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2009年11月

2009年11月30日 (月)

竹中平蔵氏対亀井静香金融相直接対決でのウソ

11月27日付記事

「亀井静香郵政相との直接対決完敗の竹中平蔵氏」

に記述した読売テレビ番組「ウェークアッププラス」での直接対決について、ニュース報道を含めて多くの論評が示された。

 郵政民営化の美名の下で、いかにゆがんだ経営が行われてきたか。

 郵政事業に従事する労働者の人権を無視した収益至上主義のすさんだ労働管理が推進されてきたことも伝えられている。

 日本郵政株式会社を持株会社とする4分社化体制が実際に始動したのは2007年10月である。郵政民営化を担当した竹中平蔵氏が小泉元首相から担当を命じられたのは、2003年6月25日に赤坂プリンスホテルで開かれた夕食会の開始前だったと竹中氏が著書に記述している。

 オリックスの宮内義彦氏が議長を務める総合規制改革会議でも論議されていた郵政民営化の論議の場を、竹中氏が仕切り役を務める経済財政諮問会議に一本化したのは2003年10月3日である。

 2004年4月26日に郵政民営化準備室が設置され、9月10日に郵政民営化の基本方針が閣議決定された。郵政民営化準備室は2004年4月から2005年5月までの1年強の時間をかけて法案作成を行ったが、郵政民営化準備室は、その間に米国保険業界関係者など米国政府関係者と17回もの会合を重ねていた。

 この重大事実は、今回の総選挙で衆議院議員に復職された城内実衆議院議員が2005年6月7日の国会論議で明らかにした。

 2005年9月の総選挙を経て、2005年10月に郵政民営化関連法が成立し、11月には日本郵政株式会初代社長に三井住友銀行頭取の西川善文氏が起用されることが決定され、西川氏と竹中氏が共同で記者会見を行った。

 日本郵政株式会社が正式に発足したのは2007年10月1日だが、西川氏は2006年1月に準備会社の社長に就任し、2007年4月からは日本郵政公社総裁を兼職した。

 日本郵政公社には生田正治氏が就任していたが、菅義偉総務大臣が生田氏を排除する形で西川氏の兼務を実現させた。

 竹中平蔵氏は2006年9月に自民党総裁が小泉純一郎氏から安倍晋三氏に交代するのと同時に総務大臣を辞するだけでなく、参議院議員の職も辞任した。

 竹中氏が参議院議員に就任したのは2004年7月で2010年までの任期約4年を残して突然、辞任した。有権者に対して無責任極まりない行動が取られたのである。

日本郵政公社は日本郵政株式会社への事業承継を前提に行動した。昨年12月、時価が1000億円を超すと見られる「かんぽの宿」79施設が、オリックス不動産に109億円の安値で売却される方針が決定されたことが明らかにされ、国会での問題追及の結果、売却計画が白紙に撤回された。「かんぽの宿」を安値売却する決算処理上の工作は2006年3月から始まっている。

「かんぽの宿」の簿価は2006年3月期決算から急激に引き下げられ始めた。西川善文氏直結の、いわゆる「チーム西川」のメンバーが簿価引き下げ工作の中心を担ったことが各種資料によって裏付けられている。

竹中平蔵氏は日本郵政株式会社が正式発足してからは、地域の郵便局が減少していないと言うが、その最大の理由は、日本郵政が発足する前の日本郵政公社時代に利益を生まない郵便局が多数整理されたからである。

また、会計処理においても、日本郵政公社は日本郵政に引き継ぐ最後の決算である2007年9月期決算で1兆5800億円の特別損失を計上している。日本郵政発足後の決算計数の見栄えを良くするための工作であったと見られる。

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竹中氏は郵政民営化についての討論に出ると、必ず、

①民営化(=日本郵政株式会社正式発足)後は、郵便局が減っていない。

②郵政民営化後、日本郵政株式会社は2009年3月期決算で4200億円の経常利益を計上した。民営化によって利益を生む体質が作られた。

③日本郵政社長、副社長に財務相OBを就任させたのは「天下り」だ。

と主張する。

 以前の記事にも記述したが、日本郵政は290兆円の金融資産を保有しており、利ざやが0.8%確保されている。これだけで2兆3200億円の粗利益が確保される。民営化してもしなくても、大きな利益が確保されることに変化はない。

 日本郵政株式会社発足に際して代表取締役副社長に就任したのは元金融庁長官の高木祥吉氏である。高木氏は竹中金融相の下で金融庁長官を務めた人物である。高木氏の日本郵政副社長就任こそ天下りそのものである。自分で天下り人事を実行しておきながら、鳩山新政権の下での日本郵政人事を「天下り人事」だと批判する竹中氏の厚顔無恥ぶりにはあきれるばかりである。

また、竹中氏は鳩山邦夫元総務省が「かんぽの宿」疑惑を追求した際、「民営化した日本郵政に政治が介入することは根本的に誤っている」と主張していた。つまり、竹中氏は日本郵政の株式が100%政府に保有され、日本郵政が完全国有会社である段階においても、株式会社形態に移行したことをもって「民営化」が実現したと認定していたのである。

この定義に基くなら、鳩山政権が日本郵政株式売却を凍結しても「民営化」を否定することにはならない。鳩山政権は日本郵政の株式会社形態での運営を廃止する方針を示していないからだ。

ブログ界で日本郵政問題について、もっとも詳細な分析を示されているサイトのひとつがTokyonotes東京義塾」様である。このサイトには、日本郵政に関するあらゆる情報が、正確に紹介されている。

Tokyonotes東京義塾」様から11月28日付記事

Go away 2

へのトラックバックをいただいた。

同記事に以下の記述があった。

「亀井金融・郵政改革担当大臣と、市場原理主義を標榜して日本を破壊した竹中平蔵氏とのテレビにおける郵政民営化問題についての応酬があった。竹中平蔵氏は、郵便局員が規律違反をおかして、老人などのお客さんに郵便貯金を扱っていた、犯罪が続出していたなどと、事実誤認の暴論を並べ立てた。

郵政三事業一体の中で、外務を担当する職員が、郵便、貯金、保険をひとりで担当して、一軒一軒を回っていたことなど、ご存じなかった様である。詭弁を労したあげくに、事実に反する、郵便局員を侮辱する発言を述べ立てた。

事実の確認をせずに、竹中氏の発言をそのまま報道したテレビ局も同罪ではないだろうか。テレビ局は、訂正を行うべきである。郵政関係者は、東京の番組を製作したテレビ会社に抗議するべきである。

また、事実に反する発言を行った竹中氏の勤務する慶応大学などを通じて抗議と反論の声を上げるべきである。竹中氏は、学術論文を剽窃したことがあると、指摘されているが、文字通りのえせ学者にすぎない口舌の徒であることが、また明らかになった。」

虚偽の内容をおりまぜ、無責任な言説を公共の電波に乗せて流布し、不正義を押し通そうとする人物を公共電波から排斥するべきである。

Tokyonotes東京義塾」様は、「郵政民営化の巨大な闇を捜査すべきかどうか」について、ネット上でのアンケート調査を実施されている。

ひとりでも多くの市民のアンケートへの参加をお願いしたい。

「かんぽの宿」疑惑に代表される郵政民営化の巨大な闇は、りそな疑惑、ミサワホーム疑惑、新生銀行上場疑惑などと並ぶ「平成の黒い霧事件」の一角を占める重大案件である。鳩山政権下での真相解明が強く求められる。

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2009年11月29日 (日)

サンプロで仙谷行刷相予算編成軌道修正を示唆

国民にとっても鳩山政権にとっても最重要の課題は2010年に向けての経済政策運営である。

2009年度予算は102.9兆円規模に膨張した。膨張させたのは麻生前首相である。鳩山政権は麻生政権が編成した14兆円規模の補正予算のなかの3兆円弱を凍結したが、この資金は2009年度の第2次補正予算の財源に充てられる可能性が高い。

2009年度予算規模は102.5兆円に膨張する。他方、税収は38兆円程度に激減する。歳出規模は税収を64.5兆円上回っており、このうち12.3兆円が税外収入で賄われるから、差額の52.2兆円を国債発行で賄わなければならない。

38兆円の税収に52兆円の国債発行。誰の目にも日本財政の疲弊は明瞭である。ただ、ここで明確にしておかねばならないことは、この財政状況を生み出したのは麻生政権であることだ。鳩山政権は麻生政権の置き土産として、この財政状況を引き継いだにすぎない。

鳩山政権はここまで悪化した2009年度予算をベースにして2010年度を編成しなければならない。

仙谷由人行政刷新相、藤井裕久財務相、管直人国家戦略相などのこれまでの発言では、2010年度当初予算規模を92兆円規模に圧縮する方針が示されていた。

2010年度も税収は38兆円程度にとどまる可能性が高い。予算規模が92兆円になり、一方、税収が38兆円になると歳出規模と税収の差額は54.0兆円になる。

『金利・為替・株価特報』2009年11月25日号はメインタイトルを

「財務省路線採用鳩山政権の巨大リスク」

として、第2節に

2.【政策】2010年度超緊縮財政の巨大リスク

を記述した。

 ここに詳述したが、財政の景気への影響は、端的に言えば、「歳出マイナス税収」(=財政赤字)の前年差によって規定される。

 財政赤字の増加がGDP増加要因、財政赤字減少がGDP減少要因になる。

 鳩山政権が2010年度予算を92兆円規模で編成すると、2010年度の財政赤字前年差は10.5兆円の減少になる。

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 1997年度の橋本政権の大増税予算、2001年度の小泉政権の超緊縮予算以上の超超緊縮予算になる。このフレームワークでの予算編成が具体化するに連れて日本の株価下落が進行し始めていると考えられる。

 鳩山政権が超超緊縮の2010年度予算を編成することは、極めて危険である。米国経済金融市場も大きな不安を抱え込んだままである。為替市場では急激なドル下落、円上昇が進行し始めている。

 鳩山政権が超超緊縮予算を編成すれば、株価急落-景気再悪化-金融不安の悪循環を引き起こす可能性が高い。

 日本の株価が急落すれば2010年夏の参議院選挙では与党は惨敗するだろう。日本政治刷新は始動開始とともに大きな挫折に直面してしまう。

 この点を踏まえて、鳩山政権が2010年度予算編成方針を大きく転換する必要があると『金利・為替・株価特報』に詳述した。本レポートは鳩山首相をはじめとする120名以上の鳩山政権与党国会議員の手元にも届けられている。

 このなかで、大きな変化が生じた。

 11月29日放送のテレビ朝日番組「サンデープロジェクト」に出演した仙谷由人行政刷新相の発言がこれまでの発言と一変した。『金利・為替・株価特報』を熟読していただいたのだと思われる。

 仙谷氏は、次の2点を明確にされた。

①日本財政は102.5兆円の予算規模、38兆円の税収、その結果として52~53兆円の国債発行が現状になっており、この現状を出発点に2010年度予算を検討しなければならないこと。

②2010年度予算を92兆円規模で編成しなければならないと考えてきたが、デフレの進行、急激な円高、株価下落などの経済急変を踏まえると、2009年度予算の現状から急激に引き締める予算編成を強行することには大きなリスクがあること。

の2点である。これこそ、まさに私が一貫して主張してきたことである。

 仙谷氏は2010年度予算の財源として、国債発行を44兆円にとどめ、不足する部分をいわゆる埋蔵金で賄いたいとの意向を表明した。不足する部分を国債(政府債務の増加)で賄っても埋蔵金(政府資産の減少)で賄っても、経済効果は変わらない。

 マスメディアが鳩山政権の下での国債発行増加を攻撃しようとしていることを踏まえれば、国債でなく埋蔵金活用で財源を賄うのは優れた高等戦術である。

 いずれにせよ、鳩山政権執行部の公式発言に私が訴えてきた重要事項が正確に反映されたことは極めて望ましい変化である。

 財務省は従来の発想で、超緊縮財政運営を強行しようとするだろうが、鳩山政権は国民の幸福実現を最優先して、じっくりと予算編成、経済政策運営を吟味する必要がある。鳩山政権の極めて柔軟な思考、対応能力に大いに期待したい。

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2009年11月28日 (土)

亀井静香郵政相との直接対決完敗の竹中平蔵氏

 11月28日の読売テレビ「ウェークアッププラス」に亀井静香郵政担当相と竹中平蔵氏が生出演し、直接対決した。論議は明らかに亀井郵政担当相の勝利だった。

 郵政改革と経済政策が論議された。いずれも竹中平蔵氏が日本政治史に大きな汚点を残した分野である。

 鳩山政権与党は8月30日の決選の総選挙に際して、「郵政改革の実現」を政権公約に掲げて選挙を戦った。国民は鳩山政権与党を全面的に支持し、圧倒的多数の議席を付与した。「郵政改革の実現」は国民の強い意志である。

 1995年の総選挙で国民は小泉竹中政治の郵政民営化路線にゴーサインを与えた。この選挙結果を受けて郵政民営化が実施されたが、郵政民営化は国民の意思を離れた方向に向かってしまった。「郵政民営化」の美名の下で進展したのは「郵政米営化」あるいは「郵政私物化」と呼ばれるものであった。

 竹中平蔵氏は昨年4月20日の朝日ニュースター「ニッポンの作り方」と題するCS番組で、「民営化された郵政マネーを米国に出資せよ」との主張を展開した。サブプライム金融危機救済のためにゆうちょマネーを米国に出資するべきだと主張したのだ。

 この主張に従ってゆうちょマネーを米国の金融危機対策に投入していたら、貴重な国民資金は半分以下の資産価値に目減りしたであろう。そもそも郵政民営化の最大の狙いのひとつは、日本の350兆円の国民資金を米国がかすめ取ろうとしたことにあったと考えられる。危うくそのよこしまな目論見が実行に移されるところであった。

 小泉竹中郵政民営化を正当化する主張は以下の通り。

①地方の郵便局が減ったと言うが、日本郵政株式会社になってからは減っていない。むしろ増えている。

②日本の郵便料金は国際比較で2倍の料金である。このままいけば事業が立ち行かなくなるのは目に見えており、事業改革が必要。

③地域の郵便局が減らないように設置基準が定められており、郵便局を維持するために基金が設けられる。

④公的部門に滞留していた資金を民間に還元することが郵政民営化の最大の目的である。

⑤郵政民営化の成果を引き出すには政治が事業展開の邪魔をしてはいけない。

⑥郵政民営化して郵政の経営成績は急激に改善した。

 これらの主張はことごとく論破されている。

①竹中氏が郵政民営化を担当したのは2003年である。2005年10月に法律が成立し、2007年10月に日本郵政株式会社が正式発足した。

 竹中氏は日本郵政が発足してからは郵便局が閉鎖されていないと言うが、それは日本郵政が発足するまでに不要な郵便局を閉鎖したことを明確に示しているのである。竹中氏が郵政民営化担当に就任したのが2007年10月なら竹中氏の主張は通用するが、竹中氏は2006年9月に小泉内閣の消滅とともに担当をはずれ、ただちに議員辞職しているのだ。

 竹中氏が直接の担当をはずれてから、郵便局の閉鎖がなくなったというのが実態である。

⑥日本郵政が大きな利益を計上するようになったと言うが、日本郵政公社は日本郵政株式会社へ引き継ぐ最後の決算である2007年9月決算で1兆5800億円の特別損失を計上している。新会社である日本郵政株式会社の決算計数の見栄えを良くするために、巨額損失をその前に計上しているのだ。

日本郵政の決算数値の見栄えが良くなるのは当然のことだ。

日本郵政はゆうちょ銀行に190兆円、かんぽ生命に100兆円の資金を保持している。資金利鞘0.8%をあてはめれば、これだけで年間2兆3200億円の収益が確保される。

300兆円弱の資金を抱えているのであるから、誰が経営者であっても巨大利益が計上されるのは当然なのだ。それを民営化の成果と主張するのはまやかし以外のなにものでもない。そもそも郵政3事業は赤字事業ではない。税金を投入せずに運営されてきた事業部門である。

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③について、竹中氏は地域の郵便局が維持されると主張するが、法律に地域の郵便局維持、金融サービス提供は義務付けられていない。長期的に不採算の地域郵便局が切り捨てられることは明白だった。

また、これまでの郵政三事業の展開では、郵便の集配人がさまざまな付帯サービスを有機的に提供し、過疎地に住む高齢者に重要なサービスを提供してきたが、郵政民営化によってこれらのサービスも冷酷に切り捨てられた。

特定郵便局ネットワークは日本の津々浦々にまで張り巡らされた貴重な公的サービス提供のインフラであり、これらのインフラを最大限活用してゆきたいとの亀井郵政担当相の主張は正当なものである。

④郵政民営化の最大の狙いは、公的部門に滞留した資金を民間に還流することとされたが、郵政民営化によってそれが実現したのかというと、現実はまったく違う。逆に資金の公的部門への滞留は強まったのだ。

 2009年3月末現在、ゆうちょ銀行の総資産196兆円のうち、有価証券が173兆円、このなかの162兆円が公共債である。貸出金は4兆円に過ぎない。かんぽ生命では総資産107兆円のうち、有価証券が83兆円、このなかの74兆円が公共債である。貸付金は18兆円あるが大半が機構貸付で一般貸付は2170億円に過ぎない。

つまり、民営化すると300兆円の資金が民間に還流して日本経済の発展に寄与するかのような話はまったくのでたらめだった

 竹中氏が指揮した郵政民営化では、奥谷禮子氏が日本郵政株式会社社外取締役に起用された。奥谷氏が社長を務める株式会社ザ・アールの第2位株主はオリックスであるとも伝えられている。奥谷禮子氏は、経済同友会メンバーで、宮内義彦氏が議長を務めた総合規制改革会議の委員も務めた。

 この株式会社ザ・アールは、日本郵政公社から職員マナー研修で7億円もの業務の発注を受けたと伝えられている。週刊ダイヤモンド2009年5月23日号によると、株式会社ザ・アールが受注したマナー研修に関連してスタートした接客態度ランク付け制度は、2007年10月の日本郵政発足後に雲散霧消してしまったという。週刊ダイヤモンドは「七億円はどぶに捨てたようなもの」という郵政関係者の声を紹介している。

週刊ダイヤモンドが紹介した「マナー研修」とは次のようなものだった。

「「これがスカイブルーの挨拶です」--元キャビンアテンダント(CA)だという講師はそう言うと、深々とお辞儀をしてみせた。お辞儀をされたお客さんが青空のような爽快さを感じるから「スカイブルー」なのだそうな。

続いて、書留配達のロールプレイング。配達先でまず自身の所属局と部署、名前を言ってスカイブルーのお辞儀をし、満面の笑みで「○○様、本日は書留をお届けに上がりました」と告げなければならない。

参加した職員はたまらず、研修を見守る幹部に尋ねた。「あんなことをしたら配達先が気味悪がってドアを開けてくれなくなるけど、本当にやるんですか」--。

職員全員の接客態度をランク付けするとし、ランクは上から三つ星、二つ星、一つ星、星なし。星の獲得には研修参加が不可欠で、二つ星、三つ星には筆記試験が課される。獲得すれば星の絵柄入りのバッジが支給される。

当初、「星のない職員は接客業務からはずす」とまで宣言していたが、現実には慢性的人手不足のために職員が星を獲得するまで待っている余裕などなかった。加えて、7億円もの取引がある奥谷氏が日本郵政の社外取締役に就任したことが国会で問題となり、民営化後は星の認定制度そのものが雲散霧消してしまった。

「7億円はどぶに捨てたようなもの」(郵政関係者)だ。「人にマナーを説く前に、経営者としての“マナー違反”をなんとかしてほしい」」

これが、竹中氏が推進した郵政民営化の実態であった。

竹中氏は政治が民営化の邪魔をするなと言うが、「かんぽの宿」不正売却未遂疑惑問題で明らかになったのは、時価1000億円程度とみられる日本郵政資産が109億円の安値で関係の深い民間事業者に横流しされようとしていた事実である。

政治がこのような不正を糾すべく介入するのをやめろというのが竹中氏の主張らしい。CIAと関わりの深いと見られる読売は、竹中氏を出演させ続けている。視聴者は偏向報道から真実を読み取らねばならないという難業をこなさなければならないが、マスメディアの情報操作を洞察し、真実を知らなければ、日本政治の刷新は実現しない。

感覚を研ぎ澄まして真実を洞察し、不正な人々を排除してゆかねばならない。

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2009年11月27日 (金)

完全に予測されていた米ドルの全面安

為替市場でドル下落が進行している。

マスメディアは「円高」と騒いでいるが、米ドルは日本円に対してだけでなく、ユーロ、ポンド、加ドル、豪ドルなどの主要通貨に対して全面的に下落しており、「円高」と表現するよりも「ドル安」と表現する方が正しい。

本年7月に私は副島隆彦氏との共著書

『売国者たちの末路-私たちは国家の暴力と闘う』

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を祥伝社から上梓させていただいた。

その第7章「地獄へひた走る世界経済」

に私は次のように記述した。

「アメリカでは今後数年間、年間180兆円の財政赤字が生まれます。これを賄うにはFRBが無制限に供給するしかない。ドルは大幅に下落し、世界的にインフレ誘発的な環境が強まっていく。ドル暴落はアメリカが最も警戒するシナリオだと思います。

私には、アメリカも日本も“根拠なき楽観”が広まっているような感じを受けます。」

世界経済は2008年に表面化した「サブプライム金融危機」に伴う大調整のさなかにある。本年3月以降、内外の株価が反発して安心感が広がっているが、問題が解決されたわけでない点に十分な警戒が必要である。

今回の金融危機の最大の特徴は、金融危機が資産価格下落に伴う銀行ローンの焦げ付きによって生じているのではない点にある。資産価格上昇過程で天文学的規模に膨張した「デリバティブ金融商品」の価格下落によって危機が生じている点に最大の特徴がある。

この特徴がもたらす最重要事項は、損失規模が過去のバブル崩壊とは「桁違い」であることなのだ。

本年4月以降、米国の住宅不動産価格が小幅上昇した。その結果、デリバティブ金融商品の価格も小幅上昇し、潜在的な損失が小幅縮小した。このことによって、金融市場が小康状態を取り戻した。

しかし、米国の不動産価格が上昇に転じたと判断するのは時期尚早である。オバマ政権は7800億ドルの景気対策を打った。この尋常ならざる巨大政策の効果で「小康状態」が得られたのである。

しかし、このような拡張政策を持続する財政力が米国にはない。早晩、政策によるGDP成長率押し上げ効果は急縮小する。不動産価格が政策の支援を失った時に再下落する可能性は依然として高いのである。

米国は徹底的な金融緩和政策を維持せざるを得ない。その論理的帰結がドル下落である。

日本では日銀に対する金融緩和圧力がさらに強まるだろう。世界は「通貨切り下げ競争」の様相を示し始める。

日本の本当の問題は財政政策にあるが、ここに光を当てないために「デフレ」が宣言され、金融政策に焦点が当たるように意図的に誘導されてゆく。

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『金利・為替・株価特報』は一貫してドル下落基調持続の見通しを提示してきた。『金利・為替・株価特報』2009年11月25日号のタイトルは、

「財務省路線採用鳩山政権の巨大リスク」

目次は以下の通りである。

1.【政策】バブル崩壊後4度目の株価暴落危機

2.【政策】2010年度超緊縮財政の巨大リスク

3.【政策】「デフレ宣言」の裏のウラ

4.【米国株価】米国株価を支えているもの

5.【為替】良いドル安と悪いドル安

6.【日本株価】日本株価に三尊天井懸念

7.【金利】短期のリスクと長期のリスク

8.【政策】普天間移設と日本航空

9.【投資戦略】

 ドル下落の中期的リスクをしっかりと分析する必要がある。

 本ブログ11月8日記事

「全国民必読の副島氏新著『ドル亡き後の世界』」

に、副島隆彦氏の新著を紹介させていただいた。

 

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 副島氏は的確に「ドル暴落」と「金価格高騰」を予言され続けて来られた。経済金融予測にとって最も重要な、「ものごとの本質」をこれ以上的確に洞察され抜いておられる方を私は知らない。

 11月8日記事に以下の記述を示した。引用させていただく。

「世界の金融市場は政策当局の短期応急処置によって本年3月以降に小康状態を取り戻した。この小康状態を事態改善の第一段階と見るか。それとも、長期大崩壊のトレンドのなかでのあや戻しと見るか。この点が決定的に重要である。

 副島氏はこの点について明確な見通しを指し示す。生半可な分析では不可能な中期予測を精密な分析と深い洞察力に基づいて示されるのだ。

 米国経済の最大のアキレス腱は、米国が巨額の経常収支赤字を継続している点にある。米国の金融政策当局であるFRBは日本と同様のゼロ金利政策、量的金融緩和政策に踏み出している。FRBの資産健全性の大原則を踏みにじり、FRBのバランスシートは急激に大膨張した。

 いずれ、ドルの信認が根底から揺らぐことになるのは確実だろう。この点を副島氏はまったくぶれることなく、洞察し続けてきた。副島氏が予測をことごとくピタリと的中させる金字塔を樹立されてきた背景には、深い洞察力とその洞察力を裏付ける正確な国際政治経済金融情報を集積し得る「情報力」=インテリジェンスが存在するのだ。」

 さらに私は次のことがらを書き加えた。

「日本政府は2002年10月から2004年3月までの1年半に外貨準備を47兆円も膨張させた。外貨準備高は100兆円に到達している。しかし、この100兆円はそのまま巨大な為替リスクに晒(さら)されているのである。

 本ブログでは、日本の外貨準備の巨大リスクについて繰り返し警告を発し続けてきた。100兆円の外貨準備、政府保有米ドル建て米国国債を、為替損失を実現しないように日本政府は売却するべきなのである。日本政府が100兆円のドル建て米国国債を保有したままドル暴落を放置することは、日本が米国に100兆円を贈与することにほかならない。

 橋本龍太郎元首相が米国国債売却を示唆する発言を示し、米国の激しい攻撃に直面した。中川昭一元財務相も米国に隷従する形での資金供給にNOのスタンスを提示した。副島氏は私との共著『売国者たちの末路』においても指摘されたが、中川元財務相のイタリアG7での失脚事件、先般の逝去について、重大な疑問を提示されている。」

 急激な円高進行で日本政府は巨大な為替損失に直面している。竹中平蔵氏時代の50兆円の対米資金提供だけでも15兆円程度の為替評価損を計上しているはずだ。ドルが下落するとドル買い円売り介入が叫ばれるが、過去の為替介入損失を総括せずに、節操無くドル買いを続けることは許されるものでない。

 ともかくは、副島隆彦氏の優れた著作『ドル亡き後の世界』を熟読し、いま何が起きているのかを的確に把握することをお勧めしたい。

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2009年11月26日 (木)

否定するより改善するべき事業仕分けの手法

悪徳ペンタゴンの広報部隊であるマスメディアによる鳩山政権攻撃が続いている。政権交代の偉業を成し遂げた日本市民は鳩山政権を守らねばならない。

政治資金の問題など不透明な問題については十分な説明が必要だが、日本政治の時計の針を元に戻すための劣悪な世論誘導に流されぬよう、市民は十分な警戒が必要である。

11月24日付記事

「偏向メディアを冷ややかに見始めた日本市民」

に次のように記述した。

「CIAと関係の深い「読売」、市場原理主義勢力と結託する「朝日」、政権交代が実現したことをもって「下野」と公言してはばからない「フジサンケイ」、小泉新報と化していた「日経」、公明党との関係が深い「毎日-TBS」など、民間マスメディアは足並みをそろえて鳩山政権攻撃を展開し続けている。

NHKも小泉政権時代に政治からの強い支配力を行使された。とりわけNHK政治部には、影山日出夫氏や島田敏男氏など、自民党に極度に偏向した人物が在籍し、政権交代後も更迭されないままの状態が維持されている。

日経新聞の田勢康弘氏も日経新聞の意向を反映して、反小沢一郎氏、反民主党の偏向した主張を展開し続けている。田勢氏以外の日経政治部記者は、足並みをそろえて低質な民主党攻撃の文章を新聞に掲載し続けている。」

日経新聞の低質化は目を覆うばかりであるが、その淵源は小泉政権発足後、小泉元首相と親密な杉田亮毅氏が同紙の実権を握ったことにあると思われる。日経新聞も産経新聞同様、鳩山政権発足後は必死に鳩山政権に対するネガティブ・キャンペーンを展開している。

「誰も通らない裏道」様が11月22日付日経新聞朝刊2面に掲載された伊奈久喜氏署名記事について、

「完全なイエロージャーナリズムに堕した日経」

と題する記事に的確な論評を掲載された。伊奈氏の署名記事のような文章が全国紙に掲載されるほどに日本のジャーナリズムの水準が低下していることに驚きを禁じ得ない。

 ①普天間基地をめぐる日米交渉、②「政治とカネ」問題、③事業仕分け、④景気対策、⑤成長戦略、⑥2010年度予算編成、⑦国会運営、などについて、マスメディアは今後も激しい鳩山政権攻撃を展開し続けるだろう。マスメディアが異常ともいえる鳩山政権批判を展開するのは、「悪徳ペンタゴン」の手に元に日本政治をもう一度引き戻そうとの狙いによるものであると考えられる。

鳩山政権の現状に問題が無いわけではない。事業仕分け人に市場原理主義者や財務省御用人を起用したり、日本航空経営危機問題への対処に従来の政官業癒着構造を引きずるなど、改善が求められる点は多い。

しかし、時計の針を逆戻りさせることは許されない。日本政治刷新を希求する日本市民は、鳩山政権に対して厳しいが温かい視線を送り続けるべきである。偏向マスメディアの悪質な世論誘導に支配されることのないよう、十分な警戒が必要である。

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鳩山政権が取り組んでいる事業仕分けについて、「神州の泉」主宰者の高橋博彦氏が重要な指摘を示されている。事業仕分けの手順のなかにさまざまな問題点が存在することは事実である。科学技術予算の削減について、ノーベル賞受賞者が顔をそろえて、「事業仕分け」批判を行った映像がテレビメディアで繰り返し報道されている。

マスメディアが鳩山政権批判の一環として映像を流布していることは歴然としている。マスメディアはこれまでの鳩山政権ネガティブ・キャンペーンの懸命な努力にもかかわらず、鳩山政権支持率の引き下げに成功していない。このことから、焦燥感を強め、キャンペーンを加速させているようにも見える。

国家予算は国家の政策そのものと言ってよい。政府の施策は予算に計上されて実行に移される。予算の内容を精査し、支出内容を選択することこそ、政策そのものと言ってよい。

事業仕分けで明らかになっていることは、これまで、膨大な国家予算が役人とその役人が握る巨大予算に群がる独立行政法人、公益法人、民間事業者などのハイエナのような利権関係者によって食い物にされてきたという現実である。

予算に計上されてきた支出詳細の氷山の一角が初めて、国民の目の前に明らかにされた。このプロセスを通じて、不要な支出が排除されることは、高橋博彦氏が指摘するように、「歴史的な変革行為」である。日本市民の多数が事業仕分けによる政府支出精査に賛意を示しているのは当然のことである。

政府支出は、

「国民の福祉向上のための予算」

「役人の福祉向上のための予算」

に二分できる。

 事業仕分けによって、まず排除すべきは後者の「役人の福祉向上のための予算」である。事業仕分けによる国民の賛意はこの部分に対する鳩山政権の強い姿勢に対するものであると思われる。

 事業仕分けは全体としては、後者の排除に力点を置いて進められていると見えるが、いくつか重要な問題がある。

 財務省の予算削減ターゲットについては、これまで御三家と呼ばれてきたのは、①公共事業、②社会保障、③地方交付税、の三つである。財務省の利権につながらない対象への支出を切ることに力点が置かれてきた。

 今回の事業仕分けでは、「役人の福祉向上のための予算」が切り込みの対象に含まれているが、財務省関連の予算への切り込みが不十分である点に大きな問題がある。

 「地獄への階段」様は11月24日付記事

「国立印刷局」&「印刷朝陽会」を仕分け対象に!」

に、国立印刷局と印刷朝陽会を事業仕分けの対象に取り上げるべきであるとの意見を示された。事業仕分けの会場は国立印刷局の施設であるが、財務省が事業仕分けを積極推進するなら、「隗より始めよ」で、財務省利権に積極的に切り込む必要がある。

 2010年度予算編成においては、「役人の福祉向上のための予算」を大胆に切り込み、「国民の福祉向上のための予算」を思い切って増額するべきである。

 国民の福祉向上の視点においては、「教育」、「社会保障」がとりわけ重要である。財務省は基礎教育にかかる支出も削減のターゲットにしている。これは、間違った方向である。

 ノーベル賞学者が科学技術予算に対する削減方針に反論することは理解できるが、現実の予算編成に際しては、どのような形での予算計上が必要であるかを綿密に検討する必要がある。

 優秀な学者に必要な予算は計上しなければならないが、現実の予算配分では優秀でない学者に対するとても有用と思われない支出対象に巨大な予算が費消されているのも紛れもない現実なのである。

 こうした意味で、予算精査にあたっては、綿密な検討を要する部分が大きく存在しており、現在進められている「事業仕分け」の手法には大きな限界があることも正しく認識しなければならないと思われる。

 いずれにせよ、大きな試みはまさにスタートしたばかりである。大変革は試行錯誤を繰り返すなかから、確かな道筋を見出してゆくものである。始まったばかりの段階で、細かな問題が存在することを、鬼の首をとったように大宣伝し、試み自体を委縮させることは賢明でない。

 問題があれば謙虚に是正し、より望ましい形に修正してゆく漸進(ぜんしん)主義をとることが重要だと思われる。

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2009年11月25日 (水)

政官業癒着を断つべき日本航空経営危機の処理

日本航空の経営危機問題処理が紛糾している。日本航空は同社がナショナルフラッグキャリアであることを理由に政府による救済を求めており、前原誠司国交相も大臣就任直後に政府による救済を示唆する発言を示し、その後、日本政策投資銀行が1000億円規模のつなぎ融資に応じるなどの対応が示されている。

日本航空は政官業の癒着構造を象徴する存在でもある。政権交代が実現したにもかかわらず、前原国交相が旧来の自公政権と同様の感覚で日本航空に対する安易な救済策を容認するなら、政権交代実現の意義が問われることになる。

自由主義経済のルールは、自由な経済活動を認める代わりに、結果に対する責任を自己が負うというものである。資本主義経済では、経済活動の中心に株式会社が置かれる。株式会社は一定のルールの枠のなかで自由な行動を行うことを認められているが、結果に対しては自己責任が求められる存在である。

資本主義経済のなかで労働を提供する労働者にも自由主義経済のルールは適用されるが、人間である労働者に対しては、生存権の視点や人間尊重の視点から、自己責任の一言で切り捨てる政策対応の問題点が指摘される。

とりわけ、小泉竹中政治が人間性無視、弱者切り捨ての冷酷な経済運営を推進し、社会全体に大きな混乱と問題を引き起こしたことから、自己責任一辺倒の政策には強い見直しを求める声が高まった。

こうした、人に対する施策と、企業に対する施策とを明確に区別しなければならない。

これまでの自公政権下の政治では、「大資本と政治権力の癒着」が大きな問題であった。鳩山新政権は、企業団体献金全面禁止の方針を明示し、「政治権力と大資本の癒着」を排除する方針を示している。

麻生政権の時代には、「大資本と政治権力の癒着」は維持されていたから、不透明な企業救済策がまかり通っていた。日本航空の経営危機問題は麻生政権時代から継続している問題であり、国交省内部には麻生政権の延長上の感覚で問題を処理しようとする姿勢が強く存在するように窺われる。

日本航空は無数に存在する株式会社のなかでも、「政」と「官」との結びつきが極めて強い企業である。日本航空グループのなかに、「政」も「官」も多くの利権を維持してきた点を見落とせない。

しかし、一般の企業は厳しい自由主義経済のルールのなかで苦闘しながら生きている。経営に失敗したときは、ルールに沿って法的整理に委ねられる。株主も責任を問われるが、出資した資金の範囲内での責任を問われる「有限責任」の大原則が設けられている。

企業として社会に存続することができるなら、責任ある当事者が責任を明確にしたうえで、企業の再建が図られる。経営者や出資者が経営責任、株主責任を問われるのは当然のことだ。また、融資銀行が融資責任を問われることも当然である。

資本主義経済の透明性を維持する上で、不透明な例外を設定することは有害以外のなにものでもない。前原国交相は大臣就任直後から日本航空救済の姿勢を示してきたが、法的整理を軸に検討するのが正しい対応である。

日本政策投資銀行は国営銀行であるが、民営化する方針が示されている。親方日の丸の感覚で、安易に国民資金を投入することは正当化されない。

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民間経済では失敗は失敗として責任を明確することが求められる。政治が介入して基本ルールを歪めることは排除されるべきであろう。

振り返ると、2003年5月にりそな銀行に対して不透明極まりない政策対応が示されて以来、政治が企業統治(コーポレートガバナンス)の基本を歪めるケースが頻繁に観察されるようになった。

りそな銀行のケースでは、政治の介入によって、りそな銀行の決算処理が人為的に歪められてりそな銀行が自己資本不足に人為的に追い込まれたと見られる。政府はりそな銀行の経営陣を排除したかったのだと思われる。

最終的にりそな銀行は自己資本不足と認定されたにもかかわらず、株主の責任は一切問われなかった。逆に政府は2兆円の税金を投入し、りそな銀行株主は株価が3倍以上にも上昇したことによって、国から巨大な利益を供与された。

経営陣が一掃され、政権近親者が新経営陣に送り込まれた。政治権力による銀行乗っ取りが行われたというのが実態であった。

金融庁によるUFJ狙い撃ち、金融検査忌避事件に連動してUFJ銀行は実質的に東京三菱銀行に吸収された。この過程でミサワホームが産業再生機構送りとされ、乗っ取りに直面した。

日本郵政では100%株主である政府、取締役人事の認可権を有する総務大臣の意向が日本郵政取締役に無視されるといった異常な事態も発生した。小泉竹中政治がもたらした企業統治(コーポレートガバナンス)の歪みは常軌を逸したものである。

前原国交相はJR西日本の会社ぐるみの問題隠蔽体質、事故調査委員会への不正な介入問題に対しても厳格な対応を示すべきだ。

日本航空問題の処理に際して、前原国交相は政治利権や政治と資本の癒着を断ち切り、透明性の高い普遍性のある問題解決を図るべきである。企業が立ち行かない場合に、法的整理を中心に位置付けるべきことはでは言うまでもない。

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2009年11月24日 (火)

偏向メディアを冷ややかに見始めた日本市民

悪徳ペンタゴンの広報部隊であるマスメディアは、必死に鳩山政権攻撃を続けている。

①沖縄普天間基地移設問題での鳩山政権の対応が日米関係を悪化させているとのプロパガンダが流布されている。

②「政治とカネ」の問題について、自民党の問題をまったく追及せずに、民主党の問題だけを針小棒大に取り上げる。

③景気二番底が到来することを喧伝(けんでん)し、鳩山政権の景気浮揚策が十分でないと批判する。

④一方で、2009年度の国債発行金額が50兆円を突破すること、2010年度当初予算での国債発行金額が44兆円以上になることを、財政規律喪失と批判する。

⑤金融機関に借金の返済猶予を促す「中小企業等金融円滑化法案」(モラトリアム法案)の採決を衆議院本会議で強行したことを、「横暴な国会運営」だと騒ぎ立てる。

⑥「事業仕分け」における蓮舫議員などの受け答えを、乱暴であるとバッシングする。

⑦鳩山政権が、子ども手当に所得制限を設けること、高速道路無料化の実施スピードを落とすこと、などを検討する考えを表明したことに対して、公約違反と批判する。

何から何まで批判の対象にしている。CIAと関係の深い「読売」、市場原理主義勢力と結託する「朝日」、政権交代が実現したことをもって「下野」と公言してはばからない「フジサンケイ」、小泉新報と化していた「日経」、公明党との関係が深い「毎日-TBS」など、民間マスメディアは足並みをそろえて鳩山政権攻撃を展開し続けている。

NHKも小泉政権時代に政治からの強い支配力を行使された。とりわけNHK政治部には、影山日出夫氏や島田敏男氏など、自民党に極度に偏向した人物が在籍し、政権交代後も更迭されないままの状態が維持されている。

日経新聞の田勢康弘氏も日経新聞の意向を反映して、反小沢一郎氏、反民主党の偏向した主張を展開し続けている。田勢氏以外の日経政治部記者は、足並みをそろえて低質な民主党攻撃の文章を新聞に掲載し続けている。

11月22日放送のテレビ朝日番組「サンデープロジェクト」では、田原総一朗氏が、いつものように事実をねじ曲げた偏向報道を展開した。

田原氏は、鳩山政権が総選挙の際に、沖縄の普天間基地を国外または県外に移設するとの公約を示したが、その実現が難しくなっており、明らかな公約違反だと繰り返し述べた。

鳩山首相が総選挙の際に、普天間基地をできれば県外、あるいは国外に移設したいとの考えを述べたことは事実だが、民主党がマニフェストに県外移設、海外移設を明確に示したという事実は存在しない。

自民党政権が米国との間で辺野古地区への移転で合意を成立させてしまったことを踏まえて、民主党はマニフェストに慎重な表現を用いたのだ。

マニフェストの表現は以下の通りである。

51.緊密で対等な日米関係を築く

○日本外交の基盤として緊密で対等な日米同盟関係をつくるため、主体的な 外交戦略を構築した上で、米国と役割を分担しながら日本の責任を積極的に果たす。

○米国との間で自由貿易協定(FTA)の交渉を促進し、貿易・投資の自由化を進める。その際、食の安全・安定供給、食料自給率の向上、国内農業・農村の振興などを損なうことは行わない。

○日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む。
(ここまで引用)

 普天間問題の決着が容易ではないことを吟味したうえで、マニフェストには慎重な表現が用いられたのである。

 田原総一朗氏はこんな基本的事実も押さえることなく発言を垂れ流している。政治番組の司会者としての基本中の基本の資質が欠落していると言わざるをえない。

 田原氏は、鳩山首相に対する国民の印象を低下させるためには手段を選ばない行動を展開しているのだと思われるが、このような姿勢を示す人物に番組を仕切らせるのは、放送法に反するものと言ってよいだろう。

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 マスメディアの鳩山政権批判への執念には強い驚きを感じざるをえない。

 小泉進次郎衆議院議員が国会で質問したことをメディアがほめちぎっていたが、わざわざテレビ番組が時間を割いて賞賛するような内容は皆無だった。この点について「カナダde日本語」の美爾依さんが、

「あまりにも稚拙すぎる小泉進次郎の国会質疑」

と題する記事を書かれたが、まったくその通りだと思う。

 日本の言論空間の主要部分を支配する低質マスメディアの根本的な改革が日本改革には不可欠だ。しかし、現実を見ると暗澹(あんたん)たる気持ちにならざるをえない。

 しかし、考えてみればこのような状況のなかで、日本の市民は政権交代の偉業を成就したのである。私は選挙期間に合わせるかのように身柄を拘束され、投票権まで奪われた。選挙直前のテレビ報道は、酒井法子氏報道に占拠された。

 酒井法子氏事件があったからといって、総選挙報道はいくらでも可能だったはずだ。マスメディアは酒井法子氏報道を大義名分にして、国民の選挙への関心が高まらないように、選挙報道を最小限に抑制したのだと思われる。

 私も懸命に選挙での投票を呼び掛けた。日本の市民はメディア・コントロールに対する耐性を強め始めているのだと思う。

 テレビメディアが懸命に鳩山政権に対するネガティブ・キャンペーンを展開しているが、鳩山政権の支持率は驚くほど低下していない。これは驚くべき事態である。

 政党支持率も民主党が40%程度であるのに対し、自民党は20%を大きく下回っている。内閣支持率については、早速「カナダde日本語」の美爾依さんや「晴天とら日和」様などが記事取り上げて下さっている。

 鳩山首相が「審議拒否をしてもらいたくない」と発言したのに対し、自民党国対委員長の川崎二郎氏は下品さを丸出しにして、「こんなばかな話があるか。首相としての見識を疑う」とわめき散らす。この映像が流れるたびに、自民党支持率が低下することに気付かないようでは、自民党の未来は薄暗い。

 安倍政権、福田政権、麻生政権の時代、自公は衆議院で多数を占めていたが、参議院では少数勢力だった。参議院の多数派勢力の意向を尊重するのが国民主権、国会重視の政治運営のはずだったが、自公政権は参議院の意思を無視して、衆議院での再可決を繰り返したのではなかったのか。

 そんな、つい最近の過去を忘れ去ったかのような発言を示して、国民が賛意を示してくれると思っているなら甘すぎる。

 マスメディアが偏向報道を繰り返すなかで、市民の政治を見る力が確実に強くなっているのだと思われる。政権交代実現からまだ2ヵ月しかたっていないのだから、すべてが一朝一夕に変わることはありえない。しかし、鳩山政権はぶれることなく、新しい時代を築き上げる方向に着実に動き始めていると言ってよいだろう。

 当面の最大の問題は、経済政策である。問題は麻生政権が日本財政を破壊し尽くしてしまったことだ。このなかで、2010年の景気回復を実現することが求められている。鳩山政権は財政破たんを回避しつつ、日本経済の回復を誘導せよと求められているのだ。

 マスメディアや自民党の要求は無責任を絵に描いたようなものだ。短期的には「確実な景気回復策の実行」と「財政の健全性回復」の二つを両立させる道はない。当たり前のことだ。それにもかかわらず、政治番組の司会者は、執拗に二つを両立させる行動を鳩山政権に要求する。

 『金利・為替・株価特報』097号の発行日が11月25日になる。ご購読者様にはご了承をお願い申し上げたい。この097号に、日本財政の置かれた現状を詳細に説明する。

 麻生政権は巨大な財政出動を実行した。それにもかかわらず、日本経済の先行き不安が残存するところに、問題の根の深さがある。「非常事態」が生まれているのだ。したがって、政策対応も「平時」の判断では間違いを起こす。「有事」であることを前提に、政策判断を下さねばならない。

 財務省は足元の財政悪化に狼狽(ろうばい)している。この狼狽が鳩山政権に感染している。事態は容易でなく、判断を誤れば打撃は極めて大きいだろう。

 最近、モノの値段が下がること自体が「悪い」ことのように評価する評価基準が人為的に流布され始めているように見える。「物価下落」を「悪」と位置づけ、日銀の超金融緩和政策に世論の流れを誘導しようとする財務省の策略が見え見えである。これで問題が解決する可能性はゼロだ。正当な論議を起こさねばならない。まずは、『金利・為替・株価特報』に重要な論考を掲載するので、ご高覧賜りたい。

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2009年11月22日 (日)

「赤字横ばい」と「大不況」の間での二者択一

鳩山政権で国家戦略室担当相と経済財政担当相を兼務する管直人副総理が「デフレ宣言」を発表したことについて、私は昨日、本ブログに、

「亡国経済政策への誘導灯になる「デフレ宣言」」

と題する記事を掲載した。

 そのなかで、拙著『知られざる真実-勾留地にて-』

 

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に、「デフレ」なる言葉が用いられるようになった経緯について記述したことを紹介した。

 以下に、拙著『知られざる真実-勾留地にて-』から、該当部分を引用する。「デフレ」という用語が用いられるようになった経緯を記述した個所は、

第一章「偽装」
第29節「言論封殺のメディア・コントロール」

で、私はメディア・コントロールに関する諸問題のなかから三つの事例を例示した。メディア・コントロール問題に関する詳論は第二章で記述しており、そのなかで「NHK問題」についても詳述した。

「NHK問題」とはNHKが政治権力に支配されてしまってきた現実を指す言葉だが、その背景、経緯、実態について記述した。第一章では、「メディア・コントロール」の問題を紹介する「さわり」として、

①「デフレ」という言葉がなぜ用いられたのか

②「NHK日曜討論」や民放番組制作における放送局と政治権力との癒着

③現職閣僚であった竹中平蔵氏による放送局への圧力

を例示して説明した。

以下は、「デフレ」という用語が用いられたことに関する第一章における記述の引用である。

「「メディアーコントロール」については第二章で詳論する。「NHK問題」も重大なテーマだ。三つの事例を示す。2002年ころから「デフレ」という用語が頻繁に聞かれるようになった。「デフレ」とは、不況、資産価格下落、金融不安を総称する表現だ。一般物価は下落していたが、当時の実情は「大不況」か「金融危機」だった。用語の発信源は政府=財務省だったと思う。

「デフレ」の第一義はデフレーション=物価下落だ。物価に責任を負うのは日銀だ。病名が「デフレ」=物価下落なら担当医は日銀で、発病の責任も治療の責任も日銀が負うべきとなる。大不況発生の真犯人は政府=財務省だ。「デフレ」という用語を流布して日銀に責任を転嫁したのだ。深謀遠慮の下に「デフレ」が流布されたと思う。

「デフレ」の流布に尽力したのはNHKだ。ニュースで「デフレ」を繰り返した。国民は「デフレ」だと思うようになった。二冊の本が発売された。幸田真音著『日本国債』(講談社、2000年)とリチャード・ヴェルナー著『円の支配者』(草思社、2001年)だ。前者は日本財政が危機的状況だと訴える経済小説、後者は経済危機を生み出した主犯が日本銀行だと主張する経済書だ。テレビの報道番組でコメンテーターが宣伝した。メディア・コントロールの一環だ。

 財務省が世論操作にあらゆる方法を用いることを私は熟知している。本の宣伝広告も常套手段だ。リチャード・ヴェルナー氏は短期金融市場の日銀資金(=ベース・マネー)と経済・金融変動との因果関係を重視し、日銀の資金供給収縮がデフレの原因だと主張した。この見解は量的金融緩和解除後の経済安定によって否定された。彼らは量的金融緩和を解除すれば株価が大幅下落すると主張した。事実が主張を否定した。

NHKは「デフレ」をタイトルに冠する特別番組を何度も放送した。サブリミナル効果を狙ったとも言える。」(引用ここまで)

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今後、「「デフレは物価下落だから、政策対応は日本銀行が取るべきである」、「日銀は「ゼロ金利政策」を復活させ、さらに「量的金融緩和政策」を行うべきである」との主張が浮上することは明白だ。

しかし、日銀の政策で対応できる余地は小さい。日銀は1999年2月にゼロ金利政策を採用した。その延長上で1999年秋に、自民党から量的金融緩和政策採用の圧力がかかった。

私は日銀の研究会で、

「量的金融緩和政策の政策的有効性は低いとの認識を示しつつ、政治的な圧力が強まるなら、その圧力を封じることを目的とするなら、量的金融緩和措置を採用することを検討しても構わないのではないか」

との考えを述べた。

日銀は1999年9月21日に、

「当面の金融政策運営に関する考え方」

と題する文章を発表して、量的金融緩和政策の政策有効性が低いとの日銀の公式見解を公表した。

 この場で理論的な説明を示すことは避けるが、民間に資金需要が存在しないなかで、日銀が短期金融市場で潤沢に資金を供給しても、民間で活用される資金が増加するわけではない。1日に1リットルしか水を飲まない人の傍(かたわら)に、数百トンのペットボトルの山を築いても意味がないのと同じだ。

 日銀は2000年8月にゼロ金利政策を解除した。私は日銀による金利引き上げ政策が時期尚早であると強く反対意見を述べた。当時の圧倒的少数派であった。利上げを最も強く主張したのは竹中平蔵氏などであった。

 日銀のゼロ金利政策解除を契機に、日本経済は急激に悪化した。結局、日銀は2001年3月にゼロ金利政策に復帰した。速水総裁が政策運営を誤ったために、日銀は2001年3月にセロ金利政策復帰と同時に量的金融緩和政策実施に追い込まれた。

 2000年に金利引き上げを主張した竹中平蔵氏は、2001年4月に小泉政権で経済財政政策担当相に起用されると、手のひらを返して量的金融緩和政策推進者に変身した。以後、長く日銀のゼロ金利政策、量的金融緩和政策が維持された。

 福井俊彦前日本銀行総裁をはじめ、金融理論を熟知する専門家のほとんどは、量的金融政策が有効でないことを知っている。不況で超低金利の状況下では、金融政策は効果を発揮しえないのである。

 だが、量的金融緩和政策は、実行してもしなくても、大きな変化を生まない政策であるから、逆に言えば、実行することも可能な政策なのである。風邪をひいたときのおまじない程度の気休め効果はあるかも知れない。福井前総裁は、この認識の下で、政治的判断から量的金融緩和政策に付き合ったと言える。

 今回も、日銀が量的金融緩和政策に動くことになる可能性が高い。しかし、量的金融緩和政策で事態は変わらないことを十分に認識しておく必要がある。

 テレビの政治討論を聞くと、田原総一朗氏のように経済学の素養がまったくない人物が経済政策を論じるために、論議が空虚に空回りする。また、野党である自民党議員などは、「デフレ」に対応することが重要だと言いながら、財政赤字が拡大することは問題だといった主張を展開する。

 財政赤字が激増している現実を重く受け止めねばならないが、短期の経済政策においては、景気支援政策を発動することと、財政赤字拡大を阻止することとは、正反対を向く政策であるとの事実を押さえなければ話にならない。

 選択肢は、

「予算書上での財政収支悪化を回避するために大不況を受け入れる」

か、

「大不況を回避することを優先して、短期的な財政赤字膨張を受け入れる」

かの、いずれかしかないのだ。

 「景気をしっかり支えつつ、しかし、財政規律を失わない」

ことは、言葉の上でだけ成り立つことなのだ。

 「デフレ宣言」を発表して、日銀に政策対応を丸投げして、超緊縮財政政策を押し通そうとしているのが財務省の基本スタンスで、いまのところ、鳩山政権はこの政策路線の上に完全に乗せられている。

 政策の中味を「コンクリートから人」に変え、国民の懐を直接温める政策を重視することは正しい。しかし、全体の計数において超緊縮財政政策を強行すればまず間違いなく禍(わざわい)を招く。鳩山政権は政権公約に掲げた政策を前倒しで実行すればよい。予算規模の92兆円への圧縮、国債発行金額44兆円が超緊縮財政を意味することを認識する、現実に対する謙虚な観察眼を持たない人が経済財政政策運営の司令塔を務めることはあまりにも危険が大きすぎる。

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2009年11月21日 (土)

亡国経済政策への誘導灯になる「デフレ宣言」

鳩山政権の副総理兼国家戦略・経済財政担当大臣を務める管直人氏が11月20日の閣議後懇談会で、「日本経済はデフレ状況にある」との認識を示した。政府が「デフレ宣言」を発表したことになる。日本政府は2001年3月~06年6月までの5年以上の期間、「デフレ」を公式に認定していたが、日本経済がこの状況に舞い戻ったことになる。

日本経済の状況は極めて厳しい。戦後最悪の失業、経済苦自殺が続いている。米国で発生したサブプライム金融危機の余波が世界に広がった。内外株式市場で株価が暴落した。本年3月にはNYダウが6547ドル、日経平均株価が7086円まで暴落した。

米国も日本も経済政策を総動員した。米国では80兆円規模の景気対策が発動され、FRBはゼロ金利政策の採用に踏み切った。日本では麻生政権が14兆円規模の補正予算を編成し、日本銀行も超金融緩和政策を維持している。

内外政策当局の政策総動員により、株価は本年3月を転換点に反発した。問題の根源にある米国の住宅不動産価格も本年3月以降8月にかけて、5%程度の反発を示した。世界経済は最悪の状況を脱し、2010年に向けて緩やかな改善が続くとの楽観論も示され始めている。

しかしながら、問題の根はそれほど浅いものではないと考えられる。今回の金融危機は、通常の資産価格バブル崩壊に伴う金融混乱とはまったく異なる特性を有している。資産取得のために投入された融資資金が資産価格下落に連動して不良債権化したために混乱が生じているのではない。

不動産へのローンを原商品として膨大な規模のデリバティブ金融商品が創出されたことに伴って混乱が生じているのだ。デリバティブ金融商品の想定元本は600兆ドル=6京円規模に膨張したと見られている。本年3月から8月にかけて米国住宅不動産価格が小幅上昇したために、金融損失の拡大が一時的に停止しているが、不動産価格が再び下落すれば、巨大な金融損失が再び発生する可能性が高いのである。

内外経済ともに、2010年に大きな不安を残している。米国ではFRBが徹底した金融緩和を継続し、ドル下落傾向持続のなかで株価反発が続いているが、潜在的なドル不安のリスクは極めて大きい。

日本では2010年にかけて、鳩山政権が超緊縮財政政策を実行するリスクが次第に強まりつつある。最近観測される日本株価下落傾向は、この政策リスクを反映したものと考えられる。

このなかで鳩山政権が「デフレ宣言」を発した意味を考察しなければならない。結論から言えば、「デフレ宣言」公表を影で操作しているのは財務省であると考えられる。財務省主導の経済政策運営は、過去に重大な失敗を繰り返していることを忘れてならない。経済政策運営の失敗は鳩山政権の致命傷になりかねないことを認識する必要がある。

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に、「デフレ」という言葉が用いられてきた背景を記述した。

 2001年に「デフレ」という言葉が広く流布され、日本経済の困難が「デフレ」と命名された背景に政治が存在した。

 「デフレ」の第一義は「物価下落」である。しかし、当時の日本が直面していたのは「物価下落」だけではなかった。

 日本経済は、「大不況」、「金融不安」、「物価下落」に直面していたのだ。経済状況を現実に即して表現するなら、「大不況」、あるいは「恐慌」の方が適切であったと考えられる。

 それにもかかわらず、「デフレ」という用語が用いられた。この用語法を誘導したのは財務省である。「デフレ」の第一義は「物価下落」である。「物価」の所管官庁は日本銀行である。つまり、日本経済悪化の責任を負うべきは日本銀行であり、日本経済悪化に対して率先して政策対応を示すべき期間は日本銀行である、との主張を展開するために「デフレ」という言葉が用いられたのである。

 今回、鳩山政権が「デフレ宣言」を発表した。発表と同時に、日本銀行による政策対応を求める声が広がっている。これこそ、財務省の狙いとするところである。財政政策に負担をかけず、日銀の金融政策にプレッシャーをかけようとするのだ。

 しかし、この判断は間違っている。日本銀行は超金融緩和政策を継続するべきだが、日銀の追加政策発動の余地は小さい。量的金融緩和政策が過去に採用されたが、その政策効果は限定されたものである。

 2010年にかけての最大の懸念要因は、財政政策が日本経済に強烈なデフレインパクトを与える可能性が高まっている点にある。2009年度の補正後予算が102兆円規模、国債発行金額が51兆円になることを踏まえると、鳩山政権が編成を進めている2010年度当初予算の92兆円規模、44兆円の国債発行金額は2010年度の日本のGDPを1.5~2.0%ポイントも押し下げるものなのである。

 鳩山政権が経済政策運営を誤る可能性が生じている。財務省が政策運営を仕切り始めていることがその主因である。財務省は1997年度、2001年度と経済政策運営を誘導して、二度とも日本経済を崩壊に導いた。橋本政権はつぶれ、小泉政権も破たんすれすれの状況に追い込まれた。小泉政権が延命したのは、税金によるりそな銀行救済という禁断の金融行政に手を染めたからである。

 財務省は中期的に激しいインフレ誘導を狙っている。巨大な借金を帳消しにするには、インフレ誘導に勝る手法が存在しないからである。物価下落は国民の生活費負担を大幅に低下させている。デフレには個人の実質所得を増加させる側面があり、デフレを一概に悪と決め付けることは間違いである。

 いま、最優先で再検討が求められるのは、2010年度の超緊縮財政政策発動をこのまま容認するべきかどうかなのである。鳩山政権が財務省路線に乗せられて十分な政策論議を怠るなら、その代償は想像を超えるものにならざるをえない。鳩山政権は早急に経済政策立案の司令塔を確保しなければならない。

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2009年11月20日 (金)

木村佳苗氏事件で検察が警察に出頭する異様さ

FNN(フジネットワークニュース)は、

 

「うその結婚話を持ちかけ、男性から現金をだまし取ろうとした疑いで再逮捕された34歳の無職の女性がが20日午前、さいたま地方検察庁に送検された。」

 

と報道したが、同じ報道対象をANN(朝日ネットワーク)は次のように伝えた。

 

「結婚を口実に男性から金をだまし取ろうとした疑いで、34歳の女が20日午前、検察官が留置場に出向く異例の形式で送検されました。」

 不審死が相次いだ問題で結婚詐欺容疑により逮捕されている埼玉県の無職女性に関する報道である。

 

 この事件について、山崎行太郎氏は10月30日に、

「何故、本名「木嶋佳苗」と書かないのか?

 

と題する記事を書かれている。

 

 また、『カナダde日本語』の美爾依さんは、11月10日に、

 

「木嶋佳苗の取り扱いからしても、日本がまぎれもなく警察国家であるのがわかる」

 

と題する記事を書かれている。

 

 美爾依さんの記事には、『ふじふじのフィルター』様が紹介された

 

『中野龍三プロゲーマーWEBTV局別!

34歳結婚サギ女がなぜ実名報道されないのか、を聞いてみた」

 

を引用されている。

 

 これらの情報をもとに判断すると、警察当局が埼玉の結婚詐欺容疑者に関する報道に規制を加えていることが窺(うかが)われる。

 

 容疑者の氏名は「木嶋佳苗」氏であるらしい。

 

 しかし、マスメディアはまったく実名報道していない。さらに不可思議なのは、検察の取り調べが検察庁ではなく、警察署に検察官が出向いて行われたことだ。

 

 警察から検察に身柄が送られる際、被疑者は手錠、縄で捕捉されて送致される。被疑者の身柄が検察庁に送られるから「送検」と呼ぶのであり、検察官が警察に出頭するなら「出頭検」とでも呼ばねばならないのではないか。通常の「送検」は拷問のひとつに分類される措置と言ってよい。

 

 警察署から護送車に乗る際に、警察が報道のカメラを遮断することができるにもかかわらず、撮影が行える状況が作り出されている。また、護送車の内部を撮影することを回避するための遮蔽(しゃへい)措置を取ることは十分に可能であるが、警察はその対応をしていない。

 

 法務省管轄の拘置所の場合、裁判所などへの身柄の移動に際しては、護送車のカーテンなどを用いて完全な遮蔽措置が取られている。

 

 つまり、被疑者の人権が守られていないのは、単に取り調べに際してだけではなく、身柄の移動に際してのマスメディア取材に対しても同じなのである。

 

 死体遺棄容疑で逮捕されている市橋達也氏の取り調べに際して、違法な取り調べが行われているのではないかとの情報が報道されている。

 

「黙秘していると親が死刑になる」

 

「黙っているから姉のところに取材が行った」

 

「黙っていると極刑になるかも知れない」

 

などの発言が捜査官からあったとの指摘が市橋氏の弁護人から示されている。

 

 現段階での容疑は死体遺棄であり、「死刑になる」との発言があったとすれば、被疑事実から逸脱したものであると言わざるを得ない。

 

 私が巻き込まれた事件では検事が、「認めなければ報道などを通じて家族を徹底的に苦しめてやる」と発言した。検察官は大声でわめき散らし、無理やり自白を強要するものだった。ニュースを聞いて検察官の発言が思い返された。

 

 市橋氏の場合、警察署で護送車に乗る場面は報道各社のテレビカメラに収録された。木嶋佳苗氏も警察署から検察庁に送検されたならば、送検の模様がテレビカメラに収められたはずである。

 

 市橋氏も木嶋氏も現段階では被疑者である。被疑者に対する人権が守られなければ、適正な捜査は実現しない。また、「法の下の平等」は日本国憲法に定められている事項である。

 

 警察による、被疑者を確保する段階、検察庁への送致、勾留質問での裁判所への送致の段階での報道カメラからの遮蔽措置は、当然取られるべき対応である。

 

 日本の警察、検察が捜査における基本的人権の尊重を無視していることは、周知の事実である。だからこそ、取り調べの全面可視化の要請が提示されているのである。

 

 沖縄でのひき逃げ事件で、米兵が取り調べを拒否している理由として、弁護士の取り調べへの同席が認められていないことなどが示されている。日本国内で生じた事件に対して日本の当局が捜査権を持つべきことは当然であるが、その捜査当局の人権意識が低く、人権を擁護する制度が整備されていなければ、捜査拒否に対して強いよりどころを与えてしまうことになる。

 

 埼玉の結婚詐欺容疑者である木嶋佳苗氏は祖父が議会議員を長く務め、勲五等双光旭日章を受勲しており、故中川昭一議員の別海地区後援会会長を務めていたことがあると伝えられている。

 

 このようなことで、被疑者に対する取り扱いが当局だけでなく、マスメディアにおいても大きく異なるのだとすれば、この国の民主主義、法の下の平等など、存在しないに等しいと言わざるをえない。

 

 酒井法子氏の場合、留置は最新の設備が整っている湾岸署とされた。逮捕などに際してどこに勾留されるか、護送に際して単独であるかそうでないか。取り扱いは千差万別であるが、「法の下の平等」が確保されているとは到底言えない。

 

 結婚詐欺事件では、埼玉のケースを実名報道していないことと平仄(ひょうそく)を合わせて鳥取のケースも実名報道されていないが、他の事件との相違は際立っている。

 

 政権交代に伴う日本政治刷新の大きなテーマの一つに、警察・検察・裁判制度の刷新が含まれる。日本の諸制度は近代化されていない。「前近代」のまま放置されている部分が非常に大きい。

 

 ”Due Process of Law(=適法手続き)の精神も著しく希薄(きはく)である。

 

 この問題が重大問題として取り扱われないのは、一般の国民が刑事事件取り調べに直面する確率が極めて低いからである。通常の生活において、刑事事件取り調べに巻き込まれる確率は極めて小さい。

 

 しかし、問題は重大である。人間の尊厳、基本的人権が簡単に蹂躙(じゅうりん)されてしまうのだ。足利事件の再審では、取り調べ検察官の出頭を求め、録音テープもすべて法廷で公開するべきである。

 

 市橋氏の事件については、弁護団が取り調べ過程のすべての録画、録音を求めているが、これも当然の対応である。また、弁護団が提供した「取り調べノート」も極めて有用性が高い。

 

 犯罪を容認する考えは毛頭ないが、刑事取り調べ過程における不正、不当な取り調べは根絶されなければならない。警察・検察による犯罪や犯罪的行為に対しても国民は厳しい視線を向けなければならないのである。

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2009年11月19日 (木)

日本株価が警鐘を鳴らす鳩山政権の財政運営

 8月30日の総選挙を通じて実現した政権交代は日本政治刷新のスタートであってゴールではない。鳩山政権が発足して2ヵ月が経過した。多くの日本国民が鳩山新政権に大きな期待を寄せている。

2ヵ月の間にさまざまな変化の兆しが見えている。長い間に定着した多くの制度や慣行を変革することは容易でない。日本政治刷新には主権者である国民が後押しが不可欠である。

国民世論形成に多大の影響を与えるマスメディア報道は、依然として鳩山新政権に対して敵対的である。これまでの自民党政治を支配してきた「政官業外電の悪徳ペンタゴン」は2010年夏の参議院選挙での与党敗北に向けてさまざまな工作活動を展開していると考えられる。

民主党に対するスキャンダル攻撃、日米関係悪化を扇動するキャンペーン、日本経済悪化と財政赤字拡大の責任追及、に焦点を当てて鳩山政権攻撃が展開されているように思われる。

鳩山首相はこれまでの「対米隷属外交」からの脱却する方針を明瞭に示した。「対等な日米関係構築」とは、小泉竹中政治に代表される「対米隷属外交」からの脱却を意味する。米国に対しても言うべきことは言う姿勢を示す基本姿勢を示したのだ。

しかし、沖縄の基地問題については、これまでの自民党政権が米国と合意を成立させてしまっているために、解決が容易ではない。そのなかで、鳩山政権は沖縄の基地負担軽減に向けてぎりぎりの努力を重ねている。国民はこのスタンスを最大限後押しする必要がある。

鳩山政権を攻撃しようとする勢力は、一朝一夕に解決策に辿りつけないことを批判するが、明治の条約改正においてもそうであったように、問題解決にはさまざまな紆余曲折がつきものである。鳩山政権が適切な着地点に辿りつけるように、辛抱強く見守る必要がある。

「政治とカネ」の問題について、不透明な部分があるなら、それを明らかにする責任がある。しかし、政治的な背景を伴った警察・検察権限の不当な行使に対しては、国民が厳しい監視の目を光らせねばならない。本年3月に表面化した小沢一郎民主党前代表の秘書逮捕は、明らかに政治的背景を伴った「国策捜査」であったと考えられるからである。

こうしたなかで、鳩山政権がもっとも警戒しなければならないのが経済政策運営である。私は本ブログでも、2010年に向けての経済政策運営が極めて重大な問題をはらんでいることを再三指摘してきている。

私が執筆している会員制レポートである『金利為替株価特報』2009年11月9日号のタイトルは、

「短期景気支持・中期財政再建の峻別が鍵」

である。日本の財政バランスが急激に悪化したために、財政の健全性回復は極めて重要な政策課題として浮上している。鳩山政権が財政バランスの悪化に強い警戒感を示しているのは当然である。

 しかし、一方において米国発のサブプライム金融危機を背景に日本経済が戦後最悪の状況に陥っていることを見落とせない。

『金利・為替・株価特報』2009年11月9日号

の目次は以下の通りである。

<目次>

1.【外交】オバマ米大統領訪日と日米関係

2.【政策】鳩山政権最優先課題の経済政策

3.【政治】天下りと企業献金の全面禁止方針

4.【米国】米国の不動産価格は底入れしたのか

5.【金利】財政赤字激増とその影響

6.【株価】株価再下落懸念の拡大

7.【為替】米ドル下落が持続する理由

8.【投資戦略】

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第6節に「株価再下落懸念の拡大」を記述した。米国のNYダウは10,400ドルを突破して2008年10月以来、11ヵ月ぶりの高値を記録している。だが、日本の株価は米国株価との連動性を離れ、弱含みに推移している。

日経平均株価の11月19日終値は9549円で、7月17日以来の安値を記録した。日経平均株価終値9050円を下回ると、日経平均株価は三尊天井を形成し、株価下落基調への転換の赤信号が灯ることになる。

『金利・為替・株価特報』は120名以上の与党国会議員の手元に渡っている。じっくりと内容を精読していただきたいと思う。

日本株価下落の最大の要因は、鳩山政権の2010年度予算編成に向けてのスタンスが、財務省が主導する「緊縮財政」の方向に大きくシフトし始めていることにあると思われる。

私は本ブログで2010年度予算編成問題について繰り返し意見を提示してきた。

10月15日
「鳩山新政権の2010年度予算編成について」

10月18日
「鳩山政権はマクロ政策運営の指令塔を確保せよ」

10月29日
「日米株価1万ポイント割れと今後の経済政策」

11月2日

「短期景気回復・中期財政再建を目標に定めよ」

11月17日
「第2次補正予算規模をめぐる論議への提言」

などに、問題のポイントを指摘してきた。

日本財政が麻生政権の巨大財政発動によって著しく悪化してしまった現実から目をそらしてはならない点に最大の重要性がある。

財務省は巨額の財政赤字継続を嫌う。そのために、現在取られつつある手法は、2009年度予算に第2次補正予算を編成するが、2010年度当初予算を圧縮しようとするものである。

予算は通常、当初予算をベースに編成される。財務省は当初予算の膨張を極端に嫌う。しかし、2009年度に財政規模を拡張してしまった以上、暫くは拡張した予算規模を維持せざるをえない。2010年度予算は2009年度補整後予算をベースに編成しなければならないのだ。

しかし、鳩山政権の予算編成は財務省に誘導されて緊縮の方向に急速に引き寄せられ始めている。株式市場はこの政策スタンスに警鐘を鳴らし始めているように見える。

 株価は一進一退を繰り返すから、株価上昇はいつでも生じる。しかし、基調を見定めねばならない。鳩山政権にとって経済政策の失敗は致命傷になる。経済政策運営について、もう一度原点に立ち返って検討する必要がある。

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2009年11月18日 (水)

霞が関改革の本丸は法務検察と財務国税にあり

 鳩山政権が政府支出の無駄削減を推進するための重要な手法として掲げた2010年度予算にかかる「事業仕分け」作業が前半の日程を終えた。

事業の「廃止」や「予算計上見送り」による予算の削減のほか、公益法人などの基金の国庫返納などを求め、総額1兆4000億円超を絞り出した。24から27日に後半の事業仕分けが実施され、無駄な経費の絞り出しに上積みが図られる。

事業仕分けの模様はインターネットやテレビなどで紹介され、賛否両論が生じている。

問題点として指摘されていることは、

①予算の廃止や縮減を決定するためのプロセスが短時間過ぎて乱暴であること。

②各省庁説明社が「悪者」として舞台が設定され、仕分け作業の場が「劇場化」していること。

③事業仕分けの対象とされたのが447事業で全事業の15%にすぎないこと。④財務省所管の事業では8事業しか事業仕分けの対象とされなかった。

⑤財務省が査定マニュアルを作成し、問題点の指摘を指南していたこと。

⑥事業仕分け人メンバーに、市場原理主義者、財政再建原理主義者が多く含まれていること。

⑦事業仕分け作業と最終的な予算編成とが直接リンクされていないこと。

などである。

政府支出の無駄を排除すべきと考える国民は極めて多い。これまでの予算審議では国会でさまざまな論議が行なわれても、最終的には政府が編成した予算がそのまま成立していた。予算編成は財務省のおける査定に完全に丸投げされていたと言ってよい。

今回の事業仕分けによって、初めて国民が予算査定作業に触れることができた。その内容を見ると、多くの政府支出が国民の福祉を向上させる名目で計上されていながら、実際には官僚OBが巣食う独立行政法人などを支えるために支払われてきた実態がよく分かる。

多くの支出を削減、あるいは廃止しても国民生活には影響しないことがよく伝わってきた。民主党は総選挙に向けての政権公約において、予算の内容を精査し、無駄を排除することによって大きな財源を生み出すとの方針を示していたが、その公約が着実に実行に移されている感が強い。

天下りを受け入れている政府機関に12兆円もの国費が投入されてきた。その資金のなかには国民に対する融資資金などが含まれており、すべてが無駄であるというわけではないが、多くの部分が官僚OBの生活を支える資金と化している。天下りを排除し、予算から天下りを温存するための支出を取り除こうとすることは正しい政策である。

こうしたなかで大きな問題であると考えられるのが、

①予算査定における人民裁判的な乱暴な措置が垣間見られること。

②財務省が舞台回しを行なっていることが明白で、財務省自身への切り込みが極めておろそかになっていること。

の2点である。

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2010年度予算編成までの時間的制約が強く、そのために作業がやや乱暴にならざるを得ないことは理解できるが、重要な論議を行なうには、十分な情報収集と時間が必要である。今回の予算編成を終えた段階では、すべての問題についてじっくりと時間をかけた精査が求められる。また、支出がひとくくりに論議されているが、必要で残すべき支出と不要な人件費などで排除すべき支出を選別するきめ細かい対応が不可欠である。

また、事業仕分け人の発言の多くが財務省秘密マニュアルに基づいていることは大きな問題である。多くのメンバーが財務省の手先であることも、今回の事業仕分けの限界を明確に物語っている。

今回の事業仕分けが終了した段階で、事業仕分けWGをいったん解散し、2010年以降の新しい体制を構築する必要がある。

事業仕分け作業は11月24日からの後半の作業を残している。後半の作業では財務省への切り込みが不可欠である。

事業仕分けの会場になった国立印刷局市谷センターは、財務省所管の独立行政法人が保有する施設である。財務省所管の独立行政法人の保有資産は大きく、ここにメスを入れなければ、財務省だけが予算切り込みの聖域とされているとの批判を免れない。

天下り問題においても、まず手を入れるべきは財務省である。財務省、国税庁の天下りを排除せずに、他の機関の天下りだけを狙い撃ちすることは筋が通らない。

財務省の天下り御三家は、日本政策投資銀行、国際協力銀行、日本政策金融公庫である。これ以外に、日本銀行、東京証券取引所、日本たばこ、横浜銀行などが大どころの天下り先である。

財務省がたばこ増税に消極的であるのは、財務省の最重要天下り企業である日本たばこの経営に影響を与える可能性が高いからであると考えられる。

東京証券取引所はいったん天下りを排除したが、自民党政権時代に目に見えにくい形での天下りを再開した。日銀に対する天下りは民主党が体を張って阻止したが、財務省では日銀への天下り復活を求める声がなお強い。

霞が関1丁目1番地は検察庁・法務省だが、ここに警察庁を加えた法務・検察・警察・裁判所、および財務省・金融庁・国税庁一派の改革を進展させなければ、霞が関改革=「官権政治の排除」は実現しない。

事業仕分けの後半日程に、財務省関連の事業を事業仕分け対象に追加で提示するべきである。予算の切り込み自体は評価できるものであるが、財務省関連予算の切り込みがなければ、民主党の対応は財務省主導であると糾弾されることになるだろう。

鳩山政権が対峙しなければならない本丸は、法務・検察・警察・裁判所と財務・金融・国税にあることを忘れてはならない。

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2009年11月17日 (火)

第2次補正予算規模をめぐる論議への提言

 鳩山政権は11月17日午前の閣議で追加経済対策を盛り込む2009年度第2次補正予算編成の指針を決めた。景気の「二番底」懸念が強まる中、重点分野として雇用、環境、景気の三つを位置付け、2010年度予算と一体的に「15カ月予算」として編成する。ただし、補正予算の規模については、閣僚間の意見集約が進まず、結論を持ち越した。

補正予算の規模については菅直人国家戦略担当相が2兆7000億円の規模を示唆したが、亀井静香金融相がより大規模な対策を求めたため、決定が先送りされた。

2010年度にかけて、鳩山政権最大の難問は経済政策である。

日本経済の先行き再悪化懸念が強い一方で、日本の財政バランスが極端に悪化したことがその背景である。

ただし、問題を考察する前に確認しなければならないことは、鳩山政権が発足する時点ですでに日本の財政バランスが極度に悪化していたとの事実である。

日本の国家財政=一般会計においては、財政赤字の代表的指標である国債発行額が2008年度当初予算において25.3兆円にまで減少した。緩やかな経済改善が持続し、税収が増加したことが財政赤字減少の主因だった。

ところが、「100年に1度の金融津波」が世界経済を覆い、日本経済も戦後最悪の経済状況に陥った。この経済危機に対応して麻生政権は巨大な財政政策を発動した。経済対策の内容については、不要不急の支出が多く含まれており、強い批判が生じたが、いずれにしろ巨大な景気対策が発動された。

2009年度は本年4月に始まった年度だが、2009年度財政は鳩山政権が発足した2009年9月の段階で、極度に悪化していたのである。

麻生政権は88.5兆円規模、国債発行金額33.3兆円の2009年度当初予算を編成した。税収見積もりは46.1兆円だった。2008年度当初予算よりも国債発行金額が8兆円も多い予算だった。

この2009年度予算に対して、麻生政権は年度当初に超大型14兆円規模の補正予算を編成したのである。予算規模は102.5兆円に拡大した。国債発行金額は44.1兆円に拡大した。

ところが、事態の悪化はこれだけでは済まなかった。46.1兆円と見積もられた税収の達成が絶望視されているのだ。2009年度税収は40兆円を割り込む可能性が高いと見られている。仮に税収見積もりが38兆円に下方修正されると、8兆円の歳入不足が発生する。この歳入不足は埋蔵金か国債発行で賄われざるを得ない。

国債発行で賄われると国債発行金額は51兆円に達し、税収の38兆円をはるかに上回る金額になる。

102.5兆円の予算規模、38兆円の税収、51兆円の国債発行金額が2009年度の日本財政の姿になる。この数値は衝撃的なものである。102.5兆円の暮らしをするのに、38兆円しか基礎収入がないのだ。51兆円が借金で賄われる。

鳩山政権打倒を狙うマスメディアは、日本財政の劇的悪化を鳩山政権の責任に帰すような偏向報道を展開することになるだろう。

しかし、現実はまったく違う。102.5兆円の財政規模、38兆円の税収、51兆円の国債発行は鳩山政権が生み出したものではなく、麻生政権が生み出したものであるからだ。

鳩山政権はまずこの事実を国民に周知させる必要がある。問題はこの劇的に悪化した2009年度財政が現存するという現実を踏まえて、鳩山政権が次にどのように対応するのかである。

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2009年度補正予算のうち、鳩山政権は3兆円の執行を凍結させた。したがって、鳩山政権が凍結した3兆円を2009年度には支出しないことを決定すれば、2009年度の国債発行金額を51兆円とせずに48兆円に留めることができる。

しかし、日本経済の再悪化懸念が強いため、鳩山政権は凍結した3兆円を、2009年度第2次補正予算の財源に充てて、景気対策を実行する方針を固めたのである。これでも、この施策を実行すれば2009年度の国債発行額は51兆円になってしまう。

亀井静香金融相は日本経済再悪化懸念が強いことを踏まえて、2009年度第2次補正予算の規模を拡大するべきだと主張している。亀井金融相の景気再悪化懸念は理解できる。

しかし、問題を考察するにあたってより重要な視点がある。それは、2009年度補正予算だけでなく、2010年度当初予算を中心とする2010年度の財政政策が日本経済再悪化の引き金を引かないように配慮することである。

2009年度予算は麻生政権の14兆円の補正予算編成により急拡大している。この2009年度予算をさらに拡大させる場合、2010年度当初予算を劇的に拡大させないと、2010年度予算が日本経済に対して強度のデフレ効果を与えることになる。この事態を避けなければならない。

つまり、追加の景気対策を考えるなら、2009年度補正予算ではなく、2010年度当初予算での措置を検討するべきである。

2009年度予算は第一次補正後で102.5兆円規模に拡大し、国債発行金額は51兆円に達する情勢にある。これに対して、仙谷由人行政刷新相は2010年度当初予算規模を92兆円にとどめ、国債発行金額を44兆円以下に抑制する方針を示している。

このまま2010年度当初予算が編成されると、2010年度予算は日本の2010年度GDP成長率を1.5%ポイントから2.0%ポイントも低下させる影響を発揮してしまうことになる。1997年度の橋本政権、2001年度の小泉政権による日本経済崩壊の失敗が繰り返される可能性が濃厚になる。

したがって、日本経済の再悪化を防止するには、2009年度の大型補正予算追加よりも、2010年度当初予算を景気抑制予算にしないことが重要である。

マスメディアは2010年度予算編成で国債発行額が44兆円を超えることや予算規模が2009年度当初予算の88.5兆円を大幅に上回ることを、「財政規律が失われる」と騒ぎ立てるだろう。しかし、財政の経済への影響を考察する際には、財政規模や国債発行金額の前年比増減が何よりも重要な尺度になる。2009年度第一次補正後の段階で予算規模が102.5兆円に膨張し、国債発行金額が実質的に51兆円に増大している現実を踏まえなくてはならない。

2009年度予算が麻生政権の巨大補正予算によって拡張されてしまった以上、この2009年度補正後予算を発射台として見なさざるを得ないのである。2009年度当初予算を発射台として論議を進めることが経済破壊の大きな誤りを生み出す元凶になる。

一般国民はマスメディアのヒステリックな「鳩山政権が財政規律を喪失した」とのプロパガンダ報道に影響を受けやすい。この弊害を除去するには、政府が財政状況悪化の原因と今後の経済政策の適切な対応について、きめ細かい広報を展開する必要がある。

鳩山政権は日本経済の崩壊回避と、マスメディアによる鳩山政権批判の両方に対応しなければならないのである。この意味で、鳩山政権が直面する課題は極めて困難なものであると言わざるを得ないが、その困難を乗り越えなければならない。

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2009年11月16日 (月)

直嶋正行経産相のGDP統計発表フライング

 直嶋直行経済産業相が11月16日午前8時50分に発表された2009年7‐9月期GDP統計の内容を報道解禁時刻前に公表していたことが分かった。

直嶋経産相は16日午前8時から石油連盟首脳と懇談し、冒頭のあいさつで「先ほど7~9月の経済統計速報値が発表されたが、数字は前期比プラス1.2%、年率換算ではプラス4.8%となかなかいい数字になった」と話した。

GDPの発表時間は同日午前8時50分で、直嶋経産相の発言は30分以上の「フライング」となった。

直嶋経産相は「(解禁時間を)知らなかった。失礼をしました」と釈明したが、釈明をするインタビューでは、事の重大性を認識している様子がうかがえなかった。

平野博文官房長官は16日午前の記者会見で「事実とすれば極めて遺憾だ。政権の危機管理も問われる」と述べたが、これが適正な対応である。

金融市場は個々の経済指標数値に激しく反応することがよくある。GDP統計は日銀短観などと並んで、金融市場が重視する最重要統計のひとつである。発表時間を午前8時50分としているのは、午前9時に株式市場が開くため、市場取引が始まる前に情報を周知させるためである。

しかし、為替市場や一部の先物取引はグローバルに24時間取引が行なわれており、統計数値の内容によっては、事前に漏れた数値が大きな混乱をもたらすことも十分に考えられるのである。

経産相は経済金融に深く関わる要職であり、政府発表の重要統計の管理体制には万全が期せられなければならない。しかし、直嶋経産相は統計数値の発表解禁時刻などの基本的な知識を持ち合わせていなかったようであり、この点で内閣の情報管理体制の不備が問われるのは免れない。

GDP統計の事前漏えい問題は1999年6月にも発生している。また、それ以前に日銀短観の内容が事前に漏えいしているのではないかとの問題が表面化したことがあった。この情報漏えい問題に対応して日銀は短観の発表を午前8時50分に変更した。

しかも、日銀の場合、日銀短観の主要計数の算出を統計発表の朝まで行なわず、統計作成者が統計数値算出の担当部署に入室してから計数をとりまとめ、統計発表まで一切、関係者の外出および外部との連絡を禁止する措置を採用したと聞いている。統計数値の及ぼす影響を認識して、物理的に統計数値が事前漏えいしないための措置が取られているとのことである。

これに対して、政府各部門が作成する統計においては、統計数値の取り扱いが極めて緩い。GDP統計については、速報値が発表されたのち、数次にわたり統計数値が改定されることから、もっとも注目を集める第一次発表数値が政治的に改ざんされているのではないかとの疑惑さえ存在してきた。

とりわけ、国政選挙前に発表される統計数値は政治的な影響、あるいは政治的利用価値が高いことから、政治が介入して数値が改ざんされているのではないかとの疑惑は絶えることがなかった。

この意味で、鳩山政権は政府発表重要統計の取り扱いについて、厳格な漏えい防止のルールを設定するべきであると思う。統計発表に際しては、日銀短観の発表に際して用いられている方式がひとつの参考事例になると思われる。

米国でも、GDP統計や雇用統計、物価統計などが、金融市場を激動させる重要統計として取り扱われてきた。米国においても重要統計の事前漏えい問題が発生した歴史が存在する。

また、金融政策の決定に際して重要な意味を持つFOMC(連邦公開市場委員会)での議事内容は、金融市場関係者の最重要情報のひとつである。

米国にはこうした重要情報=コンフィデンシャル情報を専門的に取り扱うコンサルティング会社が存在し、極めて高額な価格で情報が販売されている。こうしたコンサルティング企業のなかには、FRBの元理事が経営するものもある。

米国では独立記念日に花火大会が開かれるが、FRB幹部を含むFRB関係者がワシントンDCの花火をそろって楽しむ風習もあるようだ。ある年の独立記念日の花火大会においては、FRBの元幹部がFRBの現職幹部と花火大会の場で接触して重要情報を入手し、その情報をコンサルティング企業会員に伝えたこともある。

一種の「インサイダー情報」と言わざるを得ない。日本の事例でのもっとも重大なインサイダー情報疑惑は2003年のりそな銀行救済情報であったと思われる。亀井静香金融相がこの問題に関心を有していると伝えられているが、極めて重大な問題であり、全容の解明が強く求められる。

いずれにせよ、政府は政府発表の重要統計について、その管理体制および統計発表方式について再検討するべきである。今回のような問題が発生したら、迅速に取るべき対応を示すことが重要である。迅速な対応、是々非々の対応が問題を拡大させず、早期に問題を沈静化させる即効薬になる。

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2009年11月15日 (日)

テレ朝サンプロ西川善文氏擁護偏向報道が続く

 テレビ朝日「サンデープロジェクト」がようやく日本郵政問題を取り上げた。本ブログ6月28日付記事

「サンプロがかんぽの宿疑惑適正検証を行なうか」

7月1日記事

「テレ朝サンプロでのかんぽの宿検証について」

に記述したように、同番組は「かんぽの宿疑惑」について徹底検証を行なうことを視聴者に約束したが、この約束は無責任に破られていた。

7月6日に

「かんぽの宿」論議を逃げたテレ朝サンプロ」

を記述した。

 以後、問題は放置されてきたが、11月15日放送で日本郵政の西川善文前社長を出演させ、日本郵政社長辞任問題についてインタビューが行なわれた。

 討論に加わったのは、西川善文氏のほか、丹羽宇一郎日本郵政前取締役、エコノミストの吉崎達彦氏、田原総一朗氏である。

 鳩山政権が推進している日本郵政改革に賛成する論者が一人も論議に加わっていない。政治的公平を確保して論議をするなら「2プラス2」、=「2対2」で論議するのが当然である。ところが、政治的偏向を特徴とする同番組は、「4対0」の出演者構成で番組を制作した。

 正当な論議が成り立つはずがない。事件が発生したときに、被疑者と被疑者を擁護する者だけを出演させて話を聞くようなものである。

 「かんぽの宿疑惑」についても論議が行なわれたが、不正は存在しないとする一方的な説明が示されただけである。

 鳩山政権が示す「日本郵政改革」の基本方向は基本的に正しい。

 鳩山首相は6月17日に麻生前首相との間で行なわれた党首討論の場で、政権交代が実現すれば西川善文社長の辞任を求める考えを明言した。また、民主、社民、国民の現与党3党は、8月30日の総選挙に際して「郵政改革」の基本方針を公約として提示して選挙戦を戦った。

 このなかで民主党が総選挙に大勝し政権交代が実現したのである。鳩山政権が公約に沿って日本郵政改革を推進することは正当であり、国民に対する責務でもある。

 私は『月刊日本』

 

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に「小泉竹中改革の破綻と政治の新潮流」と題する12回連載記事を執筆している。11月22日に発行される『月刊日本12月号』

には、第6回連載記事として

「鳩山政権郵政改革を批判する竹中平蔵氏の厚顔無恥」

と題する記事を執筆した。

 鳩山政権の郵政改革の概要、小泉竹中政権の進めた郵政民営化のどこに問題があったのかを詳述しているので、ぜひご一読賜りたい。

 「かんぽの宿」疑惑に関連して、「サンプロペンタゴン」の主張が間違っていることの詳細については、これまでに繰り返し記述してきた。

「テレ朝報道ステーションの救いようのない欺瞞」(6月13日)

「鳩山総務相更迭問題を逃げたテレ朝サンプロ」(6月14日)

「千葉市長選民主大勝と日本郵政の巨大犯罪疑惑」(6月15日)

「それでも日本郵政西川社長を解任すべき理由」(6月23日)

「国会出頭要請をもう逃げられない竹中平蔵氏」(6月24日)

を参照いただきたい。

西川社長直結の「チーム西川」がかんぽの宿売却を仕切り、不透明極まりない対応が示されてきたことは紛れもない事実である。

 15日の放送では、

①日本郵政が4200億円の利益を計上したこと

②日本郵政取締役人事は日本郵政の指名委員会に権限があること

③郵政民営化は300兆円の資金を民間に還流するさせることを目的に推進されたもので、この流れをかえるべきでないこと

を西川氏や丹羽氏が強調した。

 しかし、①については、10月21日付記事

「鳩山政権の郵政改革本格始動と今後の課題」

に記述したように、

「日本郵政株式会社が発足して収益体質が改善したかのような報道がなされているが、事実誤認も甚だしい。日本郵政公社は日本郵政株式会社へ引き継ぐ最後の決算である2007年9月決算で1兆5800億円の特別損失を計上している。新会社である日本郵政株式会社の決算計数の見栄えを良くするために、巨額損失をその前に計上しているのだ。

 日本郵政はゆうちょ銀行に190兆円、かんぽ生命に100兆円の資金を保持している。ゆうちょ銀行の資金利鞘は0.8%であり、ゆうちょ銀行の資金利鞘から発生する粗利益だけで年間1兆5200億円の収益が確保される。

300兆円弱の資金を抱えているのであるから、誰が経営者であっても利益を計上することは可能である。そもそも郵政3事業は赤字事業ではない。税金を投入せずに運営されてきた事業部門なのである。」

 利益が急増したように見えるのは決算操作による部分が圧倒的に大きいのである。

 ②の人事問題について、丹羽氏は会社法に基づく意思決定を尊重するべきだと述べるが、それ以前に、日本郵政が現状で100%政府出資企業であることを踏まえることが不可欠である。日本郵政取締役は100%株主である日本政府の意向を尊重する責任を負っている。日本郵政人事に認可権を持つ総務大臣の意向を無視した経営が許されるはずがない。

 丹羽氏はコーポレートガバナンスなる言葉を口にするからには、株主から経営を委託されている取締役が株主の意向を尊重するべきであるという「コーポレートガバナンスのいろはのい」を踏まえる必要がある。この基本を見失って「コーポレートガバナンス」を口にすることは笑止千万である。

 鳩山邦夫元総務相が西川氏の辞任を求めたことにつていは、正当な根拠が存在した。西川氏が作ったお手盛り委員会の報告には疑惑を払拭する説明力はなかったのだ。

 ③の資金還流についても私は10月21日付記事に記述した。

「民営化するとこれまで財政投融資制度の下で政府部門にしか回らなかった資金が民間部門に還流すると説明されてきたが、そのような事実はまったく観察されていない。

2009年3月末現在、ゆうちょ銀行の総資産196兆円のうち、有価証券が173兆円、このなかの162兆円が公共債である。貸出金は4兆円に過ぎない。かんぽ生命では総資産107兆円のうち、有価証券が83兆円、このなかの74兆円が公共債である。貸付金は18兆円あるが大半が機構貸付で一般貸付は2170億円に過ぎない。

つまり、民営化すると300兆円の資金が民間に還流して日本経済の発展に寄与するかのような話はまったくのでたらめだったのだ。」

他方、小泉竹中郵政民営化による弊害が大きいことについて番組はまったく触れなかった。地域に居住する多数の国民から金融口座をはく奪してしまう「金融排除」の問題が今後深刻化することは間違いなかった。また、4分社化によってこれまで郵政職員が提供してきたきめ細かい有機的な総合サービスが供給されなくなったことも事実である。地域コミュニティーの核としての機能を担ってきた特定郵便局ネットワークの貴重な機能も破壊された。

公共の電波を用いて郵政改革を論じるのであるなら、中立公正な論議が行なわれる状況を確保して放送を行なうべきである。放送法の規定に反する番組制作を続ける同番組について、テレビ朝日には番組打ち切りを含めた検討が求められる。鳩山政権は放送法違反の疑いのある民放番組に対する適正な指導・監督体制を整えるべきである。

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2009年11月14日 (土)

財務省利権への切り込みが脱官僚政策の原点

2010年度予算編成に向けて鳩山政権の事業仕分け作業が進展している。政府支出の無駄を排除するため、公開の場を用いて内実を明らかにしようとする試みは高く評価できる。独立行政法人、公益法人、天下りが絡み合い、貴重な国費が膨大に注ぎこまれている実態の一部を国民が知ることになった意義は大きい。

しかし、個々の支出の是非を検討する場の設定としてはいささか乱暴であるとのそしりを免れない。予算編成とその執行は国権の行使そのものである。予算に政策は体現化される。その予算編成作業を単なる見せものにするのは、権力の横暴でもある。

協議の場を動画で国民に晒し、悪者を仕立て上げる手法は、郵政民営化選挙の際に小泉政権が用いた「劇場型政治」の手法である。

予算費目の厳密な吟味について、地に足をつけた堅実な手法を模索する必要があると考えられる。

鳩山政権が発足してまもなく2ヵ月の時間が経過するが、内閣支持率が緩やかに低下している点に十分な警戒が必要である。沖縄普天間飛行場の移設問題は、これまでの自民党政権の負の遺産が大きく、対応が極めて難しい問題で、この問題について、一朝一夕に回答を示せぬことが批判を浴びた。鳩山政権は国民の意向を十分に斟酌して、したたかに外交を展開する必要があるだろう。

内閣支持率が低下した最大の要因は、鳩山政権の「脱官僚」方針に対する疑念が生じたことにあると考えられる。

今回の事業仕分けについても、WGグループの人選を見ると、財務省の強い影響力を認めない訳にはいかない。また、小泉竹中政治の御用言論人がメンバーに含まれていることも、大いなる不信感を生む。

また、明らかに財務省御用の人物が多数、WGのメンバーに起用されている。これでは、事業仕分けが財務省主計局の予算査定を代行しているだけにすぎないとの批判が生まれてもやむを得ない。

財務省は財政再建原理主義のターゲットに、①社会保障、②公共事業、③地方交付税交付金、を御三家として定めてきた。今回の事業仕分けにも地方交付税が取り上げられたが、これも事業仕分けが財務省主導で進められていることを示す証拠である。

地方主権を掲げるなら、国から地方への財源移譲が重要テーマになる。地方交付税減額は中央の論理の優越を示すべきで、財務省の利害に沿うものである。

また、財務省所管の各機関の予算切り込みがまったくなされていない。財務省利権を切り込むことこそ、霞が関改革の1丁目1番地であることを忘れてはならない。

鳩山政権が「脱官僚」を掲げるなら、財務省への切り込みが不可欠なのである。日本郵政人事についても、副社長に起用された財務官僚OBの人事には疑問を差しはさまざるを得ない。

政権交代を歴史的偉業に育てるためには、「脱官僚」路線の完遂が不可欠だ。鳩山政権はもう一度原点に戻って「脱官僚」の基本方針を見つめ直す必要がある。

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2009年11月13日 (金)

司法官僚裁判所支配に触れた佐宗邦皇氏の急逝

本ブログ11月11日付記事に

「新藤氏『司法官僚』が示す司法制度改革の原点」

を掲載した。

『司法官僚』

司法官僚―裁判所の権力者たち (岩波新書) Book 司法官僚―裁判所の権力者たち (岩波新書)

著者:新藤 宗幸
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は、日本の司法制度改革を考察する際に、その原点を提示する基本書となるだろう。国民必読の書と言える。

「三権分立」を確保し、公正で適正な裁判を実現するためには、裁判官が

「良心に従い、独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」

ことが不可欠である。

日本国憲法は第76条第3項にこの規定を置いている。

この規定に沿った裁判官の行動が確保されて、初めて中立で公正な裁判が実現される。

ところが、日本国憲法第80条の条文が個々の裁判官による独立した職権の行使を妨げる可能性を生み出しかねない危険を内包している点に十分な留意が求められる。

日本国憲法第80条には以下の定めが示されている。

「下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を10年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。」

 この規定に関して、新藤氏は上記著書に重大な事実を指摘している。

「最高裁事務総局が裁判官人事に実質的に強大な権限をもっている法的根拠は、なによりも憲法八〇条一項の前段「下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する」にあるといってよい。そして、この憲法条文をうけた裁判所法は、第四二条において高裁長官ならびに裁判官の任命資格を列挙するとともに、第四七条において「下級裁判所の裁判官の職は、最高裁判所がこれを補する」とし、裁判官の指名、人事異動や昇任などの権限を最高裁に与えている。

これらの規定を「素朴に」解釈するならば、最高裁が裁判官人事のすべてを取り仕切ることになる。」(『司法官僚』197~198ページ)

新藤氏は最高裁の裁判官人事に関する権限を次のように総括する。

「判事補・裁判官の任用と再任用、転勤、昇任、報酬、部総括指名、人事評価などは、実質的に最高裁事務総局の司法官僚の手ににぎられている。そしてまた、選任の基準はまったく不明のままだが、判事補段階において司法官僚のエリート候補生の選別が、最高裁事務総局によっておこなわれている。」(同197ページ)

つまり、裁判官の人事上の命運は、ひとえに最高裁事務総局という、司法官僚のエリート組織に完全に握られているのが、日本の裁判所の実態なのである。

さらに新藤氏は1974年9月に発生した台風16号による東京都狛江市の多摩川堤防決壊に伴う国家賠償法に基づく損害賠償訴訟についての重大な事例を紹介する。この訴訟では東京地裁が79年1月に住民勝訴の判決を示したが、87年8月に東京高裁は住民逆転敗訴の判決を提示した。

新藤氏はこの問題に関連して、1987年11月8日付朝日新聞が、83年12月2日に最高裁事務総局が全国の地裁・高裁の水害訴訟担当裁判官を集めて裁判官協議会を開催していた事実を報道したことを紹介する。新藤氏はこの裁判官協議会がクローズアップされた理由が、84年1月26日の大東水害訴訟最高裁判決直前の協議会であったことを指摘する。

これらの事実関係を踏まえて新藤氏は次のように記述する。

「朝日新聞のスクープ記事や多摩川水害訴訟の東京高裁判決を機として、最高裁事務総局がこれまでみてきた人事による裁判官コントロールにくわえて、法律の解釈や判決内容についてもコントロールしているのではないか、そしてこの二つは相互に密接に関係しつつ、下級審や裁判官にたいする事務総局「支配」の基盤となっているのではないかとの問題関心が、在野の弁護士を中心にたかまっていった。」

私が巻き込まれた2004年4月の品川駅冤罪事件の不当有罪判決を示したのは東京地裁判事の大熊一之氏であった。

この不当判決について、ジャ-ナリストの高橋清隆氏から、重要な情報が提供された。ワールドフォーラムを主宰されてきた佐宗邦皇氏が、東大の同窓ということであろうかと推察するが大熊一之氏と面識があり、大熊氏と酒席を共にしたときに大熊氏が以下の内容を示したとのことだった。

「私は長崎の五島列島の簡易裁判所が初任地だった。東京地裁は夢のようなところで、当局の意向に逆らうわけにはいかない。」

私は本年4月21日に開催された「ワールド・ブロガー協会設立記念講演会」に出席し、挨拶をさせていただいた。その動画映像がYOU TUBE映像で公開されている。挨拶に先立ち、佐宗氏が私を紹介下さったが、そのなかでこのエピソードを紹介された。ぜひ動画をご高覧賜り、佐宗氏の発言をご確認いただきたい。

私は本年8月から10月の身柄勾留期間に東京拘置所で、新藤氏の『司法官僚』を読んだ。この書によって最高裁事務総局による裁判官および裁判支配の核心を知ることになった。そこに書かれていた事実は、佐宗氏が挨拶のなかで触れられた大熊一之氏の述懐とピタリと符合するものであった。

10月に身柄を解放されて、私はかねてより内諾をいただいていた佐宗氏との会談を楽しみにしていた。その私に驚愕の知らせがあった。佐宗邦皇氏が8月9日に急逝されたとの報に触れたのである。

佐宗氏はご講演の最中に具合を悪くされて、そのまま回復せずに翌朝に逝去されたとのことである。あれほどお元気にされていた方が突然亡くなられて、いまでも信じられない気持ちでいっぱいである。

佐宗氏急逝の原因について確かなことを知ることができないが、記念講演会で極めて重大な発言をされた直後の急逝であるだけに、より詳細なお話を賜ることができなくなった現実には呆然とするしかない。詳細な内容をお伺いすることになっていただけに、口封じされてしまったとの疑念を拭い去ることができない。

 謹んで佐宗邦皇氏のご冥福をお祈りするとともに、心からのお悔やみを申し述べさせていただく。同時に、佐宗氏の提起された重大な事実を手がかりにして日本の司法制度の闇を明らかにし、その根本的な変革を実現することが私たちの重大な責務であると確信する。

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2009年11月12日 (木)

亀井金融相の事業仕分け人人事への苦言は正論

本ブログで指摘してきたように、民主党内部には小泉竹中政治に親近感を持つ「市場原理主義者」が存在する。財政運営については、予算書上の財政赤字削減を近視眼的に追求する。経済の安定的な回復を重視せず、闇雲に緊縮財政を推進する政策スタンスを「財政再建原理主義」と呼ぶが、「市場原理主義者」は「財政再建原理主義者」である傾向を有する。

小泉竹中政治の最大の弊害は、

①「弱肉強食奨励」=「弱者切り捨て」=「拝金主義」
の「市場原理主義」

②「対米隷属外交」

③「官僚利権温存」

④「政治権力と大資本の癒着」

⑤「郵政利権の外国資本への供与、私物化」

にあった。

民主党内の一部勢力は、小泉竹中政治と共通する主義主張を展開してきた。

2003年の「りそな銀行救済」にかけての日本経済混乱は、小泉竹中政治 の経済政策運営破綻を象徴する事象だった。竹中金融相の「大銀行破綻容認」発言が株価暴落を誘導した。株式保有者は巨大損失を蒙りながら日本株の投げ売りに向かった。株価暴落-経済悪化-金融不安拡大の負の連鎖のなかで、多数の国民が失業-倒産-経済苦自死の灼熱(しゃくねつ)地獄に追い込まれた。

ところが、竹中金融行政は、最終的に法の抜け穴を活用してりそな銀行を税金で救済した。「大銀行破綻も辞さない」との政策方針は嘘であった。「大銀行破綻も辞さない」との政策方針が表明されたのは、日本株式を意図的に暴落させるためであったと考えられる。

多数の国民に塗炭(とたん)の苦しみを強制した理由が、外国資本などへの巨大な利益供与にあったとするなら、その犯罪性は極めて重大なものである。

株価暴落のなかで日本の優良資産を買い集めたのは、やがて税金による銀行救済が実行されることを事前に知っていた勢力だけであったと考えられる。最大の暴利獲得者は外国資本であったと見られる。内部情報を事前に入手した人々(=インサイダー)も巨大な不労所得を確保しただろう。

2003年にかけての竹中金融行政は、日本の金融行政史上に最大の汚点を残すものであった。それにもかかわらず、小泉竹中政権はりそな処理を自画自賛し、大政翼賛の日本経済新聞は竹中金融行政を賞賛する論説を掲載した。民主党内部に竹中金融行政を高く評価する者が存在するが、問題の本質を理解していないか、小泉竹中政治に毒されているかのいずれかである。

8月30日の総選挙で自民党が大敗し、民主党が圧勝した最大の背景は、小泉竹中政治に対する国民の全面否定であったと考えられる。「弱肉強食奨励=弱者切り捨ての市場原理主義」に対して国民が明確に拒絶の意思表示を示したのである。

鳩山政権は政権発足以来、精力的に「改革」に取り組んでいる。予算編成過程を透明化し、財政支出の無駄を切り込む姿勢を具体的に示し始めている。「事業仕分け」作業により財政支出にメスを入れる動きが本格化していることは望ましい。

しかし、2010年度予算編成に関しては、予算編成までの時間が極めて短く、作業をきめ細かく実現することは不可能に近い。取り上げられた支出についての論議も、時間的制約から十分には実行されないだろう。

論議を公開する「事業仕分け」について、さまざまな批判が生じることが予想されるが、評価に際しては、これらの「変革」がまだ緒についたばかりでああることを十分に踏まえる必要があるだろう。

「継続性」の強い制約を受ける外交問題では、とりわけ一朝一夕に成果をあげることは困難である。中期的な目標に向けて、着実に努力を積み重ねる基本姿勢が極めて重要である。国民の側も性急に新政権の行動を批判するのでなく、中期的な目標実現に向けて建設的な論議を深める姿勢が肝要である。

こうしたなかで、連立与党である国民新党の亀井静香代表が、事業仕分けチームの人選に苦言を示した。人選に本質的に重大な問題が含まれているとの指摘だ。

亀井金融相は仙谷由人行政刷新相、枝野幸男衆議院議員が主導する事業仕分けの仕分け人メンバーに、小泉竹中政治主導者が含まれていることを問題視している。

川本裕子氏やロバート・フェルドマン氏、土居丈朗氏は、小泉竹中政治路線を主導した人物である。また石弘光氏や冨田俊基氏は財政再建原理主義者に位置付けられると考えられる。

鳩山新政権が小泉竹中政治=市場原理主義を否定する基本スタンスを採用するなら、上記の人選には本質的な問題があると言わざるを得ない。性急に政策運営の成果を求めることは適切でないが、基本姿勢の揺らぎは中期的に大きな禍根を残す原因になる。

鳩山政権が民主党内市場原理主義者に支配されてしまうなら、民主党および鳩山政権は国民の強い支持を簡単に失ってしまうだろう。鳩山政権の原点は市場原理主義の否定にある。市場原理主義を代表する人々を事業仕分けチームメンバーに起用することは、選挙で民主党を支持した国民に対する背信行為であると言わざるを得ない。

「市場原理主義」に加担してきた大半のマスメディアは、苦言を呈した亀井静香金融相兼郵政担当相の主張を批判するトーンで報道を展開しているが、正論を提示しているのは亀井静香金融相である。

鳩山首相は新政権の本質に関わる問題について、適切にリーダーシップを発揮するべきである。新政権の原点を忘れてはならない。また、霞が関改革の一丁目一番地は、財務省の権力突出を排除することにある。鳩山政権が財務省に依存しすぎれば、ミイラ取りがミイラになることを避けがたい。

財務省は他省の利権排除には熱心だが、財務省自身の利権に対しては激しい執着を示す。最終的に財務省と法務省・検察庁・裁判所の利権・権限集中を排除しなければ霞が関主導政治を変えることはできない。事業仕分けWGの人選には財務省の強い影響が見え隠れしている。

問題の本質を把握し、事業仕分け人人事問題について、早急に問題を是正する対応を示すことが求められる。

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2009年11月11日 (水)

新藤氏『司法官僚』が示す司法制度改革の原点

 官僚制批判、地方分権推進について説得力のある主張を展開されてきている政治学者の新藤宗幸氏が

『司法官僚』

司法官僚―裁判所の権力者たち (岩波新書) Book 司法官僚―裁判所の権力者たち (岩波新書)

著者:新藤 宗幸
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と題する著書を出版された。

 私は同書を身柄拘束中に読んだ。私の民事訴訟事件で弁護団を指揮下さり、完勝に近い勝利を獲得して下さった梓澤和幸先生がご恵送下さった。梓澤弁護士は東京新聞読書欄に同書の書評も掲載されている。

 私は日本の権力構造が三権分立ではないことを、拙著

『知られざる真実-勾留地にて-』

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にも記述した。

 議院内閣制は大統領制と比較して、「権力の抑制=チェックアンドバランス」よりも「権力の創出」の特性を持つ制度である。

 議院内閣制の下での内閣総理大臣は議会多数派勢力から選出される。内閣総理大臣は内閣を編成し、内閣が行政権を担う。他方、議会における決定権は議会多数派が確保する。議会多数派=与党は議会を支配すると同時に、内閣を構成する母体となり、政治的意思決定およびその実行が円滑に促進される。

 これに対して米国の大統領制の下では、大統領が所属する政党が議会で多数派である保証はない。大統領所属政党と議会多数派が異なることも多い。

 米国の大統領制は大統領に強い権限を付与しているが、大統領選と独立に実施される議会選挙によって大統領が所属する政党とは異なる政党が議会多数派を形成する機会を創出することにより、大統領の行政権限を議会がチェックし、けん制する機能が期待されている。

 この意味で日本の議院内閣制には、もとより権力が集中しやすい特性が内包されていると言える。

 このなかで、問題は司法制度である。

 日本国憲法は、裁判官について、

①最高裁長官は内閣が指名し、天皇が任命する(第6条)
②最高裁長官以外の最高裁裁判官は内閣が任命する(第79条)
③下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する(第80条)

 ことを定めている。

 つまり、内閣が裁判所裁判官の人事について、強い権限を有しているのである。

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 私は「小泉政権の五つの大罪」について、上記拙著『知られざる真実-勾留地にて-』にも記述したが、そのひとつに

「権力の濫用」

を掲げた。過去の総理大臣の多くは、三権分立の大原則を踏まえ、憲法に規定された内閣および内閣総理大臣の権限行使に対して、一定の自己抑制を働かせてきた。しかし、この自己抑制を完全に排除した初めての総理大臣が小泉純一郎氏であったと考える。

 政府は政府の保持する強大な許認可権を行使することによって、「第四の権力」と呼ばれるマスメディアを支配してしまうことも不可能ではない。現実に、総務省からの圧力により、NHKを政治的な支配下に置く行動も取られたと考えられる。

 内閣総理大臣はその意思さえ持てば、司法を支配することも不可能ではないのである。日本国憲法が定めた制度設計に「権力の分立」ではなく、「権力の集中」、「独裁」を生み出す要因が内包されている点について、十分な再検討が求められていると考える。

 さて、問題は現在の司法制度である。警察・検察の「裁量行政」の問題も重大である。刑事取調べの適正化、取調べの可視化など検討が求められる課題は枚挙に暇がない。

 同時に、起訴された刑事事件の99%が有罪とされる日本の裁判制度には根本的な問題が存在するとの指摘が強い。被告人が否認しているケースでの有罪率はイギリスなどの場合、50%程度であるとも指摘されているが、日本では99%が有罪の判決を受ける。裁判制度が機能していないと言わざるを得ない。

 問題の本質は日本国憲法第76条第3項に規定された事項がまったく無視されているという現実にある。

 日本国憲法第76条第3項は以下の規定を定める。

「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」

 裁判官は本来、「その良心に従ひ独立してその職権を行ふ」ことを要請される存在である。裁判官は法の番人であって、「憲法及び法律にのみ拘束される」べき存在である。

 裁判官が独立に、その良心に従って憲法や法律を適正に適用して裁判を行えば、多数の悲惨な冤罪判決を生み出すことはないはずである。

 新藤氏は上記著書によって、日本の裁判制度を歪めている元凶を見事に抉(えぐ)り出している。その元凶とは「最高裁判所事務総局」である。

 最高裁は司法修習生時代に裁判所トップエリートを選出し、この一握りのトップエリートに最高裁事務総局の権限を担わせてきているのである。トップエリートは最高裁事務総局と主要各地裁判所判事、法務省官僚を歴任し、日本の裁判所裁判を実質的に支配している。

 裁判員制度が導入され、司法制度改革が進められているとの説明がなされているが、本質的な司法制度改革にはまったく着手すらされていないのが現状である。

 新藤氏の著書は、司法制度改革の本丸がどこに存在するのかを鮮やかに浮かび上がらせている。司法制度改革について、一般国民は本質的に重要な事項を何一つ知らされていない。職業裁判官と検察官がすでにお膳立てを終えた事案について、最終的に量刑を決定する際に一般国民が申し訳程度に関与する制度=裁判員制度は司法制度改革の名称を用いることのできる代物ではない。

 すべての国民が『司法官僚』を読んで、問題の本質のありかを知ることが司法制度改革の第一歩であると考える。

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2009年11月10日 (火)

「りそな処理疑惑」解明に関心示す亀井金融相

 これまで数多くの優れた論考を発表されてきた高橋清隆氏が、ライブドアパブリックニュースに新しい記事を掲載された。

 11月7日付記事
「りそな銀行破たんでインサイダー疑惑、
 亀井金融相が興味示す
 =PJ出席の「第二記者会見」で」

と題する論考である。

 以下、高橋清隆氏執筆記事を転載させていただく。

「2003年5月17日にりそな銀行が国家救済された際、インサイダー取引があった可能性について10月23日、記者が亀井静香金融・郵政担当相に調査の意志を尋ねた。亀井大臣が興味を示す中、証券取引等監視委員会に参考資料が届き、当局の動向が注目される。」

「りそな銀行救済に伴う株価変動で外資系ファンドが大きな利益を上げたが、政策決定者である当時の竹中金融相らがこの機密情報を私用した可能性を、エコノミストの植草一秀氏が指摘している。「退出すべき企業は大企業も同じ」「大銀行でも破たんがあり得る」との方針を一転させたことで、りそな株は急反発した。」

「金融庁の非クラブ記者を対象にした「第二会見」で、記者がこの問題について調査の意志を尋ねると、亀井大臣は「その関係どうなってるのか、ちょっと聞いておいてください」と答えた。大塚耕平副大臣が証券取引等監視委員会の自主判断を強調するも「事実関係は調べます」と発言し、大臣は監視委員会への情報提供を指示した。」

「この直後、参考資料の提供を申し出ていた記者に大塚副大臣担当の金融庁職員から電話があった。「大臣は関心を示している」としながら、監視委員会にはその旨連絡したが、同委員会の独立性を確保する理由から直接提出してほしいとの内容だった。これを受け、記者は植草氏のネット上の論稿『りそなの会計士はなぜ死んだのか』山口敦雄(毎日新聞社)などの紹介サイトを、概要文とともに同委員会ホームページ上から送信した。」

「2日、同委員会に調査状況を電話で尋ねると、「お答えできない」としながらも、参考資料のメールが届いたことを認めた。さらに6日、追加で郵送した書籍や雑誌記事などが4日付けで受け取られた配達証明書が来た。同委員会は告発・勧告の処分を行った場合ホームページで公開するが、その他の場合は公表しないとしている。」

「会見でのこの質疑応答は金融庁ホームページに掲載されているほか、ニコニコ動画が配信。30人ほどの記者が出席し、日本証券新聞ジャーナリストの岩上安身氏などが記事化した。投稿サイト「阿修羅」や2ちゃんねるでも増殖し、関心が広がっている。」

「りそな疑惑について調べる者に、不可解なことが相次いで起こってきた。これまで旧朝日監査法人の平田聡会計士、朝日新聞の鈴木啓一記者が死亡したほか、竹中氏が総務相に就いてから批判記事を書いてきた読売新聞の石井誠記者が後ろ手に手錠を掛けられた状態で「自殺」し、植草氏と太田光紀国税調査官が痴漢容疑で逮捕されている。」

 私は現在、月刊誌『月刊日本』

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に、12回連載シリーズ記事

「小泉竹中改革の破綻と政治の新潮流」

を執筆している。

 2009年11月号、12月号では、いわゆる「りそな疑惑」について、概要を記述している。「りそな疑惑」については、本ブログにも詳細を記述してきた。

 2003年春の日本の金融危機は人為的に引き起こされたものであった。株価暴落を招いた最大の原因は、竹中金融相(当時)による2002年10月のニューズウィーク誌における

「大銀行が大きすぎるからつぶせないとの政策方針をとらない」

との発言だった。

 竹中氏はプロジェクトチーム(PT)を作り、銀行の自己資本に組み入れることが認められていた「繰延税金資産」計上ルールについて、米国並みにしか計上できないようにルール変更を強行しようとした。竹中氏はいきなり2003年3月期決算からのルール変更を目指した。

 ゲーム中での基本ルール変更とも言える「暴政」に金融界は猛反発した。反発の先頭に立ったのが西川善文三井住友銀行頭取だった。米国では不良資産に対する貸倒れ引当金の無税償却が認められている。日本では無税償却が認められていないため、その代償措置として繰延税金資産の計上ルールが米国よりも緩く設定されていたのである。このような基本すら踏まえていない乱暴なルール変更方針に金融界が反発したのは当然であった。

 結局、竹中金融PTはルール変更を断念した。竹中氏の面子は丸つぶれになった。この面目喪失へのリベンジの標的として選ばれたのがりそな銀行であったと考えられる。

 りそな銀行が標的にされた理由もきわめて低次元のものであったと考えられる。竹中氏-木村剛氏-奥山章雄氏-朝日監査法人などの連携によって、りそな銀行は自己資本不足に追い込まれたものと考えられる。

 りそな銀行処理の最大のポイントは、同銀行が預金保険法102条第1項3号措置でなく第1号措置が適用されたことだ。詳細については拙著

『知られざる真実-勾留地にて-』

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をご高覧賜りたいが、第1号措置は「破たん処理」ではなく「公的資金による救済」で、正反対の性格を持つ政策措置である。

 第1号措置を適用するには、りそな銀行の繰延税金資産計上が「3年」でなければならなかった。りそな銀行の繰延税金資産5年計上方針に対して強烈に反対した木村剛氏は、ゼロないし1年計上しかありえないことを強く主張した。木村氏は2003年5月14日付ネット上コラムでこの主張を繰り返した。

 しかし、着地は3年計上だった。3年計上により、りそな銀行は公的資金で救済されたのである。「大銀行破たんも辞さぬ」が「大銀行は税金で救済する」に豹変したのが、2003年5月17日だった。

 驚かされるのは、繰延税金資産計上はゼロか1年しかありえず、それ以外の選択肢を容認するなら、破綻すべきなのは監査法人(新日本監査法人)であると強硬に主張していた木村剛氏が、5月17日以降、その批判を完全に封印し、木村氏としては説明不能であるはずの3年計上を認めた最終決定を徹底擁護し始めたことである。

 竹中氏は監査法人の自主的判断だと主張するが、さまざまな状況証拠は、竹中氏を中心とする関係者が人為的にりそな銀行救済を誘導したとの仮説を裏付けている。

 竹中氏は2003年2月7日の閣議後懇談会で日本株価連動投信(ETF)について、「絶対儲かる」発言を示して問題を引き起こした。この時点で、公的資金によるりそな銀行救済のシナリオは確定していたのだと考えられる。

 株式市場では大銀行破たんを警戒し、株式の投売りが広がった。このなかで暴落株式を悠然と買い集めた人々が存在した。最終的に銀行破たんではなく銀行救済が実施されるなら、株価が猛反発するのは確実だ。この内部情報に基づいて株式買い入れに動いた勢力が存在したと考えられるのである。

 2003年の金融危機に連動して、日本経済は失業、倒産、自殺の灼熱地獄に包まれた。「銀行破たん方針」が示されなければ地獄に直面しなかったはずの多くの同胞が、地獄に送り込まれたのである。

 政権交代が実現したからには、「小泉竹中政治の闇」を徹底的に暴き出さなければならない。「かんぽの宿疑惑」の全容解明、「りそな銀行処理疑惑」の全容解明を避けて通るわけにはいかない。鳩山政権、亀井金融相がなさねばならぬ責務は極めて大きい。

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2009年11月 9日 (月)

普天間基地移設日米外交問題解決への提案

米国オバマ大統領の訪日日程が変更された。米南部テキサス州の陸軍基地「フォートフッド」で起きた銃乱射事件の追悼式典にオバマ大統領が出席するため、米国が日程変更を打診し、日本政府が受け入れたためだ。

鳩山政権は「対等な日米関係」、「アジア重視外交」の方針を提示しているが、この方針に米国が不快感を強めているとの報道が増加している。

これまでの日本外交は「対米隷属」と呼ぶべきものであった。日本が米国の隷属国であるかのごとく、米国の言いなりになることが日本外交の基本とされてきた。イラク戦争に際しても小泉政権は戦争遂行の正当性を慎重に検討することなく、米国に追従しイラク戦争への不当な加担を実行した。

鳩山政権の新たな外交方針は高く評価されるべきものだ。しかし、日本国内には対米隷属主義者が多数存在し、この勢力が米国に対して「言うべきことは言う」スタンスを明確に示した鳩山政権を激しく攻撃している。

戦後の日本政権では、片山哲内閣、芦田均内閣、鳩山一郎内閣、石橋湛山内閣が米国から攻撃された政権だった。田中角栄内閣も日中国交回復などの政策を推進して米国から攻撃された政権だった。

この意味で、鳩山由紀夫政権が米国および米国のエージェント勢力から攻撃されることは十分に予想される事態である。とりわけ、マスメディアの大半が対米隷属勢力によって支配されているために、鳩山政権に対するマスメディアによる低劣な揺さぶりが大々的に展開されている。

日米間の当面の最大の懸案は、沖縄普天間飛行場の移設問題である。米国はこれまでの自民党政権との間で、沖縄県名護市にあるキャンプシュワブ地域に新しい基地を建設することで普天間飛行場を返還する合意を成立させた。

しかし、今回の総選挙に際して現与党である民主党、社民党、国民新党は基地の県外あるいは海外移設をも視野に入れて移設問題を再検討する方針を示した。この経緯を踏まえて、鳩山政権はキャンプシュワブ地域への移設について、見直し論議を行なっている。

これに対して、米国国務省、国防総省は日本政府に対して、日米合意の速やかな実行を求めており、日米間の最大の政治問題になっている。

この問題に関する鳩山内閣閣僚の発言に相違が見られており、鳩山政権を攻撃するマスメディアが、①閣内不一致、②日米関係悪化、を騒ぎ立てて鳩山政権批判を強めている。

鳩山政権が反省しなければならない部分もある。外交は国と国の関係であるから「継続性」を重視する必要がある。政権交代が実現しても過去の外交交渉は消滅しない。明治時代には江戸末期に締結された不平等条約の改正が明治新政府の重い政策課題になった。

自民党政権がキャンプシュワブへの移転で米国と合意を成立させてしまった現実が存在する以上、この点を踏まえない訳にはいかない。

また、極めて重大な案件であることを踏まえて、鳩山政権は政権内部で十分に協議を重ね、対外発表を一本化する必要がある。各大臣がそれぞれの考え方を持つのは理解できるが、それぞれが好き勝手に発言すれば、閣内不一致で攻撃されるのは当たり前だ。

短期日のうちに県外または海外への移設を決定することは不可能だろう。岡田外務相は、こうした認識の下で、嘉手納基地への一時的な飛行場移設案を提示したが、嘉手納地区住民から強い反発を受けて立ち往生している。新構想を提示するための事前の根回しが行なわれたとは考えられない。

こうした状況を踏まえると、キャンプシュワブ地域への移転を決断しなければ、普天間返還そのものが流れかねない状況になってくる。しかし、大山鳴動して、結局キャンプシュワブ地域への移設で着地させれば、鳩山政権の政策運営全体に対する強い批判が生じることを免れない。

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鳩山政権は自ら迷路に迷い込んだ感がある。しかし、現実の政治は立ち止まってくれない。問題の本質を見つめて解決策を見出さなければならない。

問題を考察する上で不可欠な認識は以下の三点だ。

第一は、沖縄の基地負担が突出して大きく、その軽減を図ることが極めて重要なこと。

第二は、日本外交をこれまでの対米隷属から脱却する契機を見出さねばならないこと。

第三は、キャンプシュワブにV字形滑走路を建設することに伴う環境破壊が極めて深刻であること。

キャンプシュワブにV字滑走路を建設する計画は、実は米国がベトナム戦争時に保持していたものであることが判明した。日米協議から生まれた産物ではなく、米国自身の計画が下地になっていたことが明らかになっている。

移設に伴って必要とされる施設は、本来はヘリコプターの離着陸に必要な施設であって、1300メートルの滑走路ではなかった。1300メートル滑走路建設は、地元に巨額の工事代金を落とすために設定されたものである。このことを、拓殖大学の森本敏教授もテレビ番組で認めた。

このように考えると、キャンプシュワブ地区に大型滑走路を伴わないヘリコプター離着陸施設を建設するとの、新たな計画を描き直すことが検討されるべきではないのか。

かけがえのない自然環境を破壊して大型滑走路を建設することは、建設工事利権関係者が切望することであって、「コンクリートから人への投資」を掲げる鳩山政権の基本方針に反する。日本の主張として、キャンプシュワブにヘリコプター離着陸施設を建設することで、日米間に新たな合意を成立させることに鳩山政権は尽力すべきと考える。

日本が核武装せず、海外諸国の核の脅威に晒されている以上、日本は日米同盟を基軸に据えざるを得ない。この点に関して鳩山政権は「日米基軸」を明確に謳っており、外交の基本姿勢に問題はない。

問題は、日米同盟を基軸に据えつつ、「対米隷属」でゆくのか、「対等なパートナーシップ」を打ち出すのかの選択にある。オバマ大統領は鳩山政権の外交新基本路線を理解する懐の深さを保持していると考えるべきだ。ある程度の短期的摩擦を覚悟しても、日本が「言うべきを言う」姿勢を貫くことが、中期的な日本の国益を増大させると考えられる。

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2009年11月 8日 (日)

全国民必読の副島氏新著『ドル亡き後の世界』

『神州の泉』主宰者の高橋博彦氏が昨日11月6日付記事

「副島隆彦氏の新刊「ドル亡き後の世界」を読んで!」

に、副島隆彦氏の新刊

『ドル亡き後の世界』(祥伝社)

 

 

ドル亡き後の世界 Book ドル亡き後の世界

著者:副島 隆彦
販売元:祥伝社
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を紹介された。

 素晴らしい書評である。いち早く同書を紹介下さった高橋氏に深く敬意を表明したい。

副島隆彦氏は祥伝社から

2007年刊『守り抜け個人資産』
-世界は金融恐慌に雪崩込む!-

守り抜け個人資産 Book 守り抜け個人資産

著者:副島 隆彦
販売元:祥伝社
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2008年刊『今こそ金を買う』
-世界恐慌を生き抜く!-

副島隆彦の今こそ金を買う Book 副島隆彦の今こそ金を買う

著者:副島 隆彦
販売元:祥伝社
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2008年刊『恐慌前夜』
-アメリカと心中する日本経済-

恐慌前夜 Book 恐慌前夜

著者:副島 隆彦
販売元:祥伝社
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をシリーズで出版されている。本書はこれらの著書に連なる最新作である。

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 副島氏はこれ以外にも2009年に

『日米「振り込め詐欺」大恐慌』(徳間書店)

日米「振り込め詐欺」大恐慌―私たちの年金・保険は3分の1に削られる Book 日米「振り込め詐欺」大恐慌―私たちの年金・保険は3分の1に削られる

著者:副島 隆彦
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『売国者たちの末路』(私との共著、祥伝社)

売国者たちの末路 Book 売国者たちの末路

著者:副島 隆彦,植草 一秀
販売元:祥伝社
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を発表されている。

 副島氏の超人的な執筆活動に驚愕するとともに、副島氏の恐るべき慧眼に深い敬意を表明させていただきたい。

 何よりも特筆されるべきは、副島氏の現実世界を見抜く洞察力が突出しており、いかなる人間の追随をまったく許さないことである。

 私も経済金融研究、金融マーケット分析に関わってきた一人として、現実を予測することの困難さとリスクを知っている。1年から5年単位での未来を洞察し、他者に対して指し示すことは至難の業である。

 誰も達成することのできなかったその偉業を副島氏は、現実の軌跡によって実現することを証明されている。

 同時に副島氏の著者が放つ輝きは、副島氏の真実と正義を愛する妥協のない信念と哲学に裏打ちされている点に源がある。この高い心境が一連の著書を一般の経済金融分析書から隔絶した高みに押し上げる原動力になっている。

 2007年から2009年にかけて米国を震源地として暴発したサブプライム金融危機をもっとも的確に分析し、もっとも正確に予測し続けてこられたのが副島隆彦氏である。

 米国を中心に主要国は金融危機発生に対応し、緊急避難の大型経済対策と金融機関の資本不足への対応策を全面的に展開した。

 日本でも麻生太郎前首相が「100年に1度の金融危機」を印篭(いんろう)のごとくにかざして巨大な財政政策を発動した。

 その結果として、米国は150兆円規模、日本は50兆円規模の単年度財政赤字が表面化している。この巨大な財政赤字は当面持続せざるを得ない。

 副島氏は新著『ドル亡き後の世界』に、改めて今回の金融危機の本質を詳述されている。6京円にまで膨張したデリバティブ金融商品。副島氏は「金融時限爆弾」が破裂する宿命を背負っている宿命を明晰に示される。

 世界の金融市場は政策当局の短期応急処置によって本年3月以降に小康状態を取り戻した。この小康状態を事態改善の第一段階と見るか。それとも、長期大崩壊のトレンドのなかでのあや戻しと見るか。この点が決定的に重要である。

 副島氏はこの点について明確な見通しを指し示す。生半可な分析では不可能な中期予測を精密な分析と深い洞察力に基づいて示されるのだ。

 米国経済の最大のアキレス腱は、米国が巨額の経常収支赤字を継続している点にある。米国の金融政策当局であるFRBは日本と同様のゼロ金利政策、量的金融緩和政策に踏み出している。FRBの資産健全性の大原則を踏みにじり、FRBのバランスシートは急激に大膨張した。

 いずれ、ドルの信認が根底から揺らぐことになるのは確実だろう。この点を副島氏はまったくぶれることなく、洞察し続けてきた。副島氏が予測をことごとくピタリと的中させる金字塔を樹立されてきた背景には、深い洞察力とその洞察力を裏付ける正確な国際政治経済金融情報を集積し得る「情報力」=インテリジェンスが存在するのだ。

 日本政府は2002年10月から2004年3月までの1年半に外貨準備を47兆円も膨張させた。外貨準備高は100兆円に到達している。しかし、この100兆円はそのまま巨大な為替リスクに晒(さら)されているのである。

 本ブログでは、日本の外貨準備の巨大リスクについて繰り返し警告を発し続けてきた。100兆円の外貨準備、政府保有米ドル建て米国国債を、為替損失を実現しないように日本政府は売却するべきなのである。日本政府が100兆円のドル建て米国国債を保有したままドル暴落を放置することは、日本が米国に100兆円を贈与することにほかならない。

 橋本龍太郎元首相が米国国債売却を示唆する発言を示し、米国の激しい攻撃に直面した。中川昭一元財務相も米国に隷従する形での資金供給にNOのスタンスを提示した。副島氏は私との共著『売国者たちの末路』においても指摘されたが、中川元財務相のイタリアG7での失脚事件、先般の逝去について、重大な疑問を提示されている。

 『月刊テーミス』2009年11月号は巻頭の特別レポートに、

「中川昭一元財務金融相「変死」にちらつく米国の影」

と題する興味深い論考を掲載している。

 副島氏の新著『ドル亡き後の世界』は、現代国際政治経済金融に関心を有するすべての国民必読の書である。マスメディアが一切報道、解説しない重大な事実が読者に分かり易く丁寧に解説されている。

 副島氏の予測通りに金価格は上昇の一途を辿ってきた。副島氏の洞察力の質の超然とした高さは、歴史の現実が確実に証明しているのである。2009年の年末を飾るにふさわしい素晴らしい著書が出版された。一人でも多くの国民にこの新著を読んでいただきたいと思う。

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2009年11月 6日 (金)

企業団体献金全面禁止後の政治資金のあり方

昨日の本ブログに、

「新政権を叩くのでなく厳しく見守る姿勢が肝要」

と題する記事を執筆したのは、『カナダde日本語』の美爾依さんの11月5日付記事

「小沢幹事長が「企業団体献金禁止」を率先して実施したにもかかわらず・・・・」

を読ませていただき、一部の共産党支持者の言動に素朴な疑問を感じたからだった。

 美爾依さんは、11月6日付記事

「共産党はきれいごとばかり」

に、その続編と言える記述を示されている。とても説得力のある主張を展開されている。

 私たちが根本的に認識しなければならないことは、政治の主役、この国の主権者がこの国に住む市民であるという基本である。政治家も政党も、主権者である市民の意向を代表して行動しているにすぎない。政党や政治家が主権者である市民の意向とかけ離れて、政治をもてあそぶことは慎まなければならない。

 政権交代が実現したことについて、その解釈はさまざまに存在するだろう。民主党を軸とする現与党による政権樹立を快く思わない人々は、政権交代は民主党を軸とする新政権の樹立を国民が求めた結果ではないとする。国民は単に自民党政権にお灸をすえただけであって、民主党政権を希望したのではないとするのだ。

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 これに対して、政権交代に大きな意義を認める見解も存在する。55年体制構築以来の「自民党支配政治」、明治憲法発布あるいは明治維新成立以来120年、140年にわたり継続した「官権政治」に終止符を打つことが政権交代の意義であると考える。

 私は「官権から民権」、「大資本と政治権力の癒着排除」、「対米隷属外交からの脱却」が政権交代実現後の三大課題であると考える。多くの市民が政権交代に日本政治刷新の期待を寄せている。日本政治を根本から変革しようという市民の意志が政権交代の原動力であったのだと私は思う。

 この主権者の意志を実現することが重要なのであって、政党や政治家が主権者である市民、国民の意志と離れて行動するなら、そのような政党や政治家は基盤を失うだけである。

 政治権力と大資本の癒着を排除する上で、企業団体献金の全面禁止は最重要の施策である。民主党は小沢一郎前代表の秘書に関連する政治資金規正法違反容疑問題を契機に、企業団体献金全面禁止の方針を明示した。画期的な提案が示されたのである。民主党は総選挙においても企業団体献金全面禁止を政権公約として明示した。

 主権者である国民は民主党の政権公約を国民との約束として認識している。衆議院の任期4年中にこの公約が確実に実行されることを信用している。民主党がこの最重要の政権公約を実現しないなら、国民から厳しい批判を受け、その代償を払わされることになるだろう。それだけの意味を持つ政権公約である。

 だが、一方で政治活動にお金がかかることも否定できない現実である。総選挙に立候補して当選を果たすには、一定の資金が必要になる。すべての有権者に対して政治活動の門戸を開くためには、誰でも政治活動を実行できるための資金的な環境を整えることが求められる。

 政党を中心に政治活動が展開されている現実を踏まえれば、政党が正当に活動資金を確保できる環境を整える必要がある。個人献金を活用することもひとつの方策であるが、個人の資金力には大きな個人差がある。政党活動が個人献金にのみ依拠するようになれば、大きな資金力を有する個人に支持される政党が有利な環境を得ることになりかねない。

 この点を踏まえれば、政党の政治活動に要する資金を国民が国費として負担することには、大きな合理性があると判断できる。現在、政党交付金が政党活動の最重要の資金源となっている政党が多く存在するが、政党交付金をさらに拡充することも検討に値すると考えられる。

 共産党は政党交付金を受領していないが、その分、共産党の支持者がその意志に反して重い負担を強いられているという現実も存在するのではないか。

 企業団体献金を全面禁止したあとの政治活動を支える資金のあり方について、建設的な論議を活発化することが求められる。政治資金を個人献金や個人資金にだけ求めることになれば、富裕な個人でなければ政治活動に従事できないとの新しい歪みが生まれることも十分に予想される。

 鳩山政権には企業団体献金を全面禁止する法整備を早期に実現することを強く要望する。同時に、企業団体献金全面禁止後の政治資金確保のあり方についても、明確なビジョンを示してもらいたいと思う。

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2009年11月 5日 (木)

新政権を叩くのでなく厳しく見守る姿勢が肝要

8月30日の「決戦の総選挙」を民主党が圧勝し政権交代が実現した。鳩山政権が発足して1月半が経過した。鳩山新政権の政策運営に対して、さまざまな評価が示されている。

「無血の平成維新」の名にふさわしい変革を実現する道は平坦ではない。これまでの自民党政権下での利権複合体勢力は、2010年夏の参院選に向けて文字通り背水の陣を敷いて攻撃を仕掛けてくると考えられる。

主権者である国民が警戒しなければならないのは、利権複合体の一角を占めるマスメディアが、鳩山政権攻撃の姿勢を強めていることである。

政権交代が実現したからといって、すべてが一朝一夕に変わるものではない。衆議院の任期4年をフルに活用して、「平成維新」の名にふさわしい日本政治刷新を実現することが期待されている。こうした時間的視野で現実を見極める姿勢が重要である。

7月12日に実施された東京都議会選に向けて、共産党は民主党攻撃の姿勢を鮮明に示していた。この点について、私は7月13日付記事

「都議選民主党圧勝と総選挙を勝ち抜く三大戦術」

に次のように記述した。

「共産党は、政権交代実現に積極的ではなく、自民、公明、民主をオール与党だとして、唯一の野党としての共産党への投票を呼び掛けたが、有権者は、日本政治の現状を変革する手始めの一歩として、「政権交代実現」を重視したのだと考えられる。

 共産党が「政権交代実現」を優先し、政権交代推進勢力と共闘体制を構築していれば、多くの議席を確保できたと考えられる。各選挙区では、民主党に投票が集中した。この過剰な投票が共産党に振り向けられれば、共産党候補者の多数の当選が可能になったと考えられる。」

「民主党を軸とする新連立政権が、初めから完全な形で発足できるとは考えられない。しかし、国民本位の政治の確立を求める主権者である国民の立場からすれば、まずは、「政権交代」から始動しなければ変革を勝ち取ることはできない。

 「政権交代」実現を後押しせず、「政権交代実現推進勢力」を攻撃することは、結果的に「悪徳ペンタゴン勢力」を側面支援してしまうことになるのだ。

 今回の都議選で明らかになったことは、多くの有権者が「政権交代」を希求しているという、極めて重要な現実であった。」

 私の主張が届いたのかどうか。共産党は都議選後に総選挙に向けての基本スタンスを大転換した。「政権交代実現」を是とし、そのうえで建設的野党として、政権交代後の新政権に対して是々非々の姿勢で臨む方針を固めたのである。

 この方針転換によって、共産党は総選挙での敗北を回避した。同時に共産党の小選挙区での立候補者数削減は、政権交代推進勢力にとっての追い風となり、現与党勢力の大勝をもたらす一因になったのである。

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 鳩山政権が発足してどのような変革が実行に移されるのか。さまざまな疑念を吐露(とろ)する見解も散見される。政権公約に示された重要方針が実行されないことになれば、有権者は強い失望を禁じ得ない。この意味で、新政権の先行きを危惧する心情を私も理解できる。

 しかし、ここで新政権を潰(つぶ)して、その結果としてこれまでの自民党政治=政官業外電悪徳ペンタゴン=利権複合体による政治が、ゾンビのように復活したのでは元も子もない。

 政治の主役は政治家ではない。主権者である国民が政治の主役でなければならない。主権者である国民は、新政権のあらを探して新政権をつぶしに回るよりも、新政権にもし問題点があればその問題点を適切に指摘し、問題点の是正を実現する方向に政治を誘導するべきである。

 本ブログで再三記述しているが、私は政権交代の意義が、

①「官権政治」から「民権政治」への転換

②「政治権力と大資本の癒着」排除

③「対米隷属外交」から「自主独立・日米基軸外交」への転換

④小泉竹中政治の「市場原理主義」を排しての「セーフティネット」再構築

⑤日本郵政の経営刷新と「かんぽの宿疑惑」の全容解明

にあると考えている。

 鳩山政権が①「天下り」を温存し、②企業献金制度を温存して「政治権力と大資本の癒着」を維持し続けるなら、主権者である国民は、公約違反を厳しく問い、鳩山政権にNOを突き付けなければならない。

 だが、現状では、そのような判定を下すには時期尚早である。いたずらに新政権に対する攻撃を強めることは、結果として利権複合体勢力に加担することになる点を十分に踏まえなければならない。

 政権交代実現は日本政治刷新のゴールではなく、あくまでスタートである。衆議院の任期は4年間ある。この4年間の時間をじっくりと消費して、主権者である国民の幸福を実現する新しい政治を確立することが何よりも重要なのである。

 鳩山政権転覆、ゾンビ政治復活を虎視眈々(こしたんたん)と狙う利権複合体勢力=悪徳ペンタゴンの片棒を担ぐことにならないよう、細心の注意が必要である。

 鳩山政権に非があれば、それを正し、正しい方向に政治を誘導することが求められる。本ブログで繰り返し述べているように、私は民主党政治を手放しで楽観してはいない。「官権政治」、「大資本との癒着政治」、「米国の傀儡(かいらい)政治」に引き寄せられぬように、厳格な監視が不可欠であると考えている。

 しかし、国民の力によって実現した政権交代の偉業を無に帰すことがないように注力することも、同時に求められている。こらえ性なく鳩山政権を攻撃し、新政権を倒すことは、決して国民の利益につながらない。

 新政権に誤りがあれば、是々非々で正し、しかし、しっかりと政治の変革を支え、時計の針を逆戻しすることのないよう、主権者である国民が厳しく、しかし温かく新政権を監視してゆくことが大切であると考える。

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2009年11月 4日 (水)

天下り根絶に向けて鳩山政権がなすべきこと

予算委員会審議では予想されたように、日本郵政人事における官僚OBの起用についての質問が活発化している。

「官僚主導」を排すること、「脱官僚」を旗印に掲げる鳩山政権が日本郵政社長および副社長に官僚OBを3名起用したことが批判の対象になっている。

日本郵政経営幹部は日本最大級の企業幹部であり、力のある人材を起用することが求められる。その視点から言えば、官僚経験者であっても選任の対象から除かれるべきではないと言えるだろう。

また、日本郵政の場合、旧郵政省官僚を「プロパー職員」であると認定することができ、郵政省職員経験者が経営陣に一人も起用されないことの方が異常であると言わざるを得ない。この意味で旧郵政省職員が取締役に起用されたことは順当である。

社長に起用された斎藤次郎氏は退官後10年以上の時間が経過しており、人選の対象から除外する必然性は低いと思われる。鳩山政権が人物本位で人選を進めたのであれば、新しい経営者の布陣には一定の説明が成り立つものと考えられる。

しかし、鳩山新政権が「脱官僚」を総選挙の旗印に掲げ、無血の平成維新が成立したと表明している以上、「脱官僚」=「天下り根絶」を具体的に示してゆくことは必要不可欠である。

今後の政権運営において、「脱官僚」、「天下り根絶」の方針を確実に実行してゆかなければならない。今回の人事を通じて、鳩山政権の「天下り根絶」方針に対して国民のなかに大きな疑念が生じていることは否定できない現実である。この印象が拡大してゆけば、新政権に対する主権者である国民の失望が広がってしまうことも十分に予想されてしまう。

麻生政権も言葉の上では「天下り禁止」を謳(うた)っていた。しかし、その現実においては、「役所による斡旋」を通じる官僚OBの再就職を「天下り」と定義し、官僚OBの公益法人等への再就職でも、「役所による斡旋」によらないものは「天下り」でないと定義していた。

この結果、実質的な天下りが広く容認されていたわけで、この点を民主党は強く批判していたのである。したがって、民主党を中心とする新政権は、実質的な意味での「天下り」を根絶しなければならない。これを実行しなければ公約違反のそしりを免れない。

鳩山政権は政権発足直後に、天下り人事の実施を一時凍結した。年末までに各機関が公募することとされた。しかし、結果として官僚OBが再就職に応募して任用されることが決定されれば、結果としては天下りが容認されたことになってしまう。

天下りについて、抜け穴や不透明さを取り除く明確なルールを設定することが必要である。官僚OBの所管公益法人、独立行政法人幹部への再就職を禁止しなければ、天下り禁止の実効性はあがらない。

また、民間企業への再就職についても、退職直前10年間に所管した業界企業・団体への再就職は、10年間禁止するといった程度の規定を定め、罰則規定を設けることが不可欠である。

憲法で保障された「職業選択の自由」に抵触するとの意見があるが、公益性の視点から、一定の年限、再就職を禁止することは正当化されると考えられる。

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公務員の天下りを禁止する一方で、公務員の定年までの雇用を保証する必要がある。年次に従って給与が増加する仕組みを温存したままでは、公務員の人件費コストが膨張してしまうため、役職に応じて給与が低下する仕組みを導入する必要もある。

制度を刷新する過程で、一時的に人件費コストが増大することは新制度への移行のためのコストと認識するべきである。

鳩山新政権が「天下り根絶」の選挙公約を確実に実行しなければ、国民の政権支持は音を立てて崩れることになるだろう。政権交代は日本政治刷新の手段ではなく、民主党による権力掌握の手段に過ぎなかったと云うことになってしまう。

①「官権政治」から「民権政治」への転換

が、政権交代の第一の意義である。これに加えて、

②「政治権力と大資本の癒着」排除

③「対米隷属外交」から「自主独立・日米基軸外交」への転換

が、政権交代実現の最大の目的である。

日本郵政は小泉竹中政治によって「私物化」、「売国化」されてしまった。鳩山政権が国民の支持を受けて、日本郵政の経営体制を刷新したことは、大きな成果であり、この人事を断行した亀井静香郵政担当相の力量は高く評価されなければならない。

しかし、この人事が「官権政治温存」の契機になることは断じて許されるものでない。鳩山政権は「天下り」に関する厳格なルールを早期に確立しなければならない。その新ルールには、実効性を高めるための罰則規定も必要である。

日本郵政人事が問題にされたことを「てこ」として活用し、実効性の高い「天下り根絶ルール」を提示し、早期に法整備を図ることが求められる。

また、年末に期限を迎える凍結された「天下り人事問題」については、け結果あまくだとしての天下り根絶を確実に示さなければならない。

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2009年11月 3日 (火)

小沢一郎幹事長が主導する政治刷新の法整備

民衆の力で成就した政権交代。この政権交代を歴史的偉業に育成しなければならない。私は政権交代の意義が

①「官権政治」から「民権政治」への転換

②「政治権力と大資本の癒着」排除

③「対米隷属外交」から「自主独立・日米基軸外交」への転換

にあると主張してきた。

経済政策の基本方針として、

④小泉竹中政治の「市場原理主義」を排し、「セーフティネット」を再構築する

ことが重要であり、

⑤日本郵政の経営を刷新し、「かんぽの宿疑惑」の全容を解明する

ことも政権交代の重要な目標である。

日本経済は米国のサブプライム金融危機の余波を受けて、深刻な不況に陥っている。この秋一番の寒波を迎え、各地から降雪の便りが届いているが、年末に再び「年越し派遣村」を開設しなければならない状況が生じる懸念も広がっている。

鳩山政権はまず、経済回復に向けての万全の施策を示す必要がある。同時に、深刻な不況によって苦しみに直面している多数の国民に対して、しっかりとした安全網を張り巡らせる必要がある。

小泉竹中政治が破壊したセーフティネットをきめ細かく再整備する必要が生じている。財政状況が極めて深刻な状況に直面しているが、政策の優先順位を誤ってはならない。

鳩山政権は「国民の生活が第一」の方針を明確に掲げている。短期の財政赤字に囚(とら)われて緊縮のブレーキを踏むことは、国民生活破壊につながるだけでなく、財政赤字をさらに拡大させてしまう現実を踏まえなければならない。

日本郵政最高幹部に大蔵官僚OBを2人も起用したことで、鳩山政権の「官権政治から民権政治への転換方針」が揺らいだのではないかと、多くの国民が疑問を感じ始めている。一部世論調査で鳩山政権の支持率が低下した最大の理由はこの点にあると考えられる。

日本郵政人事がこれまでの財務省支配打破を狙うものであるなら、一定の説明力を持つだろう。しかし、「民権政治」の実態が「新たな財務省支配政治」に陥るなら、鳩山政権は有権者からの厳しい批判に晒(さら)されることになるだろう。鳩山政権が「官権政治」温存に向かわぬよう、厳しい監視が必要である。

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こうしたなかで、民主党の小沢一郎幹事長は、政治のあり方を大きく変化させる法整備に積極的な姿勢を示している。

①官僚の国会答弁の全面禁止

②企業・団体献金の全面禁止

③公選法改正による戸別訪問とインターネット利用の解禁

を法制化する方針を示している。

このうち、①「官僚の国会答弁全面禁止」については、今臨時国会での法改正を目指す方針が示されている。

11月2日に始まった臨時国会での予算委員会審議では、鳩山政権閣僚が官僚原稿を棒読みする答弁から脱却する新しいスタイルを示している。政治家が自らの言葉で国民に語りかける政府答弁が、国会を活性化させる第一歩であると評価できる。

小沢幹事長は企業献金全面禁止を2010年の通常国会に提出する考えを有していると考えられる。今後の政局の焦点となる2010年夏の参議院選挙の重要争点となる可能性が高い。

自民党はこれまで企業献金にとっぷりと浸かる大資本との癒着体質を維持し続けてきた。大資本と癒着する政治権力の存在が、国民ではなく大資本の利益を追求する政治を生んできた背景である。

企業献金全面禁止は日本政治を根底から刷新するインパクトを有する施策であると考えられる。

また、選挙期間中のインターネット利用解禁は、「カネのかかる選挙」を大きく変質させるものと期待される。政府がインターネット活用を推進する一方で、選挙期間中のインターネット利用を禁止するのは自己矛盾以外の何者でもない。

今回の総選挙においても、既得権益=利権複合体の一角を占めるマスメディアが歪んだ情報を垂れ流すなかで、唯一、ネット情報と単行本による活字媒体が真実の情報を伝える重要なパイプになった。ネットから発信された真実の情報の意味は決して小さくなかったと思われる。

「官権政治」を排除し「民権政治」を定着させるという大目標の視点に立つと、鳩山政権の最近の動きに不安がないわけではない。しかし、官僚答弁の全面禁止、企業献金の全面禁止、選挙期間中のインターネット利用解禁などの施策が確実に実行されてゆくなら、日本政治は大きく変革するとの期待が裏切られることはないだろう。

しかし、世間の評価は移ろいやすいものである。鳩山政権が経済運営に失敗し、官権政治温存につながりかねない政策運営を示し続ければ、内閣支持率は急落し、2010年夏の参院選で思わぬ大敗を喫することも否定しきれなくなる。

「官権政治打破」の基本を再確認し、日本経済回復に向けての正しい経済政策運営を早急に提示することが求められる。政権交代の歴史的意義を低下させることは許されない。

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2009年11月 2日 (月)

短期景気回復・中期財政再建を目標に定めよ

11月2日から臨時国会での予算委員会審議が始まった。

政府活動の中核は予算編成、予算執行である。政府活動そのものとも言える国費の支出について、何に対してどれだけを支出するか。その財源を誰からどのように調達するか。これが予算編成、予算執行である。

「100年に1度の金融津波」が世界経済を襲い、グローバルな金融市場調整、景気の急落が生じた。この結果として、日本財政に深刻な影響が広がっている。麻生政権は2009年度に14兆円の規模の補正予算を編成し、2009年度予算規模は102.5兆円に拡大した。

また、麻生内閣は2009年度国税収入を46兆円と見積もった。ところが、この税収見積もりが大間違いであることが判明しつつある。11月2日付日本経済新聞報道によると、2009年度は法人税収が5~6兆円にとどまる可能性が高まり、一般会計税収が30兆円台後半にまで減少する可能性が高まっている。

2009年度税収が仮に38兆円に減少すると、これだけで7兆円の歳入不足が発生する。この7兆円の不足を国債の追加発行で賄うと、2009年度国債発行規模は51兆円に達することになる。税収が38兆円、国債発行が51兆円という非常事態が現実のものになる。

一部の偏向メディアは、こうした財政状況の悪化を鳩山政権の責任だと攻撃するだろうが、筋違いも甚だしい。2009年度の財政状況は麻生政権の政策運営の結果としてもたらされるものである。

麻生政権は2008年度第二次補正予算編成を2ヵ月も先送りした。100年に1度の金融津波が世界経済を襲い、各国が迅速に対応策を示さなければならなかったにもかかわらず、麻生政権は「政策よりも政局を優先」し、補正予算審議を2009年年明けまで先送りした。

麻生政権の政策対応の遅れが日本経済の悪化を深化させてしまった面を否定できない。麻生政権は遅ればせながら、14兆円規模の2009年度補正予算を編成し、2009年4月に国会に提出し、5月に補正予算が成立した。

2009年度がスタートする時点で14兆円もの規模の補正予算を編成したことは、麻生政権が2009年度日本経済の見通しを完全に見誤ったことを端的に示している。税収を46兆円と見積もったのが38兆円程度にとどまることになることと併せて、麻生政権の経済運営の拙劣さが明瞭に示されている。

麻生政権は14兆円規模の補正予算を編成したが、その中身がまた最悪であった。私は

5月30日付記事

「お手盛り・バラマキ補正予算編成と総選挙日程」

に次のように記述した。

「補正予算では、本予算で6490億円しか予算が計上されない公的部門の施設整備費に2.8兆円もの国費が投入されることが明らかにされた。大盤振る舞いの補正予算で、役人が使用する公共施設を豪華に刷新しようというのだ。

マンガ・アニメの殿堂には建設費だけで117億円が用意される。思いつきで決めた支出対象に、無尽蔵の国費を使いたい放題である。

また、「エコカー」、「エコ家電」にかこつけて、役所の公用車が1万5000台=588億円、地デジ対応テレビが7万1000台=71億円、購入される。補正予算を「官僚のこづかい」と捉えているのだろう。

さらに、補正予算では58の基金に4.6兆円の国費が投入される。4.6兆円のうち、どれだけが事務経費に充当されるのかは国会審議でも明らかにされなかった。58基金への4.6兆円が「天下り」利権拡大に利用されることは間違いないだろう。

14兆円もの国費を投入するなら、はるかに優先順位の高い費目が存在する。
①失業者の生活保障、非正規労働者のセーフティネット整備、
②高齢者の介護、医療体制整備、
③子育て・教育費助成、
④障害者自立支援法改正、
⑤後期高齢者医療制度廃止、
⑥消えた年金修復事業の早期完結、
⑦生活保護強化、
などの施策が優先されなければならなかった。」

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 麻生政権は財政赤字を激増させただけでなく、貴重な国費を無駄な対象にばらまく政策対応を示したのである。

 鳩山政権は政権発足直後に補正予算の見直しに着手した。国会で成立した予算を見直すことは至難の業であるが、鳩山政権は約3兆円の支出を白紙に還元した。短期日に大きな金額の支出凍結に成功したと言える。

 臨時国会での論戦においては、日本財政の状況悪化がひとつの論点になると考えられる。102.5兆円規模の予算規模で、38兆円の税収、51兆円の国債発行は、あまりに深刻な財政状況を示している。

 日本財政の立て直しは中期的に最重要の政策課題になることは間違いない。

 しかし、この財政状況に目を奪われて、財政収支改善だけを拙速に追求する方針を採用することに対しては慎重な姿勢が不可欠である。

 日本だけでなく米国においても、経済活動は本年3月の最悪期を脱しつつあるものの、先行きについての強い不安が浮上し始めている。米国も日本も巨大な財政支出発動が経済の急激な悪化を遮断した。しかし、その副作用として財政赤字が激増し、追加経済対策発動が困難になるとともに、経済の再悪化が懸念され始めている。

 鳩山政権が2010年度予算編成に際して、財政収支悪化に対応した超緊縮予算を編成するなら、日本経済の再悪化が現実化することは間違いないだろう。この場合には税収がさらに減少し、結果として財政赤字は減少せずにさらに拡大する可能性が高い。

 過去の事例でも、1997年度、2001年度に橋本政権、小泉政権が無理な緊縮財政政策を実行して、経済の崩壊と財政赤字の激増を招いた経験がある。

 この点を踏まえれば、鳩山政権は2010年度に超緊縮財政を実行することを避けなければならない。

 2009年度補正後予算規模が102.5兆円に達し、国債発行金額が51兆円に達する可能性が高まっている。2010年度当初予算編成においては、この2009年度補正後予算をベースにしなければならない。予算規模を92兆円に圧縮し、国債発行金額を44兆円に圧縮すれば、日本経済は財政デフレに誘導されてしまう。

 日米株式市場は、先行きの経済について警告を発し始めている。1996年も12月の予算編成時期に日経平均株価が2万円を割り込み、先行きに対する強い警告を発した。私は橋本政権の緊縮財政を修正すべきだと強く警告したが、橋本政権は超緊縮財政を強行し、1997年度の経済大崩壊を招いた。

 2001年度に小泉竹中政権が超緊縮財政を強行実施したときも私は強い警告を発したが、小泉政権は超緊縮財政を強行し、2003年の日本経済崩壊を招いた。鳩山政権はこの徹を踏んではならない。

 2010年夏には日本政治にとって最重要の参議院選挙が実施される。鳩山政権が経済政策運営に失敗すれば、2010年参院選に大敗し、日本政治刷新は雲散霧消してしまうだろう。

 2010年度予算編成に向けて、日本経済回復優先の基本姿勢を明確にすることが求められる。経済の回復なくして財政状況改善はない。短期の景気回復、中期の財政再建の明確化が不可欠である。

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