のケースでは、政治の介入によって、りそな銀行の決算処理が人為的に歪められてりそな銀行が自己資本不足に人為的に追い込まれたと見られる。政府はりそな銀行の経営陣を排除したかったのだと思われる。

最終的にりそな銀行は自己資本不足と認定されたにもかかわらず、株主の責任は一切問われなかった。逆に政府は2兆円の税金を投入し、りそな銀行株主は株価が3倍以上にも上昇したことによって、国から巨大な利益を供与された。

経営陣が一掃され、政権近親者が新経営陣に送り込まれた。政治権力による銀行乗っ取りが行われたというのが実態であった。

金融庁によるUFJ狙い撃ち、金融検査忌避事件に連動してUFJ銀行は実質的に東京三菱銀行に吸収された。この過程でミサワホームが産業再生機構送りとされ、乗っ取りに直面した。

日本郵政では100%株主である政府、取締役人事の認可権を有する総務大臣の意向が日本郵政取締役に無視されるといった異常な事態も発生した。小泉竹中政治がもたらした企業統治(コーポレートガバナンス)の歪みは常軌を逸したものである。

前原国交相はJR西日本の会社ぐるみの問題隠蔽体質、事故調査委員会への不正な介入問題に対しても厳格な対応を示すべきだ。

日本航空問題の処理に際して、前原国交相は政治利権や政治と資本の癒着を断ち切り、透明性の高い普遍性のある問題解決を図るべきである。企業が立ち行かない場合に、法的整理を中心に位置付けるべきことはでは言うまでもない。

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