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2009年11月17日 (火)

第2次補正予算規模をめぐる論議への提言

 鳩山政権は11月17日午前の閣議で追加経済対策を盛り込む2009年度第2次補正予算編成の指針を決めた。景気の「二番底」懸念が強まる中、重点分野として雇用、環境、景気の三つを位置付け、2010年度予算と一体的に「15カ月予算」として編成する。ただし、補正予算の規模については、閣僚間の意見集約が進まず、結論を持ち越した。

補正予算の規模については菅直人国家戦略担当相が2兆7000億円の規模を示唆したが、亀井静香金融相がより大規模な対策を求めたため、決定が先送りされた。

2010年度にかけて、鳩山政権最大の難問は経済政策である。

日本経済の先行き再悪化懸念が強い一方で、日本の財政バランスが極端に悪化したことがその背景である。

ただし、問題を考察する前に確認しなければならないことは、鳩山政権が発足する時点ですでに日本の財政バランスが極度に悪化していたとの事実である。

日本の国家財政=一般会計においては、財政赤字の代表的指標である国債発行額が2008年度当初予算において25.3兆円にまで減少した。緩やかな経済改善が持続し、税収が増加したことが財政赤字減少の主因だった。

ところが、「100年に1度の金融津波」が世界経済を覆い、日本経済も戦後最悪の経済状況に陥った。この経済危機に対応して麻生政権は巨大な財政政策を発動した。経済対策の内容については、不要不急の支出が多く含まれており、強い批判が生じたが、いずれにしろ巨大な景気対策が発動された。

2009年度は本年4月に始まった年度だが、2009年度財政は鳩山政権が発足した2009年9月の段階で、極度に悪化していたのである。

麻生政権は88.5兆円規模、国債発行金額33.3兆円の2009年度当初予算を編成した。税収見積もりは46.1兆円だった。2008年度当初予算よりも国債発行金額が8兆円も多い予算だった。

この2009年度予算に対して、麻生政権は年度当初に超大型14兆円規模の補正予算を編成したのである。予算規模は102.5兆円に拡大した。国債発行金額は44.1兆円に拡大した。

ところが、事態の悪化はこれだけでは済まなかった。46.1兆円と見積もられた税収の達成が絶望視されているのだ。2009年度税収は40兆円を割り込む可能性が高いと見られている。仮に税収見積もりが38兆円に下方修正されると、8兆円の歳入不足が発生する。この歳入不足は埋蔵金か国債発行で賄われざるを得ない。

国債発行で賄われると国債発行金額は51兆円に達し、税収の38兆円をはるかに上回る金額になる。

102.5兆円の予算規模、38兆円の税収、51兆円の国債発行金額が2009年度の日本財政の姿になる。この数値は衝撃的なものである。102.5兆円の暮らしをするのに、38兆円しか基礎収入がないのだ。51兆円が借金で賄われる。

鳩山政権打倒を狙うマスメディアは、日本財政の劇的悪化を鳩山政権の責任に帰すような偏向報道を展開することになるだろう。

しかし、現実はまったく違う。102.5兆円の財政規模、38兆円の税収、51兆円の国債発行は鳩山政権が生み出したものではなく、麻生政権が生み出したものであるからだ。

鳩山政権はまずこの事実を国民に周知させる必要がある。問題はこの劇的に悪化した2009年度財政が現存するという現実を踏まえて、鳩山政権が次にどのように対応するのかである。

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2009年度補正予算のうち、鳩山政権は3兆円の執行を凍結させた。したがって、鳩山政権が凍結した3兆円を2009年度には支出しないことを決定すれば、2009年度の国債発行金額を51兆円とせずに48兆円に留めることができる。

しかし、日本経済の再悪化懸念が強いため、鳩山政権は凍結した3兆円を、2009年度第2次補正予算の財源に充てて、景気対策を実行する方針を固めたのである。これでも、この施策を実行すれば2009年度の国債発行額は51兆円になってしまう。

亀井静香金融相は日本経済再悪化懸念が強いことを踏まえて、2009年度第2次補正予算の規模を拡大するべきだと主張している。亀井金融相の景気再悪化懸念は理解できる。

しかし、問題を考察するにあたってより重要な視点がある。それは、2009年度補正予算だけでなく、2010年度当初予算を中心とする2010年度の財政政策が日本経済再悪化の引き金を引かないように配慮することである。

2009年度予算は麻生政権の14兆円の補正予算編成により急拡大している。この2009年度予算をさらに拡大させる場合、2010年度当初予算を劇的に拡大させないと、2010年度予算が日本経済に対して強度のデフレ効果を与えることになる。この事態を避けなければならない。

つまり、追加の景気対策を考えるなら、2009年度補正予算ではなく、2010年度当初予算での措置を検討するべきである。

2009年度予算は第一次補正後で102.5兆円規模に拡大し、国債発行金額は51兆円に達する情勢にある。これに対して、仙谷由人行政刷新相は2010年度当初予算規模を92兆円にとどめ、国債発行金額を44兆円以下に抑制する方針を示している。

このまま2010年度当初予算が編成されると、2010年度予算は日本の2010年度GDP成長率を1.5%ポイントから2.0%ポイントも低下させる影響を発揮してしまうことになる。1997年度の橋本政権、2001年度の小泉政権による日本経済崩壊の失敗が繰り返される可能性が濃厚になる。

したがって、日本経済の再悪化を防止するには、2009年度の大型補正予算追加よりも、2010年度当初予算を景気抑制予算にしないことが重要である。

マスメディアは2010年度予算編成で国債発行額が44兆円を超えることや予算規模が2009年度当初予算の88.5兆円を大幅に上回ることを、「財政規律が失われる」と騒ぎ立てるだろう。しかし、財政の経済への影響を考察する際には、財政規模や国債発行金額の前年比増減が何よりも重要な尺度になる。2009年度第一次補正後の段階で予算規模が102.5兆円に膨張し、国債発行金額が実質的に51兆円に増大している現実を踏まえなくてはならない。

2009年度予算が麻生政権の巨大補正予算によって拡張されてしまった以上、この2009年度補正後予算を発射台として見なさざるを得ないのである。2009年度当初予算を発射台として論議を進めることが経済破壊の大きな誤りを生み出す元凶になる。

一般国民はマスメディアのヒステリックな「鳩山政権が財政規律を喪失した」とのプロパガンダ報道に影響を受けやすい。この弊害を除去するには、政府が財政状況悪化の原因と今後の経済政策の適切な対応について、きめ細かい広報を展開する必要がある。

鳩山政権は日本経済の崩壊回避と、マスメディアによる鳩山政権批判の両方に対応しなければならないのである。この意味で、鳩山政権が直面する課題は極めて困難なものであると言わざるを得ないが、その困難を乗り越えなければならない。

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